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目が覚めると
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ふと目覚めるとカーテンの隙間から日差しが差し、悠香は布団を抱き枕にして気持ち良さそうな顔で眠っていた。
いつもの朝の光景がそこにはあった。
「夢……だったのかな……?」
暗闇の中、悠香に散々に責められた光景を思い出す。
あまりにも急な出来事で現実感がない。
まるで悠香が悠香じゃないみたいだった。
まだ頭がぼやけてる、きっと夢だったんだろう。
「いっ……!」
そう思いながらベッドから立ち上がろうとすると、腰から太ももにかけて強い痺れを感じた。
壁に手を当て、おばあちゃんのようによたよたした動きで何とか立ち上がると前方から視線を感じ、そちらに視線を向ける。
「おはよっ」
布団にくるまったままの悠香がそう告げる。
いつもと同じように「おはよう」と言う彼女。
何度も聞いたその声に、なぜだか私は恐怖に近い感情を覚えてしまう。
なんだろう、このまま私が「おはよう」と返してしまえばまたいつもの一日が始まり、私の中にある昨夜の記憶がすっと消えてしまいそうな、そんな気がした。
でもここで昨夜のことを言及してしまえば、私の知っている悠香が消えてしまうような気がして……
「あの、悠香……」
口を開いたはいいものの、そこで私の口が止まる。
「昨日のあれはどういうこと?」なんて聞けばいいんだろうか。
そんなことを聞いたら、今の私と悠香の関係が壊れてしまうんじゃないだろうか。
そうなってしまうことがただただ怖かった。
私が何も言えずにいると、悠香の方が動き出す。
悠香はベッドから降りて膝を床につけると、勢いよく頭を下げた。
「すいませんでしたっ!」
「……え?」
あまりにも潔い謝罪の姿勢に、私は一瞬言葉を失う。
「あの、昨日の夜のことは……その、出来心というか……その……悪い癖が出てしまいましたぁ!!」
「わ、悪い癖……?」
「その……寝起きで頭がぼーっとしてると、ああなっちゃうっていうか……」
「は、はぁ……」
それってつまり……
「出来心で手が出ちゃった……みたいな……?」
「……は、はい」
とても私が知っている悠香とは思えないくらい弱々しい声で返事がくる。
そんな悠香を見ていると、私は被害者なのになんだか私も悪いことをしているような気分になってきた。
「そ、そっか……ちゃ、ちゃんと反省してるの?」
「……は、はいッ! この通りですッ! 本当に申し訳ないことをしたと思っておりますッ!」
悠香はさらに深く頭を下げる。
つまりなんだ、出来心で私に手を出して、それを本人は今反省していて……私はどうすればいいんだ?
許せばいいんだろうか?
「も、もうこういうことはしない?」
「……」
あれ、返事が返ってこない……?
「もうこういうことはしませんかー?」
「……しなぃ」
耳をすましてようやく聞こえるレベルの声で悠香はそう言った。
「し、信用できない……」
「そんな、だ……だって志乃が悪いんだもん……」
「は、はぁ!?」
「だって、だって志乃が自分に媚薬塗ってえっちな表情見せるのが悪いじゃん! あんなの襲っちゃうじゃん!」
「な……なぁ……っ!」
ついに悠香は本心を露わにし、完全に開き直った!
というか何を言っているんだこの女は!
「え、エッチな顔なんてしてない!」
「してた! してたよっ! なんならもう一度媚薬塗って、鏡で志乃の顔見せてあげよっか?」
「そっ、そもそも! なんで媚薬なんか持ってるの!」
「もしかしたら必要になる時が来るかもしれないじゃん!」
「ないよ!」
その後もしばらく言い合いは続いた。
そのせいで今日は平日でこれから授業もあるというのに、朝からすごく疲れた。
「うぅ……ごめん志乃ぉ…………お願いだから、嫌いにならないでぇ……」
ただ、悠香の方は本当に反省している……というよりもやってしまったという自覚はあるようで、床にスライムのようにべったりとくっついてうなだれていた。
「はぁ……わかったわかった、嫌いにならないから」
「ほ、ほんとぉ?」
こんなに弱った悠香を見るのは初めてで、何だか可愛かった。
「もう、ああいうことはしないって誓える?」
「……え……うん」
「はっきりと言いなさい!」
「は、はい! もうしません!」
「よし、じゃあ許す」
「あーん、志乃ぉ……」
まるで3歳児のようになった悠香の頭を私は優しく撫でた。
状況的に被害者は私の方なんなだけどね……
「なんとなくだけど悠香がこの学校にきた理由分かったよ。悠香、前の環境でなんかやらかしたでしょ」
「ぎくっ」
隠す気もないわざとらしい反応。
まあ流石に今更隠し通せるとは思っていないんだろう。
「そういえば悠香がスマホ嫌いなのって、もしかして……」
「う……うん、ネット上には私のやらかしの記録が残ってるんだよね。だから、そのー…………志乃には見て欲しくないなぁ、なんて」
そう言って悠香は上目遣いで私の顔を覗いてくる。
可愛いけど、なんかうざい。
「見ないよそんなの」
「ほ、ほんと? 絶対に見ないでね恥ずかしいから! 約束だよ!」
「見ない見ない、別に興味ないし」
「し、志乃ぉ……っ! 志乃好きぃ……っ!」
「ああもう、頬擦りするなっ!」
私の胸元に頭をグリグリと押し当ててくる悠香を引っぺがす。
一時はどうなることかと思ったけど、気づけばまた悠香との距離感が近づいたような気がした。
というわけで、これでこの件は一件落着…………のはず……だよね?
いつもの朝の光景がそこにはあった。
「夢……だったのかな……?」
暗闇の中、悠香に散々に責められた光景を思い出す。
あまりにも急な出来事で現実感がない。
まるで悠香が悠香じゃないみたいだった。
まだ頭がぼやけてる、きっと夢だったんだろう。
「いっ……!」
そう思いながらベッドから立ち上がろうとすると、腰から太ももにかけて強い痺れを感じた。
壁に手を当て、おばあちゃんのようによたよたした動きで何とか立ち上がると前方から視線を感じ、そちらに視線を向ける。
「おはよっ」
布団にくるまったままの悠香がそう告げる。
いつもと同じように「おはよう」と言う彼女。
何度も聞いたその声に、なぜだか私は恐怖に近い感情を覚えてしまう。
なんだろう、このまま私が「おはよう」と返してしまえばまたいつもの一日が始まり、私の中にある昨夜の記憶がすっと消えてしまいそうな、そんな気がした。
でもここで昨夜のことを言及してしまえば、私の知っている悠香が消えてしまうような気がして……
「あの、悠香……」
口を開いたはいいものの、そこで私の口が止まる。
「昨日のあれはどういうこと?」なんて聞けばいいんだろうか。
そんなことを聞いたら、今の私と悠香の関係が壊れてしまうんじゃないだろうか。
そうなってしまうことがただただ怖かった。
私が何も言えずにいると、悠香の方が動き出す。
悠香はベッドから降りて膝を床につけると、勢いよく頭を下げた。
「すいませんでしたっ!」
「……え?」
あまりにも潔い謝罪の姿勢に、私は一瞬言葉を失う。
「あの、昨日の夜のことは……その、出来心というか……その……悪い癖が出てしまいましたぁ!!」
「わ、悪い癖……?」
「その……寝起きで頭がぼーっとしてると、ああなっちゃうっていうか……」
「は、はぁ……」
それってつまり……
「出来心で手が出ちゃった……みたいな……?」
「……は、はい」
とても私が知っている悠香とは思えないくらい弱々しい声で返事がくる。
そんな悠香を見ていると、私は被害者なのになんだか私も悪いことをしているような気分になってきた。
「そ、そっか……ちゃ、ちゃんと反省してるの?」
「……は、はいッ! この通りですッ! 本当に申し訳ないことをしたと思っておりますッ!」
悠香はさらに深く頭を下げる。
つまりなんだ、出来心で私に手を出して、それを本人は今反省していて……私はどうすればいいんだ?
許せばいいんだろうか?
「も、もうこういうことはしない?」
「……」
あれ、返事が返ってこない……?
「もうこういうことはしませんかー?」
「……しなぃ」
耳をすましてようやく聞こえるレベルの声で悠香はそう言った。
「し、信用できない……」
「そんな、だ……だって志乃が悪いんだもん……」
「は、はぁ!?」
「だって、だって志乃が自分に媚薬塗ってえっちな表情見せるのが悪いじゃん! あんなの襲っちゃうじゃん!」
「な……なぁ……っ!」
ついに悠香は本心を露わにし、完全に開き直った!
というか何を言っているんだこの女は!
「え、エッチな顔なんてしてない!」
「してた! してたよっ! なんならもう一度媚薬塗って、鏡で志乃の顔見せてあげよっか?」
「そっ、そもそも! なんで媚薬なんか持ってるの!」
「もしかしたら必要になる時が来るかもしれないじゃん!」
「ないよ!」
その後もしばらく言い合いは続いた。
そのせいで今日は平日でこれから授業もあるというのに、朝からすごく疲れた。
「うぅ……ごめん志乃ぉ…………お願いだから、嫌いにならないでぇ……」
ただ、悠香の方は本当に反省している……というよりもやってしまったという自覚はあるようで、床にスライムのようにべったりとくっついてうなだれていた。
「はぁ……わかったわかった、嫌いにならないから」
「ほ、ほんとぉ?」
こんなに弱った悠香を見るのは初めてで、何だか可愛かった。
「もう、ああいうことはしないって誓える?」
「……え……うん」
「はっきりと言いなさい!」
「は、はい! もうしません!」
「よし、じゃあ許す」
「あーん、志乃ぉ……」
まるで3歳児のようになった悠香の頭を私は優しく撫でた。
状況的に被害者は私の方なんなだけどね……
「なんとなくだけど悠香がこの学校にきた理由分かったよ。悠香、前の環境でなんかやらかしたでしょ」
「ぎくっ」
隠す気もないわざとらしい反応。
まあ流石に今更隠し通せるとは思っていないんだろう。
「そういえば悠香がスマホ嫌いなのって、もしかして……」
「う……うん、ネット上には私のやらかしの記録が残ってるんだよね。だから、そのー…………志乃には見て欲しくないなぁ、なんて」
そう言って悠香は上目遣いで私の顔を覗いてくる。
可愛いけど、なんかうざい。
「見ないよそんなの」
「ほ、ほんと? 絶対に見ないでね恥ずかしいから! 約束だよ!」
「見ない見ない、別に興味ないし」
「し、志乃ぉ……っ! 志乃好きぃ……っ!」
「ああもう、頬擦りするなっ!」
私の胸元に頭をグリグリと押し当ててくる悠香を引っぺがす。
一時はどうなることかと思ったけど、気づけばまた悠香との距離感が近づいたような気がした。
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