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第10章 声を聴かせて
③*
『ココっ、あ、あぁっ、あああっ、ぐ、ぅ、ああっ、あ……っ、ああ、俺を、受け止めてくれ、ココ、ココっ!!!』
「!!」
ぐちっぐちっぐちっぐちっという、陰茎を擦る生々しい水音だ。
漂うにおい。ヒュールさんが短く吠えた瞬間、びしゃっぶしゃっといういやらしい水音が響いてわたしは身を縮めた。
幕越しの身体の影が大きく痙攣し、部屋の匂いがいっそう濃くなった。異様な匂いが、鼻を突き刺す。
青臭くて濃密な、独特なこの匂い。
わたしは知っている。これは――獣人の、精液の香りだ。
射精を終えたんだろう、ヒュールさんの、はぁっ、はぁっ、という荒い息が部屋に満ちている。けれどまたすぐに始まる、止まらないうめき声と喘ぎにも似た咆哮。そしてまた、ぬちぬちと雄を擦り上げる生々しい音が部屋に響き始める。
――こんな、ことって。
ヒュールさんは繁殖行為を嫌っていて、そのためにわざわざわたしと協力して、研究員たちをあざむくために番になった演技をしている――そのはずなのに、寝台の天蓋の奥、黒い紗の布越しに見せつけられている現実。
ヒュールさんは、全身でわたしへの欲を喘ぎ、叫び、自慰をして射精している。
狂ったように吠えて、叫んで、まるでおかしくなってしまったかのように。
獣人特有の激しい発情期。
自身の意思とは関係なく、子孫を残す本能に溺れさせられるその期間。
思い当たるのはそれしかなかった。
獣人にとって性衝動は、強ければ強いほど逞しく生命力が強いと称賛される。だから発情期はきわめて歓迎されるべきことで、その長さと激しさによって獣人としての評価も高まる。
特に強いと言われている古代種の性交などは、飲まず食わずで幾晩も続き、時折相手のメスを死に至らしめるほどの激しいものになるらしい。そしてそれは、ニンゲンのわたしには理解できないけれど、獣人の世界ではごく当たり前のことなの。
だから――きっと。
『ああ、ココ、ココ、俺のモノを、俺を――、ああ、呑み込んでくれっ、ココ……っココ……くっ、!!!!』
生々しい言葉。部屋の淫靡な空気と、酷い水音。
ヒュールさんが息を止め、また射精に至ったのがわかる。
びしゃっ、びしゃっ、と天蓋越しにもわかる湿った音が響いて心臓が跳ねた。音と共に天蓋の奥の影、大柄なその身体も苦しそうにびくびくと痙攣している。
怖い、ううん、違う。
圧倒的な獣人の力を、オスの力を見せつけられて、体の震えが止まらないだけ。
怖くない。だって、ヒュールさんだもの。
獣人なのに、わたしを、ニンゲンなのに、ちゃんと扱ってくれた大切なひとだもの。
「はぁ、……はぁ、あ……」
わたしの息が、浅くなる。天蓋越しに、ヒュールさんを目にしてもいないのに熱気に中てられて、立って居られない。ふらりと足の力が抜ける。床に敷かれている毛の長い赤い絨毯にぺたりと座り込むと、わたしはただ、身体を縮こまらせて胸を押さえた。
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