前代未聞の異能力者-自ら望んだ女体化だけど、もう無理!-

砂風

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最終章

Episode194╱神造人型人外兵器No.3-5-9の殲滅作戦(後)

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(296.)
 豊かな生活の仮とはいえ効力はずいぶんある規則を制定してから数日。
 唐突に沙鳥から電話をかけてきた。

「もしもし、沙鳥? 神造人型人外兵器ナンバー5はとっくに消滅させたけど、何か用?」
『しくじりました。舞香さんと私では荷が重すぎました。私は役に立たないとしても、まさか舞香さんですら太刀打ちできないとは……』

 舞香と沙鳥が出張して向かった先は、たしか北海道のナンバー9のはず……。
 たしかに、このまま無差別に人類抹消が繰り返されたら溜まったものではない。

『幸い、舞香さんの異能力の一部は通用して、幾度の空間置換を繰り返し用いて、神に対抗できるだけの異能力者が二名も在籍している風月荘近辺まで転移させたのです』

 え?

 ええええ!?

「その転移先というのは……」
『無論、最終的にはあなた方神殺しの能力を持つ稀少な異能力者が二人いる風月荘の多摩区に転移させておきましたので、あなた方ーー豊花さんと宮田さん、おまけに多少なりとも戦力になる瑠奈さんを引き連れて、至急討伐にあたってください』

 嫌な予感はしていたけど、やっぱりこうなるんじゃないか……。

『いままでのデータを踏まえるのに、彼ら彼女らは高いところが好きなようです。これからあなた方には無差別に殺人を起こしている現場を見つけ出し、至急殺害してもらうことになります』
「ちょ、ちょちょちょちょっと待ってよ! 連日連夜神造人型人外兵器とばかり対峙していて、毎度ながら命からがらに戦ってきたのに、またすぐ戦いに出向かないといけないの!?」

 いくら自分や宮田が神に対抗する武器を持っているからといって、相手は思わず綺麗だと言いたくなる風貌をした、内実人類を消滅してしまう光線を放つ敵対者ばかりなんだ。
 毎度ながら相手が油断していたから勝てた勝負だったけど、全部が全部、油断や隙を見せてくれる相手だったからなんとかなってきたというだけだ。
 これから幾度の戦いを強いられるか知らないが、相手が本気を出したら勝てないとしか考えられない。

『べつに責任放棄してくださっても構いませんよ? そしたら豊花さんの愛称をヘタレにするだけになりますが』
「なにその地味な脅しは……」
『第一、たったひとりの人間擬きのせいで街が焼け野はらになっても、私は関係ないーーと宣うつもりですか?」沙鳥の通話先からため息が聴こえる。「これは豊花さん、瑠奈さん、宮田さんの三名にしか成し遂げられない仕事なんですよ? 我々は期待しているのです。あなた方一同に……』
「……わかったよ。行けばいいんでしょ行けば」
『話のわかる方で助かります。地図は送れませんが、神造人型人外兵器は皆揃いも揃って高い場所がお気に入りです。探し出すのは容易でしょう。いい報告、お待ちしておりますよ』

 それだけ捲し立てられた時点で、通話は切れてしまった。
 仕方なく、まずは月の間をノックする。
 渋々といった鈍さでドアを開き、「何か用~?」と、まだ寝ぼけ半分の瞳をした瑠奈が部屋から出てきた。

「神造人型人外兵器のナンバー9がここ近辺に舞香の異能力で飛ばされて来たらしい。だから沙鳥が対処してくれってさ」
「またー? どんだけ兵器を生み出す気なんだよ、バ神はよー」

 瑠奈は仕方ないといった雰囲気でパジャマを衣服に着替え始めた。
 その間に、風の間へと足を運ぶ。そのまま三回ノックした。

「何か用ですか?」
「ええ、まあ。この近辺に神造人型人外兵器ナンバー9が出現したらしい。だから、私と瑠奈と宮田さんで、その討伐をやってくれだってさ。これは沙鳥の命令だから」
「はぁ……わかりましたよ。少しお待ちください。銃弾に念を込めますから」
「わかった。準備ができたら声をかけて」

 私は風の間をあとにし、出発までのんびりと花の間で仰向けになった。

 ナンバー9……いったいどのような攻撃をしてくるのだろうか?
 ナンバー9……ナンバーの強さは序列ではなく製造ナンバーだというのはなんとなく理解できてきたが、だからといって強さは未知数だろう。

 しばらく、いや数分が経過したとき、パジャマから普段着に着替えた瑠奈が部屋の扉を開けた。

「とりあえずこっちは準備おっけぃだよ?」
「うん。ごめん、巻き込んじゃってさ……」
「豊花も舞香も沙鳥も大事な仲間だし、そこからお願いされたら断れる分けないじゃん」

 と、瑠奈はプンプンと怒りながら、二人で宮田を待つことにした。
 待つといっても数分後には拳銃を片手に所持した宮田が部屋をノックし入ってきた。

「神殺しの弾丸はできたの?」

 瑠奈は素朴な疑問を問う。

「ええ。銃弾数は二発しかありませんが、念を込める作業には神経を使うので、これで勘弁してください」
「外すなよ?」

 瑠奈が念を押したことに対して、宮田は緊張しながらも頷きで返事を示す。
 このまま三人で纏まり、風月荘をあとにした。
 外に出た瞬間、宮田の視線が鋭くなる。

「宮田さん? いったいなにが……」
「この付近のエリアに、確実に人外が存在しますね。場所もある程度なら察知可能です。着いてきてください」

 たしかに、そういえば宮田は人間と人外の区別をーーどういう原理かはわからないがーー察知できるらしい。要するに人外レーダーといえなくもないのだろう。
 しかし、これは異能力者になるまえから備わっていた特技だという。
 まだまだ神造人型人外兵器が誕生していない過去では、無用(使いどころのない能力)でしかなかっただろうが、いまとなっては頼もしいことこの上ない。
 宮田に言われるがままに、瑠奈と私は一歩下がって宮田の後ろを並んで歩く。
 路地裏を出て繁華街の道路ーー登戸駅と向が丘遊園駅のあいだの道をただただ歩く。

 ーー平和だと思っていた繁華街の様子が、一晩もかからずに滅茶苦茶な惨状を呈していた。

 昔馴染みの定食屋には穴がポッかりと空いており、登戸から遊園に行くまでの道には無造作に死体が放置され大量に倒れていた。
 中には胸になにかが貫いたような空洞が空いている男性もいたり、頭上からわけもわからず突然死したであろう顔面が見るに耐えない姿をしている女性もいたり、中にはまだ無邪気な子どもであろう幼児もバラバラ死体と化していた。

「なんて……惨いんだ」
「……神造人型人外兵器はあのマンションの屋上にいると思われます。ですが困りましたね……あのマンションは内部からでは屋上に繋がっていない。降りてきてくれないと話し合いすらもできない」

 たしかに、一理どころか百里あるだろう苦悩だが、幸い私には対策法があるし、それよりも楽に飛翔可能な瑠奈もこちらには存在している。

「どのようにしてあそこに辿り着けばいいのか……たしかこのマンションは内部からでも屋上に行くエレベーターはないはず」
「そこは心配しなくていいよん。豊花もマナ温存のためにも、みんなわたしの付近に集まって」

 私は瑠奈が運んでくれるのだろうと考え、すぐに瑠奈の右隣に陣取った。
 宮田は訝しげにも、なにか手段があるのかもしれないと考えたのか、宮田は瑠奈の左隣へと近寄る。

「んじゃ、一気に行くよー」

 瑠奈が宣言したとおり、普段よりも早くマンションの屋上まで飛翔し、屋上のコンクリートへと静かに着地した。

 そこに居たのは、一見どこにでもいそうな髭面の親父だった。

「……君らが地球、いや宇宙の害悪たちの筆頭か。青海とかいう輩に僻地に飛ばされて悔しい思いをしていたが、いまならむしろ感謝したいくらいだ」なにせ……とナンバー9はつづけた。「舞香は単なる異能力者。沙鳥は単なる雑魚。我々にとって後に処分すればいいというだけの情けない奴らばかりだった。だが、お前らは違うのだろう?」

 ナンバー9の言っている意味が半分しか理解できない。

「だがここに強制的に転移されたのはむしろ幸運だったといえよう。なにせ、神に対抗するために作られた神殺しの剣を持つ者や、神殺しの弾丸を持つ者、異世界から訪問した少なからず被害を与えてくる者ーーこれらの蛮族をまとめて処分できるとは。やはり神は我らを贔屓してくれている。おお、神よ! 今から私があなた様に対する仇敵を皆処分してご覧にいれましょう!」

 瑠奈は呆れを通り越した表情を浮かべる。

「処分されるのはそっち側なんだけど理解できてるの? くそうぜー野郎だなオイ!」
「瑠奈落ち着いて! 冷静にならないと勝てる勝負も勝てなくなるから!」

 私の忠告を聞いて、瑠奈は少し正常心を保ったように思えた。

「さあ! 神造人型人外兵器最強と自負している私に、君らごとき何人、何十人、何百人でも変わらない。みな閃光で焼き付くしてしんぜよう」

 ナンバー9は、他の神造人型人外兵器同様、腕を伸ばし片手を太陽に翳しながら閃光を集め始めた。
 そのチャンスと捉えた瑠奈は、まず先手として風の目視できない風の剣を構え、ナンバー9へと切りかかる。

 だが、だがしかし。

 ナンバー9に当たった風の剣は、出血すらしない程度のかすり傷を負わせただけで終わらせてしまった。
 私はユタカを幽体化した後に肉体化させ、すぐさま神殺しの剣に変態させた。この間、わずか三秒。

「宮田さんは二人で時間を稼ぐから、狙いを定めて隙を見つけたらナンバー9に向かって射撃してください!」

 宮田さんに言い残し、私は瑠奈と合流してナンバー9を挟み撃ちにし攻撃を途切れさせないようにした。
 私の剣術は素人以下のせいか、はたまた相手が剣(それは)危険だと察知したのか、まるで刃が当たらない。

 瑠奈も狂風で固めた目視できない剣を用いたり、バックステップしたうえで強力な風弾を放ったり風の刃をナンバー9に直撃させたりと、様々なバリエーションで攻め続けている。

 なのだが……私の剣はことごとく外れてしまい、瑠奈の多種多様な攻撃に至っては、直撃しても多少不快な表情を少し見せるのみで、ほとんど攻撃が直撃しているというのにも関わらず、飄々とした顔をしており余裕すら感じられてしまう。
 二人で挟み撃ちにし無造作に攻撃に転じているせいか、おそらく、宮田も宮田でフレンドリーファイアしないような状況が見出だせずにいるのだろう。

 こうなればーーマナの総量は枯渇気味だがーー私も神殺しの剣を持ちながらも、ある状態になることに決めた。
 瑠奈も察してくれたのは、一時、ナンバー9から二人とも距離を置く。

 私は詠うように詠唱を唱え始めた。
 瑠奈と私の詠唱が同時にはじまる。
 私はフレアを召喚するための、合言葉ともいえなくもない詠唱をはじめた。

「我と契りを結びし火の精霊よ 私にとっての光となる炎よ 我にちからを貸してくれ フレア!」

 同時に瑠奈もシルフィードを召喚……いや、瑠奈曰く喚起だっけ?
 まあどうでもいい。

「微風瑠奈の名(な)に於(お)いて 風の精霊を喚起(かんき)する 契約(けいやく)に従(した)がい 今(いま) 此処(ここ)に現界(げんかい)せよ シルフィード!」

 唱えた瞬間、私の隣には火の精霊のフレアが。瑠奈の隣には風の精霊であるシルフィードが姿が現れた。

 そしてーー同時に同じ言葉を口にした。

「「同一化!」」
 寸刻、私たちの姿は精霊を宿した外見に進化した。

「ほう? それで私が打倒できるとでも言いたいのかね? 無駄な足掻きはみっともないぞ?」
「わたしは人類を無差別に殺害して悦に入っているあんたのほうが、よっぽどみっともないけどね!」

 瑠奈の周囲に素早い風が纏いつく。その風の音が近場に響き渡る。
 と、微動だにせず太陽に手を翳した赤い紅い閃光の塊が、ついに四方八方、東西南北、前後上下に無作為に放たれた。
 マンションの縁に向かった閃光は、案の定真下に軌道を変えた。
 マンション外から悲痛な叫声が、マンションの屋上まで響き渡る。

「なにしているんだよ……無関係な一般市民を巻き込んでなにが楽しいんだ!?」
「なにが楽しいんだ? いいや、楽しくはないね。ただ、これは神様からの直々の命令だ。今は世界中の民を根絶やしにする予行演習のようなものだ。だから私は喜怒哀楽といった感情はない。ただ、神(ボス)の命に従うまでだ」

 神様……神様……神様、神様、神様、神様、神様神様神神神!!
 こいつらは毎回それしか言っていない!
 自我なんてありもしない!
 あんなにも適当な神を、人類滅亡を企んでいる神を、こうまで信頼できているだなんて、気が狂っているとしか思えない!

「君ら程度、いてもいなくても仕事には支障はないが、目障りだ。人間風情が。だから君たちには消えてもらうよ」

 ナンバー9はこちらに向けて手のひらを差し出す。
 そこから赤より赤い閃光が放たれた。
 それを危機察知し、私はギリギリのところで身を躱した。
 ところが、背後に待機していた宮田の肩に直撃。微量な出血を流してしまう。
 痛みのあまりか、宮田は姿勢を崩し屈んでしまう。

「フレア!」
『はい!』

 私は一気にナンバー9に接近し、右腕を掴み爆撃を食らわせた。
 ナンバー9は痛みからか顔を歪めるが、すぐさま左手を翳した。
 私はそれを直感で察知し、すぐさま距離を取る。

「たしかに厄介だ。神造人型人外兵器は人間界がつくる武器には耐性があるが、異世界からの技術には、如何にも対策がなっていない。次回から対策を考えなければならない」

 その背後から瑠奈が腕に竜巻を纏わせ、ナンバー9へと飛び込む。
 しかし、刃となった腕が当たる直前、瑠奈の風刃に当たらないよう掌底を叩き込み距離を空ける。

「そこの青年は身動きが取れない。風刃も致命だにはならない。さらにいえば貴様の炎は弱々しい。この状況下で、どのような策があるというのかな?」

 悔しいが、言われていることに反論できない。歯がゆさを覚えてしまう。
 皆が皆、一定の距離を置いたからか、再びナンバー9は手のひらを上空に翳して、今度は赤というより朱殷に近いどす黒い閃光を手のひらに集め始める。

「本来ならば君たちごときに切り札を使いたくはなかったのが、せめてもの慈悲だ。私の最大の攻撃をプレゼントするとしよう」

 赤でも紅でもない赤赤とした朱殷色の閃光に対し、冷や汗が滲んでくる。
 あれを食らったら跡形も残らない。それが直感で理解してしまう。

「うおおおおっ!」

 何としてでもアレは止めなくてはならない。
 体力の限界を振り絞って、火事場の馬鹿力でもって、余った余力を使い果たしてでも、アレを止めなくてはならない!
 私は自分にこのような脚力があったのかと言いたくなるほど、全身全霊をかけてナンバー9に一気に接近した。
 剣のリーチが伸びるギリギリのラインを見いだし、剣を振り上げた。
 そのまま降り下ろす。

 しかしーー。

 剣はナンバー9に当たる直前で固まってしまう。
 ナンバー9に見えない壁があるようにしか考えられないほど、剣はナンバー9を斬る前に突如として静止した。
 よくよく見ると、朱殷色のオーラが全身から、近場で目視しなければわからないほどの毒々しい赤色としたオーラを纏っているのだ。
 そのオーラが、まるで盾かのように剣を阻害してくる。

「お前らはまとめてきょう、おしまいだ。遺書を書く暇すら与えない。それでは皆さん、ごきげんよーーう!?」

 ナンバー9が唐突に言葉を途切れさせた。
 同時に一発の銃声。
 その胸には、赤とは違う朱殷とも違う、生々しい血液がパラパラと出血したのだ。

「俺の弾は、神の弾丸と云われているが、それ以前には人外殺しの弾丸と云われていた」宮田はふらふらしながらも立ち上がった。「つまり、だ。どのような人外だろうと、特殊な能力で身を防いでもいてもーー俺には無意味なんだよ」
「くっ! なんだと!? 神の尖兵である私が、このようなちゃちな弾丸一発で!?」

 ナンバー9は悔しそうな表情を顔に浮かべつつ、特製の弾丸のおかげで身動きひとつできないようになってしまった。

「豊花! そいつはすぐ復活する! すぐに止めを刺して!」
「瑠奈に言われなくてもわかってる!」

 私は神殺しの剣を天に翳した。

「待ってくれ! その剣で刺したら二度と現世には帰ってこれないんだ! 頼む! 見逃してくーー」

 私は容赦なく天高く翳した神殺しの剣を、ナンバー9に降り下ろした。

「れーーあぁあああああアアアアア!!」

 神殺しの剣で叩き斬られたナンバー9は、皮肉なことに綺麗な粒子となって風に流れて消え去った。

「俺の神の弾丸は、神に一撃を食らわすことには使えるが、神造人型人外兵器を完全消滅させるためには、おまえーー杉井豊花の特別な剣で止めを刺す必要があるんだ。でなければ、神造人型人外兵器は時を経ち復活してしまう」
「なるほど……」

 だから、いくら神造人型人外兵器対策の異能力者がいたとしても、現世から完全消滅させる剣を持つ私を、皆は重宝しているのか。

「まあまあ、本日の仕事は完了したし、いったん家に戻ろ」

 瑠奈の発案により、私たちは風月荘に一時帰還することにしたのであった。
 
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