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九重の章 京極御堂 11
~御殿山~ 6
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上東門院の病は、一向に良くならなかった。
頼義が国府に入り、国分寺と総社、そして在庁官人たちに『是非に』と求められて、鹽竈神社に詣でた後にようやく一息ついた頃、都より勅使が下ってきた。
勅は、永承七年(一〇五ニ年)五月六日をもって発せられた、上東門院の病平癒を祈願した、大赦の令を伝えるものだった。
今回の大赦は、『非常赦』である。
非常赦とは、謀反人をはじめとして、一切の罪が赦されるものをいう。
陸奥守着任と同時に、鎮守府将軍兼務の命を受けていた頼義は、出鼻をくじかれる形となった。
当然、安倍頼良を中心とする安倍氏の今回の罪(帝の兵に弓を向けた罪)は、この大赦によって、赦されることとなったからである。
陸奥権守藤原説貞を正使として、副使に曰理権大夫藤原経清、随員に伊具郡司平永衡らを従えて、衣川の安倍館に籠居していた安倍頼良に、大赦が伝えられた。
北面して平伏した頼良を見下ろして、説貞は赦免の沙汰を伝えた。
「此度は、畏れ多くも今上帝におかれては、上東門院様ご病気平癒を祈願して、大赦の令を発せ奉られた。したがって、これをもって従五位下安倍安太夫頼良の罪、これを赦免と致す。」
「ありがたき幸せ。」
頼良は、下された符を頂き、さらに低頭した。
--そして。
「畏れながら、ご使者様にお願い申し上げます。」
頭を低くしたまま、頼良が言上する。
「赦す。」
経清が、一旦説貞の方を向き、権守が頷くのを確認して言った。
「此度は、帝のご寛恕を賜り、大罪をお赦し頂けるとのこと、誠に有り難き幸せにございます。このことは、陸奥守様の一方ならぬご配慮があってのことと心得ます。つきましては、この安太夫、陸奥守様と字は違えど同じ名を名乗るは僭越至極。これより、頼時と名を改めさせて頂き、我が身は言うに及ばず、一族郎党をあげて陸奥守様にご奉公させて頂く所存にございます。」
そう言って、当主をはじめすべての者が平伏した。
「安太夫殿のご存念、しかと承った。国府に帰着したのち、国守様にご奏上つかまつろう。」
説貞は、そう言葉を下すと、その場から退出した。
その際、平伏し続ける頼良の烏帽子の載った頭を見下しながら、小さく『ふっ。俘囚ごときが・・・。』と漏らした。
頼義が国府に入り、国分寺と総社、そして在庁官人たちに『是非に』と求められて、鹽竈神社に詣でた後にようやく一息ついた頃、都より勅使が下ってきた。
勅は、永承七年(一〇五ニ年)五月六日をもって発せられた、上東門院の病平癒を祈願した、大赦の令を伝えるものだった。
今回の大赦は、『非常赦』である。
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陸奥守着任と同時に、鎮守府将軍兼務の命を受けていた頼義は、出鼻をくじかれる形となった。
当然、安倍頼良を中心とする安倍氏の今回の罪(帝の兵に弓を向けた罪)は、この大赦によって、赦されることとなったからである。
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北面して平伏した頼良を見下ろして、説貞は赦免の沙汰を伝えた。
「此度は、畏れ多くも今上帝におかれては、上東門院様ご病気平癒を祈願して、大赦の令を発せ奉られた。したがって、これをもって従五位下安倍安太夫頼良の罪、これを赦免と致す。」
「ありがたき幸せ。」
頼良は、下された符を頂き、さらに低頭した。
--そして。
「畏れながら、ご使者様にお願い申し上げます。」
頭を低くしたまま、頼良が言上する。
「赦す。」
経清が、一旦説貞の方を向き、権守が頷くのを確認して言った。
「此度は、帝のご寛恕を賜り、大罪をお赦し頂けるとのこと、誠に有り難き幸せにございます。このことは、陸奥守様の一方ならぬご配慮があってのことと心得ます。つきましては、この安太夫、陸奥守様と字は違えど同じ名を名乗るは僭越至極。これより、頼時と名を改めさせて頂き、我が身は言うに及ばず、一族郎党をあげて陸奥守様にご奉公させて頂く所存にございます。」
そう言って、当主をはじめすべての者が平伏した。
「安太夫殿のご存念、しかと承った。国府に帰着したのち、国守様にご奏上つかまつろう。」
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