最強魔力量の最弱魔術士はマトモに戦わない

༺みずな(シャキシャキ)࿐

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第一部

最終話:集配魔術士は全てを知る。

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 今日は夜空一面見渡す限りの星空が広がり、窓からはちょうど満月を望むことができた。パーティメンバーは俺の部屋に集まっていた。
 イフリーナとエスメラが俺の周りををじっと見つめている。

「何でここにあなたが来ちゃってるんですか??」

エステラは俺の隣にいる少女に指を差してそう言った。すると、俺の影からこっそりと黄色い獣耳と尻尾が出てきた。新しくメンバーに加わったララのことを言っていたのだろう。

「ルヴェンの影についてきただけ」

確かに、ついてきただけなのだが深読みばかりするイフリーナは納得のいかない顔でこちらを見る。

「お前たち、一緒に寝るつもりなのか?」

「そーだけど。なにか。」

「お、おい!男女が同じベットで寝るんだぞ。その…は、恥ずかしいとか思わないのか??」

「どうしたイフリーナ!羨ましいのか~。今度お前も一緒に寝てやっても良いぞ。」

「だ、誰がお前なんかと……」

実際、ララと寝ることは避けられない。彼女はさっき拾ってきたばかりだ。当然お金も帰る家もありゃしない。かと言って彼女だけ野宿にするわけにもいかない。

「とにかく俺はコイツと寝る。この件は以上だ!」

「では、我々を集めたのは何故なんです?」

俺は、村でこっそり聞いた父の話。そして俺を捨てた貴族への復讐をするという俺の目的を包み隠さず話した。一瞬の沈黙が部屋に流れる。

「てことはつまり…お前は私達の敵なのか?」

「敵と言ってはなんだが俺を捨てた張本人は必ず貴族の中にいる。だがアメジス家を疑っているわけでは無い。」

「何か手がかりは無いのですか?」

「手がかりになりそうなのは二つだ。一つ目は赤ん坊の俺を見た時の占い師の反応。もう一つは捨てられた時に俺についていた鳥を形どった首飾りだ。」

「鳥を形どった首飾り…もしかしたらアルフォード家の物では無いか?私がまだ小さい時に母が教えてくれた。」

「そうなのか!?でもアルフォード家は存在しないんだよな。だとしたら何故…」

「もしかしたらアルフォード家に何かあるのかもしれませんね。」

「大体絞れてきた。でもまだよく分からない。やはりマルドゥックとか言う占い師。訪ねてみた方がよさそうだな…」

さっきまでボーッと聞いていたララがこう言う。

「なら、行こう。今からでも。二人はアメジス家にいて。私、潜入捜査は得意だから。」

確かにララの言う通りだ。占い師は夜になると商売を始める。それに、貴族の二人をそんな危険な場所に連れていけない。

「私達も行きます!」

「いや、ダメだ。大勢で行って怪しまれてしまっては意味がない。二人はここに残っていてくれ。」

「気をつけてくださいね。二人の無事を願っています。」

月が綺麗な夜、俺とララは二人に見送られて暗闇に消えた。



 俺たちはいくつか道を曲がったところで、占い師が多い薄気味悪い路地裏に入った。そこにいた一人の老婆に話しかける。

「マルドゥックという占い師をご存知ですか?」

「わしがマルドゥックじゃが…。」

「ーーーッ!」

いきなり探していた占い師に出くわすとは…。気味が悪いものだ。

「なんじゃワシに用かい?」

「はい。お話が聞きたくて。」

「そうかい。ならワシについてくるんじゃ。」

俺は言われるままにさらに細い路地へと入っていく。そしてしばらくすると、灰暗い部屋に連れていかれた。

「そんで、ワシの入り前はいくらじゃ。」

「3ジェラでどうだ。」

「その袋にはまだ入っているようじゃが?」

チッ、鎧の中から望む小さな袋に目を付けるとは。
しょうがない。もう少し増やそう。

「7ジェラで頼もう。」

「良いじゃろ。それで何が聞きたいんじゃ。」

「15年前。貴方に世話になってね~貴方に聞けば何かわかると思ったんだ、ーーッ!!」

【集配】!!

僅かに逃してしまった。老婆が逃げたのだ。あらかじめララに老婆の影に入ってもらい後をつけさせたが、彼女はまだレベル1だ。見つかったらマズい。早く行かなければ!!

その刹那、突如として現れた黒いローブに身を包んだ男達が俺に向かって一斉に魔術を放った。

【自配】

間一髪のところでかわし、少し離れた小路に隠れる。そして、ダンジョンで手にしたローブを装着した。(攻撃のできない俺に勝ち目はねぇ。このローブの力で索敵魔術を妨害しながら逃げなければ!)

男達が魔術を唱え始めたところで側を潜り抜ける。
走るしかない!全速力で。幸い素早さには自信があったのですぐに老婆の後を追う。
しかし老婆は闇の中に消えてしまった。
(ララ、上手くやってくれよ。)
もう後ろの男達から逃げ出せそうにない。俺は瞑想し自分の魔術に思考を巡らせる。
 集配魔術で俺は、基本的にものを配る【集配】、それを自分に使う【自配しゅうはい】、敵の血管を組み替えることで壊す一撃必殺の【襲配しゅうはい】、そして気配を感知する【周配しゅうはい】の四つを使える。これで今の状況を打開するためには、【襲配】で敵に触れるしかない。しかしザッと見四人、その魔術をくぐり抜け胴体までたどり着くには相当の素早さが求められる。
自分の能力を上げるにはどうすれば良いか、、、
フッ、これだ!

改配しゅうはい】!!

俺がイメージで魔術を創り出すと自身のステータス値を自由に操作することが可能となった。多すぎる魔力を、素早さに極振りする。

常人の域を超えたスピードで一気に距離を詰める。

【襲配】

、、、
、、、、、

グハァァア!!
男達から一斉に血が吹き出す。
遂にやったのだ。しかし少し遅かったようだ。もう老婆はどこにもいない。ララに託すしかなかった。




 屋敷にララが帰ってきた。無事でよかったが、息を切らして目が絶望に染まっている。他の二人も俺の部屋に再度集まっていた。

「どうしたララ!何があった!?」

「マズいの、殺されちゃう。」

「それはどういうことですか?ララさん。」

「ルヴェン、ここにいてはダメ。早く逃げないと。
あの老婆マルドゥック、裏で男とつながってた。」

「男って誰なんだ!」

「暗闇ではっきりとは分からない。でも貴族らしい格好をしてた。あの老婆マルドゥックが言っていた。『 殿下。奴がルークの息子、です。早急に始末いたしましょう』と。」

「ルークってアルフォード家の当主のーーーッ!
てことはルヴェンさんも貴族??!」

おい、俺が、、、嘘だろ。俺がアルフォード家の跡継ぎだったなんて。会話から察するに俺を殺したがるのはザラード家に違いない。俺の復讐相手は奴らザラードだったのか!
フッフフフフ、ハハハハハ!
面白くなってきた。俺が捨てられたのは俺を殺すためじゃない。ルークが与えてくれた最後の希望チャンスだった訳だ。

そうか俺を地獄に突き落としてまで生かしてくれてありがとう。おかげで思う存分奴らザラードに復讐できるじゃないか!!


第二章、、、開幕だ!!!








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