世界は変わってしまったけれど、僕には意外と合っている

Lizard

文字の大きさ
1 / 4
プロローグ 神と人、人と悪魔

Ⅰ.異常者

しおりを挟む
 意識の覚醒と共に、寝起きの気怠さが一切ないことに気付いた。
 いつも憂鬱だった心はいっそ愉快なほどに清々しい。、分かってはいたが複雑な心境になる。
 ポタリ、と水滴が額に触れる感触。
 目を開けてみれば、灰色の雲に覆われた空が広がっている。
 しかしそこは野外ではなく、寝そべっている場所も含めてコンクリートの建物だ。
 廃墟と言っても過言ではないような倒壊具合だが。
 周囲にある四面の壁のうち綺麗なままで残っているのは二面だけ。天井に至っては砕け散ったかのように途切れている。

「……知らない空だ」
「マスターは既に見ている筈ですが」

 そんな感想を述べれば、すぐに声が帰ってくる。

「曇天の空を初めて見た、という意味であれば昨日までは晴れておりましたので賛同致します」

 透き通った、女性的な美しい声だ。話し方のせいか人間味が薄いのは、仕方がないと諦めるしかない。
 事実、人間ではないのだから。

「はぁ……感傷に浸る暇も無いや」

 傍から聞こえてきた声に、わざとらしく溜息を吐く。
 返答はやや呆れたような様子で――

「マスターが感傷に浸ることなどあるのでしょうか」

 ――と、辛辣な言葉が返ってくる。
 酷いなぁ、と呟きながら振り向く。そこに居たのは芸術的な美貌を持つ少女。
 白い髪に白い服、アルビノを思わせる紅色の瞳。その姿は人形の様で、仕草や表情が無ければ造形物のようにも思える。何より目を引くのは背から生えた
 いわゆる天使の翼。まぁ天使そのものらしいから当然かな。背丈は僕とあまり変わらないから、170cmくらいだろう。

「今日も綺麗だね、ラフィ」

 そんな彼女の姿を見ながら、特に感情も込めず言う。心にもない言葉、と言うわけではない。彼女がこんな言葉をまともに受け取るはずがないからだ。

「私を口説く暇があるなら――」
「はいはい、働けって言うんでしょ?」

 でもさ、と言葉を続ける。
 辺りに散らばった、天井の無い部屋の隅に積まれた傷ついた|......銃器や、迷彩色の防弾チョッキや黒色の防具――少なく見積もっても百人分はあるそれらを指差し。

、暫くは来ないと思うよ?」
「……しかし、出来ることは有ります」
「まぁ、そうだね。それじゃ働きますかー」

 けらけらと笑いながらこれ以上抗うことも無く寝そべっていた瓦礫から降りる。
 この体になってから――人間ではなくなってから――コンクリートの上で寝ても身体を痛めることは無い。
 本当にあのつまらない生活は終わったんだな、と改めて実感した―――

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...