188 / 233
第七章╱杉井豊花(急)
Episode180╱精霊操術師①
しおりを挟む
(268.)
両親が亡くなってしまい、くよくよして涙を流して意気消沈の私に、裕希姉も悲しいだろうに元気に絡んできてくれる。
それがなによりも嬉しい。
でも、同時に裕希姉も瞳に涙を溜めていた。
たったひとりの異能力者のために愛のある我が家が崩壊してしまった。それがなにより悔しいし虚しい。私がいなければ、こんなことにはならなかったはずなのに。
沙鳥と舞香はホテルに宿泊中。香織とゆきは隣のホテルの部屋に仮住まいらしい。
そして、警察や清掃員が死体を掃除したリビングには、鏡子と瑠奈がくつろいでいる。
このまえ十字架で奇襲を喰らったのに、呑気なものだと感心すらしてしまう。
「今回鏡子を呼んだのはほかでもない。犯人に目星がつきそうな相手を異能力で探して」
「えー、わたしの役割は?」
「敵対勢力が異能力をつかったときに対処してくれるのを期待してるよ」
「……期待? 期待!? うれしいなぁ……」
上手く言いくるめられたな。とはいえ、相手はもしかすると凶悪な異能力者かもしれない。そうなったときの保険として瑠奈を配置しておきたいのだ。
別班では香織がネット仲間を駆使して情報を集めている。
香織の護衛としては、ゆきを配置している。
沙鳥は嘘を見抜くちからがあるため、情報提供者と対面して嘘か真偽かを確かめる重要な扱いだ。
無論、沙鳥の護衛には強力な異能力者でありつつ蹴り技も特化している舞香がいるため、ここはひと安心だろう。
ひとまず私は、壊れた十字架が貫通した壁を修復していた。
このままでは吹き抜けだ。無作法な大工だが、なにもないより安心だろう。
と、そこで電話が鳴った。
『すみません……onion channelの掲示板に……極悪非道な……薬物密売闇金みかじめ料を取る……悪人を異能力をつかって潰してやったぜ……的な書き込みがありました』
「諸に私たちのことじゃん。なーにが極悪非道なんだよ。まったく」
いや、一般人からすると、覚醒剤の密造・密売・高利の金貸し要するに闇金、暴力沙汰を金銭で解決、未成年売春斡旋。どこからどう見ても極悪非道な組織にしか思えなくもないんだけど……。
「ぜったい見つけて後悔してやるからな?」
瑠奈は怒り心頭で指をポキポキ鳴らしはじめた。
「私が触れた相手に触れたらしくて、相手の視界をジャックできます」
「!? 見てみて! これなら早めに討伐できそうだ」
前々から思っていたけど、進化してからの香織の能力の上がり幅が異常だ。一気に一線級で活躍できるポジションを備えている。
「わ、わわわ私からも相手の素性がわかりました!」
「どれどれ?」
『いまプリント渡しますね』
数枚のコピー用紙が複数枚コピー機から排出されて物を手にとる。
それを一枚受け取り、顔写真と名称、性別、異能力など詳細な情報が掲載されていた。
「よくそんなパソコンでこんなに調べられるんだな」
「ささ、沙鳥さんから新たにハイスペックのパソコンを譲り受けたからですです。ままま昔のパソコンはポンコツなうえ、さささらに巨大十字架がちょうど真下にあったパソコンが激突してお釈迦になってしまった、しまったんです」
「なるほどな~」
手渡された用紙を一枚手渡される。
そこには、どこにでもいそうなやや痩せぎみの青年が映っていた。無論、性別は男です。名称は前田健(まえだけん)。
顔は特徴がないように見えて、鼻の大きさ、剃っていない眉毛や髭、ガリガリに痩せていることから、見間違いはないだろう。
肝心の異能力は、十字架を好きなサイズに変更可能なうえ、術者が持っているあいだは重さを感じないと来ている。
備考欄に、嫌いな組織一覧に。
愛のある我が家
輝く星
girls traffickig organization
異能力者保護団体
とまで書かれている。
狙うならせめて異能力者保護団体からにしてくれよ……とぼやいている暇はない。
残念ながら輝く星は私たちが壊滅してしまったし、girls traffickig organizationはとっくの昔に澄によって壊滅させられている。
となると残りは愛のある我が家と異能力者保護団体になるが、異能力者保護団体は各都道府県に点在しているし、さすがに無理だと手を引いたのだろう。
そこでし白矢が立ったのが、うちら愛のある我が家だというわけだ。
……両親が亡くなってしまったのをいまさらながら実感する。
怒りや悔しさ、理不尽さがふつふつと込み上げてくる。
裕希姉も涙を堪えきれないのか、ポツポツと涙を流していた。見ないふりをしてあげよう。裕希姉が泣いている姿なんて、そうそう見たことないのだから……。
そのとき、警察官のひとが話を聞きに来た。
「ちょっと異能力者が絡む事件ではお役に立てず……今しがた異能力者保護団体のほうに連絡入れましたので、少々お待ちください」
警察でもわからないこともあるのか……。
まあ、異能力者専門というわけではないのだから当然といえば当然かもしれない。
そうこうしているうちに、異能力者保護団体の二人がやってきた。
「な、なにこの惨状!?」
ひとりの異能力者保護団体ーー葉月瑠璃が驚いて目を見開く。
「まったく、異能力者というのはコレだから嫌いなんだ」
そうぶうたれているのは、第1級異能力特殊捜査官の何 美夜であった。
「隣室や真上の部屋にも被害が出ているぞ。このまま杉井がここで暮らしたいと言うなら口出ししないが、なるべくなら引っ越しを提案したい。また同様の事案が発生するかもしれないからな」
美夜さんは手厳しいことを言う。
警察官は部屋を物色し、めぼしい物が取られていないかチェックする。
頼むからロリ処女厨御用達のユニコーンまで手を出さないでくださいね?
「見た限り金銭狙いの泥棒ではなさそうですね。なにより二人殺害しています。愉快犯で間違いないでしょう」
警察がそう断定するのに違和感を覚えた。
「待ってください。実は他の二軒も同様の被害が出ているんです」
「え? まさか十字架の? このひとりでは運べない重量がある十字架をですか?」
「はい。……ターゲットはとあるメンバーの仲間ばかり狙っているんです」
「でしたら……何」「美夜だ」「美夜さんのおっしゃるとおり引っ越しを検討したほうがいいと思いますよ」
「引っ越しの宛がなくて……少し沙鳥に訊いてみます」
そう言い残し、藁にもすがる思いで沙鳥に連絡した。
『今度はなんですか?』
「あの……我が家が崩壊したじゃん?」
『はい』
「で、隣室や真上の部屋まで被害が出ちゃって、引っ越しを余儀なくされているんだよ。でも引っ越しする宛がなくて……」
『豊花さん、いま貯蓄相当貯めていますよね? それなら引っ越しくらいおちゃのこさいさいではありませんか?』
「いや、保証人とかいろいろ必要だし……家賃払うから誰かの家にとまらせてくれない?」
沙鳥は逡巡したのか一度間を置いた。
『一応、相部屋ですが頼めば暮らさせてもらえるかもしれません』
「本当!? え、誰の部屋に泊めてくれるの?」
『まだ決定事項ではありませんが、アリーシャさん宅なら泊めていただけると思いますよ』
「ありがとうございますありがとうございます!助かります!」
『それでは後程連絡致しますね』
これで衣食住の住の確保はひとまず安心だ。
警察官は死体にブルーシートを被せて室外へと搬送されていく。
それを見ていた裕希姉は、ついに我慢できずに膝から崩れ落ちて泣いてしまった。
それに吊られてしまい、泣きたくなかったのに、涙が止まることをしらない。
「ぜったいに、復讐してやる……!」
無関係な人間を殺した犯人を到底許せない。
異能力者だって、使いように寄れば毒にもなるし薬にもある。
薬と同じだ。過ぎれば毒物に変わるし、少量なら薬になる。
自分が言えた義理じゃないが、殺人はアウトだろう。
鏡子や香織のちからをつかって、必ず見つけ出してみせる!
そのとき、再三着信音が鳴った。
誰だと思い画面を確認すると、そこには朱音の文字。
どうして今さら朱音なんだ?
疑問に思いつつも通話した。
「もしもし? 急にどうしたの朱音?」
『いや、豊花って前々から強くなりたいって言っていたよね? ボクにはたしかにそう聴こえたよ』
ヤバい。言ったかどうか覚えていない。
『それで一石二鳥の取引があるんだけど乗らないかな?』
「一石二鳥? 嫌な予感がするんだけど」
『ボクのつくった異世界に、ちょっとだけ修行しに来てみない?』
「は、はぁ?」
なぜなにどうして朱音のつくった幼稚な異世界に行かなくちゃいけないんだ?
『豊花は現状、女体化と直感・感覚・感情・思考を強化するっていうデュアルスキルだよね?』
「まあ、そうなるのかな……」
『でも、それだけじゃ心細いからさ。こっちでマナを貯めて現代で魔法を使えるようになったらさらに便利だと思うんだよね』
「……」
でも、両親が亡くなった直後にそんな連絡をされても、とてもじゃないけど受ける気にはなれない。
「お姉ちゃんなら大丈夫だから。最近、きちんと定職についたし、独り暮らしだってできる。パパママが死んじゃったのは悲しいけど……豊花にもちゃんと自立してほしいし、やるだけならやってみなよ」
『お姉さんも言っているじゃないか。豊花はこれまで様々な問題に巻き込まれてきた。でも精霊操術を身につければ、瑠奈みたく不慮の事故に巻き込まれることはなくなる。ボクが保証するよ』
「……」
そんな、急に言われても……。
でも、私にはもっと戦えるちからがほしい。
いつまでも現状維持に居座るのはダメな気もする。
なによりーー両親を殺害した犯人は必ず後悔するまで殺してやりたい。
袖で涙を拭い、私はこう答えた。
「わかった。行くよ。いまより強くなって、大切なひとを守れるようになりたい」
『その意気だよ! ボクは過去につかっていたボロアパート前で待機しているから、到着したら電話ちょうだい。一応、沙鳥には許可とっているから、心配しなくていいよ』
ある意味、言いくるめられたな気がしないでもないが、たしかに私の戦力はあまりにも脆弱すぎる。
この機会に魔法使いになって、みんなを守れるようにするんだ。
私はいそいそと靴を履き替える。
「ちょっと出掛けるから」
「いってらっしゃい……ぐっす」
裕希姉は再三涙を流し頬を伝って地面に落下した。
両親がまともてなくなったんだ。無理もない。
私だっていまにも泣き出しそうだ。
でもここはグッと我慢する。
「行ってきます。裕希姉ーーお母さんーーお父さん」
こうして私は、過去に転移先に使われていたボロアパートを目指すのであった。
両親が亡くなってしまい、くよくよして涙を流して意気消沈の私に、裕希姉も悲しいだろうに元気に絡んできてくれる。
それがなによりも嬉しい。
でも、同時に裕希姉も瞳に涙を溜めていた。
たったひとりの異能力者のために愛のある我が家が崩壊してしまった。それがなにより悔しいし虚しい。私がいなければ、こんなことにはならなかったはずなのに。
沙鳥と舞香はホテルに宿泊中。香織とゆきは隣のホテルの部屋に仮住まいらしい。
そして、警察や清掃員が死体を掃除したリビングには、鏡子と瑠奈がくつろいでいる。
このまえ十字架で奇襲を喰らったのに、呑気なものだと感心すらしてしまう。
「今回鏡子を呼んだのはほかでもない。犯人に目星がつきそうな相手を異能力で探して」
「えー、わたしの役割は?」
「敵対勢力が異能力をつかったときに対処してくれるのを期待してるよ」
「……期待? 期待!? うれしいなぁ……」
上手く言いくるめられたな。とはいえ、相手はもしかすると凶悪な異能力者かもしれない。そうなったときの保険として瑠奈を配置しておきたいのだ。
別班では香織がネット仲間を駆使して情報を集めている。
香織の護衛としては、ゆきを配置している。
沙鳥は嘘を見抜くちからがあるため、情報提供者と対面して嘘か真偽かを確かめる重要な扱いだ。
無論、沙鳥の護衛には強力な異能力者でありつつ蹴り技も特化している舞香がいるため、ここはひと安心だろう。
ひとまず私は、壊れた十字架が貫通した壁を修復していた。
このままでは吹き抜けだ。無作法な大工だが、なにもないより安心だろう。
と、そこで電話が鳴った。
『すみません……onion channelの掲示板に……極悪非道な……薬物密売闇金みかじめ料を取る……悪人を異能力をつかって潰してやったぜ……的な書き込みがありました』
「諸に私たちのことじゃん。なーにが極悪非道なんだよ。まったく」
いや、一般人からすると、覚醒剤の密造・密売・高利の金貸し要するに闇金、暴力沙汰を金銭で解決、未成年売春斡旋。どこからどう見ても極悪非道な組織にしか思えなくもないんだけど……。
「ぜったい見つけて後悔してやるからな?」
瑠奈は怒り心頭で指をポキポキ鳴らしはじめた。
「私が触れた相手に触れたらしくて、相手の視界をジャックできます」
「!? 見てみて! これなら早めに討伐できそうだ」
前々から思っていたけど、進化してからの香織の能力の上がり幅が異常だ。一気に一線級で活躍できるポジションを備えている。
「わ、わわわ私からも相手の素性がわかりました!」
「どれどれ?」
『いまプリント渡しますね』
数枚のコピー用紙が複数枚コピー機から排出されて物を手にとる。
それを一枚受け取り、顔写真と名称、性別、異能力など詳細な情報が掲載されていた。
「よくそんなパソコンでこんなに調べられるんだな」
「ささ、沙鳥さんから新たにハイスペックのパソコンを譲り受けたからですです。ままま昔のパソコンはポンコツなうえ、さささらに巨大十字架がちょうど真下にあったパソコンが激突してお釈迦になってしまった、しまったんです」
「なるほどな~」
手渡された用紙を一枚手渡される。
そこには、どこにでもいそうなやや痩せぎみの青年が映っていた。無論、性別は男です。名称は前田健(まえだけん)。
顔は特徴がないように見えて、鼻の大きさ、剃っていない眉毛や髭、ガリガリに痩せていることから、見間違いはないだろう。
肝心の異能力は、十字架を好きなサイズに変更可能なうえ、術者が持っているあいだは重さを感じないと来ている。
備考欄に、嫌いな組織一覧に。
愛のある我が家
輝く星
girls traffickig organization
異能力者保護団体
とまで書かれている。
狙うならせめて異能力者保護団体からにしてくれよ……とぼやいている暇はない。
残念ながら輝く星は私たちが壊滅してしまったし、girls traffickig organizationはとっくの昔に澄によって壊滅させられている。
となると残りは愛のある我が家と異能力者保護団体になるが、異能力者保護団体は各都道府県に点在しているし、さすがに無理だと手を引いたのだろう。
そこでし白矢が立ったのが、うちら愛のある我が家だというわけだ。
……両親が亡くなってしまったのをいまさらながら実感する。
怒りや悔しさ、理不尽さがふつふつと込み上げてくる。
裕希姉も涙を堪えきれないのか、ポツポツと涙を流していた。見ないふりをしてあげよう。裕希姉が泣いている姿なんて、そうそう見たことないのだから……。
そのとき、警察官のひとが話を聞きに来た。
「ちょっと異能力者が絡む事件ではお役に立てず……今しがた異能力者保護団体のほうに連絡入れましたので、少々お待ちください」
警察でもわからないこともあるのか……。
まあ、異能力者専門というわけではないのだから当然といえば当然かもしれない。
そうこうしているうちに、異能力者保護団体の二人がやってきた。
「な、なにこの惨状!?」
ひとりの異能力者保護団体ーー葉月瑠璃が驚いて目を見開く。
「まったく、異能力者というのはコレだから嫌いなんだ」
そうぶうたれているのは、第1級異能力特殊捜査官の何 美夜であった。
「隣室や真上の部屋にも被害が出ているぞ。このまま杉井がここで暮らしたいと言うなら口出ししないが、なるべくなら引っ越しを提案したい。また同様の事案が発生するかもしれないからな」
美夜さんは手厳しいことを言う。
警察官は部屋を物色し、めぼしい物が取られていないかチェックする。
頼むからロリ処女厨御用達のユニコーンまで手を出さないでくださいね?
「見た限り金銭狙いの泥棒ではなさそうですね。なにより二人殺害しています。愉快犯で間違いないでしょう」
警察がそう断定するのに違和感を覚えた。
「待ってください。実は他の二軒も同様の被害が出ているんです」
「え? まさか十字架の? このひとりでは運べない重量がある十字架をですか?」
「はい。……ターゲットはとあるメンバーの仲間ばかり狙っているんです」
「でしたら……何」「美夜だ」「美夜さんのおっしゃるとおり引っ越しを検討したほうがいいと思いますよ」
「引っ越しの宛がなくて……少し沙鳥に訊いてみます」
そう言い残し、藁にもすがる思いで沙鳥に連絡した。
『今度はなんですか?』
「あの……我が家が崩壊したじゃん?」
『はい』
「で、隣室や真上の部屋まで被害が出ちゃって、引っ越しを余儀なくされているんだよ。でも引っ越しする宛がなくて……」
『豊花さん、いま貯蓄相当貯めていますよね? それなら引っ越しくらいおちゃのこさいさいではありませんか?』
「いや、保証人とかいろいろ必要だし……家賃払うから誰かの家にとまらせてくれない?」
沙鳥は逡巡したのか一度間を置いた。
『一応、相部屋ですが頼めば暮らさせてもらえるかもしれません』
「本当!? え、誰の部屋に泊めてくれるの?」
『まだ決定事項ではありませんが、アリーシャさん宅なら泊めていただけると思いますよ』
「ありがとうございますありがとうございます!助かります!」
『それでは後程連絡致しますね』
これで衣食住の住の確保はひとまず安心だ。
警察官は死体にブルーシートを被せて室外へと搬送されていく。
それを見ていた裕希姉は、ついに我慢できずに膝から崩れ落ちて泣いてしまった。
それに吊られてしまい、泣きたくなかったのに、涙が止まることをしらない。
「ぜったいに、復讐してやる……!」
無関係な人間を殺した犯人を到底許せない。
異能力者だって、使いように寄れば毒にもなるし薬にもある。
薬と同じだ。過ぎれば毒物に変わるし、少量なら薬になる。
自分が言えた義理じゃないが、殺人はアウトだろう。
鏡子や香織のちからをつかって、必ず見つけ出してみせる!
そのとき、再三着信音が鳴った。
誰だと思い画面を確認すると、そこには朱音の文字。
どうして今さら朱音なんだ?
疑問に思いつつも通話した。
「もしもし? 急にどうしたの朱音?」
『いや、豊花って前々から強くなりたいって言っていたよね? ボクにはたしかにそう聴こえたよ』
ヤバい。言ったかどうか覚えていない。
『それで一石二鳥の取引があるんだけど乗らないかな?』
「一石二鳥? 嫌な予感がするんだけど」
『ボクのつくった異世界に、ちょっとだけ修行しに来てみない?』
「は、はぁ?」
なぜなにどうして朱音のつくった幼稚な異世界に行かなくちゃいけないんだ?
『豊花は現状、女体化と直感・感覚・感情・思考を強化するっていうデュアルスキルだよね?』
「まあ、そうなるのかな……」
『でも、それだけじゃ心細いからさ。こっちでマナを貯めて現代で魔法を使えるようになったらさらに便利だと思うんだよね』
「……」
でも、両親が亡くなった直後にそんな連絡をされても、とてもじゃないけど受ける気にはなれない。
「お姉ちゃんなら大丈夫だから。最近、きちんと定職についたし、独り暮らしだってできる。パパママが死んじゃったのは悲しいけど……豊花にもちゃんと自立してほしいし、やるだけならやってみなよ」
『お姉さんも言っているじゃないか。豊花はこれまで様々な問題に巻き込まれてきた。でも精霊操術を身につければ、瑠奈みたく不慮の事故に巻き込まれることはなくなる。ボクが保証するよ』
「……」
そんな、急に言われても……。
でも、私にはもっと戦えるちからがほしい。
いつまでも現状維持に居座るのはダメな気もする。
なによりーー両親を殺害した犯人は必ず後悔するまで殺してやりたい。
袖で涙を拭い、私はこう答えた。
「わかった。行くよ。いまより強くなって、大切なひとを守れるようになりたい」
『その意気だよ! ボクは過去につかっていたボロアパート前で待機しているから、到着したら電話ちょうだい。一応、沙鳥には許可とっているから、心配しなくていいよ』
ある意味、言いくるめられたな気がしないでもないが、たしかに私の戦力はあまりにも脆弱すぎる。
この機会に魔法使いになって、みんなを守れるようにするんだ。
私はいそいそと靴を履き替える。
「ちょっと出掛けるから」
「いってらっしゃい……ぐっす」
裕希姉は再三涙を流し頬を伝って地面に落下した。
両親がまともてなくなったんだ。無理もない。
私だっていまにも泣き出しそうだ。
でもここはグッと我慢する。
「行ってきます。裕希姉ーーお母さんーーお父さん」
こうして私は、過去に転移先に使われていたボロアパートを目指すのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!
TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。
その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。
競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。
俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。
その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。
意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。
相変わらずの豪華客船の中だった。
しかし、そこは地球では無かった。
魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。
船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。
ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ……
果たして、地球と東の運命はどうなるの?
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる