日高見の空舞う鷹と天翔る龍 地龍抱鷹編

西八萩 鐸磨

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白銀の章 阿久利川9

~蛇田山~ 9

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◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 経清らの営地から帰ってきた小柄な男を再び呼んだ光貞は、次の指示を告げた。

「ご苦労であった。何か聞かれたか?」

「何ゆえ、賊が俘囚だと分かったのかと。」

「なんと答えた?」

「その場に舞草刀が残されていたと。・・それと、賊の逃亡した方角はどちらかと聞かれました。」

「そうか、でその問にはなんと答えた?」

「川下の方へ去っていく姿を見たものいると。」

「うむ。」

「光貞様は、俘囚の謀反を疑っておいでだとも言いました。」

「う~む、それは早まったな。・・まあ、良いか。お前にもう一つ頼みがある。」

「申し訳ございませんでした。」

「いや、良い。いずれ分かることだ。・・・それで、頼みというのはな。国守様の郎党の誰かに取り入って、こう伝えよ。『陸奥権守むつごんのかみ藤原朝臣説貞ふじわらあそんときさだの子、光貞、並びに元貞の野営に、の賊が侵入し、人馬を殺傷したようだ。』と。」

「・・・承知いたしました。」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「国守様、ご就寝のところ申し訳ございませぬ。」
 
 寝屋で既に横になっていた頼義に室の外から声をかけるものがいた。

「何ごとだ?」

 姿勢はそのままに、頼義は応えた。

「川向うの営地にて、騒ぎがありました。」

 深い土色の直垂を着た、まるで沈毅ちんきが着物を着て歩いているかのような漢ーーー修理少進しゅりしょうじょう藤原景通ふじわらのかげみちが、朝餉あさげの用意が出来たことを告げるかのごとく答えた。

「騒ぎとな?そのようなことで、一々この夜更けに儂の眠りを妨げるとは、どれほどの騒ぎなのじゃ?」

 頼義の姿勢は変わらない。

「賊が権守様の嫡男、光貞殿の野営に侵入し、人馬を殺傷しました。賊は、俘囚とのことです。」

 こちらも、その声音は変わらない。

「俘囚だと!」

 頼義は、がばと起き上がり、胡座をかくと、「詳しく述べよ。」と、景通を室へ招き入れた。

 景通の述べる所によると、光貞の野営で人馬を殺傷される騒ぎがあたっと報告するものがおり、手のものを使って調べさせると、確かに光貞の営地には明々と灯火が灯されていて、甲冑を身につけた郎党達が立ち働いているのがすぐに判ったという。さらに、別の手のものは曰理権太夫の配下のものの話として、騒ぎをおこしたのは、営地に侵入した賊で、その賊はどうやら俘囚らしいという噂を掴んでいた。


 一部始終を聞き終えた頼義は、すぐに権守親子を呼び出すように、景通に命じた。







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