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プロローグ 神と人、人と悪魔
Ⅰ.異常者
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意識の覚醒と共に、寝起きの気怠さが一切ないことに気付いた。
いつも憂鬱だった心はいっそ愉快なほどに清々しい。こんな世界になったことを自分が喜んでいるのだと、分かってはいたが複雑な心境になる。
ポタリ、と水滴が額に触れる感触。
目を開けてみれば、灰色の雲に覆われた空が広がっている。
しかしそこは野外ではなく、寝そべっている場所も含めてコンクリートの建物だ。
廃墟と言っても過言ではないような倒壊具合だが。
周囲にある四面の壁のうち綺麗なままで残っているのは二面だけ。天井に至っては砕け散ったかのように途切れている。
「……知らない空だ」
「マスターは既に見ている筈ですが」
そんな感想を述べれば、すぐに声が帰ってくる。
「曇天の空を初めて見た、という意味であれば昨日までは晴れておりましたので賛同致します」
透き通った、女性的な美しい声だ。話し方のせいか人間味が薄いのは、仕方がないと諦めるしかない。
事実、人間ではないのだから。
「はぁ……感傷に浸る暇も無いや」
傍から聞こえてきた声に、わざとらしく溜息を吐く。
返答はやや呆れたような様子で――
「マスターが感傷に浸ることなどあるのでしょうか」
――と、辛辣な言葉が返ってくる。
酷いなぁ、と呟きながら振り向く。そこに居たのは芸術的な美貌を持つ少女。
白い髪に白い服、アルビノを思わせる紅色の瞳。その姿は人形の様で、仕草や表情が無ければ造形物のようにも思える。何より目を引くのは背から生えた髪と同色の翼。
いわゆる天使の翼。まぁ天使そのものらしいから当然かな。背丈は僕とあまり変わらないから、170cmくらいだろう。
「今日も綺麗だね、ラフィ」
そんな彼女の姿を見ながら、特に感情も込めず言う。心にもない言葉、と言うわけではない。彼女がこんな言葉をまともに受け取るはずがないからだ。
「私を口説く暇があるなら――」
「はいはい、働けって言うんでしょ?」
でもさ、と言葉を続ける。
辺りに散らばった血痕、天井の無い部屋の隅に積まれた傷ついた武器|......銃器や、迷彩色の防弾チョッキや黒色の防具――少なく見積もっても百人分はあるそれらを指差し。
「あれだけ死んだんだ、暫くは来ないと思うよ?」
「……しかし、出来ることは有ります」
「まぁ、そうだね。それじゃ働きますかー」
けらけらと笑いながらこれ以上抗うことも無く寝そべっていた瓦礫から降りる。
この体になってから――人間ではなくなってから――コンクリートの上で寝ても身体を痛めることは無い。
本当にあのつまらない生活は終わったんだな、と改めて実感した―――
いつも憂鬱だった心はいっそ愉快なほどに清々しい。こんな世界になったことを自分が喜んでいるのだと、分かってはいたが複雑な心境になる。
ポタリ、と水滴が額に触れる感触。
目を開けてみれば、灰色の雲に覆われた空が広がっている。
しかしそこは野外ではなく、寝そべっている場所も含めてコンクリートの建物だ。
廃墟と言っても過言ではないような倒壊具合だが。
周囲にある四面の壁のうち綺麗なままで残っているのは二面だけ。天井に至っては砕け散ったかのように途切れている。
「……知らない空だ」
「マスターは既に見ている筈ですが」
そんな感想を述べれば、すぐに声が帰ってくる。
「曇天の空を初めて見た、という意味であれば昨日までは晴れておりましたので賛同致します」
透き通った、女性的な美しい声だ。話し方のせいか人間味が薄いのは、仕方がないと諦めるしかない。
事実、人間ではないのだから。
「はぁ……感傷に浸る暇も無いや」
傍から聞こえてきた声に、わざとらしく溜息を吐く。
返答はやや呆れたような様子で――
「マスターが感傷に浸ることなどあるのでしょうか」
――と、辛辣な言葉が返ってくる。
酷いなぁ、と呟きながら振り向く。そこに居たのは芸術的な美貌を持つ少女。
白い髪に白い服、アルビノを思わせる紅色の瞳。その姿は人形の様で、仕草や表情が無ければ造形物のようにも思える。何より目を引くのは背から生えた髪と同色の翼。
いわゆる天使の翼。まぁ天使そのものらしいから当然かな。背丈は僕とあまり変わらないから、170cmくらいだろう。
「今日も綺麗だね、ラフィ」
そんな彼女の姿を見ながら、特に感情も込めず言う。心にもない言葉、と言うわけではない。彼女がこんな言葉をまともに受け取るはずがないからだ。
「私を口説く暇があるなら――」
「はいはい、働けって言うんでしょ?」
でもさ、と言葉を続ける。
辺りに散らばった血痕、天井の無い部屋の隅に積まれた傷ついた武器|......銃器や、迷彩色の防弾チョッキや黒色の防具――少なく見積もっても百人分はあるそれらを指差し。
「あれだけ死んだんだ、暫くは来ないと思うよ?」
「……しかし、出来ることは有ります」
「まぁ、そうだね。それじゃ働きますかー」
けらけらと笑いながらこれ以上抗うことも無く寝そべっていた瓦礫から降りる。
この体になってから――人間ではなくなってから――コンクリートの上で寝ても身体を痛めることは無い。
本当にあのつまらない生活は終わったんだな、と改めて実感した―――
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