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第二章 冒険者
その六 冒険者ギルド
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冒険者ギルド――
それは二百年ほど前に創設された、魔獣の討伐から護衛、雑務まで様々な依頼を請け負う組織。
そこに所属する者達は冒険者と呼ばれ、個人にあった適切な依頼を発注し、その報酬として金銭を稼ぐ。
危険ではあるが、その分だけ実力のあるものなら高い稼ぎを得ることが出来る。
E~Sまでのランクがあり、Sランクともなれば一つの大陸にも片手で数えるほどしかいない。
国に雇われればその国の最高戦力と呼ばれる、それがSランクの次元である。
しかし便利屋の様な印象もある反面、命を賭けて人助けをする仕事でもあるためか、傲慢で粗暴な者も多く、民衆、そして貴族は特に冒険者を嫌うものが多かった。
ダラン王国の中にはいくつかの冒険者ギルドだあるが、王都にある冒険者ギルドも例外ではない。
そんな冒険者ギルドの入り口に、現在テイルは来ている。
「ここが冒険者ギルドか……流石、立派な建物だな」
冒険者ギルドはその特性から魔獣等に襲撃された際の対策だけでなく、冒険者同士で争うこともあるため比較的丈夫に作られている。
テイルが感想で述べたように、冒険者ギルドの建物は木造ではあるものの、どれだけ金をかけたのか分からないほどに立派な建物だ。
木造とは言ってもその建材は魔法建材と呼ばれるもので、木自体も特別頑丈なものに水の魔力を籠めた燃えにくい建材なので、石の建築よりもむしろ戦に向いていると言える。
(『確かに・・・全体的に魔力を帯びていますし』)
(『建材に態々魔法印を施すとは・・・面倒なことをするのう。私の城はミスリルを混ぜた鉄や石を使い常に魔力を流し続けて丈夫にしたものじゃがの』)
ちなみに現在、剣は別空間にしまっている。
というより剣が別空間に移動している、と言った方が正しいが。
それでもこうやって話せているのは魔王と勇者の意識が俺と繋がっているから・・・らしい。
なんとも便利な能力だ。
(贅沢な使い方だな・・・ミスリルなんてのは今じゃ武器や防具に使うだけで精一杯だぞ。純ミスリルの装備はそれこそ小さめの城が買えるくらいの値段はする)
(『なんともけち臭い時代になったもんじゃな・・・』)
そんなことを話しながらギルドの入り口を潜ると、髭の濃い男や刺青だらけの男、そんないかにもガラの悪そうな冒険者が多くいた。大抵の者は馬鹿にするような目を向けていたが、一部の者は品定めをするような目でこちらを見ていた。
冒険者たちのやる気を上げるためか、大体のギルドは受付に見目麗しい女性を雇う。
事実このギルドの受付嬢は美人と言って差し支えない金髪の女性だった。
テイルの身長が低いため、カウンターの向こうで座っている受付嬢と目線の高さがほぼ同じ、という少々気恥しい気分を味わってしまったが。
「冒険者登録をお願いします」
「はい?」
受付嬢に話しかけると、その受付嬢は信じられないといった様子で見てきた。
(もうちょっと隠そうとは思わないのか・・・)
(『教育がなってないわね』)
(『生意気な娘じゃの』)
しかしそれもある意味仕方のないことだ。
なにせテイルは中身こそ46歳という中年だが、現在の外見は16、いや元々が小柄であることを考えると14歳辺りに見えてもおかしくない。そんな子供が冒険者になりたいと言っても黒髪の子供が己の力を過信しているだけにしか思えないのだ。
「え、えーっと……とりあえずこちらの用紙に記入して下さい」
「分かった」
(とりあえずって・・・)
(『信用されていませんね・・・まぁしょうがないかもしれないけど』)
(『主は見た目だけ子供だからのう・・・見た目だけ』)
・・・何度も言うな
渡された用紙はかなり単純なもので、記入する必要があるのは名前と年齢だけ。
後はギルドのルールが書かれている程度だった。
ルールと言ってもそう難しいものではなく、ギルド内での勝手に争うこと、または破壊行為を禁止したり、依頼を失敗した場合の罰則と言った程度のものだった。
「文字はもう書けるんですね……」
受付嬢の意外そうな声が聞こえてくる。
この国は識字率があまり高くない。
テイルの格好は英霊の島で来ていたぼろきれや服ではなく、王都に向かう途中で買ったものだが、それでも金持ちには見えない。子供の時から文字を学んでいるのは貴族の子かそうでなくとも金のある家庭、または親が教育熱心な家庭のみだ。
(だったら最初から文字が書けるかどうか聞いたらいいのでは・・・)
(『変に見栄をはろうとするかどうかを見てるんじゃないでしょうか』)
(なるほど)
やるな冒険者ギルド・・・
「名前は……テイル君ですね。ルールはもう読みましたか?」
「はい」
「それでは、こちらの魔道具に触れてください。魔力を記憶させるものですので、様々な時に本人確認の為に使います」
そう言って差し出されたのは、球体の紫水晶のような拳大の魔道具だった。
そっと手を触れさせると一瞬だけ紫色の光を発した。
「はい、もういいですよ。それでは……最後に試験になります。試験といっても筆記試験ではなく、戦闘試験ですが」
「分かりました。どこに行けばいいんですか?」
「今試験官の方を呼んできますので、少々お待ちください」
そう言って受付嬢はカウンターの奥へ向かおうとした―――
「ティアちゃん、そいつの相手は俺がやるよ」
「ええっ!?ローグさん突然どうしたんですか!!」
―――が、赤い髪をした男に呼び止められた。
「ギルドマスターが試験官をやっちゃあ駄目なのかい?」
「駄目ってわけじゃないですが・・・」
(あいつ・・・相当強いな)
(『確かに中々の強者のようじゃの』)
ローグと呼ばれた男はしなやかながらも鍛え上げられた肉体を持っているのが見て取れた。
それだけではなく、その男の耳は本来耳たぶがある場所がギザギザになっており、形が細長く尖った形状をしていた。
(エルフがギルドマスターとは・・・意外とあるもんなのか?)
そう、ローグは所謂エルフだ。
エルフで初めて冒険者ギルドのマスターになった人物として有名だったりするのだが、世間の情報にあまり興味のなかったテイルには知る由もなかった。
それは二百年ほど前に創設された、魔獣の討伐から護衛、雑務まで様々な依頼を請け負う組織。
そこに所属する者達は冒険者と呼ばれ、個人にあった適切な依頼を発注し、その報酬として金銭を稼ぐ。
危険ではあるが、その分だけ実力のあるものなら高い稼ぎを得ることが出来る。
E~Sまでのランクがあり、Sランクともなれば一つの大陸にも片手で数えるほどしかいない。
国に雇われればその国の最高戦力と呼ばれる、それがSランクの次元である。
しかし便利屋の様な印象もある反面、命を賭けて人助けをする仕事でもあるためか、傲慢で粗暴な者も多く、民衆、そして貴族は特に冒険者を嫌うものが多かった。
ダラン王国の中にはいくつかの冒険者ギルドだあるが、王都にある冒険者ギルドも例外ではない。
そんな冒険者ギルドの入り口に、現在テイルは来ている。
「ここが冒険者ギルドか……流石、立派な建物だな」
冒険者ギルドはその特性から魔獣等に襲撃された際の対策だけでなく、冒険者同士で争うこともあるため比較的丈夫に作られている。
テイルが感想で述べたように、冒険者ギルドの建物は木造ではあるものの、どれだけ金をかけたのか分からないほどに立派な建物だ。
木造とは言ってもその建材は魔法建材と呼ばれるもので、木自体も特別頑丈なものに水の魔力を籠めた燃えにくい建材なので、石の建築よりもむしろ戦に向いていると言える。
(『確かに・・・全体的に魔力を帯びていますし』)
(『建材に態々魔法印を施すとは・・・面倒なことをするのう。私の城はミスリルを混ぜた鉄や石を使い常に魔力を流し続けて丈夫にしたものじゃがの』)
ちなみに現在、剣は別空間にしまっている。
というより剣が別空間に移動している、と言った方が正しいが。
それでもこうやって話せているのは魔王と勇者の意識が俺と繋がっているから・・・らしい。
なんとも便利な能力だ。
(贅沢な使い方だな・・・ミスリルなんてのは今じゃ武器や防具に使うだけで精一杯だぞ。純ミスリルの装備はそれこそ小さめの城が買えるくらいの値段はする)
(『なんともけち臭い時代になったもんじゃな・・・』)
そんなことを話しながらギルドの入り口を潜ると、髭の濃い男や刺青だらけの男、そんないかにもガラの悪そうな冒険者が多くいた。大抵の者は馬鹿にするような目を向けていたが、一部の者は品定めをするような目でこちらを見ていた。
冒険者たちのやる気を上げるためか、大体のギルドは受付に見目麗しい女性を雇う。
事実このギルドの受付嬢は美人と言って差し支えない金髪の女性だった。
テイルの身長が低いため、カウンターの向こうで座っている受付嬢と目線の高さがほぼ同じ、という少々気恥しい気分を味わってしまったが。
「冒険者登録をお願いします」
「はい?」
受付嬢に話しかけると、その受付嬢は信じられないといった様子で見てきた。
(もうちょっと隠そうとは思わないのか・・・)
(『教育がなってないわね』)
(『生意気な娘じゃの』)
しかしそれもある意味仕方のないことだ。
なにせテイルは中身こそ46歳という中年だが、現在の外見は16、いや元々が小柄であることを考えると14歳辺りに見えてもおかしくない。そんな子供が冒険者になりたいと言っても黒髪の子供が己の力を過信しているだけにしか思えないのだ。
「え、えーっと……とりあえずこちらの用紙に記入して下さい」
「分かった」
(とりあえずって・・・)
(『信用されていませんね・・・まぁしょうがないかもしれないけど』)
(『主は見た目だけ子供だからのう・・・見た目だけ』)
・・・何度も言うな
渡された用紙はかなり単純なもので、記入する必要があるのは名前と年齢だけ。
後はギルドのルールが書かれている程度だった。
ルールと言ってもそう難しいものではなく、ギルド内での勝手に争うこと、または破壊行為を禁止したり、依頼を失敗した場合の罰則と言った程度のものだった。
「文字はもう書けるんですね……」
受付嬢の意外そうな声が聞こえてくる。
この国は識字率があまり高くない。
テイルの格好は英霊の島で来ていたぼろきれや服ではなく、王都に向かう途中で買ったものだが、それでも金持ちには見えない。子供の時から文字を学んでいるのは貴族の子かそうでなくとも金のある家庭、または親が教育熱心な家庭のみだ。
(だったら最初から文字が書けるかどうか聞いたらいいのでは・・・)
(『変に見栄をはろうとするかどうかを見てるんじゃないでしょうか』)
(なるほど)
やるな冒険者ギルド・・・
「名前は……テイル君ですね。ルールはもう読みましたか?」
「はい」
「それでは、こちらの魔道具に触れてください。魔力を記憶させるものですので、様々な時に本人確認の為に使います」
そう言って差し出されたのは、球体の紫水晶のような拳大の魔道具だった。
そっと手を触れさせると一瞬だけ紫色の光を発した。
「はい、もういいですよ。それでは……最後に試験になります。試験といっても筆記試験ではなく、戦闘試験ですが」
「分かりました。どこに行けばいいんですか?」
「今試験官の方を呼んできますので、少々お待ちください」
そう言って受付嬢はカウンターの奥へ向かおうとした―――
「ティアちゃん、そいつの相手は俺がやるよ」
「ええっ!?ローグさん突然どうしたんですか!!」
―――が、赤い髪をした男に呼び止められた。
「ギルドマスターが試験官をやっちゃあ駄目なのかい?」
「駄目ってわけじゃないですが・・・」
(あいつ・・・相当強いな)
(『確かに中々の強者のようじゃの』)
ローグと呼ばれた男はしなやかながらも鍛え上げられた肉体を持っているのが見て取れた。
それだけではなく、その男の耳は本来耳たぶがある場所がギザギザになっており、形が細長く尖った形状をしていた。
(エルフがギルドマスターとは・・・意外とあるもんなのか?)
そう、ローグは所謂エルフだ。
エルフで初めて冒険者ギルドのマスターになった人物として有名だったりするのだが、世間の情報にあまり興味のなかったテイルには知る由もなかった。
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