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第二章 冒険者
その八 長年の修行の成果、なんだと思う
しおりを挟む「――なるほど。そういうことか」
テイルはギルドマスターであるローグの自室に訪れている。
英霊の島に行ったことも含め、ルンの事以外は大体の事情を話した。
自分の力のことも。
ローグは「そんな力が手に入るとしても、俺はもうあんな島には行きたくないなぁ」と苦笑いしていたが。
どうやら一度だけ英霊の島に行ったことがあるらしい。
精霊があんな見た目だとは思わなかったが・・・
(『私も精霊は初めて見たぞ』)
(『私は前に一度だけ見たことがあります。上位精霊でしたけど』)
(上位の精霊なら姿が見えるのか?)
(『いえ、上位精霊は自分の意思で人間からも見えるようにできるんです。認めた相手にしか姿は見せないそうですが』)
(そうなのか)
若干得意気にラナティアが言う。
その辺りは流石勇者、なんだろうか。
(あれ?というか二人とも精霊が見えてたのか?)
(『いや、主と視界を共有しただけじゃ。魔王に精霊を見る能力なんぞないわ』)
(便利だな・・・)
「その魔獣血石の事だけど」
「何か知ってるんですか?」
俺としては、魔獣血石の事は結構気になっている。
あの島で手に入れた魔獣血石はどれも色が青かったし、その効果も高いように思えた。
そのせいか痛みも凄まじかったけど・・・
「これは俺の仮説なんだけどね。恐らく、魔獣血石が与える力は、その魔獣を討伐した人数によって違うんだと思う」
「人数、ですか?」
「さっき君が言っていた魔獣の力の一割が手に入る、って言うのは5人のAランク冒険者が討伐した『岩竜』のことだと思う。今のところ魔獣血石について分かってるのは、強い魔獣からしか取れないっていうことと、割ったりしたら血石の中にあった魔力や魔獣の力が無くなるっていうことなんだ」
「そうなんですか?」
思わず声が大きくなってしまった。
割ったら力が失われるっていうのは聞いたことがなかった。
魔獣血石を研究する研究者は数多くいる。もしかしてこの三年で分かったのかもしれないな。
それか俺が知らなかっただけか。
「そうなんだよ。だから魔獣血石を何人かで分けることは出来ない」
「討伐した人数によって得られる力が変わるっていうのは?」
「ここからが本題だ。君は魔獣血石はどうやって生成されると思う?」
魔獣血石がどうやって生まれるか・・・
「魔獣に認められると魔獣が自分で作るっていう説はご存知ですか?」
「勿論知っている。君はその説が正しいと思うのかい?」
そう言われると、詳しくは分からない。
認められる、というのが正しい、とはあんまり思えない。
「少なくとも、魔獣が自分の意思で作るというのは正しいと思っています」
「ほう、どうしてかな?」
ローグが面白そうに笑みを浮かべながら尋ねる。
「奇襲で殺したり、罠で殺したりした場合に魔獣血石が出たことがなかったからです」
「へぇ……それはイイ話を聞いたよ。なるほど、それなら俄然信憑性が増すね」
「ローグさんはどうなんですか?」
「俺も同じ考えだよ。魔獣は自らを殺せる力を持つ相手に、自分の力を授ける。討伐した人数によって貰える力が変わる、というのは恐らく魔獣が吸収出来る量を決めてるんじゃないかな。言わば子供を残すのと同じ、自分の一部を残すために」
「なるほど……」
突拍子もないように思えるかもしれないが、それなら確かに辻褄は合う。
「一つ聞きたいんだけど、あの石って食べたら吸収する力の量に合わせて痛みも増えるよね?」
「え、そうなんですか?」
道理で痛いはずだ。
最初の頃は必ず気絶してたしなぁ。
途中から慣れたけど。
(『主は変なことに慣れておるの・・・』)
(『慣れたくて慣れたんじゃない。慣れなきゃ生きていけなかったんだよ』)
気絶してる間に襲われたらどうする。
最初の黒竜の時以降は襲われないように注意してから魔獣血石を取り込んだ。
一度目で襲われなかったのは運が良かった。
「増えるんだよ。だから君はとんでもない痛みに襲われたはずだけど……よく耐えれたね」
「そうでもしないとすぐに殺されるので。島から逃げ出すのはもっと嫌でした」
「さっき言ったAランク5人が討伐した岩竜の魔獣血石を食べた人は二度と食べたくない、って騒いでたらしいけどね」
・・・・・・長年の修行の成果、だと思っておこう。
その後、ローグさんとの話を終えた俺は登録の為に受付へ向かった。
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