最強魔力量の最弱魔術士はマトモに戦わない

༺みずな(シャキシャキ)࿐

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第一章:レジスタースロウ

3話:集配魔術士と錆骨董の店主

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「じゃーあー薬草50本、聖水30本、魔除け線香と~弓矢の補充に包帯、煙玉、鉄の塊、あとマッチおばさんのクッキーをお願いするね!」  


草原に寝っ転がった少女がふぁぁと大きなあくびをしながら呟いた。
「ちょっと待とうか!なぜ俺が雑用なんだ?」

ココアのような髪の少女が、不満そうに口を切る。

「え?あなた補助隊員でしょ?補助隊員は徹底的に補助に回ってもらうわっ」
 
ニコッと笑みを浮かべとんでもないことを言う少女。こいつはマリン。このパーティの副リーダーで、姉様的存在だ。
それにしても、これからずっと雑用の日々が始まるのだろうか・・・どうりで補助隊員は少ないわけだ。
・・・と落胆していると、同じ補助隊員のナハトさんとシロフさんが『まぁまぁ』と慰めてくれた。ナハトさんは三十路前後の頼れる兄貴的存在、シロフさんは優しくて穏やかな大人びた女の人と言ったところだろうか。
まぁとにかく、無茶苦茶な人じゃなくて良かった。

尺取虫のようにヨボヨボと歩を進める。なんせ、買うべきものは山ほどある。"買うべきもの"の中にマッチおばさんのクッキーが本当にいるのかはこの際置いといて、今は与えられた仕事をこなす事にしよう。渡された額はたった1ジェラと40コルク(1万4000円)。これで全て揃えるのが初めてのミッションか。
なんなら余らせて自分のお金にしたい。と、考えるとここは腕の見せ所だな。

「いらっしゃいませ~」

「早速だがこの店に薬草50本と聖水30本は取り扱っているか?」

「薬草50に聖水30・・・はい、ございますが・・・」

「なら、この純度80ポーテルのポーション3つと交換できないか?」

「はっ80!?そんな高級ポーションを薬草と聖水何かで譲っていただけるのですか!?」

(80ポーテルのポーションならアイシスの街で腐るほど作ったことがあるしな。この程度の錬成なら肉体が変わった今も作れるな)

「1級ポーションともなれば一瓶10コルクの値段がついてもおかしく無いと聞くが??」

「え、ええ。薬草50本と聖水30本なら十分賄えます」

「それじゃあ交渉成立だ」

そうして、俺は一銭も使わずに森で作ったポーションの余りだけで用を充した。

商売運を願って礼をし、店を出た。次は魔除け線香やら煙玉やら、包帯やらが必要か・・・となると、骨董屋なんかが良いだろう。

過去にエステラが教えてくれた中に何でも屋というのがあった。それは一週間ほど前の王国祭のエステラとのデートの時に教えてもらったお店だ。エステラもたまに来るという。



カランカランッと音のなる、風鈴のついた暖簾に手を掛けると、どこか懐かしく、そしてスパイス薫る店の雰囲気に圧倒された。

「すいません」

入ってすぐ聞こえてきたのは、重く太い声の
眉雪の老人の声だった。

「あい~お客さん、見ない顔じゃな」

「ああ、ここに来るのは初めてだからな。友人の紹介で立ち寄ったのさ」

「そうですかい。何をお探しかね?」

「ここは魔道具とかはあるのか??」

「ありますぜい。ちょっと待っておれ」


カチ、カチ、カチ、カチ・・・・・・・


時計の針が容赦なく進む。あれから15分経ってもじいさんは出てこない。まだかまだかと地団駄を踏んでいると、


「やぁ」

さらりとした白髪、熱気を帯びた筋肉質な肌を見事にテカらせ・・・って!


「なに客を前にして風呂入ってきてんだ!?」

そんな俺の言葉には無関心で、じいさんはタキシードに着替えながら回答する。

「清廉潔白が紳士の務め。謙虚であれば真摯な務めってな」

「なに下手な洒落かましてんだ、じいさん。まぁ全て水に流してやる。そんで魔道具はあるのか?」

「あ、魔道具か。忘れとった」

「おいマジかよ。心思に思うことあるぜ全く」

「そんな目でワシを見んといてくれ。これだから年寄りの肩身は狭いのう。あれ?何だっ」

まで言いかけたので、盛大にため息をついてやると、吹っ切れたように店奥へと消えていった。

3分後・・・

「うちの魔道具はこれで全部じゃ」

少しばかり打見すると、中々の代物がいくつかあった。

万薬の素になる【金喪鳥の羽】、金属並みの硬さで、しかも錆びない【ゴブリンシャークの歯】から、【美味しい粉】とかいう謎すぎるものまで、1から十までひっきりなしに揃っていた。

「じいさん、ずいぶんと雑多に集めたなぁ」

「なぁに、ワシは見る目が鋭いからな」

「物好きなじいさんだ・・・で、【煙玉】と【魔除け線香】、【鉄の塊】??何かあったりするか?」

「そんなもんいくらでもあるわい。ここで会ったが何かの縁じゃ。【煙玉】1コルク、【魔除け線香】2コルクと、【鉄の塊】廃品の鉄剣をタダで持っていくと良い」

たった3コルクという魅力的な提案に、俺は息を呑んだ。

「マジか!じいさん。感謝するぜ」

「小僧。また来いよ」

「ああ、きっといつかまた来るさ」

そうして店を出ると、もう一度リストを確認した。

(えーっと、足りないのは弓矢の補充と包帯に、マッチおばさんのクッキーだな。残金は3コルクしか使ってないから1ジェラと37コルク。割と余裕がありそうだ)

そうして俺は初の任務完遂へと歩み出した。




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