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霊山
16. 猫が犬になりました
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これ、私が力があるとハッタリかましてたら、とことん無茶ぶりしてくるヤツだ。最後は昭和の少年漫画みたく、気合いで超人覚醒しろとか言いかねない。
あのね、私は乗り方どころか、竜を見たのも触れたのもフィオが初めてなわけ。昨夜図らずも手の平の中に入れてもらって飛んだけど、超痛かったし、意識もぶっ飛んだ。
≪……何もせずに竜に乗るバカなんて初めて聞いたわ≫
猫が心底呆れたという面持ちで、ぼそりと呟く。
≪何かするの?≫
≪普通、魔術使うでしょ!≫
いや、断言されましても。
じゃあおじいさん教えてよ、と老人に話を振ったら、黙り込まれた。
≪もしもし?≫
≪…………使ったことないから、記憶しとらん≫
はぃい?
≪しがない教師って言ったじゃん! 魔猫と契約できて、魔法アイテム作れて、高級宝石じゃらじゃら付けてる、とんでも教師!≫
≪そーじゃ、ワシは教師であって竜騎士ではない。よって知らん!≫
何それ。逆ギレしてません?
じゃあ魔猫さんよ、と視線を移すと、片耳へにょりんこ猫がそっぽ向いた。
≪あんたが自力で崖を下りれば問題ないの!≫
≪高所恐怖症なんだってば!≫
自慢じゃないが、ジェット機以外は飛行機だって無理なんだぞ。 高山ヤギ的な崖の上り下りなんて論外。がらがらどん、と魔王様が落下する未来しか見えない!
老人がそこで、まぁまぁと取り成してきた。いや、あなたも猫も、どっちも竜の乗り方知らないっしょ。
≪身体強化の魔術なら解るぞ。――但し≫
はい、なんでございましょう。
≪肉体を駆使する仕組みと、崖の上り下りの基本は理解しとらんと無理じゃ≫
うん。そんな気がしてた。『強化』って呼んでる時点で、何か元がないといけない感満載だったし?
私の肉体の虚弱さと運動神経のなさはピカ一だ。単純に掛け算のような話なら、元の値がゼロに近いから、強化しても大して変化ないと思う。
≪芽芽ちゃん、ボクそぉっとそぉっと運ぶよ? 大きくなって、手の平に乗ってもらったら、たぶん……≫
≪大きくなった時点で見つかるぞ≫
老人がフィオの提案にストップかけた。気持ちはありがたいけど、私も反対させてもらう。昨夜の手の平乗り体験は、マジでトラウマなレベルだから。
≪じゃ、じゃあ。この大きさでも飛べるし。背中に乗ってもらって……≫
≪ワシの荷物と小娘の荷物と小娘本人をか? 竜も人を乗せて飛ぶのはかなりの訓練を要した筈じゃが、経験値は≫
≪…………ないです≫
フィオがしょぼんと肩を落とす。慰めつつも、私は内心ほっとした。フィオの肩に掴まって崖下りるの、めっちゃ不安定そうなんだもん。
≪小娘、あんたの名前は?≫
なぜだか猫が脈絡のない質問してきた。ちゃんと声に出して言うべきかな? まぁ結界も出れたし、なんだかんだで一杯助けてもらってるし。
≪私の名前は――≫
「めめ」
まだ管理小屋まで届かない地点だとは思うけど、出来るだけ小さな声で話す。横からフィオが漢字の説明も加えてくれたので、私が地面に『芽』の字を描いた。
≪面白いわ。芽芽ね、牙娘ね≫
いや、それ違うから。歯列矯正とっくに終わったから、八重歯出てないよ。
なんか誤解が生じた気がするが、まずはフィオとミーシュカの名前も伝えておく。意味とか正式名称云々は、後でいっかな。
≪わたしの名前も付けていいわ≫
ん? どゆこと?
≪その竜、名前付けたんでしょ? だから、わたしも付けなさい≫
ワケわからん。そいでもって、なぜに命令形?
≪煩いわね、さっさとする!≫
≪えーと。じゃあ、うーんと……正式名称が――≫
「イェカチェリーナ」
≪で、愛称が――≫
「カチューシャ」
≪とかは?≫
何か国語も駆使した頭脳明晰さで、北の大国の評価を政治的にも文化的にも爆上げした女帝の名前。そう説明すると、えらく満足されちまった。
≪ふふん。悪くないわね≫
名前よりも、『女帝』部分が気に入ってるんだよね? この猫、もしかしてSの極地の女王様なの?
≪次は姿ね。新しい外見をちょうだい≫
≪意味が解りません≫
≪猫の姿だとこの男の契約獣って露見しちゃうでしょ、だから別の姿に変わらなきゃならないの!≫
もう、なんでそのくらい解らないのよ、とか不満げにおっしゃってますけど。
私、契約獣自体をよー知らんからね。貴女が初めてですからね。つか、貴女、『ただの猫』って先ほど自己申告なさいましたよね? 設定変更、早っ。
しゃべる猫妖精から変身するなら、犬妖精とか? 黒っぽい緑色の長毛の超大型犬だ。
≪あ、キテレツな獣にしたら許さないわよ。醜いのも駄目。街にいそうな、美しくて上品な動物にしなさい≫
高級ペルシャ魔猫、注文多い。犬にするのはいいけど、緑の毛は変だって。えーと、白色はいる? この世界、このくらいの大型犬なら許容範囲?
そいでその耳はやっぱり片っぽ垂らすの? えーそれ可愛いのに。今度こそ両方ピンシャンと立ったのがご希望ですか。はあ、『今度こそ』って何だろう。
後から文句言われるのも面倒なので、先に細かく了解――というより言質を取っておいた。老人に教えられた方法で、頭の中のイメージを猫に被せて私の魔力を流していく。
≪あら、白も久々でいいわね≫
ちょっと待て、『久々』ってなんなんだ。さっきまで灰色の毛してたのに。
ツッコもうとしたら、真っ白いふさふさの毛並みに覆われたサモエド犬が目の前に誕生した。クー・シーの名残り、緑がかった黒蝶真珠のつぶらな瞳はチワワのよう。中身が頭蓋骨キック猫じゃなければ、ぜひともモフりたいぞ。
≪わたしはカチューシャ、白い犬!≫
上から目線猫、もといカチューシャが空中でひらりと一回転。フィオが≪すごいすごい≫と興奮している。確かに驚き桃の木山椒の木だよ、だけどさ。
≪で?≫
これで管理小屋をどう突破するの?
≪今から兵士たちの首、掻っ切ってくるわ≫
待て待て待て。何その物騒な作戦。
≪牙娘、竜に乗れないのよね? 身体強化できる体力、ないのよね? 崖、怖くて下りられないのよね?≫
で、当然のごとく残った選択肢がそれって、かなりおかしいと思う。
≪案ずるな、カチューシャは昨今の暗殺者よりも殺しの腕は遥かに上じゃ≫
いや、じーさん。問題はそこじゃないから。なぜそんなに腕が立つのかも、あんまし追及したくない。つか『ただの猫』に何させてたんだ、『しがない教師』よ。
スプラッタな猟奇殺人計画は保留にして、まずは管理小屋がこっそり見えるカーブ地点ギリギリまで移動する。
崖があるなら麓が見渡せるかなと期待したけど、下のトウヒが巨木すぎた。
≪ねぇ、今日一日ずっと気になってたんだけど……松ぼっくりの色、変じゃない?≫
≪……は? 普通じゃない。それよりも裏門突破よ!≫
犬になった猫が急かしてくる。これまで地面に落ちていた褐色の松ぼっくりも、枯れ松葉も、微妙にカラフルだった。枝に付いた若く長細い松ぼっくりも、赤かったり、黄色みが強かったり、青とか紫――って、天然クリスマスツリーじゃあるまいし。
もう少し首を伸ばして覗うと、道のどん突き当りに丸太小屋が建っていた。山を下りて里に出るには、あの丁字路を右に行くのね。通行止めするような踏切門が降りてるとか、見張りが道端に立ってるとかじゃないのね。
≪本来はそうすべきなんじゃが……もしかして、誰も来んから管理小屋でサボっておるのか……珍しいな、秋口ゆえに新人かの≫
老人によると、今は初秋。この国は欧米と同じで、秋が仕事や学校の年度始まりなのだそうだ。てことは、音さえ出さなけりゃ大丈夫なんじゃない?
≪いや、小屋の窓はそれなりの大きさ。ここから先、右は下った絶崖、左も上りの絶崖じゃ。隠れる場所が一切ない。一目でも見られたら終わりじゃろーが≫
≪じゃあ、カチューシャが先に行って、兵士にもふらせてあげるって選択肢は?≫
ふと思いついたことをサモエド犬もどきに言ってみる。だってさ、見張り兵士ってなんだかストレス溜めてそう。愛くるしい白い毛並みが尻尾振って寄ってきたら、胸キュンもので、モフること以外は考えないのじゃないかしら。
≪なにそれ。ばか?≫
≪だ、だって! 小屋の中にいるなら、ドアをカリカリやって入れてもらって、ご飯おねだりするとか、平和的な作戦でいけそうじゃないっ≫
あの丸太小屋、こっち側の窓も腰から上でしょ。マサイ族な眼のフィオ曰く、白っぽい薄布が掛かってて、中がはっきり見えないらしい。ってことは、カーテンもある。兵士が見ようと意識してなければ、気づかれないと思う。
≪ふむ。判り易く虐殺すると神殿に警戒されるからじゃな≫
じーさんよ、ポイントはそこじゃないんだけど。
≪そうね、魔道士が嗅ぎつけるから、殺し方も手間暇かけて、事後工作もしなきゃいけなかったわ≫
……もうこの二人に平和的解決法を説く自信なくなってきた。理由はそれでもいーよ、神殿を盾にしよう。サモエド犬が返り血に塗れた阿鼻叫喚地獄が現実にならなきゃ、文句ないです。
私はもふもふ党ラブリー路線推進派なのだ。フィオ、あの人たちのロクでもない会話は基本、耳にも脳にも入れなくていいからね。
そして山の神様、お願いですから三十四丁目の奇跡を起こしてください。
****************
※『三十四丁目の奇蹟』はクリスマスの定番映画。クリスマスツリーにするトウヒの木が沢山立っているので。
あのね、私は乗り方どころか、竜を見たのも触れたのもフィオが初めてなわけ。昨夜図らずも手の平の中に入れてもらって飛んだけど、超痛かったし、意識もぶっ飛んだ。
≪……何もせずに竜に乗るバカなんて初めて聞いたわ≫
猫が心底呆れたという面持ちで、ぼそりと呟く。
≪何かするの?≫
≪普通、魔術使うでしょ!≫
いや、断言されましても。
じゃあおじいさん教えてよ、と老人に話を振ったら、黙り込まれた。
≪もしもし?≫
≪…………使ったことないから、記憶しとらん≫
はぃい?
≪しがない教師って言ったじゃん! 魔猫と契約できて、魔法アイテム作れて、高級宝石じゃらじゃら付けてる、とんでも教師!≫
≪そーじゃ、ワシは教師であって竜騎士ではない。よって知らん!≫
何それ。逆ギレしてません?
じゃあ魔猫さんよ、と視線を移すと、片耳へにょりんこ猫がそっぽ向いた。
≪あんたが自力で崖を下りれば問題ないの!≫
≪高所恐怖症なんだってば!≫
自慢じゃないが、ジェット機以外は飛行機だって無理なんだぞ。 高山ヤギ的な崖の上り下りなんて論外。がらがらどん、と魔王様が落下する未来しか見えない!
老人がそこで、まぁまぁと取り成してきた。いや、あなたも猫も、どっちも竜の乗り方知らないっしょ。
≪身体強化の魔術なら解るぞ。――但し≫
はい、なんでございましょう。
≪肉体を駆使する仕組みと、崖の上り下りの基本は理解しとらんと無理じゃ≫
うん。そんな気がしてた。『強化』って呼んでる時点で、何か元がないといけない感満載だったし?
私の肉体の虚弱さと運動神経のなさはピカ一だ。単純に掛け算のような話なら、元の値がゼロに近いから、強化しても大して変化ないと思う。
≪芽芽ちゃん、ボクそぉっとそぉっと運ぶよ? 大きくなって、手の平に乗ってもらったら、たぶん……≫
≪大きくなった時点で見つかるぞ≫
老人がフィオの提案にストップかけた。気持ちはありがたいけど、私も反対させてもらう。昨夜の手の平乗り体験は、マジでトラウマなレベルだから。
≪じゃ、じゃあ。この大きさでも飛べるし。背中に乗ってもらって……≫
≪ワシの荷物と小娘の荷物と小娘本人をか? 竜も人を乗せて飛ぶのはかなりの訓練を要した筈じゃが、経験値は≫
≪…………ないです≫
フィオがしょぼんと肩を落とす。慰めつつも、私は内心ほっとした。フィオの肩に掴まって崖下りるの、めっちゃ不安定そうなんだもん。
≪小娘、あんたの名前は?≫
なぜだか猫が脈絡のない質問してきた。ちゃんと声に出して言うべきかな? まぁ結界も出れたし、なんだかんだで一杯助けてもらってるし。
≪私の名前は――≫
「めめ」
まだ管理小屋まで届かない地点だとは思うけど、出来るだけ小さな声で話す。横からフィオが漢字の説明も加えてくれたので、私が地面に『芽』の字を描いた。
≪面白いわ。芽芽ね、牙娘ね≫
いや、それ違うから。歯列矯正とっくに終わったから、八重歯出てないよ。
なんか誤解が生じた気がするが、まずはフィオとミーシュカの名前も伝えておく。意味とか正式名称云々は、後でいっかな。
≪わたしの名前も付けていいわ≫
ん? どゆこと?
≪その竜、名前付けたんでしょ? だから、わたしも付けなさい≫
ワケわからん。そいでもって、なぜに命令形?
≪煩いわね、さっさとする!≫
≪えーと。じゃあ、うーんと……正式名称が――≫
「イェカチェリーナ」
≪で、愛称が――≫
「カチューシャ」
≪とかは?≫
何か国語も駆使した頭脳明晰さで、北の大国の評価を政治的にも文化的にも爆上げした女帝の名前。そう説明すると、えらく満足されちまった。
≪ふふん。悪くないわね≫
名前よりも、『女帝』部分が気に入ってるんだよね? この猫、もしかしてSの極地の女王様なの?
≪次は姿ね。新しい外見をちょうだい≫
≪意味が解りません≫
≪猫の姿だとこの男の契約獣って露見しちゃうでしょ、だから別の姿に変わらなきゃならないの!≫
もう、なんでそのくらい解らないのよ、とか不満げにおっしゃってますけど。
私、契約獣自体をよー知らんからね。貴女が初めてですからね。つか、貴女、『ただの猫』って先ほど自己申告なさいましたよね? 設定変更、早っ。
しゃべる猫妖精から変身するなら、犬妖精とか? 黒っぽい緑色の長毛の超大型犬だ。
≪あ、キテレツな獣にしたら許さないわよ。醜いのも駄目。街にいそうな、美しくて上品な動物にしなさい≫
高級ペルシャ魔猫、注文多い。犬にするのはいいけど、緑の毛は変だって。えーと、白色はいる? この世界、このくらいの大型犬なら許容範囲?
そいでその耳はやっぱり片っぽ垂らすの? えーそれ可愛いのに。今度こそ両方ピンシャンと立ったのがご希望ですか。はあ、『今度こそ』って何だろう。
後から文句言われるのも面倒なので、先に細かく了解――というより言質を取っておいた。老人に教えられた方法で、頭の中のイメージを猫に被せて私の魔力を流していく。
≪あら、白も久々でいいわね≫
ちょっと待て、『久々』ってなんなんだ。さっきまで灰色の毛してたのに。
ツッコもうとしたら、真っ白いふさふさの毛並みに覆われたサモエド犬が目の前に誕生した。クー・シーの名残り、緑がかった黒蝶真珠のつぶらな瞳はチワワのよう。中身が頭蓋骨キック猫じゃなければ、ぜひともモフりたいぞ。
≪わたしはカチューシャ、白い犬!≫
上から目線猫、もといカチューシャが空中でひらりと一回転。フィオが≪すごいすごい≫と興奮している。確かに驚き桃の木山椒の木だよ、だけどさ。
≪で?≫
これで管理小屋をどう突破するの?
≪今から兵士たちの首、掻っ切ってくるわ≫
待て待て待て。何その物騒な作戦。
≪牙娘、竜に乗れないのよね? 身体強化できる体力、ないのよね? 崖、怖くて下りられないのよね?≫
で、当然のごとく残った選択肢がそれって、かなりおかしいと思う。
≪案ずるな、カチューシャは昨今の暗殺者よりも殺しの腕は遥かに上じゃ≫
いや、じーさん。問題はそこじゃないから。なぜそんなに腕が立つのかも、あんまし追及したくない。つか『ただの猫』に何させてたんだ、『しがない教師』よ。
スプラッタな猟奇殺人計画は保留にして、まずは管理小屋がこっそり見えるカーブ地点ギリギリまで移動する。
崖があるなら麓が見渡せるかなと期待したけど、下のトウヒが巨木すぎた。
≪ねぇ、今日一日ずっと気になってたんだけど……松ぼっくりの色、変じゃない?≫
≪……は? 普通じゃない。それよりも裏門突破よ!≫
犬になった猫が急かしてくる。これまで地面に落ちていた褐色の松ぼっくりも、枯れ松葉も、微妙にカラフルだった。枝に付いた若く長細い松ぼっくりも、赤かったり、黄色みが強かったり、青とか紫――って、天然クリスマスツリーじゃあるまいし。
もう少し首を伸ばして覗うと、道のどん突き当りに丸太小屋が建っていた。山を下りて里に出るには、あの丁字路を右に行くのね。通行止めするような踏切門が降りてるとか、見張りが道端に立ってるとかじゃないのね。
≪本来はそうすべきなんじゃが……もしかして、誰も来んから管理小屋でサボっておるのか……珍しいな、秋口ゆえに新人かの≫
老人によると、今は初秋。この国は欧米と同じで、秋が仕事や学校の年度始まりなのだそうだ。てことは、音さえ出さなけりゃ大丈夫なんじゃない?
≪いや、小屋の窓はそれなりの大きさ。ここから先、右は下った絶崖、左も上りの絶崖じゃ。隠れる場所が一切ない。一目でも見られたら終わりじゃろーが≫
≪じゃあ、カチューシャが先に行って、兵士にもふらせてあげるって選択肢は?≫
ふと思いついたことをサモエド犬もどきに言ってみる。だってさ、見張り兵士ってなんだかストレス溜めてそう。愛くるしい白い毛並みが尻尾振って寄ってきたら、胸キュンもので、モフること以外は考えないのじゃないかしら。
≪なにそれ。ばか?≫
≪だ、だって! 小屋の中にいるなら、ドアをカリカリやって入れてもらって、ご飯おねだりするとか、平和的な作戦でいけそうじゃないっ≫
あの丸太小屋、こっち側の窓も腰から上でしょ。マサイ族な眼のフィオ曰く、白っぽい薄布が掛かってて、中がはっきり見えないらしい。ってことは、カーテンもある。兵士が見ようと意識してなければ、気づかれないと思う。
≪ふむ。判り易く虐殺すると神殿に警戒されるからじゃな≫
じーさんよ、ポイントはそこじゃないんだけど。
≪そうね、魔道士が嗅ぎつけるから、殺し方も手間暇かけて、事後工作もしなきゃいけなかったわ≫
……もうこの二人に平和的解決法を説く自信なくなってきた。理由はそれでもいーよ、神殿を盾にしよう。サモエド犬が返り血に塗れた阿鼻叫喚地獄が現実にならなきゃ、文句ないです。
私はもふもふ党ラブリー路線推進派なのだ。フィオ、あの人たちのロクでもない会話は基本、耳にも脳にも入れなくていいからね。
そして山の神様、お願いですから三十四丁目の奇跡を起こしてください。
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※『三十四丁目の奇蹟』はクリスマスの定番映画。クリスマスツリーにするトウヒの木が沢山立っているので。
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