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時 トキ
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私は魔女。人間が恐るような怖い魔女ではありませんが世間的には恐れられ狩られる側であります。そんな私ですが…ある男の子を拾ったのです。魔女の森に捨てられた哀れな子供は白い髪に赤い目をしていました。まるで兎のように愛らしかったのでその男の子に名を与え、育てる決意をしました。男の子の名は『美兎 みと』
美兎はとても美しい青年に育ちました。魔女である私の事を母さんと呼び、人間という種族と見た目は変わらない私は、魔法で姿を変えることも出来ます。故に人間に魔女だと見破られたことはありません。美兎は美しい女性を家に連れてきました。ガールフレンドのようです。
"その娘と幸せな家庭を築きなさい"と私は美兎を人間の住む世界に戻してやろうと言う思いから言葉を零しました。そして、美兎は彼女と幸せそうに魔女の住む森を出て街で過ごしました。たまに私に顔を見せに来るのですが、今回は子供も一緒の様子でとても幸せそうに人生を楽しむ美兎を見て私はとても嬉しくなりました。然し、美兎が成長していく度に私は悲しくなるのです。人間の生涯は短い、また私は見送らなければいけないのかと心苦しくなるのです。
時は止まらない、美兎は年老いてお爺さんになってしまいました。あの娘と子供には内緒で私に会いに来る美兎、美兎には私が魔女だとバレてしまったのです。
「母さんは、時を重ねても美しいままだね」
「美兎は時を重ねた証を持っていますね」
私は美兎の顔の皺が深くなり笑う姿を見ながらそう言うのです。
美兎はお昼寝でもしようと私を野原に連れ出しました。ぽかぽかの日差しが当たる野原で寝転びお互い顔を合わせ目を閉じました。
ふと、目が覚めると夕日が私たちを照らしていました。未だに目が覚めない様子の美兎を起こそうと頬に触れると、美兎はとても冷たかったのです。嗚呼、なんて綺麗な死に顔でしょうか、穏やかな顔をして眠る美兎に私は涙が溢れ止まりませんでした。時は止まらないと教えてくれたのは何時だって美兎という人間だったのです。
私たち魔女は何百年と言う時を過ごしている、いつもと変わらない森の風景を見て、いつもと姿の変わらない自分。そんな毎日が続くと世界の時が止まっているのではないかと錯覚させるのです。たまたま見つけた人間の子供、美兎に出会ってから私の時は進んだように感じました。止まらない涙は美兎の顔に落ちる、そこで命を吹き返さないかなんてファンタジックな事を考えてみるが、死者蘇生の魔法などこの世にはない。時というものはとても残酷です。
私は今日も一人森の中で過ごすのです。時は止まらない、美兎がいたあの記憶だけがそれを教えてくれました。退屈な時の中、私は赤子の声を聞いたのです。そして私はその赤子を見て微笑みました。
哀しき人の子よ。貴方の名前は、『 』
美兎はとても美しい青年に育ちました。魔女である私の事を母さんと呼び、人間という種族と見た目は変わらない私は、魔法で姿を変えることも出来ます。故に人間に魔女だと見破られたことはありません。美兎は美しい女性を家に連れてきました。ガールフレンドのようです。
"その娘と幸せな家庭を築きなさい"と私は美兎を人間の住む世界に戻してやろうと言う思いから言葉を零しました。そして、美兎は彼女と幸せそうに魔女の住む森を出て街で過ごしました。たまに私に顔を見せに来るのですが、今回は子供も一緒の様子でとても幸せそうに人生を楽しむ美兎を見て私はとても嬉しくなりました。然し、美兎が成長していく度に私は悲しくなるのです。人間の生涯は短い、また私は見送らなければいけないのかと心苦しくなるのです。
時は止まらない、美兎は年老いてお爺さんになってしまいました。あの娘と子供には内緒で私に会いに来る美兎、美兎には私が魔女だとバレてしまったのです。
「母さんは、時を重ねても美しいままだね」
「美兎は時を重ねた証を持っていますね」
私は美兎の顔の皺が深くなり笑う姿を見ながらそう言うのです。
美兎はお昼寝でもしようと私を野原に連れ出しました。ぽかぽかの日差しが当たる野原で寝転びお互い顔を合わせ目を閉じました。
ふと、目が覚めると夕日が私たちを照らしていました。未だに目が覚めない様子の美兎を起こそうと頬に触れると、美兎はとても冷たかったのです。嗚呼、なんて綺麗な死に顔でしょうか、穏やかな顔をして眠る美兎に私は涙が溢れ止まりませんでした。時は止まらないと教えてくれたのは何時だって美兎という人間だったのです。
私たち魔女は何百年と言う時を過ごしている、いつもと変わらない森の風景を見て、いつもと姿の変わらない自分。そんな毎日が続くと世界の時が止まっているのではないかと錯覚させるのです。たまたま見つけた人間の子供、美兎に出会ってから私の時は進んだように感じました。止まらない涙は美兎の顔に落ちる、そこで命を吹き返さないかなんてファンタジックな事を考えてみるが、死者蘇生の魔法などこの世にはない。時というものはとても残酷です。
私は今日も一人森の中で過ごすのです。時は止まらない、美兎がいたあの記憶だけがそれを教えてくれました。退屈な時の中、私は赤子の声を聞いたのです。そして私はその赤子を見て微笑みました。
哀しき人の子よ。貴方の名前は、『 』
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