精霊騎士様は、ずっと見ていたらしいです。

さわらにたの

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我が家から伝説の”精霊の花嫁”が出るなんて!
 わたしが生まれた時、そう言いあって両親は大感激したらしい。
 領民のお祝いが三日三晩続いたとか、続いてないとか。
 ともかく、みなに祝福されてわたしは生まれた。

 十八年前、地方のドがつく田舎、ヴィネガン子爵領にて”精霊の花嫁”の証明である「腕輪」をもって生まれてきたこのわたし。
 エネリア=ヴィネガン。
 腕輪といっても本当のゴツゴツした金属の腕輪じゃなくて、左手首にぐるっと輪になっている痣、これが「腕輪」。
 これを持つ赤ん坊が生まれた場合、わが国では国のしかるべき機関に行って、しかるべき手続きをしなければならないの。「精霊の花嫁」として戸籍に登録してその時から国の管理下に置かれるのよ。
 違反すると高額な罰金――ということで、王都から遠い我が家はおおわらわだったらしい。

「ネリィ、アンタが生まれたときはほっんとに大変だったのよ!」と、毎回この話題になるたびに母から聞かされる。
 ごめんね、お母さん。でもわたしのせいじゃないから許して欲しいの。


 ”精霊の花嫁”。
 魔力やら武力やらでドンパチ解決する時代は”精霊の花嫁”のすさまじい魔力がいわゆる「勇者サマ」と同義だったらしいけれど、現代ではそんな諍いはなく、隣国ともごくごく平和。
 そんな世の中で、いわゆる精霊信仰自体もすたれてきているせいか、「腕輪」に宿っているはずの旦那様である精霊様は姿を現してくれなかった。
 言い伝えによると”精霊の花嫁”が生まれたときには、同時に腕輪に宿る精霊がこの世界に顕現し、花嫁のために力を貸してくれる――らしいのだけれど。
 今年で十八年。やっぱり精霊様は出てきてくれない。
 わたしのなかではこの「腕輪」は、ただの「お金を産む痣」になり果てていた。

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