Raison d'être

砂風

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Episode1/Raison detre

裏幕/嵐山沙鳥ー誤りでも世界を変える、幸福だからいいんだー

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 あれから車を様々な地域に走らせ、瑠奈さんに売買を教えながら仕事をこなしました。
 その後、わたしは瑠奈さんを部屋まで送り、自分の部屋に帰ることにしたのですが……そのとき。
「沙鳥ちゃん、神様はたしかに“在る”よ、これは間違いない」
「ーーえ?」
 階段を登っていたわたしの目の前に、朱音さんが待ちかまえていました。
「いませんよ、神様なんて……。もし、もしも神がいるのでしたら、どうして、どうしてわたしを苛めてくるのか理解できませんッ!」
 ついつい大声で否定してしまいました。ああ、はしたない。
 いえ、朱音さんの言っているとおりなのかもしれませんよ?
 神がいると信じる心があるからこそ、唯一の生き甲斐を壊されたこの身でも、こうして生き永らえていられるのでしょうから。
ーー大勢の人々に覚醒剤を押し与え地球を汚染してやるっ!ーー
 ……あの日、わたしがわたしに誓った言葉。
「見つからない理由は、神様が外にいると思っているからだ。神というものを知りたいなら、内側も探さないとダメだ。そして、神は善悪で判断してはくれない。ははっ、だって、君自身が選んだ道だとか言うんだから」
 わけがわかりません。相変わらず朱音さんの言うことは、理解に苦しみます。
 わたしは朱音さんを見て、心中を覗いてみました。
 ーー沙鳥ちゃんは救うには必要なんだ。たとえ神が『間違っている』と断じても、だ……。
「……はい?」
 結局、聞こえてきたのはわけのわからない独り言でした。
「世界は君なんだ。同時に、君は世界でもある。だから、君を救える神様がいるとしたら、それは君に他ならないんだとさ」
「あの……さっきからなにを仰られたいのか、よくわかりません」
「いやいや、それでいいよ。でも、遅れてごめんね。失敗せず、これから君の世界を変えてみせるよ。なぜなら、ボクがあの子を連れてきた理由は世界にイレギュラーを挟み込むためなんだ。君の正道を壊すために、ね」
「……は、はぁ」
「あたし……いや、ボクだ。ボクはもう寝るよ」
 わけのわからないまま、説明を求める間さえ与えてくれずに、朱音さんは去っていかれました。
「認めて見せる。思い知らせてやる……人間は…………」
「?」
 だれかに対してなにか言っていましたが、わたしには、最後まで聞こえませんでした。
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