寝取りクズ勇者になりたくない!~日本的道徳心~

魔法仕掛けのにゃんこ

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モテモテ

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「おお!召喚されし勇者よ!女神の神託で選ばれた聖女とともに魔王を倒してくるのじゃ!」


俺こと座間 ネトリは魔王を倒すために異世界へと召喚された。
この世界に来る途中で、女神様にいわゆるチートを授けられたのでササッと魔王を倒して悠々自適な生活を送ろうと思う。
ちなみに女神様からは報酬として”モテモテ力もてもてちから”をいただいたので、彼女いない暦=年齢だった俺だがとても楽しみにしている。”モテモテ力もてもてちから”は異性に好かれ、常に吊り橋効果を得られるパッシブスキルなんだそうだ。魔王を倒した後は恋人探しの旅をしようと思う。ハーレム?ないない、現代日本に生きてきた俺は一夫一妻制なのだ。




そう、討伐後を楽しみにしていたのだが



「婚約者なんてどうでもいいです!勇者様抱いて!」
そんな事を言い出した勇者パーティー『剣姫の聖女』グレープ

「義兄なんて本当の兄じゃないんですし、勇者様が兄の方がいいです、抱いて!」
出会った当初はブラコンをこじらせていた『治癒の聖女』アップル

「王子のメイド?ハハッ、私がお仕えするのはネトリ様だけです…もちろん夜も。抱いて!」
忠義一直線だったはずの王子のメイド『魔道の聖女』ウォーターメロン

魔王の城を前にして聖女達の誘惑が俺を襲ってきた。


確かに最初の城からここまで三年間、四人で助け合って旅をしてきたよ?
だけどさ、君ら最初に会った時あんなに俺と旅するの嫌がってたじゃない、やれ『婚約者がいるのに』とか『義兄は私がいないとダメなのに』とか『王子の為ですから致し方なく行きますけど。』って言ってたのに……


先週位まで恋愛的な好意は素振りもなかったから、てっきり聖女には”モテモテ力もてもてちから”は効かないんだと思ってた俺のミスもあるけどさ。君らぎりぎりまで自然な振りしすぎでしょ。
途中で魔物から助けた村娘とか、隣の国の王女とか、魔王四天王の一人だったサキュバスさんとかは最初からスキスキオーラだして俺の事くどいてきたよ?魔王を倒すまではダメでござるって言って保留にしてきたけども。


だいたい君らに手を出したら大変な事になるんだよ?旅立ちの日にグレープの婚約者さんやアップルの義兄、王子なんかに
「絶対に生きて帰って、あなたにお返ししますから!」
って言って来たんだよ?
これで帰ってさ

「三人とも俺のモノにしちゃいました、全員と結婚します!フヒヒ」

なんて言った日には『このクズ勇者が!』とかって復讐ざまぁされちゃうんだよ?
そんなの嫌だ!なんでぎりぎりまで我慢してたの!?我慢しすぎの反動でいきなり抱いてとか言い出したんでしょ!?
最初にトゥンクってした時に言ってよ!”モテモテ力もてもてちから”のスキルあるって言っておいたじゃん!ゴミを見るような目でみてたじゃん!


とりあえず『魔王を倒して帰るまでが使命です』って小学校の遠足みたいな事を言って説得し魔王城に乗り込んだ。



魔王(黒髪ロングの美少女風)との戦いは熾烈を極めた。そんな中、三日三晩を過ぎた頃にはなんか魔王のほほが赤くなっていたのをうすうす感じてはいた……さらに三日ほどたったころ


「世界の半分をやろう!抱いて!」
魔王よ、お前もか……


何かどうでも良くなった俺は魔王を仲間にして王都へ帰還した。これってもう倒したようなもんでしょ。
俺にはこれから聖女達をなだめてなんとか振り切らねばならぬのだ、大丈夫まだ誰にも手は出していない……慌てる時間じゃない……


王城へ帰還した俺を待ち受けていたものは魔王討伐の旅の期間に出会った女性達と、恐らくその女性達を懸想している男達の、恋する瞳と憎悪の眼だった。その数は1000人を越えていた。
どうやら思っていたよりも”モテモテ力もてもてちから”の効果が高かったようだ……殆ど会話しなかったような女性までいる……あれ?王妃様もいるんじゃね?王様の目がコワイ。



俺は逃げた、全てを振り切って……



全力で逃げて一年、俺は誰もいない山奥で一人修行していた。
たまに思い出すのは日本にいた頃に読んだ異世界ハーレムものの本だ。主人公はなんだかんだでハーレム作ったりして楽しい人生を送っていた、男(敵)は殺し女は奪うみたいな……いいすぎか。

実際自分がその立場になると無理だと言う事がわかった。
日本の道徳教育で俺はハーレムはもちろん、誰かの恨みを買うような事ができなかったのだ。

モテモテ力もてもてちから”で恋人を作っても意味がない事も今ならわかる。そんなのは本当の愛じゃないのだ。だから俺は”モテモテ力もてもてちから”をなんとか無効化したいと修行の日々を送っている。

いつか日本道徳的な真実の愛を得るために!
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