1 / 6
プロローグ
しおりを挟む
退屈な日常から逃れるために異世界が存在するなら、そのセカイに転生などして新しい生を満喫したいというのが、今のセカイを生きる多くの者にとっての夢であるだろう。
ここでなら普通、生を「満喫」するではなく、生を「謳歌」するという言葉を使うのが適切なのかもしれない。でも、ぼくには「満喫」という言葉のほうがしっくりとくる。
異世界に転生したいという欲求。これは食欲や性欲と同じ類いのものに感じる。喜び合うという精神的なものより、味わうというプリミティブな本能のようなものが勝っているように感じてしまう。
だからこそ、ぼくにとって、みんなが想像している、夢を描いているような、そんな異世界をぼくは求めない。
別に特別、高尚なものを求めているわけではない。ただ、ぼくにとっては、どうしてもチープなものに感じてしまう。
でも、そんなぼく自身、とてもチープな存在だ。マンガやアニメでいうところの、モブキャラそのもの。特に誰にとっても印象に残らない。そんな存在、のはずだ。
いや、こんなことを考える自分自身に、本当に嫌になる。だって、自分は自分、他人は他人なのだから。いちいちそんなことを気にするほうが、本当に馬鹿らしい。
話を戻すと、つまり何が言いたいのかと言うと、退屈な今の現実から別のセカイへと逃げ出したい。でもそれは、みんなが求めているファンタジーのセカイというよりも、もっと現実的で別の何か。現実セカイと似たパラレルワールドと言い換えてもいいかもしれない。そんな何かをぼくは求めている。
自分のことを懐古主義やら中二病などとは言いたくない。別にぼくは自分のことを懐古主義だと思ったことは一度もないし、中二病なんてものは、誰しも抱えている宿命みたいなものだと考えている。だからぼくは、そんな当たり前なことを、みんなが表面上忌み嫌う、今生きているこのセカイから逃げ出したいのだ。みんなだって、本当はそう思っているはずだ。
だからと言って、自分に都合の良いセカイというのも、どこか気に食わない。ただ、今の現実セカイを少しだけ、自分が望む方向に変えてくれるだけで、本当はそれぐらいで充分なのだ。
簡単に攻略出来るセカイではつまらない。簡単には思い通りにはならないもの。それなくして、本当の生きがいとは呼べない。
だからこそ、自分にとっての思い通りにならないもの。その対象をぼくは必要としていた。それが一体何なのか、最初は分からなかった。でも、いろいろ試してみるうちに、それが段々と形となっていき、やがて人の形へとはっきり見えるようになっていった。髪の長い少女の後ろ姿に。その後ろ姿を、ぼくは今、追い求めている。
ここでなら普通、生を「満喫」するではなく、生を「謳歌」するという言葉を使うのが適切なのかもしれない。でも、ぼくには「満喫」という言葉のほうがしっくりとくる。
異世界に転生したいという欲求。これは食欲や性欲と同じ類いのものに感じる。喜び合うという精神的なものより、味わうというプリミティブな本能のようなものが勝っているように感じてしまう。
だからこそ、ぼくにとって、みんなが想像している、夢を描いているような、そんな異世界をぼくは求めない。
別に特別、高尚なものを求めているわけではない。ただ、ぼくにとっては、どうしてもチープなものに感じてしまう。
でも、そんなぼく自身、とてもチープな存在だ。マンガやアニメでいうところの、モブキャラそのもの。特に誰にとっても印象に残らない。そんな存在、のはずだ。
いや、こんなことを考える自分自身に、本当に嫌になる。だって、自分は自分、他人は他人なのだから。いちいちそんなことを気にするほうが、本当に馬鹿らしい。
話を戻すと、つまり何が言いたいのかと言うと、退屈な今の現実から別のセカイへと逃げ出したい。でもそれは、みんなが求めているファンタジーのセカイというよりも、もっと現実的で別の何か。現実セカイと似たパラレルワールドと言い換えてもいいかもしれない。そんな何かをぼくは求めている。
自分のことを懐古主義やら中二病などとは言いたくない。別にぼくは自分のことを懐古主義だと思ったことは一度もないし、中二病なんてものは、誰しも抱えている宿命みたいなものだと考えている。だからぼくは、そんな当たり前なことを、みんなが表面上忌み嫌う、今生きているこのセカイから逃げ出したいのだ。みんなだって、本当はそう思っているはずだ。
だからと言って、自分に都合の良いセカイというのも、どこか気に食わない。ただ、今の現実セカイを少しだけ、自分が望む方向に変えてくれるだけで、本当はそれぐらいで充分なのだ。
簡単に攻略出来るセカイではつまらない。簡単には思い通りにはならないもの。それなくして、本当の生きがいとは呼べない。
だからこそ、自分にとっての思い通りにならないもの。その対象をぼくは必要としていた。それが一体何なのか、最初は分からなかった。でも、いろいろ試してみるうちに、それが段々と形となっていき、やがて人の形へとはっきり見えるようになっていった。髪の長い少女の後ろ姿に。その後ろ姿を、ぼくは今、追い求めている。
0
あなたにおすすめの小説
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わり、転校してきたのは、初恋の相手だった——。
鬱々とした気分で二学期の初日を迎えた高須明希は、忘れかけていた記憶と向き合うことになる。
名前を変えて戻ってきたかつての幼馴染、立石麻美。そして、昔から気になっていたクラスメイト、河西栞。
親友の田中浩大が麻美に一目惚れしたことで、この再会が静かに波紋を広げていく。
性と欲の狭間で、歪み出す日常。
無邪気な笑顔の裏に隠された想いと、揺れ動く心。
そのすべてに触れたとき、明希は何を守り、何を選ぶのか。
青春の光と影を描く、"遅れてきた"ひと夏の物語。
前編 「恋愛譚」 : 序章〜第5章
後編 「青春譚」 : 第6章〜
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる