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第四章/杉井豊花(破)
Episode080╱きっかけ
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(115.)
事件が起きた。
翌日の学校の帰り、いつもどおり愛のある我が家に辿り着くと、室内には珍しく翠月を除いたメンバーが神妙な顔をして揃っていた。
「豊花さん、GCTOの残党がまだいたようです。異能力から推察するに、二(したなが) 観月(みつき)。名前のとおり翠月さんの姉です」
「あ、はい……」
唐突に言われても、翠月自身とあまり関わりないしなぁ。
「ここからが本題です。その観月によって翠月さんが殺されました」沙鳥は珍しく声に怒りを含めている。「相手メンバーも目的も不明ですが、なにやら観月は夜々に忠誠を誓っていた側近のひとり。よくもうちの正規メンバーを殺ってくれましたね」
ドンッーーと沙鳥は強めにテーブルを叩く。
翠月に対して残念ながら悲しみは浮かばないが、沙鳥はシノギが減ったこと以上にブチギレていることだけはわかる。
「いまから赤羽さんに連絡を入れます。朱音は異世界からルーナエアウラを呼んでください。相手側のバッグを調べると共に殺戮していきましょう」
「過去の残党騒ぎのときに顔を出さなかった残党風情が、よくもまあ私たちに手出ししたわね……」
「無論、わしも動くぞ。翠月とて愛のある我が家の一員じゃ。殺されたのを見過ごすわしではない」
皆それぞれ怒り心頭だ。
相手が誰であろうと潰す。その心意気が伝わってくる。
仲間との結束が固いのだなと再確認できた。
「切れすぎだよ、沙鳥ちゃん。さすがにルーナエアウラをほいほいこちらに呼べない。瑠奈の気持ちはどうするのさ」と朱音は言う。が、沙鳥は「相手がわからない以上用心に越したことはない」
「わたしも我慢するよ……あいつには会わないけどね」
瑠奈も嫌っていたわりには翠月が殺されたことをよく思っていないらしい。
と……。
「ちょっと行動停止してください」と沙鳥はみんなに指示を出した。「はい、はい……わかりました。私たちも向かいます。それまで捕らえておいてください」
「どったの?」
通話を切った沙鳥に対して瑠奈が問う。
「翠月さんと同行していた赤羽さんの子分の一(にのまえ)さんたちが観月を捕まえたらしいです。やはり異能力の内容はなにもない空間から大鎌を取り出すこと。観月に間違いありません。赤羽さんも向かっているとのこと。我々も現場に車で向かいましょう」
なにやら手出しはしなくて済みそうだ。
話を聞くに赤羽組の子分である数名が翠月を殺害した観月を追い掛け引っ捕らえ拷問中らしい。しかし口を割らず、困っているとのこと。
油断するなと沙鳥は伝えていたが、その異能力なら大丈夫そうだ。
現場に車で向かう一同。乗車しているのは、沙鳥、舞香、瑠奈、そして私だ。澄と朱音、ゆきは自宅待機らしい。もしも仲間がいて朱音を狙われても大丈夫なように、戦闘に特化した二人を置いてきたのだろう。
運び込まれたという倉庫に一同入る。
中には、男性四名ーーおそらく赤羽さんの子分と、おそらく観月と呼ばれる女性。顔を血塗れにしながら椅子に手足を拘束されている。
歯が数本、指が数本折られている。思わず吐き気を催してしまう。
「すんません、姉御。どうにもしぶとくて」
「いえ大丈夫ですよ」沙鳥は観月をジッと見つめる。すると真顔になり、いきなり拳で観月を殴り付けた。「どうやら……単独犯の模様です」
「はぁぁあ! 夜々様の仇だ! 妹の癖に生意気な奴をぶち殺してやっただけだ! ははっ! 仲間を大切にするおまえらにはきついだっぐーー!」
周りの男性一人が爪を剥がす。
だが観月は止まらない。
「おまえらがやってきたとこととなにが反する? 味方が殺されたから殺し返しただけじゃないか!」
沙鳥は観月に顔を近づける。
「あなたたちの行いに人道はありましたか? 無理やり少女を捕まえて人身売買していただけじゃないですか? 笑わせないでください」
「おまえたちの行いに被害者はいないだと、こっちこそ笑わせるな!」観月は私に顔を向ける。「おい、新入りらしき小娘! 騙されるな! おまえたちのやってきた商売の末端を見てみろ! 被害者しかいない!」
そこでふと違和感を覚える。たしかに沙鳥に対等と言われただけで被害者について考えてすらいなかったことを。本当に対等な、被害者がいない商売なのだろうか?
「豊花さん、気にしないでください。一(にのまえ)さん、ひたすら無駄に拷問の限りを尽くした末に処分してください」沙鳥は冷めた瞳で観月を見下す。「それの悲鳴を翠月さんへの鎮魂歌といたしましょう」
そう冷たく告げる沙鳥が、なぜだがきょうにかぎって悪に見えた。
「瑠奈さん、豊花さんを連れて外に出ていてください。これから行うことは豊花さんには刺激が強すぎます」
「おっけぃ」
私は瑠奈に手を引かれ倉庫の外に出た。
倉庫の扉が閉められる。
やがて、絶叫が外まで漏れてくるのであった。
観月の言葉が脳裏に反芻する。
おまえたちのやってきた商売の末端を見ろ、被害者しかいないーー。
私はなぜか、それを少しずつ確かめるべきな気がした。
とはいえ、被害者しかいなくとも、いまの私にはどうにもできないが……。
事件が起きた。
翌日の学校の帰り、いつもどおり愛のある我が家に辿り着くと、室内には珍しく翠月を除いたメンバーが神妙な顔をして揃っていた。
「豊花さん、GCTOの残党がまだいたようです。異能力から推察するに、二(したなが) 観月(みつき)。名前のとおり翠月さんの姉です」
「あ、はい……」
唐突に言われても、翠月自身とあまり関わりないしなぁ。
「ここからが本題です。その観月によって翠月さんが殺されました」沙鳥は珍しく声に怒りを含めている。「相手メンバーも目的も不明ですが、なにやら観月は夜々に忠誠を誓っていた側近のひとり。よくもうちの正規メンバーを殺ってくれましたね」
ドンッーーと沙鳥は強めにテーブルを叩く。
翠月に対して残念ながら悲しみは浮かばないが、沙鳥はシノギが減ったこと以上にブチギレていることだけはわかる。
「いまから赤羽さんに連絡を入れます。朱音は異世界からルーナエアウラを呼んでください。相手側のバッグを調べると共に殺戮していきましょう」
「過去の残党騒ぎのときに顔を出さなかった残党風情が、よくもまあ私たちに手出ししたわね……」
「無論、わしも動くぞ。翠月とて愛のある我が家の一員じゃ。殺されたのを見過ごすわしではない」
皆それぞれ怒り心頭だ。
相手が誰であろうと潰す。その心意気が伝わってくる。
仲間との結束が固いのだなと再確認できた。
「切れすぎだよ、沙鳥ちゃん。さすがにルーナエアウラをほいほいこちらに呼べない。瑠奈の気持ちはどうするのさ」と朱音は言う。が、沙鳥は「相手がわからない以上用心に越したことはない」
「わたしも我慢するよ……あいつには会わないけどね」
瑠奈も嫌っていたわりには翠月が殺されたことをよく思っていないらしい。
と……。
「ちょっと行動停止してください」と沙鳥はみんなに指示を出した。「はい、はい……わかりました。私たちも向かいます。それまで捕らえておいてください」
「どったの?」
通話を切った沙鳥に対して瑠奈が問う。
「翠月さんと同行していた赤羽さんの子分の一(にのまえ)さんたちが観月を捕まえたらしいです。やはり異能力の内容はなにもない空間から大鎌を取り出すこと。観月に間違いありません。赤羽さんも向かっているとのこと。我々も現場に車で向かいましょう」
なにやら手出しはしなくて済みそうだ。
話を聞くに赤羽組の子分である数名が翠月を殺害した観月を追い掛け引っ捕らえ拷問中らしい。しかし口を割らず、困っているとのこと。
油断するなと沙鳥は伝えていたが、その異能力なら大丈夫そうだ。
現場に車で向かう一同。乗車しているのは、沙鳥、舞香、瑠奈、そして私だ。澄と朱音、ゆきは自宅待機らしい。もしも仲間がいて朱音を狙われても大丈夫なように、戦闘に特化した二人を置いてきたのだろう。
運び込まれたという倉庫に一同入る。
中には、男性四名ーーおそらく赤羽さんの子分と、おそらく観月と呼ばれる女性。顔を血塗れにしながら椅子に手足を拘束されている。
歯が数本、指が数本折られている。思わず吐き気を催してしまう。
「すんません、姉御。どうにもしぶとくて」
「いえ大丈夫ですよ」沙鳥は観月をジッと見つめる。すると真顔になり、いきなり拳で観月を殴り付けた。「どうやら……単独犯の模様です」
「はぁぁあ! 夜々様の仇だ! 妹の癖に生意気な奴をぶち殺してやっただけだ! ははっ! 仲間を大切にするおまえらにはきついだっぐーー!」
周りの男性一人が爪を剥がす。
だが観月は止まらない。
「おまえらがやってきたとこととなにが反する? 味方が殺されたから殺し返しただけじゃないか!」
沙鳥は観月に顔を近づける。
「あなたたちの行いに人道はありましたか? 無理やり少女を捕まえて人身売買していただけじゃないですか? 笑わせないでください」
「おまえたちの行いに被害者はいないだと、こっちこそ笑わせるな!」観月は私に顔を向ける。「おい、新入りらしき小娘! 騙されるな! おまえたちのやってきた商売の末端を見てみろ! 被害者しかいない!」
そこでふと違和感を覚える。たしかに沙鳥に対等と言われただけで被害者について考えてすらいなかったことを。本当に対等な、被害者がいない商売なのだろうか?
「豊花さん、気にしないでください。一(にのまえ)さん、ひたすら無駄に拷問の限りを尽くした末に処分してください」沙鳥は冷めた瞳で観月を見下す。「それの悲鳴を翠月さんへの鎮魂歌といたしましょう」
そう冷たく告げる沙鳥が、なぜだがきょうにかぎって悪に見えた。
「瑠奈さん、豊花さんを連れて外に出ていてください。これから行うことは豊花さんには刺激が強すぎます」
「おっけぃ」
私は瑠奈に手を引かれ倉庫の外に出た。
倉庫の扉が閉められる。
やがて、絶叫が外まで漏れてくるのであった。
観月の言葉が脳裏に反芻する。
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