【後日談有り】わたしを孕ませてください! ー白の令嬢は、黒の当主の掌で愛に堕ちるー

さわらにたの

文字の大きさ
53 / 94
エピローグ/後日談

7.宴のあとで(終)

しおりを挟む
 身づくろいを整え、そっとシアを夫婦の寝室に寝かせる。
 シアの自室のソファーは酷いことになってしまったが、ノルンがきっとなんとかしてくれるだろう。
 そもそも当主である自分に「妻の着替え」を頼んできた侍女長のノルン、そしてわざわざ明日の公務を総て休みにしたと告げてきた執事のヴィッセル。
 「こう」なっていることは彼らには予測済みだろうと思えた。

 しかし、やってしまった。
 酒のせいにしたかったが、酔いのせいでは決してない。
 自分は、シアがそう思うところにつけこんだ悪い男である。
 意識ははっきりとしていた。だからこの節操のない乱れた性交は、全て自分のせいでしかない。
 反省も、少しばかりの後悔もしながら、エルナドはシアの身体を抱き込むようにその隣に横になった。



 期せずして、”黒”に対してのシアの披露パーティーとなってしまった今日。
 ひたすらに気を張り、ひとりの”白”として悪意も受け止め、さらりと流し、美しくそこにあった妻にエルナドは改めて惚れ直していた。
 シアは美しいだけではない。愛らしくかわいらしいその外見も素晴らしいが、なによりもその心根をエルナドは愛していた。
 強かで、しなやか。そして明るさを失わず、どんな時でも前向きだ。
 今日も一日、本当にニグラードの女主人として頑張ってくれた。
 だからこそ、今日はただひたすらに優しく甘く蕩かしてやりたい、と、思っていたのに。
 

 ――こんなことをしておいて、どの口が。

 寝台で眠る彼女の身体をそっと背後から抱きしめながら、自嘲じみた笑みを浮かべる。
 途中から意識も薄れかけていたのだろう、今現在もまるで人形のように眠るシア。

 大切にしたい。甘やかしたい。蕩かしてあげたい。
 そんなことを思いながら、いつも今日のような身体の重ね方をしてしまう。
 本当にままならない。愛する雌を孕ませたい、という雄の本能だろうか。
 シアを前にすると、あらゆる我慢ができなくなる。十近くも年上だというのに、今までの経験も、自分のそれなりにあると思っていた理性も、何ひとつ役に立たないのだ。

 そっとシアの体を抱き込みなおし、その薄い腹に手を置いた。
 シアの胎奥に、子の兆しはまだない。
 焦りも、厭いもない。だがいつか、自分の子種がシアのなかで実を結ぶことをエルナドは心から願っていた。
 命を成して欲しい。ふたりの子が欲しい。その想いは身体を重ねるたびにますます強くなる。
 本能で感じているのだ。
 彼女に、自分の子を孕んで欲しいと。


「シア……」


 こみ上げる想いが止められなくて、汗ばんだ白く細い首に噛みつくように口づける。
 以前は衣服で隠れる場所にしかつけなかったその愛する痕も、いまではすれすれのところを狙ってしまう、そんな自分はやはり独占欲が強いのだろうと思う。
 違う男がシアに触れようとしていると、それだけで心が波立つ。
 想像だけで昏い気持ちになる自分を、思わず嗤ってしまった。
 昔の自分が、今の自分をみたら、文字通り腰を抜かすだろう。

 シアと出会う前は他人に執着などしなかった。
 他者は他者、自分は自分。興味も薄く、そんな自分は生涯変わることなどないと思っていたのに。
 もう一度、首筋に強く吸いつき痕を付けてしまう。
 さすがに起きたら、シアは怒るだろうか。
 でも怒っている姿も可愛いからな、と、そんなことを考えている自分は重傷だ。


「ん……、エ、ル?」
「シア……。寒くないか?」

 うっすらと目を開けてこちらを振り仰いだ彼女を、そんな理由をかこつけてそっと胸元に強く抱き寄せる。
 抱き心地のいい柔らかな小さな体。
 自分の身体ですっぽりと覆えてしまう華奢な体に、愛おしさが募った。
 

 改めて、彼女の体躯を揶揄やゆした相手が許せない。
 シアは「やめて」と言っていたが、エルナドは何がしかの手段を取ろうとすでに算段を付け始めていた。
 ニグラードの女主人をあざけったという意味でも、シアを傷つけたという意味でも、その罪は重い。
 魔道具開発と薬師の総括であるニグラード家を敵に回すとどうなるかをしっかりと教えてやった方がいいだろうな、と心の奥のほの昏い部分で思った。
 エルナド自身、名家であるニグラードの威光を振りかざすのは嫌いだ。
 だが、それはそれ、これはこれ。使えるものはとことん使う主義である。

「エル、どう、したの……? ちょっと、こわいかおしてるわ」

 達しすぎた体が、まだ辛いのだろう。
 意識が遠いのか、自分をシアがどこかあどけなさを感じる声で見上げてくる。

「そんなことはない。きみのことだけを考えていた」
「ほんとうに?」
「ああ」
「でも、なんだか……こわいかおよ?」

 何でもないよ、と自分でも驚くくらい甘い声が出る。
 そしてエルナドは、シアをあやすようにその額に口づけたのだった。











宴のあとで これにて完です
お付き合い ありがとうございました!


明日からは新しいエピローグのお留守番するシアのお話を載せていきます。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勘違い妻は騎士隊長に愛される。

更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。 ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ―― あれ?何か怒ってる? 私が一体何をした…っ!?なお話。 有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。 ※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。

【R18】熱い夜の相手は王太子!? ~婚約者だと告げられましたが、記憶がございません~

世界のボボブラ汁(エロル)
恋愛
激しい夜を過ごしたあと、私は気づいてしまった。 ──え……この方、誰? 相手は王太子で、しかも私の婚約者だという。 けれど私は、自分の名前すら思い出せない。 訳も分からず散った純潔、家族や自分の姿への違和感──混乱する私に追い打ちをかけるように、親友(?)が告げた。 「あなた、わたくしのお兄様と恋人同士だったのよ」 ……え、私、恋人がいたのに王太子とベッドを共に!? しかも王太子も恋人も、社交界を騒がすモテ男子。 もしかして、そのせいで私は命を狙われている? 公爵令嬢ベアトリス(?)が記憶を取り戻した先に待つのは── 愛か、陰謀か、それとも破滅か。 全米がハラハラする宮廷恋愛ストーリー……になっていてほしいですね! ※本作品はR18表現があります、ご注意ください。

贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる

マチバリ
恋愛
 貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。  数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。 書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。

一目惚れは、嘘でした?

谷川ざくろ
恋愛
代打で参加したお見合いで、「一目惚れです」とまさかのプロポーズをされた下級女官のシエラ・ハウエル。 相手は美しい公爵、アルフレッド・ベルーフィア。 疑わしく思いつつも、病気がちな弟の治療と領地への援助を提示され、婚約を結んだ。 一目惚れと言っていた通り溺愛されて相思相愛となり、幸せな結婚生活を送るシエラだったが、ある夜、夫となったアルフレッドの本音を聞いてしまう。 *ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。

【完結】呪いを解いて欲しいとお願いしただけなのに、なぜか超絶美形の魔術師に溺愛されました!

藤原ライラ
恋愛
 ルイーゼ=アーベントロートはとある国の末の王女。複雑な呪いにかかっており、訳あって離宮で暮らしている。  ある日、彼女は不思議な夢を見る。それは、とても美しい男が女を抱いている夢だった。その夜、夢で見た通りの男はルイーゼの目の前に現れ、自分は魔術師のハーディだと名乗る。咄嗟に呪いを解いてと頼むルイーゼだったが、魔術師はタダでは願いを叶えてはくれない。当然のようにハーディは対価を要求してくるのだった。  解呪の過程でハーディに恋心を抱くルイーゼだったが、呪いが解けてしまえばもう彼に会うことはできないかもしれないと思い悩み……。 「君は、おれに、一体何をくれる?」  呪いを解く代わりにハーディが求める対価とは?  強情な王女とちょっと性悪な魔術師のお話。   ※ほぼ同じ内容で別タイトルのものをムーンライトノベルズにも掲載しています※

隻眼の騎士王の歪な溺愛に亡国の王女は囚われる

玉響
恋愛
平和だったカヴァニス王国が、隣国イザイアの突然の侵攻により一夜にして滅亡した。 カヴァニスの王女アリーチェは、逃げ遅れたところを何者かに助けられるが、意識を失ってしまう。 目覚めたアリーチェの前に現れたのは、祖国を滅ぼしたイザイアの『隻眼の騎士王』ルドヴィクだった。 憎しみと侮蔑を感情のままにルドヴィクを罵倒するが、ルドヴィクは何も言わずにアリーチェに治療を施し、傷が癒えた後も城に留まらせる。 ルドヴィクに対して憎しみを募らせるアリーチェだが、時折彼の見せる悲しげな表情に別の感情が芽生え始めるのに気がついたアリーチェの心は揺れるが………。 ※内容の一部に残酷描写が含まれます。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

処理中です...