エンリルの風 チートを貰って神々の箱庭で遊びましょ!

西八萩 鐸磨

文字の大きさ
44 / 49

42.お誘い

しおりを挟む
**************************

「いかがでした?」


 目を開けると、サーシャさまから声を掛けられた。


「ご神託をいただきました」


 俺は後ろを振り向いて答えた。


「そうですか!それはようございました。他の皆様方も?」

「「「はい!」」」


 エルとコリン、アイリスが笑顔で応える。


「まさか、あたしまで授かるとは思わなかったわ」


 スザンヌさんが、少しはにかみながらうなずいている。


「ところでサーシャさまは、イシュタル神さまが、イナンナ神さまでもあるということは知っていらっしゃいましたか?」


 俺は少し気になって聞いてみた。


「ええ、知っていましたよ。わたしは、イシュタル神さまの聖女ですから。ご神託のなかで教えていただきました」


 サーシャさまは静かに微笑みながら、こともなげに言った。


「そ、そうだったんですか!?じゃあ、イナンナの町の神殿へ行かれたことは?」


 マジカよ!だとすると、もしかしてエレシュキガル神さまのことも?


「ええ、行ったことはあります。もっとも、わたしはハルバト国このくにの王妃という立場でもあるから、この国にある神殿には全て行ったことがあるということだけれど」


 優しい表情のまま俺の目を見つめて言った。


「な、なるほど。そのとき何か変わったことは?」


 我ながら変な質問だとは思ったが、聞いてみずにはいられなかった。


?そうねえ・・・ご神託が無かったということだけかしらね」


 人差し指を顎先に当て、少し目を伏せながら考える素振りを見せ、サーシャさまが言った。

 そんな仕草一つ一つが、さまになっていて、綺麗さの中に可愛さが醸し出される。


「ご神託が無いことは、よくあるんですか?」

「ええ、いつもいつもあるわけでは無いですよ。ご神託というのは、ある意味、『緊急事態のお知らせ』でもあるわけだから、そうそうしょっちゅう下されたら大変なことです」

「た、確かに」


 神殿で祈るたびに、神託がある俺はどうなんだ?・・というのは置いておいて。

 サーシャさまでさえ、イナンナの町の神殿の本当のあるじが誰であるかということは、知らないということか・・。


「そういえば、イナンナの町の神殿にも司祭さまはいらっしゃるんですよね?司祭さまは、イナンナ神さまのことについて何か言ってませんでしたか?」

「ずいぶんと変わったことを聞きますね。ですが、あそこには司祭はいないのです。正確には、このわたしが司祭を兼任しています。先の神々の戦いのあと、1度だけご神託があって、常駐の司祭は置かずわたしが兼任するように言われたのです」


 怪訝な表情を浮かべながらも、サーシャさまはそう答えてくれた。

 んーーー・・・その神託も本人イナンナではない可能性が高いな。

 『なりすまし』ってやつ?


「そうなんですね、分かりました。変なこと聞いてスイマセン。ありがとうございました」


 俺は変な質問にも、まじめに答えてくれたサーシャさまに頭を下げた。


「いえいえ、大丈夫ですよ」


 恐縮する俺に、口元に手を当てて微笑いながら言ってくれた。


「ところで、あなた達はこれからどうされるのです?もしよろしければ、王宮で夕食でもご一緒に・・」


 柔らかな笑顔のまま、思わぬお誘いを受けた。


「ゴメンね、サーちゃん。アイリスちゃんはともかく、あたしたちみたいな冒険者は、ああいう堅苦しいところは苦手なのよ。お誘いは嬉しいけど、遠慮しておくわ」


 俺が何か言う前に、スザンヌさんがすぐさま断りを入れる。

 ま、そりゃあ・・王宮なんてすごい所に行ったことなんて、一般的な地方の高校生としてはあるわけないし、そもそも、本物の王妃さまなんて初めて見るし、ド緊張すること請け合いだけどさ。

 ソッコーで断ることないじゃん・・。


「そう、それは残念ね。わたしたちだって元は冒険者なんだから、そんなに堅くなることはないのに・・・」


 サーシャさまが、もの凄く寂しそうな顔をしている。


「スイマセン」


 俺はなんかいたたまれない気持ちになって、再び恐縮して頭を下げた。



***************


 
 サーシャさまに見送られ、ジッグラトから街へと下りてきた俺たちは、一旦ホテルへと戻った。

 山の登り降りで結構汗をかいたので、それを流してさっぱりしてから街へ、夕飯を食べに行こうということになったのだ。

 ステータスのチェックについては、寝る前にみんなでやることにした。


 準備を整えて、ホテルのロビーへ下りてきた俺たちは、表の通りへと足を踏み出した。


「やあ!」


 街なかには似つかわしくない、四頭だてのメチャクチャ立派な馬車が目の前に停まっていた。

 客室の中から、わずかに白髪の混じったブラウンの短髪で、髭面の精悍な顔立ちの男の人が声を掛けてきた。




「・・・麺料理がいいかしらね?」


 スザンヌさんが、声を掛けてきた男の人を一瞥もせずに、そう言いながら俺たちを先導して、メインストリートの方へ向かおうとする。


「こら!無視するでない!!」


 馬車の中から、慌ててベンジャミンさんが叫んだ。

 小さく舌打ちを洩らして、スザンヌさんが馬車から出てきたベンジャミンさんへ振り返る。


「あたしたち、これからお夕飯なんだけど?」


 腰に手をあてて、ベンジャミンさんを睨む。


「お?おお、そうか!それならば丁度よい。俺と一緒に来てくれれば、美味いメシをたらふく食わせてやるぞ?」


 ベンジャミンさんはそう言って、スザンヌさんではなく後ろに並んでいる俺たちの顔を見回した。


「ほんとう!?(にゃにゃん!?)」


 すかざすコリンとライアンが反応する。

 ヨダレまで垂れかかっているし・・。


「なにが魂胆?」

「あやしい・・・」

「・・・」


 体勢を変えずにスザンヌさんが尋ねれば、エルはボソリと呟き、アイリスは緊張した面持ちで様子を見ている。


「そんなに怖い顔をするなよ、スザンヌ。で楽しく食事をしようってだけだ」

?『みんな』というのは、ここにいる6人のことかしら?」


 今度は胸の前で腕を組んで、問いただす。


「い、いや・・・他にも何人かいるが、まあ、内輪の集まりだから気にしなくていいぞ」


 明らかに、目が泳いでいますが?ベンジャミンさん・・・。

 本部のギルマスが、この程度で動揺してどうするんだろ・・。


「本当に、食事だけなの?」

「そ、その・・・まあ、いろいろと話したいこともあるかなあ・・・みたいな?」


 ベンジャミンさん、口調がおかしくなってますよ。


「・・・ふう、しょうがないわねえ。こうなるんじゃないかなって、薄々感じていたけれど・・・」


 スザンヌさんは、大きなため息を零すと、僅かに首を左右に振った。


「スマンな・・」


 ベンジャミンさんは後ろに手を添えながら、頭を下げる。


「で?行き先は当然、あそこよね?」

「まあな。なんか、ほんとすまんな」


 ベンジャミンさんがやたらと恐縮している。


「あのう・・あそこって、どこですか?」


 なんとなく分かる気がしたけど、一応聞いてみた。


「行けば分かるわよ」


 さよですか。

 やっぱり、か・・。






「じゃあ、これに乗ってくれるか?」


 ベンジャミンさんが馬車を指し示す。


「わー、これに乗れるんだあ!」


 喜んでいるのはコリンだけか・・・。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

異世界に来ちゃったよ!?

いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。 しかし、現在森の中。 「とにきゃく、こころこぉ?」 から始まる異世界ストーリー 。 主人公は可愛いです! もふもふだってあります!! 語彙力は………………無いかもしれない…。 とにかく、異世界ファンタジー開幕です! ※不定期投稿です…本当に。 ※誤字・脱字があればお知らせ下さい (※印は鬱表現ありです)

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

処理中です...