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しおりを挟む「“薔薇を三本”よろしくな」
「はい、少々お待ちくださいませ」
今夜の一番客は、いかにも傭兵然とした褐色肌の男とその男の部下らしき男ふたりの計三名だった。
(今夜はツイてるかもしれないわね)
洒落た娼婦の頼み方とよく手入れされた武器。そして面構えから良客の気配を読み取り、ヴィオレッタは綺麗に微笑んだ。
「皆様は、どちらからいらしたんですか?」
「南のフェリュー諸島さ。知ってるかい?」
「もちろんです。フェリューの果物と貝細工、好きですわ」
フェリュー名産の果物の話で会話を繋ぎながら、訛りと装備で懐具合を見極める。
「素敵な旦那様方。どうぞ、今宵の”薔薇”をお受け取りください」
顔色が悪く疲れ気味のリーダーには、垂れ目とトークで癒し力抜群のローラを。
挙動が不審な、いかにも童貞くんの部下には、妖艶かつリードが得意なカリーナ姐さんを。
そしてもう一人の部下、自分のことも胸ばかり見ていたおっぱい星人には、そのマシュマロおっぱいを最大限に生かせるモニカを。
自分に近づく担当の娼婦たちに、表情をとろけるように変える男たち。
ヴィオレッタの選択は、今宵もピッタリと当たったようだ。
「ごゆっくりお過ごしください。良い刻を」
部屋へと向かう三組を見送った、その時だった。
「相変わらずだな、麗しの姉君。随分とやり手なようで」
気どったその声にヴィオレッタは弾かれたように顔を上げ、目を見開いた。
「ジャン!?」
ヴィオレッタと全く同じ、長い銀髪と紫の瞳。けれどあまり似ていない華やかな面差し。
国家魔術師の証である黒いローブに、唇に宿る蠱惑的な笑み。
見目麗しく凛々しいこの男の名は、ジャンシャール。ヴィオレッタと同じ色の髪と瞳を持つ、正真正銘、血を分けた双子の弟だ。
現在は国の中央で国家魔術師として働いている――はずである。素行不良でクビになっていなければ。
真面目なヴィオレッタとは正反対、いい加減な性格のジャンシャールは、自他ともに認める大の女好きである。本人に言わせれば「好きなわけじゃない、向こうが寄ってくるんだ、まぁ相手しないと失礼だろ」とのことらしいけれど。ふてぶてしい。
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