僕はスキルで思い出す

魔法仕掛けのにゃんこ

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二章 王都バッシュテン編

王都バッシュテン

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王都を囲む壁の一部分、東西南北の四箇所にある門の北門から馬車で入ってきた僕達は、駅馬車の停車場へと着くと馬車から降り一つ伸びをした。

「ようやっと着いたよ、若いもんと旅が出来て楽しかったよ。帰りも乗っておくれな。」

「ありがとうおじいさん!」

「帰りもよろしくお願いします!」

僕とミリスを乗せた馬車はようやくアレスガルド王国の王都バッシュテンについた。
さすが王都、僕達の住んでいたトーマス村や途中に立ち寄った町よりも大きいと言うか広い!
しかし初めてきたはずなのにどこか懐かしくも感じる、ユーフィリス王女の記憶のせいだろうか。

「あっちこっちで屋台がでてるわ!今日はお祭りでもあるのかしら!」

「う~ん、確かに良い匂いが漂ってくるね!何か買って食べようか。」

「そうね、あそこの串焼きがいいわ!おじさーん!2本下さいなー!」

元気よく屋台に行き串焼きを買って戻ってくるミリス。

「ねね、お嬢さん可愛いねって1本おまけしてくれたのよ!」

どうよ!と言わんばかりに満面の笑顔で僕にアピールしてくる。

「うんうん、さすがミリスだね!あ、僕の分頂戴。」

「むー…まぁいいわ。はい、アルノはホーンブルの串焼きね。」

流し気味にコメントしたのが不満だったのか、ちょっとほっぺたを膨らませていたが串焼きはちゃんとくれた。
ホーンブルの肉は村にいた頃よく獲っていたホーンラビットよりも肉厚で油も多い感じだ、香ばしい匂いが鼻腔をくすぐる。

「ん!おいしいねこれ!これなら何本でも食べられそう!」

「おまけで貰ったのも半分あげる!私に感謝して食べるのよ!」

「うんうん、さすがミリスだね。」

「おざなりな反応しないのっ!」

「あはは、ごめんごめん。」

僕達はメインストリートである中央通りを真っ直ぐ南下していく。最初に会う予定の魔導士オーファスさんは王城に勤めているらしいので、一度面会のオファーを取り付けてからまた行くことになる予定だ。

「途中で良さそうな宿屋があったら部屋をとっちゃおう、とりあえず三泊くらいでとればいいよね?」

「そうね。お城に行くでしょう、それから騎士の訓練場でしょ!後お店も見て周りたいし…三泊で!」

「うん、じゃあそんな感じで!」

ちなみに旅の間の村や町ではミリスとは同じ部屋で寝泊りした。孤児院での暮らしが長く家族のように暮らしていたので、わざわざ二部屋分の料金を払うのをミリスが渋ったからだ。個人的にはお年頃だしどうかとも思ったけど。



そんなこんなでお店や宿屋を物色しながらお城へ向かっていたけれど、特にぴんと来た宿屋もなかったので、とりあえず用事の方を先に済ませるべくお城の門にいる衛兵さんに話しかけることにした。

「すいません、僕は北にあるトーマス村から来たアルノと申します。このお城にオーファスさんという魔導士の方がいらっしゃると思うのですが、その方に手紙を預かってきています。お取次ぎをお願いしたいのですが。」

「オーファス?オーファスオーファス…あ!宮廷魔導士長のオーファス様の事か?君、手紙の宛名を確認させてもらってもいいかな?」

「はい、これです。」

僕は手紙を取り出し宛名の部分を衛兵さんに見せる。

「フム、間違いないようだな。しばしここで待つがいい、取り次いでこよう。」

今宮廷魔導士長って言ってた…偉い人だった!師匠!言っておいてくださいよ!
ユーフィリス王女だった記憶を思い出している僕だけど、完全に思い出したわけじゃなくて『思い出す』を使った時に見た記憶がほとんどで、他の部分はかなりあいまいと言うかほとんど覚えていない感じだ。
だからユーフィリス王女とパーティーを組んだ事があるっていうオーファスさんもまったく覚えていない、ひょっとしたら会えばなんとなくわかるかもしれないが何とも言えない。

「時間が空いているそうなので今すぐお会いしてくださるとの事だ、部屋まで案内するから城の中では静かにな。」

戻ってきた衛兵さんがそういって僕達をオーファスさんとの面会室へと案内してくれることになった。
持ってきた弓やダガー、ミリスのバスタードソードは預けて僕達は衛兵さんの後を続く。

「お城の中って凄いね!」

「うん、もう一生入らない気がするから今のうちにしっかり見ておかなきゃね。」

廊下に飾ってある絵画や壷とかは恐らく僕の収入ではどうにもならないほどの高価なものだと思う、触れないように気をつけながらあっちの通路を曲がり、こっちの通路を進む。何か迷路みたい。

「トーマス村からの使者をお連れしました!」

もう自分がお城のどこにいるかもわからない、そんな風に思っていたらどうやら面会室に着いたようだ、衛兵さんが部屋の中に声を掛ける。

「どうぞ入ってください。」

中に入るとテーブルに座った人物がいた。青い髪を後ろでまとめて垂らし、同じく青色のローブを纏った男性がモノクルをつけた目を此方に向けて微笑んでいた。
僕はこの人がオーファスさんだと確信した。




ステータス
名前 アルノ
種族 人間
職業 狩人
ユニークスキル 『思い出す』
        『魔法剣Lv1』

スキル     『腕力強化Lv2』
        『集中Lv2』
        『気配察知Lv1』
        『剣聖Lv1』
        『神速Lv1』
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