【完結】絶滅危惧種「ニンゲン」のわたしは竜人様に愛される

さわらにたの

文字の大きさ
46 / 57
第10章 声を聴かせて

⑤*

 
「ココ……? 俺は、幻覚でも見ているのか……?」

 唖然としているその表情。普段の優しさがそぎ落とされた、金の眼差しが光るその獣じみた無表情に、喉奥が絞られたように苦しくなった。
 優しい蜂蜜みたいな金色が、今は鈍く輝く黄金色くがねをしている。獣人特有の黒い芯のある瞳がギロリとわたしを睨みつけていた。

 怖い、ううん、怖くない。伝えなきゃ。

「……ヒュール、さん……っ、ごめん、な、さい……っ、ごめんなさいっ、わたし、ラビさん、とシプさんに……、着せられて、挟まれて、……ヒュールさんが、呼んでるって、いわれて」
「………」
「でも、獣人の言葉で、色々、いって、て……ちがうって、わかって、逃げられなくて、動けなくて、……わたし、」

 何を言っているのか自分でもだんだんわからなくなってしまった。
 ただ、身体全体がぶるぶると震えている。

 天蓋越しでもしっかりとてられていたヒュールさんの熱を、こうして目の当たりにしてしまって、わたしの体の内側が激しく燃え出したのがわかった。
 熱い。苦しい。乾く。欲しい。
 わたしの浅ましい雌としての胎奥が、じゅくじゅくと熱をおびてきている。

「ごめんな、さい、ごめんなさい……っ、あ、ぁ、あぁ、ヒュールさ、ん……っ、からだ、おか、しいの、わたしも、うまく言えなくて、ごめん、なさい」
「……。クソっ、ラビとシプか」

 ヒュールさんが、わたしから視線を反らして目を眇める。その姿は、何かに耐えているかのようだった。
 いつもよりギラギラとした琥珀の眼差しの横顔。キツくただよう精と汗の匂いに、わたしの身体はじんわりと、けれど確実に熱を帯びていく。

 はぁ、はぁ、と口から漏れる息が口元から勝手に漂ってしまって、恥ずかしくて口元を抑えた。熱欲に中てられたせいで、わたしの太腿には、蜜口からこぼれショーツから染み出した愛液がいく筋もつたっている。

「ココ。俺は今、発情期なんだ」
「はつじょうき」

 やっぱり、そうだった。
 繰り返すわたしにヒュールさんは一度頷いた。

 何も身に着けていない引き締まった逞しい肌。上半身の逞しい胸筋にしたたる汗。
 普段の優しさがそぎ落とされたその精悍な表情と色香の籠った姿。相当な理性で欲を抑えているのだろう、その大きな引き締まった身体はぶるぶると震え、何かに耐えるように眉が顰められている。
 口調も普段のやわらかなものが抜け落ちて、どこか研ぎ澄まされていた。

 肩で荒く息をしながら、ヒュールさんは辛そうな表情で言った。

「希少種だと、話して、いただろう……? ……俺は、竜人、なんだ」
「竜人様……」

 竜人。古代種のひとつ。伝説とも言っていい種族だ。思わず言葉を失うわたしに、ヒュールさんはどこか寂しそうに笑った。
 そう言えば様付けで呼んだ時に嫌そうだったな、とぼんやり思い出す。

「ただの珍しい、長生きなだけの種族だ。そして竜人を含め、古代種は数を減らしている。繁殖に、問題があるから。性欲が強すぎて、交尾で、相手の雌を壊してしまうことがある、からだ」
「こ、壊す……?」

 思わぬ言葉に、わたしは唖然とするしかできなかった。
 ヒュールさんは、苦痛に耐えるような表情のまま、それでも淡々と説明してくれた。

 竜人の性交は、長ければ七日間ずっと繋がり続けることもあるらしい。
 そして、ヒュールさん自身が、お母様を犠牲にして生まれたこと。竜人の中でも位あるお父様が、多くの雌を殺しながら繁殖している姿を見て、自分はそうはなるまいと決意したこと。
 今までは自らの言葉で暗示をかける「異能スキル」の力で、このとんでもない竜人の発情期を乗り切ってきたこと――。

「だが、竜人が数を減らし始めると、国は種の中で贄を選ぶよう一族に言った。繁殖のために、とね。そして俺は父によって逆鱗を奪われ、無理やり研究所に押し込められた。そして――そこからは、前に話した通りだ」
「……ひどい」

 眉を寄せると、ヒュールさんは少しだけ笑ったようだった。

感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……