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第一部
3話:集配魔術士は復讐心を取り戻す
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風の強く吹き付ける嵐の夜、酒場の木窓はメキメキとと音を立ててしなった。父が大男を三人も連れて帰ってきた。何だ?やけに騒がしいな。夜遅くだったので眠気は限界に達していたはずだが、父が友人を連れてくることは滅多に無いので見入ってしまった。
王国の酷い課税の話や王国が魔族を滅ぼす計画を練っているらしいと言う話など、小さかった俺には聞いたこともない話ばかりだった。しばらくすると話題は自分の話になっていた。
「そういやあんたのとこの息子さん。集配魔術なんだって?」
「ああ、全く使えん野郎だ」
「お前さんは火魔術、あんたのお袋は風魔術だったよな。普通、どっちかの魔法属性か融合属性になるはずだけど、不思議なものだな」
そうなのか?あの時の俺は理解が追いついていなかった。すると、ほとんど喋らなかった父がとんでもないことを言い出した。
「ありゃ俺の息子じゃねぇよ」
その一言に俺は呆然と立ち尽くした。大男たちが青ざめた顔で、さらに鋭く切り込む。
「じゃああの子はどこで拾ったんだ」
「シンラの森だ。あれは今日みたいな最悪な夜だった。あの頃は俺もバリバリの冒険者だったから多くの依頼を受けていたんだ。暴風荒虎の討伐だったんだがコンディションが悪くて長引いちまってよ。そしたら帰る途中森の奥で赤ん坊の泣き声がしたんだ。ひどく泣いていたな。何か鳥をかたどった首飾りをしていて、体は傷だらけだった。近くには【愛するルヴェンの幸せを願って】と書かれた切れ紙が置いてあった。ほっといたら死んじまうと思って家に連れ帰ったんだ。翌日俺はその子を連れて王都である占い師の元へ行った。確か名前はマルドゥックと言ったか。奴は魔術を見通す目を持っていてこの子を占ってもらった。一瞬彼女は驚いたような素振りを見せたがすぐに開き直り、『こりゃ、残念だが集配魔術士になりそうじゃ。どっかに引き取ってもらうのが良いだろう。』と言う。そうは言われても自分の村にそんな施設はない。だから"仕方なく"俺が育てることにした。あんな出来損ないが俺の息子と言われるのはほんとゴメンだ」
あの瞬間俺は耐え難い怒りを感じた。じゃあ俺の信じてきたものは何だったんだ!言葉にならない憤怒の情に駆られていた。許さない。俺をこんな目に遭わせた奴を絶対に突き止めて問い詰めてやる。切れ紙は誰が何のために書いたのか、俺はなぜ捨てられたのか・・・ルヴェン、自分の名前に吐き気がしてしょうがない。ーーーーーーーーーー
「大丈夫ですか?」
崩れ落ちそうになった体をエステラが支えてくれていた。
「ああ、少しめまいがしていただけだ」
「私、そろそろこの村を出なければ行けません。王都に来たらアメジス家を頼ってくださいね。貴方は一応、命の恩人ですから」
少女は頰を赤らめてそんなことを言う。
「ああ、そうさせてもらうよ。またどこかで会おう」
エステラと別れた俺は、今後自分がやるべきこと、王都に行ってからの計画を考えていた。(ああ、しっかりと復讐させてもらうよ)
少年の双眸が朱く光っていた。
王国の酷い課税の話や王国が魔族を滅ぼす計画を練っているらしいと言う話など、小さかった俺には聞いたこともない話ばかりだった。しばらくすると話題は自分の話になっていた。
「そういやあんたのとこの息子さん。集配魔術なんだって?」
「ああ、全く使えん野郎だ」
「お前さんは火魔術、あんたのお袋は風魔術だったよな。普通、どっちかの魔法属性か融合属性になるはずだけど、不思議なものだな」
そうなのか?あの時の俺は理解が追いついていなかった。すると、ほとんど喋らなかった父がとんでもないことを言い出した。
「ありゃ俺の息子じゃねぇよ」
その一言に俺は呆然と立ち尽くした。大男たちが青ざめた顔で、さらに鋭く切り込む。
「じゃああの子はどこで拾ったんだ」
「シンラの森だ。あれは今日みたいな最悪な夜だった。あの頃は俺もバリバリの冒険者だったから多くの依頼を受けていたんだ。暴風荒虎の討伐だったんだがコンディションが悪くて長引いちまってよ。そしたら帰る途中森の奥で赤ん坊の泣き声がしたんだ。ひどく泣いていたな。何か鳥をかたどった首飾りをしていて、体は傷だらけだった。近くには【愛するルヴェンの幸せを願って】と書かれた切れ紙が置いてあった。ほっといたら死んじまうと思って家に連れ帰ったんだ。翌日俺はその子を連れて王都である占い師の元へ行った。確か名前はマルドゥックと言ったか。奴は魔術を見通す目を持っていてこの子を占ってもらった。一瞬彼女は驚いたような素振りを見せたがすぐに開き直り、『こりゃ、残念だが集配魔術士になりそうじゃ。どっかに引き取ってもらうのが良いだろう。』と言う。そうは言われても自分の村にそんな施設はない。だから"仕方なく"俺が育てることにした。あんな出来損ないが俺の息子と言われるのはほんとゴメンだ」
あの瞬間俺は耐え難い怒りを感じた。じゃあ俺の信じてきたものは何だったんだ!言葉にならない憤怒の情に駆られていた。許さない。俺をこんな目に遭わせた奴を絶対に突き止めて問い詰めてやる。切れ紙は誰が何のために書いたのか、俺はなぜ捨てられたのか・・・ルヴェン、自分の名前に吐き気がしてしょうがない。ーーーーーーーーーー
「大丈夫ですか?」
崩れ落ちそうになった体をエステラが支えてくれていた。
「ああ、少しめまいがしていただけだ」
「私、そろそろこの村を出なければ行けません。王都に来たらアメジス家を頼ってくださいね。貴方は一応、命の恩人ですから」
少女は頰を赤らめてそんなことを言う。
「ああ、そうさせてもらうよ。またどこかで会おう」
エステラと別れた俺は、今後自分がやるべきこと、王都に行ってからの計画を考えていた。(ああ、しっかりと復讐させてもらうよ)
少年の双眸が朱く光っていた。
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