生徒会長なら生徒の言うこと何でも聞いてくれるよね?

コロンド

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第一部

ep1. その日私は生徒会の裏の姿を知る

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「——ということで、本年度の次期生徒会長は神奈みずきさんに決まりました!」

 呼ばれた名前が自分の名前だとは気づかず、一瞬呆けてしまう。
 隣に座る自分以外の会長候補の三人、壇上を見つめる全校生徒、そして講演台の前で語る現生徒会長が自分を見て拍手を送っている。
 にも関わらず、口をポカンと開けて動かない私は、みんなから見てさぞ間抜けに映っただろうだろう。

「神奈みずきさん、こちらへ!」
「え、あっ、はいッ!」

 裏返った声が立ち上がり、たどたどしい足取りで私は講演台に近づく。
 遠くからクスクスと笑う声が聞こえ、恥ずかしさで顔が熱くなる。
 多分今までの人生で、私という存在にここまで多くの視線が向けられたのは初めてだ。
 首元が熱い。
 ああもう、今すぐにでも逃げ出したい気分だった。
 それでも講演台の前に立つ現生徒会長だけは、期待感を含めた大きな瞳でこちらを見つめていてくれた。
 その瞳に吸い込まれるように、私は彼女の元へと歩いていく。

「それでは次期生徒会長に選ばれた神奈みずきさん、就任の挨拶をお願いします」

 現生徒会長が一歩下がり、講演台の方へ手を向ける。

「頑張って」

 そして彼女はマイクに拾われない程の小さな声で、私にそう呟く。
 私はうんと小さく頷き、講演台の前から全校生徒の姿を見つめた。
 そこからの記憶は曖昧。
 頭の中で事前に考えていた挨拶を、ただ単調に読み上げた。





「それではこれにて、次期生徒会長就任式を終わります。一同、礼」

 気づけばステージ横で教頭先生が式の終わりの挨拶を告げていた。
 その言葉に従い、私も壇上で頭を下げる。
 現生徒会長も私の隣で同じように頭を下げていた。
 
 そして式が終わり、私と現生徒会長は舞台裏に下がっていく。

「……ぷっ、ふひ……っ」

 私たちの姿がみんなの見える位置から消えた途端、現生徒会長は口を押さえて吹き出す。
 小柄な肩を震わせ、目元は少し潤んでいた。

「……ふっ、ふふっ」

 そんな彼女の反応に、私も気が緩んで小さく笑みをこぼす。
 私と一緒にずっと前をみていた彼女が、私の方へと視線を向ける。
 彼女はいたずらした後の子供のような表情をしていた。
 きっと私も、同じような表情をしていただろう。

「くっ……ふふっ…………わぁーーーー! おめでとー! みずきちゃんッ!」

 ついには感情を抑えきれなくなったのか、嬉しそうな声で私に抱きついてきた。
 ふわりとした甘い香り付きのボブカットが私の頬を撫でる。

「うおぉっと! ありがとね、ゆかちゃん!」

 ぴょんぴょん飛び跳ねながら私の肩を掴んで揺さぶってくる会長に、私も感化されて似たような反応を取ってしまう。
 先程までの整然とした態度は完全に消え失せ、私たちはただ嬉しさを共有しながら飛び跳ね続けた。


 ***


 現生徒会長、安達ゆか。
 彼女は子供の頃からの私の親友だった。
 年は一つ彼女の方が上だったけど、いつもフレンドリーかつどこか抜けている彼女の性格のせいもあってか、年上として意識したことはあまりない。
 家が近く小さい頃は毎日のように遊んでいたっけ。
 だけど、彼女が全寮制のこの学校に入学してからは、ほとんど会う機会がなくなってしまった。
 だから私は彼女を追うように、この学校に入学した。
 
 世間から離れた全寮制の女子校。
 昔からの風習なのか、この学校には安易に下の学年の者が上の学年の者に話しかけてはならないというルールがあった。
 折角彼女と同じ学校に入学できたというのに、入学したばかりの私はたまに見かける彼女の横顔を眺めることくらいしかできなかった。
 人懐っこくて誰の味方にでもなろうとする彼女の周りにはいつも人だかりができていて、一学年下の私と話せる機会などほとんどない。
 彼女が生徒会に推薦され、圧倒的な票数で生徒会長に任命されたのは、そんな誰にでも味方をする彼女の性格ゆえだったのかもしれない。

 それがちょうど今から一年前のこと。
 一年前の就任式の後、私は次期生徒会長に任命された彼女が、当時の生徒会長と楽しそうに生徒会引き継ぎの話し合いをしているのを見た。
 それを見て私は思ったんだ。

 あの位置に自分も立ちたい。

 私が彼女と同じ立場になれば毎日のように彼女に会える——

 私が生徒会長を目指したのは、そんなよこしまな思いが発端だった。


 ***


「神奈さん、会長就任おめでとうございます!」
「ありがと!」
「おめでとー神奈ちゃん! いやーうちのクラスから会長が出るなんてめでたいなー!」
「ありがとうねー! みんなの応援のおかげだよー! …………はぁ」

 放課後になっても先輩やクラスメイト、廊下で人と会うたびに声をかけられ、私は疲れ果てていた。
 私は生徒会長を目指してクラス内では率先的に意見したり交友を深めたりしていたが、一歩クラスを出ればそこまで目立つ人物ではなかったように思う。
 それが次期生徒会長という役職を得た瞬間にこれである。

「ふぁあぁああ…………疲れたぁ…………」
「お疲れね、次期生徒会長さま」

 私が本当に疲れた顔をしていると、背後から声が聞こえた。
 振り返ると、そこには細いフレームのメガネをかけ、見ていて心配になるほど白くて細い体つきの彼女がいた。
 クラスメイトのあおいちゃんだ。

「あぅあぁ……たすけてあおいちゃーん。なんかもう、急に有名人になった気分だよぉ……」
「はいはい、有名人になれてよかったね」

 あおいちゃんは人ごとのように、それでいて少しだけ煽るような口調でそう言った。
 私が何か話を振るたび、あおいちゃんはそれを適当にあしらう。
 そんないつものやりとりが、今はなんだかすごく落ち着いた。

「でもさ、別に急ではないんじゃない?」
「え……そう、かなぁ?」
「まあ入学したてのみずきは結構地味というか、あんまり目立ちたくない子なんだろうな、とは思ってたんだけど…………なんかみずきって、どこかのタイミングで急に可愛くなったんだよね」
「え、かわい、え?」

 私の弱点を一つ白状しておくと、急な褒め言葉に弱いんです。
 カァっと顔が熱くなる感覚がする。
 ああ、今は鏡を見たくない。
 そもそも、あおいちゃんから褒め言葉を授かったのはこれが初めてな気がする?
 どうしたんだ急に……?

「ちょうど去年の今頃くらいからかな。急に髪型とか気にするようになって、香水とかつけ始めるようになったのもその時期からだよね?」

 うぉあ……気づいてたのか……いや、おしゃれをする以上は気づいて欲しくはあったんだけど。
 なんか今までバレてるのにスルーされ続けてきたのだと思うと、急に恥ずかしくなってきた。

「あの頃からみずきの注目度かなり上がってたと思うよ。先輩や後輩がみずきの噂してるの何度か聞いたことあるし」
「う、噂っ!? どんなっ!?」

 言った後で、妙に上ずった自分の声にひく。
 こんな挙動不審な生徒会長の姿、クラスメイト以外には見せてはならないぞ……。

「2年B組に可愛い子いるよねー、みたいな」
「そ、そうなの……!? 全然知らなかった……え、でもそれ、本当に私のことを言ってたのかな?」
「それは——」

 口を開けたまま、あおいちゃんの瞳が一瞬大きくなる。

「じゃ私はこれで、また明日ね」
「え、え……? うん、またね……」

 歯切りの悪いタイミングであおいちゃんは話を切り上げ、階段の方へと歩いて行ってしまった。
 でもそっちの階段は昇降口の方向とは逆な気がするのだけれど。

「どうしたんだろう……?」

 私は首を傾げながら、彼女の後ろ姿を見つめる。
 何か焦ることでもあったんだろうか。

「あ、あの……っ、神奈先輩ッ!」
「……え、はい!?」

 背後から聞こえる声に振り返る。
 そこにいたのは小柄な女子生徒。
 長い前髪のせいでその表情がよく見えない。
 それでもひどく緊張しているような雰囲気は感じ取れた。

「えーっと……」

 誰……誰だろう!?
 スカーフの色を見るに一つ下の後輩であることは間違いない。
 だけど、そもそも私に後輩の知り合いなんてほとんどいない。
 だから多分顔見知りではない、はず……はず!

「あの、その……生徒会長頑張って下さい! 私ずっと神奈先輩のこと応援してましたっ! ……そ、それではッ!」

 若干裏返った声でそれだけ伝えると、彼女はすぐさま振り返り、逃げるように走っていった。

「え、あ、ちょっと!」

 声をかけたものの彼女は廊下を曲がり、もう私の視界からは見えなくなっていた。

「……応援してました……か」

 例によって、誰が言い出したのかこの学校には無闇に上級生に語りかけてはいけないと言う古いしきたりがある。
 さっきの一言には、彼女の勇気が込められていた。

「……嬉しいな、今度お礼を言わなきゃ」

 直接話したこともない後輩が、自分のことを応援していてくれた。
 そう思うと、胸が熱くなる。

 本当は今回の生徒会選挙も自信が無かった。
 クラスメイトのみんなは応援してくれたけど、上級生や下級生からの票数を取れるかどうか、不安で仕方が無かった。
 が、蓋を開けてみれば候補者が四人いる中で、私は全体の半数近くの票を集めて次期生徒会長となった。
 私の知らないところで私という人物は結構評価されていたんだろうか?

「モテモテだねー」
「うおぁッ!?」

 本当に今日は次から次へと人が現れる。
 でも次の客人は振り向かなくても声で誰だか分かる。
 現生徒会長——ゆかちゃんだ。

「みずきちゃ————じゃない、コホン。えーっと、次期生徒会長さん。お話があるのですがよろしいですか?」

 ゆかちゃんはわざとらしく咳払いをすると、慣れないウィンクをしながらいつもと違う雰囲気で語りかけてきた。
 多分彼女の中の淑女的なイメージなんだと思う。

「はい、現生徒会長。私なら今お暇ですよ」

 折角なので彼女の茶番に付き合ってあげることにした。
 こういう距離感を感じない会話、本当に久しぶりな気がする。
 うまく言葉にできないけど……胸が熱い、心があったかい。

「それじゃあ歩きながら話しましょうか。みずきちゃ————じゃない、次期生徒会長さん」
「はい。あ、でも面倒臭くなってきたので普通に喋ってください」
「むぅ……」


 ***


 ゆかちゃんと話をしながら廊下を歩くと、人とすれ違うたびに視線がこちらに向くのを感じる。
 今の私たち二人はどういう風に見えるんだろう。
 不釣り合い、なんて思われていないだろうか。

「なんかさー、みずきちゃんと一緒に歩くと、その……恥ずかしいね」
「え……っ」
「いや、悪い意味じゃなくてさ。ほら、私こんなちんちくりんじゃん! みずきちゃん、昔よりずっとスラッとしてて美人さんになっちゃったからさ~、比較されるのが嫌なんだよぉ……」

 スラッとしてる? 美人さん?
 私ゆかちゃんからそんな風に思われてたんだ。

 なんだか今日は妙に、見てくれを褒められる日だ。
 もちろん似たような褒め言葉は今まで何度か言われたことがあったけど、それは建前というか社交辞令というか、そんな感じのものだと思っていた。

 でもゆかちゃんがそういうのを口にするタイプじゃないことを、私は知っている。
 彼女は本心が口からダダ漏れするタイプの子で、だからみんなから信頼されて、生徒会長に立候補されるまでになったんだ。
 だからきっと、さっきの言葉もゆかちゃんの本心。
 そう理解すると…………ああもう、さっきからずっと胸が苦しくなるくらいに熱い。

「あ、うん……そっか……」

 もう何を言ったらいいのか分からなくなって、最終的に口から出てきたのはそんな素っ気ない言葉だった。

「ところで、用事っていうのは……?」
「ああそれね、これからしばらくは生徒会の引き継ぎ期間でしょ? だから早速次期生徒会長さんを生徒会室に招待したいなって思ってさ!」
「生徒会室……そっか、私もあそこに入れるんだ……」

 生徒会以外は基本出入りできないあの部屋は、外側の人間から見ると凄く興味深いものに見える。
 選ばれた人間だけが入れる、どこか大人びた秘密基地のような空間。
 それが私が抱く生徒会室のイメージ。
 今からあの生徒会室が自分のテリトリーになるのだと思うと、想像するだけで高揚感が溢れ出す。

「生徒会室……生徒会室ッ! うぁあ~~、なんかワクワクしてきた!」
「分かる分かる! 私も初めて生徒会室に入るとき、すっごくワクワクしたもん!」

 ゆかちゃんは愛らしい表情を見せながら、私の心を理解してくれた。

 正直、初めてゆかちゃんが生徒会長になったと聞いたときは驚いた。
 生徒会長というのは、もっと厳格な人がなるべきものだと思っていたから。
 でも今は少しだけ、考えが変わっている。
 常に笑顔で、誰かを否定したりしないゆかちゃんは、いつしかこの学校の象徴になっていた。
 だけどそう思う度に、自分が彼女の代わりとして生徒会長を引き継ぐことに少し不安を抱いている。
 果たして生徒たちは彼女の代わりとして、私を受け入れてくれるだろうか。

「でもさ、生徒会長がみずきちゃんで本当に良かったよ! まああの候補の中なら、みずきちゃんが来るなって思ってたけどね」
「そう、なの? いまだに分からないんだよね、なんで私が選ばれたのか」
「それはねー、みずきちゃんにはねー、なんかこう、応援したくなる不思議な魅力があるからなんだよ」
「応援したくなる……魅力?」

 少なくとも私自身の自己評価では、自分自身を応援したくなる理由なんて一つも思い当たらないのだが。

「そうそう、私は投票の集計もやったからね。みずきちゃんに投票した人の投票理由欄は全部記憶してるよ。読み上げてってあげようか?」
「や、それは…………はずかしいよぉ……」
「おおー、乙女の反応」
「くっ、なんかバカにされてる気がする……」

 めちゃくちゃ気になるけど、聞いたら聞いたで一日中ベッドで悶えてしまいそうで怖い。

「それにさ、私もみずきちゃんが生徒会長に立候補してくれて、すごく嬉しかったんだ。だって……」

 ゆかちゃんはまるで壊れたおもちゃのように、口を開けたまま固まる。
 
「……? だって、何?」

 不審に思った私が声をかけると、ゆかちゃんはゆっくりと口を閉じる。

「あ、なんでもないの。さ、ついたよ。開けてみて」

 妙な感じがした。

 なんだかその言葉には、一切の心が篭っていないような気がした。
 本当にゆかちゃんの口から出た言葉だったのだろうかと、疑ってしまう。

 いや、何を考えているんだ私は。
 どう見ても目の前にいるのはゆかちゃん本人だ。
 私は彼女に促されるまま、生徒会室の扉を開けた。

「失礼しまーす」

 扉を開いた瞬間、違和感を覚える。
 まだ日は出ている時間なのに、部屋の中は真っ暗。
 遮光カーテンの隙間から少しだけ光が出ているが、室内の様子は伺えない。
 それに薬品のような甘い匂いが鼻を刺す。
 頭がふらつく、知らない匂いだ。

「入って」
「う、うん……」

 背後からゆかちゃんが小声で呟く。
 私はその言葉に従って部屋の中に一歩踏み込む。
 そこで私は気づく。
 部屋の中に誰かいる。

「はぁ……ぁ……っ……」

 微かに聞こえる吐息のような声。
 なんだろう……あ、もしかしてドッキリか何か?
 この後『生徒会長就任おめでとう』的な横断幕でも出てくるんじゃないだろうか?
 そう考えれば全て合点はいくのだけれど、それにしても室内に漂う空気感が妙だった。

「あ、あの~、誰かいるんですか~?」

 耐えきれなくなって声をあげる。

「……メ、聞こえ……ちゃ……ッ」

 私の声に反応したのか、小さな声が聞こえた。
 声のした方へ視線を向けると、一瞬人影が見えた。
 私の視力もだんだん暗闇に慣れてきて、その人影は並んだ机の一つに身を隠した。

 もしもこれがドッキリなら、ここで気づいて反応してしまうのは空気読めない感じ、かな?
 それでも、私が室内に入ってからも向こう側からのアプローチは何もない。
 とりあえず私は先ほど見えた、人影が隠れた机の元へと歩みを進めた。

「あのぉ……」

 そう言って、私は机の下を覗き込む。
 慣れてきたとはいえ辺りは暗闇。
 私の視界が目の前に映るものを認識するまでに少し時間がかかった。

「……ひっ!?」

 そして理解した瞬間、私は後ろに飛び退き、近くにあった机を巻き込みながら倒れる。

 そこには————はだけた衣服で抱き合う二人の女性がいた。

 まるで何かに取り憑かれたかのように互いに口付けをし合っていて、私はただそれを混乱しながら見つめていた。

「あら、見られちゃった……」

 キスをしていた女性の一人が舐めるような視線でこちらを向く。
 その声、そしてその顔、それは私の知っている人物だった。

「篠塚……先輩……?」

 篠塚こころ、現生徒会の副生徒会長。
 直接話したことはないけれど、彼女のことはよく知っている。
 学校でゆかちゃんの姿を見つけると、いつもその横に彼女の姿があった。
 長身でスラリとした体型。
 そんな彼女が小柄なゆかちゃんの隣を歩くと、嫌でも視界に入る。

 ゆかちゃんが元気旺盛で学校のシンボルなのだとしたら、篠塚先輩はそれを背後から支え、校内の規律を守る冷静沈着な女性。
 そう思っていた。
 だが今目の前にいる篠塚先輩は、私の知っている彼女とはまるで別人。
 艶やかな長い髪は汗で乱れきっていて、とろんと蕩けた目で私を見ている。

「あはは、見つかっちゃったねぇ~」
「うそ……橋下先輩も……?」

 篠塚先輩と抱き合っている彼女も、私の方へと視線を向けた。
 金髪碧眼に人形のように綺麗な顔。
 彼女は生徒会書記の橋下エリーで間違いない。

 この学校で誰よりも目立つ姿の彼女は、一度視界に入れればそれだけで忘れられない存在となる。
 どうして彼女が……いや彼女だけじゃない。
 篠塚先輩と、橋下先輩以外にも、かすかに息遣いの声が聞こえる。
 どこかいやらしくて、肌と肌を合わせあったり、舐め合ったり。
 そんな光景を連想させる音があちこちから聞こえた。

 もしかして…………現生徒会全員がここに……?

 そう思い立った時だった。



 ——ガチャン。

「……ッ!?」

 生徒会室の扉が閉まり、鍵のかかる音が聞こえた。

「生徒会室の鍵はね、普通の鍵の他に内側からかけられる南京錠もついてるのよ」
「なんでだろうねぇ~、誰がつけたんだろうねぇ~、アハハッ!」

 篠塚先輩と、橋下先輩がクスクスと笑う。

 ただ、今の私はそちらに目をやる余裕すらなかった。
 私は部屋の鍵をかけた人物、すなわち私より後に部屋の中に入った彼女の瞳を見つめる。
 吸い込まれそうな、彼女の瞳を。

「なん、で……?」
「待ってたよ、みずきちゃん」

 篠塚先輩や橋下先輩と同じ目をしたゆかちゃんが私を見下ろす。

「生徒会にようこそ」

 ゾクリと体が震える。
 私はただ、今何が起きているのか一切理解することができず、体を震わせることしかできなかった。
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