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第10章 声を聴かせて
⑤*
「ココ……? 俺は、幻覚でも見ているのか……?」
唖然としているその表情。普段の優しさがそぎ落とされた、金の眼差しが光るその獣じみた無表情に、喉奥が絞られたように苦しくなった。
優しい蜂蜜みたいな金色が、今は鈍く輝く黄金色をしている。獣人特有の黒い芯のある瞳がギロリとわたしを睨みつけていた。
怖い、ううん、怖くない。伝えなきゃ。
「……ヒュール、さん……っ、ごめん、な、さい……っ、ごめんなさいっ、わたし、ラビさん、とシプさんに……、着せられて、挟まれて、……ヒュールさんが、呼んでるって、いわれて」
「………」
「でも、獣人の言葉で、色々、いって、て……ちがうって、わかって、逃げられなくて、動けなくて、……わたし、」
何を言っているのか自分でもだんだんわからなくなってしまった。
ただ、身体全体がぶるぶると震えている。
天蓋越しでもしっかりと中てられていたヒュールさんの熱を、こうして目の当たりにしてしまって、わたしの体の内側が激しく燃え出したのがわかった。
熱い。苦しい。乾く。欲しい。
わたしの浅ましい雌としての胎奥が、じゅくじゅくと熱をおびてきている。
「ごめんな、さい、ごめんなさい……っ、あ、ぁ、あぁ、ヒュールさ、ん……っ、からだ、おか、しいの、わたしも、うまく言えなくて、ごめん、なさい」
「……。クソっ、ラビとシプか」
ヒュールさんが、わたしから視線を反らして目を眇める。その姿は、何かに耐えているかのようだった。
いつもよりギラギラとした琥珀の眼差しの横顔。キツくただよう精と汗の匂いに、わたしの身体はじんわりと、けれど確実に熱を帯びていく。
はぁ、はぁ、と口から漏れる息が口元から勝手に漂ってしまって、恥ずかしくて口元を抑えた。熱欲に中てられたせいで、わたしの太腿には、蜜口からこぼれショーツから染み出した愛液がいく筋もつたっている。
「ココ。俺は今、発情期なんだ」
「はつじょうき」
やっぱり、そうだった。
繰り返すわたしにヒュールさんは一度頷いた。
何も身に着けていない引き締まった逞しい肌。上半身の逞しい胸筋にしたたる汗。
普段の優しさがそぎ落とされたその精悍な表情と色香の籠った姿。相当な理性で欲を抑えているのだろう、その大きな引き締まった身体はぶるぶると震え、何かに耐えるように眉が顰められている。
口調も普段のやわらかなものが抜け落ちて、どこか研ぎ澄まされていた。
肩で荒く息をしながら、ヒュールさんは辛そうな表情で言った。
「希少種だと、話して、いただろう……? ……俺は、竜人、なんだ」
「竜人様……」
竜人。古代種のひとつ。伝説とも言っていい種族だ。思わず言葉を失うわたしに、ヒュールさんはどこか寂しそうに笑った。
そう言えば様付けで呼んだ時に嫌そうだったな、とぼんやり思い出す。
「ただの珍しい、長生きなだけの種族だ。そして竜人を含め、古代種は数を減らしている。繁殖に、問題があるから。性欲が強すぎて、交尾で、相手の雌を壊してしまうことがある、からだ」
「こ、壊す……?」
思わぬ言葉に、わたしは唖然とするしかできなかった。
ヒュールさんは、苦痛に耐えるような表情のまま、それでも淡々と説明してくれた。
竜人の性交は、長ければ七日間ずっと繋がり続けることもあるらしい。
そして、ヒュールさん自身が、お母様を犠牲にして生まれたこと。竜人の中でも位あるお父様が、多くの雌を殺しながら繁殖している姿を見て、自分はそうはなるまいと決意したこと。
今までは自らの言葉で暗示をかける「異能」の力で、このとんでもない竜人の発情期を乗り切ってきたこと――。
「だが、竜人が数を減らし始めると、国は種の中で贄を選ぶよう一族に言った。繁殖のために、とね。そして俺は父によって逆鱗を奪われ、無理やり研究所に押し込められた。そして――そこからは、前に話した通りだ」
「……ひどい」
眉を寄せると、ヒュールさんは少しだけ笑ったようだった。
「
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