【完結】絶滅危惧種「ニンゲン」のわたしは竜人様に愛される

さわらにたの

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エピローグ/後日談

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「ヒュール……」 
「……。起きたかい? おはよう」

 目を覚ませば、いつも彼の腕の中だ。そしてあまり睡眠を必要としない彼は、大体いつもわたしを見守ってくれている。
 整えてくれたのか、サラリとした敷布。体はまだ何も纏っていない状態だけれど、ずっと腕に抱かれていたから全身が温かい。

「まだ眠っていても大丈夫だよ、何か飲むかい? 用意しようか」

 そう言って寝台から起きあがろうとするヒュール。
 一緒に旅をして、彼がとてもかいがいしい世話焼きな人だと改めて知った。元々彼の種族にとってわたしの十八という年齢は赤ん坊にも等しい、とは聞いていたけれど、まさかこれほどとは、と思わざるを得ない。放っておくと、着替えにすら手を貸してきそうなヒュール。食事を食べさせたり、移動の時によく抱き抱えたりするのも相変わらず。あれこれと本当に嬉しそうにわたしの世話を焼く彼によると、愛しい相手に世話を焼く、という行為そのものがとても楽しいのだそうだ。
 
 わたしが新しいわたしを知るように、わたしは、ヒュールのことも知っていく。


「ううん……大丈夫。傍に、いたいの」

 そう言って、わたしはその腕の中から手を伸ばし、寝台から立ち上がろうとするヒュールの腕を引っ張った。そしてそっと頬に触れ、そのまま手を滑らせて美しく硬いその角に触れる。

 獣人の証であるそれは、どこか触ってはいけないものだと思っていたのだけれど、ヒュールはなぜかそこを撫でられると少しだけはにかんだ様に笑うの。なんでも、ちょっぴりくすぐったいのだそうだ。わたしにはない場所だから、そういうものなのかな、硬くて感覚とかなさそうなのに、なんて思いながら、こうしてじゃれ合う時間がとても愛しい。

 いつもは貴公子然して穏やかなヒュールの少し崩れるその顔が見たくて、よくこうして触れてしまう。
 普段は大人で余裕のある人にみえるけれど、今、こうして裸で互いに隔てるものが何もない状態でわたしを抱きしめてくれている彼は、どこか違った。見た目の年齢相応の、ちょっぴり可愛さのあるその笑み。

 たぶん、彼のことを、わたしはまだ全然知らない。
 そしてヒュールも、わたしのことを知らないだろう。だってわたし自身でさえよくわかっていないんだもの。


 でも、時間はこれからたっぷりあるから。
 一緒にゆっくりと、知っていけたらいいと思う。

 偉い古代種の竜人様でなく、ただひとりのヒュールとして。
 そしてわたしも、アルビノのニンゲンでもなく、ただひとりのココとして。
 わたしと彼は、旅をして、こうして一緒に生きていく。






 【終】

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読んでくださってありがとうございました!
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