43 / 49
41.イシュタル神
しおりを挟む
**************************
・・・紅茶の香りがする。
跪き、両手を組んで目を瞑り、祈りを捧げる姿勢をとっていた俺は、薄っすらと目を開けた。
あたりはまばゆい光に満ちた白い空間・・・床も天井も、その境界の見分けの付かない空間。
・・・じゃないな、普通に部屋じゃん!
直線の多いデザインの中に、丸みを帯びた形をしているソファー・・・。
木製のローテーブルの上には、紅茶のセット。
無駄な装飾のない、シンプルで機能的なデザインの家具。
それらの家具は、天然木を使用した温かみのある素材感を重視したもので、棚や白い壁には可愛い雑貨が飾ってある。
ナチュラルな自然色を基調とした中に、カラフルな色使いのものが要所に配置されている。
『ザッツ北欧スタイル』みたいな?
「いらっしゃい。どう、気に入った?」
部屋のインテリアに気を取られていると、始めに目に入ったソファーの方から声がした。
艶やかな黄金色の長い髪にサファイヤの様なブルーアイ、透けるように白い肌の美少女がティーカップを片手に小首をかしげている。
背は低く、プロポーションは・・・まあ普通か・・。
「だから、人のことを勝手に値踏みしないの!」
「なんで貴女がいるんですか?!」
紛れもなく、俺をこの世界に放り込んだ張本人・・・イナンナがそこにいた。
「あのさあ、わたしだけ呼び捨てってひどくない?」
「他人の心を読まないでください!出会ったときから変わってないんだからいいじゃないですか」
「だってさあ、スケベ爺やニンフルサグちゃんには『神さま』付けじゃない」
イナンナがプクぅ~と頬をふくらませる。
「お取り込み中のところ、申し訳ないんだけどさ。どなた?」
ちょんちょんと、俺の右肩を指でつついてスザンヌさんが聞いてきた。
「あー、え~と・・イナンナ神さま。・・・・・・エーーーーー!!!!な、なんでいるんですかあー!?」
「セイヤくん、ほ、ほんとに本物?」(エル)
「ニャハハハ、こんにちわ~!」(コリン)
「はワワワ」(アイリス)
「にゃ~あ。」(ライアン)
なぜか俺の後ろには、全員がいた。(サーシャさまと司祭長さまはいないけど)
そしてエルは無意識の『くん』呼びだ。(なんか嬉しい)
「めんどうだから、まとめて呼んじゃった」
イナンナがぺろっと小さな舌を出す。
なんにも動じてないのが2名と1匹。
動揺しまくりなのが2名。
・・頭痛くなってきた。
「イロイロと言いたいことは山ほどあるんですけど、とりあえず・・なんでいるの?ここってイシュタル神さまの神殿だよね?」
「だって、わたしがイシュタル神だもの」
「はあ?」
◇◇◇◇◇◇
「それで?どうしてイナンナが、イシュタル神殿にいるんですか?」
みんながそれぞれに、ソファーに収まったのを見届けて、俺はイナンナ神さま(これで文句無いだろ?)の向かい側から、改めて問い質した。
「あら~、ライアンちゃん久しぶりね~。元気にしてたあ?」
「ごまかさない!」
「ふぁい」
イナンナ神さまが両手を膝の上において、うつむく。
「で?」
「・・・だからあ、わたしがイシュタル神なの!」
「またまたあ!貴女には、イナンナの町の神殿があるでしょ?」
「あそこは、わたしのじゃないもん!」
「じゃあ、誰のですか?!」
「それは・・・」
右手の人差し指で、自分の腿の上にのの字を書いている。
ハッキリせんなあ。
「とにかく、わたしはイナンナでもあるし、イシュタルでもあるの!愛と美の女神にして、戦と豊穣、王権を司る神イシュタルがわたしなの!」
両手を握りしめて、上目遣いでキッと俺のことを睨んでくる。
なんなんだよ、この必死さは?
「ハイハイ、わかりました。そういうことにしてあげしましょう」
「(なんで上から目線・・・)」
「はあ?」
「いえ・・」
「ゴホン・・・『イナンナ神さま=イシュタル神さま』であるとして、イナンナの町の神殿が貴女のじゃないというのはどういう訳ですか?」
どうも煮え切らない態度のイナンナ神さまに、俺は語気を強めた。
「あそこは元々イナンナの町じゃないというか、なんというか・・そのお・・・」
「ハッキリ喋る!」
「は、はい!」
俺の声に、背筋をピッと伸ばした。
「あの町は元々、姉さんの町なの」
「お姉さん?」
「そう、わたしの実の姉であるエレシュキガルの町よ」
「冥界神エレシュキガル?!」
本物の女神様を目の前にして、固まっていたアイリスが声を上げる。
「『冥界の女王』または、『日没するところの女王』とも呼ばれるあの?」
腕を組んだまま話を聞いていた、スザンヌさんが言った。
「そうよ、死と闇を司る冥界神が姉のエレシュキガル。生と光を司るのがわたしイシュタル。そして、全てをあまねく照らし正義と恵みをもたらすのが兄の太陽神シャマシュよ」
「つまり・・・このハルバト国にはイシュタル神さまとエレシュキガル神さまの神殿があり、エト国にはシャマシュ神さまの神殿がある、ということね」
いつもの冷静さを取り戻した、エルが頷く。
神さま色々出てきて、わけわからんな・・。
「それで、話を戻すけど。なんで本当はエレシュキガルの町なのに、みんなはイナンナの町って言っているわけ?なんか偽らなければならない理由とか・・・あ!なあ、エレシュキガル神さまの管轄ってどこまで?死と闇ってもしかして?」
「そうね、今回のイナンナの町での一件に、関係アリアリでしょうね」
俺の思いつきにスザンヌさんが同意し、一斉にみんながイナンナ神さまの顔を見た。
「さ、さあ・・・どうかしらね?か、関係あるかもしれないわね・・」
思いっきり動揺するイナンナ神さま。
「エレシュキガル神さまは、どういうつもりであんなことを?」
「わ、わたしは知らないわよ!エレ姉さんが勝手にやっていることだもの!」
「「「「「ほぉおーーーーーーーう・・・」」」」」
全員でジト目でみつめる。
「し、知らないって!ほんとになんにも知らないって!!」
明らかにおかしい。
「・・・・・いいでしょう。この件はひとまず置いておいて、俺とコリンの2人以外のみんなを、ここへ召喚だことなんですけど?」
「え?ええ・・」
急に追求の矛先を変えた俺に、イナンナ神さまは、別な意味で戸惑っている。
「理由は?」
「(・・どうだから)」
「声が小さい!」
「めんどうだから?」
両手を胸の前で合わせて、上目遣いでソロ~と俺のことを見上げてくる。
なんで疑問形・・・。
「そういういい加減なところは、貴女らしいっちゃ、あなたらしいですけど・・」
チョイチョイ。
「ん?」
俺はイナンナ神さまを手招きして、顔を寄せてきた彼女の右耳へ、口を手で覆いながら近づけた。
「(エルやアイリスは、他の神さまから神託を頂いているからギリギリ良いとしても、あの人はマズくないですか?)」
小声で喋りながら、相変わらず腕を組んだままのスザンヌさんをチラ見する。
「(だいじょうぶ。色々不安や不満はあるでしょうけど、信用できる子だっていうのは保証するから、これからも一緒にいてあげて?)」
イナンナ神さまは小さな口に手をやって、プッと微笑ったあと、俺と同じ様にチラ見しながら言った。
「ちょっとあんたたち!聞こえてるわよ!!だいたい、わざとらしい仕草するんじゃないわよ!!!」
コソコソしている俺たちに、スザンヌさんが顎を引いて睨めつけながら低い声で言った。
「「へへっ」」
「『へへっ』じゃないわよ!まったく!!」
二人して首をすくめていると、スザンヌさんは呆れ顔で吐き捨てるように言った。
「・・まあそれはともかく、どうやらスザンヌさんが一緒に行動するようになるってことは、他のみんなもそうだけど、はじめっから織り込み済みだったんでしょう?『めんどうくさい』とかなんとか適当にごまかしてるけど」
俺がジト目で見つめると、イナンナ神さまは視線をそらす。
「ライアンちゃ~ん、寝てばっかりね~。おなかすいてな~い?」
「ミャ~あ~ぅ」
「さっきお昼ご飯食べてきたばっかです」
話もそらそうとするのを、バッサリ切り捨てる。
どうもなあ・・神様たちが、ほんとうのこと全て教えてくれているとは思わないけどさ(そもそも俺のことを利用するために召喚だんだし)、でもなんか隠し事が多い気がしてならない。
ニンフルサグ神さまはともかく、イナンナ神さまもエア神さまも、いい加減さ爆発しているしなあ・・ハア。
「聞いても無駄そうなので、とっとと先進みましょう?」
小さくため息をついたあと、俺は紅茶をすすってから言った。
「もう、せっかちネエ」
イナンナ神さまが唇を尖らせる。
「先って?」
エルがティーカップをソーサーに置いて、聞いてきた。
コリン以外の全員が俺のことを見る。
「加護を授けてくれるのさ」
◇◇◇◇◇◇◇◇
「おっけ~!みんな目を開けてもいいわよ~」
体の内側から何かを放射して、ほんのりと暖かい感覚。
久しぶりの感覚だ。
目を開けると、全身を包む光は消えている。
『にヘラ~』と笑っているコリン以外が自分の身体をキョロキョロ見ている。
「ステータスは、地上に戻ってから各自で確認してね」
イナンナ神さまがニッコリ微笑んで言った。
「あら、神界で見ちゃいけないの?」
スザンヌさんが当然のように聞いている。
「え?ええ。もうそろそろ戻ってもらわなきゃいけない時間だから・・」
「「「「ほんとにーーー?」」」」
「コリンは帰りたくな~い。だって、ここ居心地いいも~ん!」
約1名を除き、ジト目でイナンナ神さまを見る。
「これ以上余計なことを聞かれるのが、イヤなだけじゃないんですか?」:俺
「イヤっていうよりかは、マズイって感じ?」:スザンヌさん
「マズイというのは、都合が悪いということね」:エル
「都合が悪いのは、後ろめたいのかな・・?」:アイリス
「ニゃハハあ~」:以下略
「そ、そんなことはないわよ。ほんとに時間がないんだから」
「わかりました」
「あ! そ、それからね。エレシュキガルの町には、しばらくはまだ行かないほうが良いと思うわ。できれば、もう少し他の国を見てまわった方が良いと思うの」
狼狽えるイナンナ神さまに諦めて、俺が立ち上がろうとしたところで、今度は遠慮がちに言ってきた。
「それはアレですか?まだまだ俺の実力では、邪神たちには敵わないということですか?それとも、そこに行っちゃうと、都合の悪いこととかがバレちゃうからですか?」
俺は、少し意地の悪い言い方をしてみた。
「も、もちろん、万が一ということがないように、まだまだ力をつけて貰う必要があるからよ。それに、あなたに会いたがっている神々は他にもたくさんいるし」
「ほ~そうですか、ワカリマシタ。そういうことにしときましょう・・・でも、成り行きでどうなるか分かりませんけどね」
イナンナ神さまの顔が、一瞬明るくなってすぐに固まる。
「あ、あの・・」
「さあ~!じゃあ戻してください。みんなもいいよねー?」
「「「「はーい!」」」」
一斉に、イナンナ神さまの顔を見る。
「ハアー・・・。じゃあいきます」
イナンナ神さまが右腕を一振りすると、俺たちは光に包まれた。
**************************
・・・紅茶の香りがする。
跪き、両手を組んで目を瞑り、祈りを捧げる姿勢をとっていた俺は、薄っすらと目を開けた。
あたりはまばゆい光に満ちた白い空間・・・床も天井も、その境界の見分けの付かない空間。
・・・じゃないな、普通に部屋じゃん!
直線の多いデザインの中に、丸みを帯びた形をしているソファー・・・。
木製のローテーブルの上には、紅茶のセット。
無駄な装飾のない、シンプルで機能的なデザインの家具。
それらの家具は、天然木を使用した温かみのある素材感を重視したもので、棚や白い壁には可愛い雑貨が飾ってある。
ナチュラルな自然色を基調とした中に、カラフルな色使いのものが要所に配置されている。
『ザッツ北欧スタイル』みたいな?
「いらっしゃい。どう、気に入った?」
部屋のインテリアに気を取られていると、始めに目に入ったソファーの方から声がした。
艶やかな黄金色の長い髪にサファイヤの様なブルーアイ、透けるように白い肌の美少女がティーカップを片手に小首をかしげている。
背は低く、プロポーションは・・・まあ普通か・・。
「だから、人のことを勝手に値踏みしないの!」
「なんで貴女がいるんですか?!」
紛れもなく、俺をこの世界に放り込んだ張本人・・・イナンナがそこにいた。
「あのさあ、わたしだけ呼び捨てってひどくない?」
「他人の心を読まないでください!出会ったときから変わってないんだからいいじゃないですか」
「だってさあ、スケベ爺やニンフルサグちゃんには『神さま』付けじゃない」
イナンナがプクぅ~と頬をふくらませる。
「お取り込み中のところ、申し訳ないんだけどさ。どなた?」
ちょんちょんと、俺の右肩を指でつついてスザンヌさんが聞いてきた。
「あー、え~と・・イナンナ神さま。・・・・・・エーーーーー!!!!な、なんでいるんですかあー!?」
「セイヤくん、ほ、ほんとに本物?」(エル)
「ニャハハハ、こんにちわ~!」(コリン)
「はワワワ」(アイリス)
「にゃ~あ。」(ライアン)
なぜか俺の後ろには、全員がいた。(サーシャさまと司祭長さまはいないけど)
そしてエルは無意識の『くん』呼びだ。(なんか嬉しい)
「めんどうだから、まとめて呼んじゃった」
イナンナがぺろっと小さな舌を出す。
なんにも動じてないのが2名と1匹。
動揺しまくりなのが2名。
・・頭痛くなってきた。
「イロイロと言いたいことは山ほどあるんですけど、とりあえず・・なんでいるの?ここってイシュタル神さまの神殿だよね?」
「だって、わたしがイシュタル神だもの」
「はあ?」
◇◇◇◇◇◇
「それで?どうしてイナンナが、イシュタル神殿にいるんですか?」
みんながそれぞれに、ソファーに収まったのを見届けて、俺はイナンナ神さま(これで文句無いだろ?)の向かい側から、改めて問い質した。
「あら~、ライアンちゃん久しぶりね~。元気にしてたあ?」
「ごまかさない!」
「ふぁい」
イナンナ神さまが両手を膝の上において、うつむく。
「で?」
「・・・だからあ、わたしがイシュタル神なの!」
「またまたあ!貴女には、イナンナの町の神殿があるでしょ?」
「あそこは、わたしのじゃないもん!」
「じゃあ、誰のですか?!」
「それは・・・」
右手の人差し指で、自分の腿の上にのの字を書いている。
ハッキリせんなあ。
「とにかく、わたしはイナンナでもあるし、イシュタルでもあるの!愛と美の女神にして、戦と豊穣、王権を司る神イシュタルがわたしなの!」
両手を握りしめて、上目遣いでキッと俺のことを睨んでくる。
なんなんだよ、この必死さは?
「ハイハイ、わかりました。そういうことにしてあげしましょう」
「(なんで上から目線・・・)」
「はあ?」
「いえ・・」
「ゴホン・・・『イナンナ神さま=イシュタル神さま』であるとして、イナンナの町の神殿が貴女のじゃないというのはどういう訳ですか?」
どうも煮え切らない態度のイナンナ神さまに、俺は語気を強めた。
「あそこは元々イナンナの町じゃないというか、なんというか・・そのお・・・」
「ハッキリ喋る!」
「は、はい!」
俺の声に、背筋をピッと伸ばした。
「あの町は元々、姉さんの町なの」
「お姉さん?」
「そう、わたしの実の姉であるエレシュキガルの町よ」
「冥界神エレシュキガル?!」
本物の女神様を目の前にして、固まっていたアイリスが声を上げる。
「『冥界の女王』または、『日没するところの女王』とも呼ばれるあの?」
腕を組んだまま話を聞いていた、スザンヌさんが言った。
「そうよ、死と闇を司る冥界神が姉のエレシュキガル。生と光を司るのがわたしイシュタル。そして、全てをあまねく照らし正義と恵みをもたらすのが兄の太陽神シャマシュよ」
「つまり・・・このハルバト国にはイシュタル神さまとエレシュキガル神さまの神殿があり、エト国にはシャマシュ神さまの神殿がある、ということね」
いつもの冷静さを取り戻した、エルが頷く。
神さま色々出てきて、わけわからんな・・。
「それで、話を戻すけど。なんで本当はエレシュキガルの町なのに、みんなはイナンナの町って言っているわけ?なんか偽らなければならない理由とか・・・あ!なあ、エレシュキガル神さまの管轄ってどこまで?死と闇ってもしかして?」
「そうね、今回のイナンナの町での一件に、関係アリアリでしょうね」
俺の思いつきにスザンヌさんが同意し、一斉にみんながイナンナ神さまの顔を見た。
「さ、さあ・・・どうかしらね?か、関係あるかもしれないわね・・」
思いっきり動揺するイナンナ神さま。
「エレシュキガル神さまは、どういうつもりであんなことを?」
「わ、わたしは知らないわよ!エレ姉さんが勝手にやっていることだもの!」
「「「「「ほぉおーーーーーーーう・・・」」」」」
全員でジト目でみつめる。
「し、知らないって!ほんとになんにも知らないって!!」
明らかにおかしい。
「・・・・・いいでしょう。この件はひとまず置いておいて、俺とコリンの2人以外のみんなを、ここへ召喚だことなんですけど?」
「え?ええ・・」
急に追求の矛先を変えた俺に、イナンナ神さまは、別な意味で戸惑っている。
「理由は?」
「(・・どうだから)」
「声が小さい!」
「めんどうだから?」
両手を胸の前で合わせて、上目遣いでソロ~と俺のことを見上げてくる。
なんで疑問形・・・。
「そういういい加減なところは、貴女らしいっちゃ、あなたらしいですけど・・」
チョイチョイ。
「ん?」
俺はイナンナ神さまを手招きして、顔を寄せてきた彼女の右耳へ、口を手で覆いながら近づけた。
「(エルやアイリスは、他の神さまから神託を頂いているからギリギリ良いとしても、あの人はマズくないですか?)」
小声で喋りながら、相変わらず腕を組んだままのスザンヌさんをチラ見する。
「(だいじょうぶ。色々不安や不満はあるでしょうけど、信用できる子だっていうのは保証するから、これからも一緒にいてあげて?)」
イナンナ神さまは小さな口に手をやって、プッと微笑ったあと、俺と同じ様にチラ見しながら言った。
「ちょっとあんたたち!聞こえてるわよ!!だいたい、わざとらしい仕草するんじゃないわよ!!!」
コソコソしている俺たちに、スザンヌさんが顎を引いて睨めつけながら低い声で言った。
「「へへっ」」
「『へへっ』じゃないわよ!まったく!!」
二人して首をすくめていると、スザンヌさんは呆れ顔で吐き捨てるように言った。
「・・まあそれはともかく、どうやらスザンヌさんが一緒に行動するようになるってことは、他のみんなもそうだけど、はじめっから織り込み済みだったんでしょう?『めんどうくさい』とかなんとか適当にごまかしてるけど」
俺がジト目で見つめると、イナンナ神さまは視線をそらす。
「ライアンちゃ~ん、寝てばっかりね~。おなかすいてな~い?」
「ミャ~あ~ぅ」
「さっきお昼ご飯食べてきたばっかです」
話もそらそうとするのを、バッサリ切り捨てる。
どうもなあ・・神様たちが、ほんとうのこと全て教えてくれているとは思わないけどさ(そもそも俺のことを利用するために召喚だんだし)、でもなんか隠し事が多い気がしてならない。
ニンフルサグ神さまはともかく、イナンナ神さまもエア神さまも、いい加減さ爆発しているしなあ・・ハア。
「聞いても無駄そうなので、とっとと先進みましょう?」
小さくため息をついたあと、俺は紅茶をすすってから言った。
「もう、せっかちネエ」
イナンナ神さまが唇を尖らせる。
「先って?」
エルがティーカップをソーサーに置いて、聞いてきた。
コリン以外の全員が俺のことを見る。
「加護を授けてくれるのさ」
◇◇◇◇◇◇◇◇
「おっけ~!みんな目を開けてもいいわよ~」
体の内側から何かを放射して、ほんのりと暖かい感覚。
久しぶりの感覚だ。
目を開けると、全身を包む光は消えている。
『にヘラ~』と笑っているコリン以外が自分の身体をキョロキョロ見ている。
「ステータスは、地上に戻ってから各自で確認してね」
イナンナ神さまがニッコリ微笑んで言った。
「あら、神界で見ちゃいけないの?」
スザンヌさんが当然のように聞いている。
「え?ええ。もうそろそろ戻ってもらわなきゃいけない時間だから・・」
「「「「ほんとにーーー?」」」」
「コリンは帰りたくな~い。だって、ここ居心地いいも~ん!」
約1名を除き、ジト目でイナンナ神さまを見る。
「これ以上余計なことを聞かれるのが、イヤなだけじゃないんですか?」:俺
「イヤっていうよりかは、マズイって感じ?」:スザンヌさん
「マズイというのは、都合が悪いということね」:エル
「都合が悪いのは、後ろめたいのかな・・?」:アイリス
「ニゃハハあ~」:以下略
「そ、そんなことはないわよ。ほんとに時間がないんだから」
「わかりました」
「あ! そ、それからね。エレシュキガルの町には、しばらくはまだ行かないほうが良いと思うわ。できれば、もう少し他の国を見てまわった方が良いと思うの」
狼狽えるイナンナ神さまに諦めて、俺が立ち上がろうとしたところで、今度は遠慮がちに言ってきた。
「それはアレですか?まだまだ俺の実力では、邪神たちには敵わないということですか?それとも、そこに行っちゃうと、都合の悪いこととかがバレちゃうからですか?」
俺は、少し意地の悪い言い方をしてみた。
「も、もちろん、万が一ということがないように、まだまだ力をつけて貰う必要があるからよ。それに、あなたに会いたがっている神々は他にもたくさんいるし」
「ほ~そうですか、ワカリマシタ。そういうことにしときましょう・・・でも、成り行きでどうなるか分かりませんけどね」
イナンナ神さまの顔が、一瞬明るくなってすぐに固まる。
「あ、あの・・」
「さあ~!じゃあ戻してください。みんなもいいよねー?」
「「「「はーい!」」」」
一斉に、イナンナ神さまの顔を見る。
「ハアー・・・。じゃあいきます」
イナンナ神さまが右腕を一振りすると、俺たちは光に包まれた。
**************************
0
あなたにおすすめの小説
甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜
具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」
居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。
幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。
そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。
しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。
そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。
盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。
※表紙はAIです
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
異世界に来ちゃったよ!?
いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。
しかし、現在森の中。
「とにきゃく、こころこぉ?」
から始まる異世界ストーリー 。
主人公は可愛いです!
もふもふだってあります!!
語彙力は………………無いかもしれない…。
とにかく、異世界ファンタジー開幕です!
※不定期投稿です…本当に。
※誤字・脱字があればお知らせ下さい
(※印は鬱表現ありです)
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる