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跳弾•収束発散•成層圏
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To my beloved the Self-Defense Forces(愛する自衛隊へ)
“異力対策班(いりきたいさくはん)”、
通称“異班(いはん)”と呼ばれる自衛隊の隊がある。
そこには特殊能力を操る犯罪者との戦闘、確保、ときによって殺害を行うための人材が集められる。
その隊の中にいる隊員は皆、超常現象を起こす特殊な能力を操ることができる、特異能力者である。
異班の隊員、青野は先輩である五十嵐と話していた。
「地球規模で霊力振動を起こすことができ、その能力で犯罪を行なっている人間がいる。内容は殺人だ。」
「はい。」
青野は返事をする。髪型は坊主に近い短髪であった。
「振動のことだが、分かるか?」
「はい。俺もずっと、そいつの出す振動を感じていました。」
「ああ。その振動の大きさから分析して、そいつは今日本の東京にいる。
我々2人でバティを組む。そして、その殺人を犯しているやつを調査し、捕らえに行く。抵抗する場合は殺していい。」
「はい。」
「人間の振動が多く、我々異班に気付かれにくい場所だ。
やつは今も害のある霊力振動を起こし続けているから、どこにいるか分かりやすい。
ただ、特異能力者が常に出す振動と、通常の人間が出す振動は少し違う。
やつを探すとき、いつものように近づくと、我々が探しているのがばれる。
そのため、振動を霊力を操ることのできない人間と同じようにする必要がある。」
「…はい。そうですね。」
「振動を通常の人間と同じように変えると、能力を操りにくくなるが、仕方ない。
遠く離れて連絡をとるとき、こちらも振動で会話を行う。
声を出し、通信機器で話すと振動が大きく、なにをしているか敵にばれやすくなる。通常の人間も観測できる振動の概念だから、尚更だ。」
「了解。分かっています。」
この世には、観測できない霊力というエネルギーがある。
全ての特異能力者は霊力を利用し、霊力振動という振動を起こし、特異能力を操ることができる。
魂の粒子の霊力振動の動き方によって、操ることのできる特異能力が決まる。
また、特異能力者は肉体内の電気信号を操ることができる。その電気信号は、肉体の一部と捉えられる。
だいたいの能力者は、それら能力を操ることのできる規模は限られている。
東京。
服装は私服だった。
青野は外を歩き、敵の出す周波数を追っていた。
特異能力者は振動に敏感である。
周囲の振動の情報を、ふつうの人間よりも具体的に想像しやすかったり、観測しやすい傾向がある。
それを利用し、犯罪を行う特異能力者同士は振動によって、簡単にコミニュケーションをとっており、簡単なコミュニティも形成している。
「……。」
やつの大きな周波数が消えた?
青野は気付く。
同じ種類の、大きな周波数は漠然と分けて2つあった。五十嵐とはそれぞれを追っていた。
そのうちの1つの周波数は、近くから放たれていたはずなのだが。追跡がばれたか?
「すみません、なにをされているんですか?」
近くにいた、白いワイシャツを着た男に、話しかけられる。
「……ああ、俺ですか?」
青野が答える。
「少し他の人と待ち合わせを…」
その瞬間、音なく頭上から雷が落ちてくる。
カッと周囲が光った。青野の立っていた場所から煙が上がる。
「惜しいな。」
白いワイシャツの男が言う。
「ところで、自衛隊の人。そんなに派手に能力を使っていいのか?」
男が聞いた。
男の背後に、青野は立っていた。
青野は男を拘束しようと、相手の周囲に向かって放射状に電気信号を飛ばす。
男が消える。
「上空…。」
「正解だ。」
空中に男は浮いていた。
「上空そのものがお前の本体と言える、能力の性質か。
霊力振動を上空から地面へ降ろしている。よって浮遊も可能…。」
「さすが、異班。感じる振動の分析が速い。」
「目標と遭遇。現在、襲撃に合っています。」
青野は、右手を口の少し横の近くに置き、霊力振動を使って五十嵐に連絡する。
「本名は、斎藤春世(さいとう はるよ)。男です。今の服装は、白いワイシャツと、黒いズボン。
能力は、上空を肉体とするもの。おそらく成層圏付近。」
「俺の振動から個人情報を把握したか。そうこないとな。」
名前を言われた斎藤が言った。
青野清人(あおの きよと)の特異能力の名称
『Ricochet(跳弾)』
霊力の電気信号を、物質がある空間内で跳弾させる能力。
粒子などがあれば跳弾させることができる。
跳弾させ霊力の電気信号を次のどの方向に動かすか、ある程度自在に決めることができる、
跳弾させた点と結んで領域とし、その領域を自分の肉体の情報の一部とする。
その肉体の一部となった領域を用いて、瞬間移動、空中浮遊、電気信号を操り強力な電撃を放つ、などができる。
実力的に、はじめに霊力の電気信号を放つときの射程距離と、跳弾させることのできる全体の距離は限られている。
斎藤春世(さいとう はるよ)の特異能力の名称
『Stratosphere transmission(成層圏振動)』
成層圏の領域を自分の肉体の情報の一部とする能力。
その領域内で霊力を循環させ、新しいエネルギーや新しい振動をつくる。
自分な振動を、成層圏の上から下の地球へ送り、地球上全体に自分のつくった情報を降ろすことができる。
それにより、自分の肉体や物質の瞬間移動、地球中の振動の細かな観測、自分がつくりだした現象の情報の地球中の伝搬などを起こせる。
「…お前の個人情報はわれた。お前、もし逃げても指名手配されるぞ。」
青野が斎藤に言った。
「心配いらない。実は俺は、成層圏の情報を用いて一生、空で遊んで暮らすこともできる。」
「挑発して逃げるのか?」
「そんなことはない。顔をあわせたかったんだ。そして殺しにきた。」
そう斎藤が答え、手から稲妻を放とうとする。
その電撃が放たれると、別方向から斎藤に向かって異なる電撃が走った。斎藤は、その電撃を自分の電撃によって防ぐ。
「もう1人が来たか。」
宙に浮いたまま、斎藤が言った。
「急いで来たぞ。」
そう言って、五十嵐が現れた。
「あいつか。攻撃して良かったか。」
「はい、あいつです。今ので分かりました。
あいつは上空の領域を肉体としますが、逆に上空の情報を肉体としないということもできます。それによって感電を防いだようです。」
五十嵐慎司(いがらし しんじ)の特異能力の名称
『Rise and fall(収束発散)』
霊力を使ってエネルギーが発散しても、自動で肉体にまた収束し、エネルギーがなくならない能力。
永久機関の性質を持っている。
これを利用して、霊力を用いた体力のなくならない連続的な攻撃、無限の体力の回復、無限の肉体の再生を行うことができる。
実力的に、外部に放出できるエネルギーには上限がある。
「あいつは抵抗する。我々を殺そうとする意思が変わらないなら、殺害するとする。」
五十嵐がそう判断した。
「了解。」
青野がその返事をするのとほぼ同時に、斎藤の周囲から、バチバチと雷と思われる光が現れはじめる。
そして、青野と五十嵐の肉体の内側から、刃のような電撃が貫いた。
「…!!」
五十嵐が目を見開く。
「…情報を直接…俺たちに降ろしたのか!」
五十嵐の傷は、すぐになくなる。彼が心配したのは、バディの青野だった。
「青野!大丈夫か!」
「大丈夫です。電気信号を操って治ります。」
腹をおさえ、青野が言った。
「…作戦だ。俺はあいつの範囲を絞る。お前はその周囲を掌握し、あいつ殺せ。」
「…はい。」
青野が返事をすると、五十嵐は斎藤に向かって放射状に電気信号を飛ばした。
続いて、青野が同じ領域の上空に電気信号を跳弾させる。
青野の放った電気信号は空気中の粒子を伝い、急速に五十嵐の放った電気信号の周囲を囲んだ。
斎藤は目を細めた。
「…これは…」
五十嵐は量が限定されているかわりに効果が強力な電気信号を放出する。
その電気信号のある領域を五十嵐の肉体とし、その領域内の物体を感電させられるようになる。斎藤は斎藤自身の電気信号によって、五十嵐の感電させる情報自体は分解できる。
ただ、斎藤の肉体の情報とする領域が同じところにあると、感電する可能性がある。それを利用し、少なくとも斎藤に上空の広い範囲を肉体の情報にしないようにさせ、狭めさせる。
そして、青野はその領域全体を囲むように自分の電気信号を跳弾させ、その領域の情報全体を青野の肉体とし、斎藤に接近し、殺害する。
「…挟み撃ちか。」
跳弾させた領域を肉体と捉える。
そうして、青野は空中を飛び、斎藤に接近した。
青野は手にある電気信号を操作し、遠くに電気を飛ばす。
そして、それをスライドさせ、斎藤の首元を裂いた。
斎藤の首が、その体から切り離される。
「……殺人は楽しかった。それは変わらない。」
首だけの斎藤の口が動く。
そして、首と胴体は地上へ落ちていった。
「どこにいった?てごたえはあったか?」
五十嵐が霊力振動で青野に話しかけた。
「はい、てごたえはありました。」
「さきほどは、敵がうまく捉えられる範囲に入ってくれて良かった。」
五十嵐が言った。
「はい。」
青野が返事をする。青野は、五十嵐のいる近くの地上に降りた。
「……。」
そのあと、少し沈黙する。
「青野。斎藤の死体が現れる場所は分かるか?」
「いいえ、分かりません。」
「てごたえは、あったんだよな?俺もやつの周波数を全く感じない。」
「はい、俺もです。」
「殺したが、死体の行方が分からない…か。」
「周波数を全く感じないということは、死と定義される現象が、斎藤の肉体に起こったのかもしれません。」
「…そうだと良いが。」
そう言って、五十嵐は頷いた。
アメリカのとある場所。
アメリカ兵2人は、私服で話していた。
「we have time, let's talk.(時間があるから、話でもしよう)」
「What?(はあ?)」
「難しい日本語なんてどうだ?」
「特異能力者は、言語を話す認識を持つ他者からその脳波の周波数を感じて学習する。外来語を非常に早く堪能に話せる。」
リアム•ベイツが、そう言って胸をそらす。
「…ベイツ、それ何度も聞いているんだが。」
「良いだろ。民間人には内密にしないといけねーし自慢できないんだから、ここでしてもいいだろが。」
「…Persistent person.(…お前、しつこいと嫌だぞ。)」
ダスティン•ケビンがベイツに注意する。
「日本では特異能力者が大変だったらしいな。
組織からはなにも聞かされていないが、感じる周波数から分かった。」
「……」
ケビンは少し考えた表情をした。
「…ああ。日本だけじゃなく、世界にも影響する性質の能力だったらしいな。」
「まっ、深刻になりたくてこんな話をしているわけじゃねえ。興味さ。」
「興味?」
「俺は今よりもっと強くなりたくてね。
通常の人間はその成長は限られているが、俺達はその可能性が無限大にあるじゃねぇか。」
「…そうだな。」
国を守る人間が組織によって特異能力を操ることのできる肉体にされる場合、方法は非常に限られる。
通常の人間に、特異能力を持つ生物の肉体から抽出した電気信号を長期的に定期で流す。
すると、肉体内で霊力を循環させる見えない回路がつくられはじめ、霊力振動による周波数を起こせる肉体に変化していく。
そのために必要な電気信号は、組織に極秘に協力する特異能力者の意思が成立することによってはじめて、抽出•保存することができる。
それ以外に、人の手によって特異能力を通常の人間に付与する方法は発見されていない。
また、通常の人間が観測できる電気を霊力に変換する方法は発見されていない。
「あいつのことか?あいつは真面目だ。」
「あいつかー。あいつはクールガイって感じだよな。あと、あいつ結構まつ毛長いよな。」
「話してみると意外と明るい。」
「彼は才能がある上、努力もするんだ。」
青野について聞くと、自衛隊の隊員達はそう答える。
青野はコーヒーを飲んでいた。
1人、考える。
他の人間から見たとき、俺は優しいと思われるかもしれない。だが、俺は人を殺せる。
斎藤。お前は今生きていないが、残念だが死んでもいない。
お前は全力を出していなかった。
通常の人間では観測できない振動から分かる。
お前とはまた会うだろう。
いつか分からないが、いつか。
また会おう。そのときも、ぶっ殺してやる。
少し笑って、そう頭の中で念じた。
By enemy's transmissions(お前の敵の確かな振動より)
“異力対策班(いりきたいさくはん)”、
通称“異班(いはん)”と呼ばれる自衛隊の隊がある。
そこには特殊能力を操る犯罪者との戦闘、確保、ときによって殺害を行うための人材が集められる。
その隊の中にいる隊員は皆、超常現象を起こす特殊な能力を操ることができる、特異能力者である。
異班の隊員、青野は先輩である五十嵐と話していた。
「地球規模で霊力振動を起こすことができ、その能力で犯罪を行なっている人間がいる。内容は殺人だ。」
「はい。」
青野は返事をする。髪型は坊主に近い短髪であった。
「振動のことだが、分かるか?」
「はい。俺もずっと、そいつの出す振動を感じていました。」
「ああ。その振動の大きさから分析して、そいつは今日本の東京にいる。
我々2人でバティを組む。そして、その殺人を犯しているやつを調査し、捕らえに行く。抵抗する場合は殺していい。」
「はい。」
「人間の振動が多く、我々異班に気付かれにくい場所だ。
やつは今も害のある霊力振動を起こし続けているから、どこにいるか分かりやすい。
ただ、特異能力者が常に出す振動と、通常の人間が出す振動は少し違う。
やつを探すとき、いつものように近づくと、我々が探しているのがばれる。
そのため、振動を霊力を操ることのできない人間と同じようにする必要がある。」
「…はい。そうですね。」
「振動を通常の人間と同じように変えると、能力を操りにくくなるが、仕方ない。
遠く離れて連絡をとるとき、こちらも振動で会話を行う。
声を出し、通信機器で話すと振動が大きく、なにをしているか敵にばれやすくなる。通常の人間も観測できる振動の概念だから、尚更だ。」
「了解。分かっています。」
この世には、観測できない霊力というエネルギーがある。
全ての特異能力者は霊力を利用し、霊力振動という振動を起こし、特異能力を操ることができる。
魂の粒子の霊力振動の動き方によって、操ることのできる特異能力が決まる。
また、特異能力者は肉体内の電気信号を操ることができる。その電気信号は、肉体の一部と捉えられる。
だいたいの能力者は、それら能力を操ることのできる規模は限られている。
東京。
服装は私服だった。
青野は外を歩き、敵の出す周波数を追っていた。
特異能力者は振動に敏感である。
周囲の振動の情報を、ふつうの人間よりも具体的に想像しやすかったり、観測しやすい傾向がある。
それを利用し、犯罪を行う特異能力者同士は振動によって、簡単にコミニュケーションをとっており、簡単なコミュニティも形成している。
「……。」
やつの大きな周波数が消えた?
青野は気付く。
同じ種類の、大きな周波数は漠然と分けて2つあった。五十嵐とはそれぞれを追っていた。
そのうちの1つの周波数は、近くから放たれていたはずなのだが。追跡がばれたか?
「すみません、なにをされているんですか?」
近くにいた、白いワイシャツを着た男に、話しかけられる。
「……ああ、俺ですか?」
青野が答える。
「少し他の人と待ち合わせを…」
その瞬間、音なく頭上から雷が落ちてくる。
カッと周囲が光った。青野の立っていた場所から煙が上がる。
「惜しいな。」
白いワイシャツの男が言う。
「ところで、自衛隊の人。そんなに派手に能力を使っていいのか?」
男が聞いた。
男の背後に、青野は立っていた。
青野は男を拘束しようと、相手の周囲に向かって放射状に電気信号を飛ばす。
男が消える。
「上空…。」
「正解だ。」
空中に男は浮いていた。
「上空そのものがお前の本体と言える、能力の性質か。
霊力振動を上空から地面へ降ろしている。よって浮遊も可能…。」
「さすが、異班。感じる振動の分析が速い。」
「目標と遭遇。現在、襲撃に合っています。」
青野は、右手を口の少し横の近くに置き、霊力振動を使って五十嵐に連絡する。
「本名は、斎藤春世(さいとう はるよ)。男です。今の服装は、白いワイシャツと、黒いズボン。
能力は、上空を肉体とするもの。おそらく成層圏付近。」
「俺の振動から個人情報を把握したか。そうこないとな。」
名前を言われた斎藤が言った。
青野清人(あおの きよと)の特異能力の名称
『Ricochet(跳弾)』
霊力の電気信号を、物質がある空間内で跳弾させる能力。
粒子などがあれば跳弾させることができる。
跳弾させ霊力の電気信号を次のどの方向に動かすか、ある程度自在に決めることができる、
跳弾させた点と結んで領域とし、その領域を自分の肉体の情報の一部とする。
その肉体の一部となった領域を用いて、瞬間移動、空中浮遊、電気信号を操り強力な電撃を放つ、などができる。
実力的に、はじめに霊力の電気信号を放つときの射程距離と、跳弾させることのできる全体の距離は限られている。
斎藤春世(さいとう はるよ)の特異能力の名称
『Stratosphere transmission(成層圏振動)』
成層圏の領域を自分の肉体の情報の一部とする能力。
その領域内で霊力を循環させ、新しいエネルギーや新しい振動をつくる。
自分な振動を、成層圏の上から下の地球へ送り、地球上全体に自分のつくった情報を降ろすことができる。
それにより、自分の肉体や物質の瞬間移動、地球中の振動の細かな観測、自分がつくりだした現象の情報の地球中の伝搬などを起こせる。
「…お前の個人情報はわれた。お前、もし逃げても指名手配されるぞ。」
青野が斎藤に言った。
「心配いらない。実は俺は、成層圏の情報を用いて一生、空で遊んで暮らすこともできる。」
「挑発して逃げるのか?」
「そんなことはない。顔をあわせたかったんだ。そして殺しにきた。」
そう斎藤が答え、手から稲妻を放とうとする。
その電撃が放たれると、別方向から斎藤に向かって異なる電撃が走った。斎藤は、その電撃を自分の電撃によって防ぐ。
「もう1人が来たか。」
宙に浮いたまま、斎藤が言った。
「急いで来たぞ。」
そう言って、五十嵐が現れた。
「あいつか。攻撃して良かったか。」
「はい、あいつです。今ので分かりました。
あいつは上空の領域を肉体としますが、逆に上空の情報を肉体としないということもできます。それによって感電を防いだようです。」
五十嵐慎司(いがらし しんじ)の特異能力の名称
『Rise and fall(収束発散)』
霊力を使ってエネルギーが発散しても、自動で肉体にまた収束し、エネルギーがなくならない能力。
永久機関の性質を持っている。
これを利用して、霊力を用いた体力のなくならない連続的な攻撃、無限の体力の回復、無限の肉体の再生を行うことができる。
実力的に、外部に放出できるエネルギーには上限がある。
「あいつは抵抗する。我々を殺そうとする意思が変わらないなら、殺害するとする。」
五十嵐がそう判断した。
「了解。」
青野がその返事をするのとほぼ同時に、斎藤の周囲から、バチバチと雷と思われる光が現れはじめる。
そして、青野と五十嵐の肉体の内側から、刃のような電撃が貫いた。
「…!!」
五十嵐が目を見開く。
「…情報を直接…俺たちに降ろしたのか!」
五十嵐の傷は、すぐになくなる。彼が心配したのは、バディの青野だった。
「青野!大丈夫か!」
「大丈夫です。電気信号を操って治ります。」
腹をおさえ、青野が言った。
「…作戦だ。俺はあいつの範囲を絞る。お前はその周囲を掌握し、あいつ殺せ。」
「…はい。」
青野が返事をすると、五十嵐は斎藤に向かって放射状に電気信号を飛ばした。
続いて、青野が同じ領域の上空に電気信号を跳弾させる。
青野の放った電気信号は空気中の粒子を伝い、急速に五十嵐の放った電気信号の周囲を囲んだ。
斎藤は目を細めた。
「…これは…」
五十嵐は量が限定されているかわりに効果が強力な電気信号を放出する。
その電気信号のある領域を五十嵐の肉体とし、その領域内の物体を感電させられるようになる。斎藤は斎藤自身の電気信号によって、五十嵐の感電させる情報自体は分解できる。
ただ、斎藤の肉体の情報とする領域が同じところにあると、感電する可能性がある。それを利用し、少なくとも斎藤に上空の広い範囲を肉体の情報にしないようにさせ、狭めさせる。
そして、青野はその領域全体を囲むように自分の電気信号を跳弾させ、その領域の情報全体を青野の肉体とし、斎藤に接近し、殺害する。
「…挟み撃ちか。」
跳弾させた領域を肉体と捉える。
そうして、青野は空中を飛び、斎藤に接近した。
青野は手にある電気信号を操作し、遠くに電気を飛ばす。
そして、それをスライドさせ、斎藤の首元を裂いた。
斎藤の首が、その体から切り離される。
「……殺人は楽しかった。それは変わらない。」
首だけの斎藤の口が動く。
そして、首と胴体は地上へ落ちていった。
「どこにいった?てごたえはあったか?」
五十嵐が霊力振動で青野に話しかけた。
「はい、てごたえはありました。」
「さきほどは、敵がうまく捉えられる範囲に入ってくれて良かった。」
五十嵐が言った。
「はい。」
青野が返事をする。青野は、五十嵐のいる近くの地上に降りた。
「……。」
そのあと、少し沈黙する。
「青野。斎藤の死体が現れる場所は分かるか?」
「いいえ、分かりません。」
「てごたえは、あったんだよな?俺もやつの周波数を全く感じない。」
「はい、俺もです。」
「殺したが、死体の行方が分からない…か。」
「周波数を全く感じないということは、死と定義される現象が、斎藤の肉体に起こったのかもしれません。」
「…そうだと良いが。」
そう言って、五十嵐は頷いた。
アメリカのとある場所。
アメリカ兵2人は、私服で話していた。
「we have time, let's talk.(時間があるから、話でもしよう)」
「What?(はあ?)」
「難しい日本語なんてどうだ?」
「特異能力者は、言語を話す認識を持つ他者からその脳波の周波数を感じて学習する。外来語を非常に早く堪能に話せる。」
リアム•ベイツが、そう言って胸をそらす。
「…ベイツ、それ何度も聞いているんだが。」
「良いだろ。民間人には内密にしないといけねーし自慢できないんだから、ここでしてもいいだろが。」
「…Persistent person.(…お前、しつこいと嫌だぞ。)」
ダスティン•ケビンがベイツに注意する。
「日本では特異能力者が大変だったらしいな。
組織からはなにも聞かされていないが、感じる周波数から分かった。」
「……」
ケビンは少し考えた表情をした。
「…ああ。日本だけじゃなく、世界にも影響する性質の能力だったらしいな。」
「まっ、深刻になりたくてこんな話をしているわけじゃねえ。興味さ。」
「興味?」
「俺は今よりもっと強くなりたくてね。
通常の人間はその成長は限られているが、俺達はその可能性が無限大にあるじゃねぇか。」
「…そうだな。」
国を守る人間が組織によって特異能力を操ることのできる肉体にされる場合、方法は非常に限られる。
通常の人間に、特異能力を持つ生物の肉体から抽出した電気信号を長期的に定期で流す。
すると、肉体内で霊力を循環させる見えない回路がつくられはじめ、霊力振動による周波数を起こせる肉体に変化していく。
そのために必要な電気信号は、組織に極秘に協力する特異能力者の意思が成立することによってはじめて、抽出•保存することができる。
それ以外に、人の手によって特異能力を通常の人間に付与する方法は発見されていない。
また、通常の人間が観測できる電気を霊力に変換する方法は発見されていない。
「あいつのことか?あいつは真面目だ。」
「あいつかー。あいつはクールガイって感じだよな。あと、あいつ結構まつ毛長いよな。」
「話してみると意外と明るい。」
「彼は才能がある上、努力もするんだ。」
青野について聞くと、自衛隊の隊員達はそう答える。
青野はコーヒーを飲んでいた。
1人、考える。
他の人間から見たとき、俺は優しいと思われるかもしれない。だが、俺は人を殺せる。
斎藤。お前は今生きていないが、残念だが死んでもいない。
お前は全力を出していなかった。
通常の人間では観測できない振動から分かる。
お前とはまた会うだろう。
いつか分からないが、いつか。
また会おう。そのときも、ぶっ殺してやる。
少し笑って、そう頭の中で念じた。
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