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第4章 騎士道を学べ
第3話 蛙の子は蛙
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気負うことなく自然体のままでもその出で立ちは、気品を漂わせていた血の繋がりがない母と娘。
二人の間で彼女だけは、すこし顔色悪い表情をしていた。
「メリー様、そんなに固く身構えないで下さい。
私の友人たちと、娘のイングリッドがおりますからね」
「はえー、はーいっ!」
声も裏返って緊張していたが、姿勢までも直立不動でガチガチになってしまっていた。
「メリー様、大丈夫?
もうダメだと感じたら、失神したふりをしてください。
その前に、私に合図して知らせてね。
控えているメイドたちを、全員すぐに呼び寄せます」
ニーナの養子で、メリーとは義理の妹になったイングリッドが秘策を授けた。
「倒れる…?
そんな、御迷惑をかけられません」
「構わなくてよ。
イングリッド、それはいい考えだわ。
淑女なら許される行為です。
コルセットを締めつけで、意識を失ったことに致しましょう」
「スクード公爵夫人。
やはり、お茶会はまだ私には早かったのではないでしょうか?」
「貴女は、ヘイズの社交界で話題の中心人物なのよ。
いま顔を売らないで、いつ売るって仰るの!」
「ヒッ!ひえーっ!!」
閉じた扇を鼻先に向けられて、普段は大人しい公爵夫人が一喝してメリーに言い放った。
「変な声を出して申し訳ございません。
今までは、その給仕で接客してました。
どうも、される側は不慣れでして…」
「堂々としていなさい。
困ったら天気の話とお相手の衣装を誉めて、ニコニコ笑って誤魔化しなさい。
さぁ、参りますわよ!」
スクード公爵夫人ニーナが開くお茶会に、賓客としてメリーはお呼ばれしていた。
給仕するメイドたちがテーブルの後ろに控えて、主人であるニーナとメリーを待ち構えていた。
優雅に座っている貴婦人たちも、同じ心境で歩いてきた人物たちを眺めていた。
そして、間近になると椅子から腰をあげて立ち上がる。
「本日は、私の茶会に出席して下さり感謝します。
初めて参加する方を、皆様にご紹介致しますね」
打ち合わせのとおりにニーナは、新参者のメリーの顔見世をする。
隣にたっているメリーを、品定めをするような目付きをする客人たち。
珍しい物を見たような顔つき。
他国の貴族でもない平民が、次期侯爵の妻になる彼女をやっかむ表情。
その中で真っ直ぐに目線を合わせて、彼女らを見ないように毎日練習してきた挨拶をする。
「スクード公爵夫人から、紹介して頂きました。
メリー・ゲランです。
皆様とお知り合いになり、これなら仲良くさせて頂けたら光栄でございます」
噛まずに挨拶すると、クラレンス公爵夫人ヴィクトリア直伝のカーテシーを披露した。
「あら?思ったより、美しいカーテシーを披露してくれたわ。
エテルネルの平民の出身とはお聞きしましたが、言わねば分かりませんね」
スクード公爵夫人ニーナの友人伯爵夫人は、扇で口元を隠して目元は微笑んでメリーを褒める。
『人を見定めている態度を、隠しているように見えるわ。
貴婦人って、そんな人たちが比較的に多いのよね』
「いえ、私などは皆様のマネにも及びませんわ。
しょせんは、【蛙の子は蛙】です。
親が平民の私には、皆様と同じ貴族のようにふるまえません」
「そのような事は、言ってはいけません。
子は親のたどった道を歩むといい。
凡人の子は、凡人にしかなれないって意味でしょう?」
ニーナの血の繋がりない娘イングリッドは、メリーが卑下するのを否定したかった。
「鳶が鷹を生むって、言葉がございます。
メリー様は、そちらの方が正しいのでないかしら。
私はお付き合いしてみて、このように感じてますのよ」
公爵夫人ニーナの言う糸をくみ取り、このような話で場をふってみせる。
「公爵夫人は頭の回転が速く、話も上手に盛り上げられて素晴らしいと思います。
そんな公爵夫人のご友人であられる伯爵夫人にも、是非いろいろ教えを乞いたいものです」
「まあ、私がメリー様に教えるのですか?!
とてもとても、私にはできません。
将来、侯爵夫人に成られる方に不敬ですわ」
彼女はこの短い時間で、誰に媚びればよいかを察知した。
あの公爵令嬢に、長年仕えていただけある。
「なんと、謙虚なお方でしょう。
そのような方に、淑女の心得を教わりたいのです。
そう思いませんか?
スクード公爵夫人!」
「ええ、ゲラン夫人そうですね。
伯爵夫人、私からも宜しくお願いするわ」
「ホホホ……、スクード公爵夫人のたっての頼みなら断れません。
ゲラン夫人、宜しかったら私の茶会にも来ていただきたいわ」
「まぁ、お誘いありがとうございます。
伯爵夫人、嬉しゅうございます」
1番厄介な夫人を手なずけて、ふたりのやり取りが上手くいき胸を撫で下ろした。
それにしても、メリーの人の思いを汲み取る勘のよさにニーナは顔色には出さず驚く。
ゲラン侯爵嫡男のギャスパルの妻として努力しているメリーと、同じく環境を変えて慣れようとしている者がいた。
そのもう一人は、今はどうかというと……。
休日の日に学園から外出届けを出して、プリムローズは街に遊びに行っていた。
ロッタとジャンヌは、お気に入りのお店を案内してくれる。
「可愛い小物がたくさんありましたね。
連れてきてくださって、ありがとうございます」
「気に入って貰えたようで、私も嬉しいわ。
ロッタはいつも外で待つているって、お店の中へ入ってくれないのよ」
ロッタに聞こえないようにジャンヌがプリムローズに耳打ちをする。
「おっ!あれはー。
ジャンヌ、憲兵たちが街を見回っているぞ!」
「えっ、なに?
ロッタ大声だして、どうしたの?
あー、あの人はー。
二人とも静かにして!」
見回っている憲兵たちの後をついて尾行していた。
「お二人とも、突然にどうされたのですか?」
「「プリムローズ嬢、黙って!( 黙ってくれ )!」」
唇を突き出して不満げなプリムローズは、2人が見ている方へ目を動かす。
熱心に道を挟んだ向こう側に、憲兵らしい二人組を見ているようだった。
どうも背丈に差があり、体格からして男女の組み合わせにみえる。
そして、そこから憲兵たちの後を付けるように歩きだす。
「ねぇ~、どうして!?
コソコソ隠れたり、憲兵たちを尾行しているのですか?
ジャンヌ様が憲兵になりたい理由を、今日教えてくれるお約束でしたよね?」
ロッタの腕を取って、プリムローズは小さな声で訊いてみた。
路地に隠れたり、店を見る振りをしてまで男女の憲兵隊員を追っている。
「プリムローズ嬢、ジャンヌはあの男性隊員にホの字なのだよ」
囁くようにロッタが教えると、プリムローズは大声を出しそうになり口を塞がれた。
「ふがふが、苦ちいよー!」
「あ、ごめん。
君の声って、よく通るからさ」
「ゴホン、思いっきり口を塞ぎましたわね。
それより、ジャンヌが憲兵になりたかったのはー」
ロッタとプリムローズがじゃれあって遊んでいると、ジャンヌは暗い声で前にいる二人を見て呟く。
「しっ、お静かに!
花屋で話をしているわ。
まさか、彼女に花でも贈るつもりで買っているのかしら?」
「どんな関係かを、直接聞けばいいじゃない。
コソコソしているだけでは、彼女に負けてしまいましてよ」
ジャンヌは学園の休日になるとこうして、ロッタを連れ憲兵隊の彼を見つけに来る。
見ているのが精一杯で、声をかけずにいた。
彼に片想いをしていて、推しを追っていたわけである。
『では、男目当てで憲兵になりたいのか。
志望動機が不純すぎるが、人それぞれ成り行きは違う。
それに、愛は偉大だ!』
恋に対し意外に寛大なプリムローズは、モゾモゾしているだけのジャンヌをけしかけた。
「む、無理です。
見ていると二人は、たいていは一緒に組んでます。
そんな仲ではないかと…」
孫にあたるプリムローズは、祖母ヴィクトリアが祖父の噂で国を抜け出して顔を見に行ったことを思い出していた。
「祖母もジャンヌ様と似たことをしてました。
ですか、積極性に関しては天と地との差がございます」
「そ、祖母ってー。
おばあ様は、あのアルゴラの第一王女殿下でしたわよね」
ジャンヌからしてみたら、そんな大物と比較されてもと思う。
「祖母からお祖父様に、婚姻を申し込んだそうですわ。
そこまではしなさいとは、私からは申しません。
ですが、一歩踏み出してみたら如何でしょう」
ロッタとジャンヌは逆告白と王女から迫ったと聞き、お~っと同時に声を出した。
「私からふたりの関係を訊ねよと、プリムローズ嬢は仰っています?
そんな度胸がありましたら、こんなことをしてませんわ!」
彼女はこれだけ言っても、顔を下へ向けて時々彼らをチラっと見るだけ。
「ああー、もうイライラする!
じれったいわ。
私が確かめて差し上げます」
くるりと反転すると、ターゲットに向かおうとしていた。
「待ってちょうだい!
お願い、余計なことしないで~」
「ご自分では言えないんでしょ。
このままでは、ジャンヌ様は今日から寝不足よ」
「……、ジャンヌ。
よせっ、お節介がすぎるぞ。
プリムローズ嬢!」
ジャンヌとロッタが必死に呼び止めるが、黙殺して花屋の方へ向かう。
『他人の私が、ふたりの関係を暴いてやるわ!
絶対に付き合っているように思えてならないのよ』
流石は、強引な性格なヴィクトリアの孫娘。
息子たちではなく。
そのどうしようもない遺伝子は、しっかりと受け継がれていた。
ヤレヤレとした態度で、ロッタは狼狽えている友人を気の毒そうに見る。
『ジャンヌには悪いが、外出の度に付き添われて限界だったんだよな。
彼女なら、ジャンヌも許してくれるだろう』
心の中ではプリムローズに、頼んだとお願いしていた。
『彼がー。
仕事している姿を、ただ眺めるだけで私は満足だった。
それが……、どうして。
こんなことになったの』
目をこれでもかと広げ、手をプリムローズに向けて声にならない叫びをあげている。
気になる憲兵隊たちは、男女関係か。
取り越し苦労の職場仲間か。
もうじき、どちらか本当かが判明するのだった。
二人の間で彼女だけは、すこし顔色悪い表情をしていた。
「メリー様、そんなに固く身構えないで下さい。
私の友人たちと、娘のイングリッドがおりますからね」
「はえー、はーいっ!」
声も裏返って緊張していたが、姿勢までも直立不動でガチガチになってしまっていた。
「メリー様、大丈夫?
もうダメだと感じたら、失神したふりをしてください。
その前に、私に合図して知らせてね。
控えているメイドたちを、全員すぐに呼び寄せます」
ニーナの養子で、メリーとは義理の妹になったイングリッドが秘策を授けた。
「倒れる…?
そんな、御迷惑をかけられません」
「構わなくてよ。
イングリッド、それはいい考えだわ。
淑女なら許される行為です。
コルセットを締めつけで、意識を失ったことに致しましょう」
「スクード公爵夫人。
やはり、お茶会はまだ私には早かったのではないでしょうか?」
「貴女は、ヘイズの社交界で話題の中心人物なのよ。
いま顔を売らないで、いつ売るって仰るの!」
「ヒッ!ひえーっ!!」
閉じた扇を鼻先に向けられて、普段は大人しい公爵夫人が一喝してメリーに言い放った。
「変な声を出して申し訳ございません。
今までは、その給仕で接客してました。
どうも、される側は不慣れでして…」
「堂々としていなさい。
困ったら天気の話とお相手の衣装を誉めて、ニコニコ笑って誤魔化しなさい。
さぁ、参りますわよ!」
スクード公爵夫人ニーナが開くお茶会に、賓客としてメリーはお呼ばれしていた。
給仕するメイドたちがテーブルの後ろに控えて、主人であるニーナとメリーを待ち構えていた。
優雅に座っている貴婦人たちも、同じ心境で歩いてきた人物たちを眺めていた。
そして、間近になると椅子から腰をあげて立ち上がる。
「本日は、私の茶会に出席して下さり感謝します。
初めて参加する方を、皆様にご紹介致しますね」
打ち合わせのとおりにニーナは、新参者のメリーの顔見世をする。
隣にたっているメリーを、品定めをするような目付きをする客人たち。
珍しい物を見たような顔つき。
他国の貴族でもない平民が、次期侯爵の妻になる彼女をやっかむ表情。
その中で真っ直ぐに目線を合わせて、彼女らを見ないように毎日練習してきた挨拶をする。
「スクード公爵夫人から、紹介して頂きました。
メリー・ゲランです。
皆様とお知り合いになり、これなら仲良くさせて頂けたら光栄でございます」
噛まずに挨拶すると、クラレンス公爵夫人ヴィクトリア直伝のカーテシーを披露した。
「あら?思ったより、美しいカーテシーを披露してくれたわ。
エテルネルの平民の出身とはお聞きしましたが、言わねば分かりませんね」
スクード公爵夫人ニーナの友人伯爵夫人は、扇で口元を隠して目元は微笑んでメリーを褒める。
『人を見定めている態度を、隠しているように見えるわ。
貴婦人って、そんな人たちが比較的に多いのよね』
「いえ、私などは皆様のマネにも及びませんわ。
しょせんは、【蛙の子は蛙】です。
親が平民の私には、皆様と同じ貴族のようにふるまえません」
「そのような事は、言ってはいけません。
子は親のたどった道を歩むといい。
凡人の子は、凡人にしかなれないって意味でしょう?」
ニーナの血の繋がりない娘イングリッドは、メリーが卑下するのを否定したかった。
「鳶が鷹を生むって、言葉がございます。
メリー様は、そちらの方が正しいのでないかしら。
私はお付き合いしてみて、このように感じてますのよ」
公爵夫人ニーナの言う糸をくみ取り、このような話で場をふってみせる。
「公爵夫人は頭の回転が速く、話も上手に盛り上げられて素晴らしいと思います。
そんな公爵夫人のご友人であられる伯爵夫人にも、是非いろいろ教えを乞いたいものです」
「まあ、私がメリー様に教えるのですか?!
とてもとても、私にはできません。
将来、侯爵夫人に成られる方に不敬ですわ」
彼女はこの短い時間で、誰に媚びればよいかを察知した。
あの公爵令嬢に、長年仕えていただけある。
「なんと、謙虚なお方でしょう。
そのような方に、淑女の心得を教わりたいのです。
そう思いませんか?
スクード公爵夫人!」
「ええ、ゲラン夫人そうですね。
伯爵夫人、私からも宜しくお願いするわ」
「ホホホ……、スクード公爵夫人のたっての頼みなら断れません。
ゲラン夫人、宜しかったら私の茶会にも来ていただきたいわ」
「まぁ、お誘いありがとうございます。
伯爵夫人、嬉しゅうございます」
1番厄介な夫人を手なずけて、ふたりのやり取りが上手くいき胸を撫で下ろした。
それにしても、メリーの人の思いを汲み取る勘のよさにニーナは顔色には出さず驚く。
ゲラン侯爵嫡男のギャスパルの妻として努力しているメリーと、同じく環境を変えて慣れようとしている者がいた。
そのもう一人は、今はどうかというと……。
休日の日に学園から外出届けを出して、プリムローズは街に遊びに行っていた。
ロッタとジャンヌは、お気に入りのお店を案内してくれる。
「可愛い小物がたくさんありましたね。
連れてきてくださって、ありがとうございます」
「気に入って貰えたようで、私も嬉しいわ。
ロッタはいつも外で待つているって、お店の中へ入ってくれないのよ」
ロッタに聞こえないようにジャンヌがプリムローズに耳打ちをする。
「おっ!あれはー。
ジャンヌ、憲兵たちが街を見回っているぞ!」
「えっ、なに?
ロッタ大声だして、どうしたの?
あー、あの人はー。
二人とも静かにして!」
見回っている憲兵たちの後をついて尾行していた。
「お二人とも、突然にどうされたのですか?」
「「プリムローズ嬢、黙って!( 黙ってくれ )!」」
唇を突き出して不満げなプリムローズは、2人が見ている方へ目を動かす。
熱心に道を挟んだ向こう側に、憲兵らしい二人組を見ているようだった。
どうも背丈に差があり、体格からして男女の組み合わせにみえる。
そして、そこから憲兵たちの後を付けるように歩きだす。
「ねぇ~、どうして!?
コソコソ隠れたり、憲兵たちを尾行しているのですか?
ジャンヌ様が憲兵になりたい理由を、今日教えてくれるお約束でしたよね?」
ロッタの腕を取って、プリムローズは小さな声で訊いてみた。
路地に隠れたり、店を見る振りをしてまで男女の憲兵隊員を追っている。
「プリムローズ嬢、ジャンヌはあの男性隊員にホの字なのだよ」
囁くようにロッタが教えると、プリムローズは大声を出しそうになり口を塞がれた。
「ふがふが、苦ちいよー!」
「あ、ごめん。
君の声って、よく通るからさ」
「ゴホン、思いっきり口を塞ぎましたわね。
それより、ジャンヌが憲兵になりたかったのはー」
ロッタとプリムローズがじゃれあって遊んでいると、ジャンヌは暗い声で前にいる二人を見て呟く。
「しっ、お静かに!
花屋で話をしているわ。
まさか、彼女に花でも贈るつもりで買っているのかしら?」
「どんな関係かを、直接聞けばいいじゃない。
コソコソしているだけでは、彼女に負けてしまいましてよ」
ジャンヌは学園の休日になるとこうして、ロッタを連れ憲兵隊の彼を見つけに来る。
見ているのが精一杯で、声をかけずにいた。
彼に片想いをしていて、推しを追っていたわけである。
『では、男目当てで憲兵になりたいのか。
志望動機が不純すぎるが、人それぞれ成り行きは違う。
それに、愛は偉大だ!』
恋に対し意外に寛大なプリムローズは、モゾモゾしているだけのジャンヌをけしかけた。
「む、無理です。
見ていると二人は、たいていは一緒に組んでます。
そんな仲ではないかと…」
孫にあたるプリムローズは、祖母ヴィクトリアが祖父の噂で国を抜け出して顔を見に行ったことを思い出していた。
「祖母もジャンヌ様と似たことをしてました。
ですか、積極性に関しては天と地との差がございます」
「そ、祖母ってー。
おばあ様は、あのアルゴラの第一王女殿下でしたわよね」
ジャンヌからしてみたら、そんな大物と比較されてもと思う。
「祖母からお祖父様に、婚姻を申し込んだそうですわ。
そこまではしなさいとは、私からは申しません。
ですが、一歩踏み出してみたら如何でしょう」
ロッタとジャンヌは逆告白と王女から迫ったと聞き、お~っと同時に声を出した。
「私からふたりの関係を訊ねよと、プリムローズ嬢は仰っています?
そんな度胸がありましたら、こんなことをしてませんわ!」
彼女はこれだけ言っても、顔を下へ向けて時々彼らをチラっと見るだけ。
「ああー、もうイライラする!
じれったいわ。
私が確かめて差し上げます」
くるりと反転すると、ターゲットに向かおうとしていた。
「待ってちょうだい!
お願い、余計なことしないで~」
「ご自分では言えないんでしょ。
このままでは、ジャンヌ様は今日から寝不足よ」
「……、ジャンヌ。
よせっ、お節介がすぎるぞ。
プリムローズ嬢!」
ジャンヌとロッタが必死に呼び止めるが、黙殺して花屋の方へ向かう。
『他人の私が、ふたりの関係を暴いてやるわ!
絶対に付き合っているように思えてならないのよ』
流石は、強引な性格なヴィクトリアの孫娘。
息子たちではなく。
そのどうしようもない遺伝子は、しっかりと受け継がれていた。
ヤレヤレとした態度で、ロッタは狼狽えている友人を気の毒そうに見る。
『ジャンヌには悪いが、外出の度に付き添われて限界だったんだよな。
彼女なら、ジャンヌも許してくれるだろう』
心の中ではプリムローズに、頼んだとお願いしていた。
『彼がー。
仕事している姿を、ただ眺めるだけで私は満足だった。
それが……、どうして。
こんなことになったの』
目をこれでもかと広げ、手をプリムローズに向けて声にならない叫びをあげている。
気になる憲兵隊たちは、男女関係か。
取り越し苦労の職場仲間か。
もうじき、どちらか本当かが判明するのだった。
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