無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます! ーヘイズ留学 過去から未来編ー

愚者 (フール)

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第5章 栄光を目指せ

第7話 人は見かけによらぬもの

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    女性生徒は、現在8名。
男子生徒は、125名。

しかし、そこにザイールの留学から戻ってきたチューダー侯爵令息アンテロが加わる。
合計全生徒134人だが、体調不良で辞退した人たちを除く計128名で戦うことになった。

「ロッタ先輩、今日は何回戦う予定ですか?」

近くにいたロッタが、すぐにプリムローズの問いに反応してくれる。
なんだかんだ言って、彼女は面倒見のよい親切な性格をしている。

「対戦の数が多いから、2回戦くらいだろう。
勝ち続けていけばいくほど、体力と精神は厳しくなる」

「明日の戦い方が大事になりますわね。
女性は全てに不利です」

「うん、体力の配分を考えて戦わなくてはいけないな。
とにかく、今日勝たないと明日はない!」

こんな話をしていたら、とうとう試合が始まった。
対戦がまだのプリムローズたちは、観戦席に座り先頭をきって戦うロッタを応援するのだった。

「あっ!出てきました。
頑張って~、ジャンヌ様」

「ジャンヌ、勝てよ!」

声援に熱が入って椅子から腰を浮かし、戦うジャンヌに向けて手を振る。
周りも他の人へ応援するようで、あちらこちらで大きな声をあげていた。

「相手は強そうに見えるな。
背が高く、体格もいい」

いつも強気なロッタさえ、緊張して弱気なことを言っている。
これを間近で聞くと、プリムローズさえ不安になってしまう。

「そんなこと言ったら、全員が強く見えてきちゃう」

エテルネルのお遊び大会とは違って、空気がピリピリして気迫が違うのを感じてきた。

自分が対戦するよりも、ジャンヌの試合前ですでにドキドキしてきた。

「ああ、始まりましたよ」

「相手をよく見るんだ!」

剣と剣が交わる音がすると、ジャンヌと一緒に戦っている気持ちになる。
激しい打ち合いになっていくと、ロッタとプリムローズはどんどん引き込まれていった。

「やったぞ!
相手の剣が手から離れた」

「首もとに剣を当てて、勝負ありです。
踊っているかのような華麗な戦い方でしたわ」

ジャンヌ様の相手の男性を見ると、項垂うなだれて背中を丸めていた。

「あぁ見ると、人は見かけによらぬものだということを思い出す。
よく使われる言葉だが、本当にそうだね」

「うん、見た目だけでその人を判断できないですね。
期待倒れもいいところ、もうちょっと苦戦するものだと思いましたからー」

入れ違いで今度はプリムローズの番になるので、汗を拭いてロッタのとなりの席に座ってきた。

「勝てて良かったね。
プリムローズ嬢の番ですよ。
見てちょうだい、ロッタ。
エリアス殿下や両陛下までもが、あんなにも応援しておりますわ」

「王様から勲章くんしょうをいただいた。
超有名人は、声援の声の大きさは違うな」

「プリムローズ様、頑張って下さいませ~」

淑女しょくじょ教育の学園に在籍しているライラとフレデカが、戦うプリムローズへ熱い声援を送る。
そのあとに続き、前の級友たちも応援してくれた。

「「「銀の妖精姫さま、勝利してくださいませ~」」」

「ご声援、嬉しいですわ!」

この応援に気づくと彼女はにこやかに微笑ほほんで、右手を高々に挙げると持つ剣が陽に照らされてピカッと輝く。

「大声援を受けて、俺に負けるなんて可哀想にー」

『前に聞いたことがある。
気持ち悪い男と、いけすかないキザ男。
あの言葉と同じだわ』

彼女は上目遣うわめづかいで、対戦相手を美しい紫の瞳で見つめていた。

『おいおい怯えているのか。
可愛いじゃないか。
よく見なくても、美少女だ』

プリムローズを見て、ニタニタして鼻息がだんだんと荒くなる。

「俺は紳士的な騎士だ。
決して痛くしないと誓おう。
動かないで、ジッとしてね。ハァハァ…」

『自分で紳士という人ほど、怪しい者はいない。
目つきと態度も気持ち悪い』

戦いとは別の意味で、プリムローズには恐怖が迫ってきていた。

「戦う前から、私は負けたくありません」

「わかってくれないんだ。
一瞬で終わらせるから我慢してくれ」

互いに睨み付け合って、耳をすませて審判からの始まりの声を待つ。

「はじめーー!!」

同時に互いに動くが、プリムローズの踏み込みが早かった。

「うわーあ~!!」

若い男の大声が場内に響くと、シーンと静まる。

「集中して見ようとしている間、もう終わってしまった」

ジャンヌが、隣のロッタの腕を組んで大喜び。

「【人を見かけによらぬ】って言うでしょ。
あまり人を外見で、舐めないでいただきたいですわ」

転がっている彼に、令嬢らしくなく鼻で嗤う。
勝ち名乗りしてから、友人のいる席に堂々と歩いて行く。

「勝利、おめでとう。
遠くて素早くて、どうして勝てたのか分からなかった」

「次はロッタ先輩の番です。
応援するので、絶対に勝ってください」

私たちの中では1番背が高い彼女は、男性の中に入っても中背ちゅうぜより少しだけ高い類に入る。
対戦相手も同じぐらいの背丈、だが男性特有の筋肉がついている。

「男性は体質で、女性より筋肉があって羨ましい。
腹筋背筋を毎日してますが、あのようにつきませんもの。
うらやましくて、歯ぎしりしてしまいますわ!」

「令嬢が筋肉をつけるなって言われてました。
まだまだ鍛練は足りませんが、その分は俊敏に重点をおいてます」

「見てみて、ロッタ力強い。
剣で脇腹を叩いて、ぶっ飛ばしたわ」

「きゃあ~、強いじゃない。
ロッタ先輩の方が男らしい」

しゃべっていたら、三人娘は一回戦を無事に通過した。
大歓声の中でスクード公爵令息オスモ様や、チューダ侯爵アンテロ様も勝ち進んだようだ。

「いつ対戦していたんだ。
ブルムヘル伯爵令息の試合を見逃してしまったよ」

「まあまあ、ロッタ。
全員勝てて良かったじゃない」

「アンテロ様とオスモ様は、勝たれたそうですよ」

試合後と違った赤い顔をするふたりを、プリムローズはニタニタしながらこう言う。

    
    負けて終われば、そこで終わりの一発勝負。 
勝利に喜び笑う者たちの影には、敗者たちは負けた悔しさで肩を落とす。
試合後の休憩時間に、会場が見渡せる裏庭で男たちがたむろう。

「油断するなと忠告したのに、どうせ女の顔と胸と尻を見ていたんだろう」

「面目ない。
綺麗な子だったし、あんなに強いとは思わなかったんだ」

「まっ、あれは【人は見かけによらぬ】だったな」

ジャンヌに見とれてしまった彼は、小石を拾って壁に向けて投げつける。

「そちらは女の割には強かったようだけど、舐めて戦っていたんだろう」

「女の割に腕力あるなんて詐欺だ。
力を抜いて戦っていたら、あの通りやられちまった」

「勝てる勝負捨てて、負けた言い訳して情けない奴ら」

仲間内リーダー的な彼は、口は悪いが表情は柔和だった。
仲間の中で勝ち進んだうちの片割れが、これ以上は言うなと止めた。

「そこまでにしてやれ。
負けてガッカリしているのは、コイツらなんだぞ」

「そうそう、だから俺たちの分まで決勝に残ってくれよな」

「女の顔は見ないで戦え。
あと、留学生の女の子に気をつけろ」

プリムローズと同時間に試合していた友人に、細かく情報を教える。
無駄のない素早い動きに、とくに美少女だからと言い聞かす。

「プリムロード・クラランスって、名前だったような。
先読みするという意味の名前か。
噂だと、祖父が「戦の神」と言われているんだとさ」

「女の子らしい花の名前だった気がするけど、そんな名前だっただろうか?
爺さんが名付け親かもな」

「たいそう御立派なあだ名をつけられたもんだ。
戦の神様って言われて、爺さん恥ずかしくないのかよ」

他国から留学しに来た有名人でも、クラスが違うと名前も覚えようとするつもりもないようだ。
しかし、この場に彼女がいないのは幸いである。
お祖父様大好きが、もしもこれを聞いたらどうなっていたことだろう。

誓いあった仲間を半数失った彼らとは正反対に、名前を間違われているプリムローズ。ロッタとジャンヌの三人娘。
東と北を守る将軍の息子たち、オスモとアンテロ。
そして、ロッタの恩人である
ブルムヘル伯爵令息のカルヴィ。

次の試合では、果たしてこの中から何人通過できるのだろうか。

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