おひるねのまんなかで

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てのひら

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 「ほら、こっちおいで。あったかい手、してるでしょう?」

 おばあちゃんがそう言うと、少年はためらいながらも、おそるおそる手を差し出した。

 「ん……あったかい」

 「うん。ぬくもりはね、手のひらにちゃんと残るのよ。どこにもいかない」

 少年の手の中には、小さな子犬の体温も重なっていた。ふわふわの毛と、ちいさな鼓動が、指先にうつってくる。

 —— ちいさい手。やさしいにおい。おちつく。

 子犬は、鼻先をそっと手のひらに埋めた。動かないその手は、あたたかくて、静かで、まるで巣穴みたいだった。

 「ぼく、くもになっても……これ、わすれない?」

 「わすれない。てのひらって、覚えてるの。不思議だけど、ちゃんとね」

 少年はふと、自分の手を見つめた。何も書いていないのに、そこに何かが“いる”ような気がした。

 —— このては、すき。ここにいたい。ずっと。

 「じゃあ……おばあちゃんの手も、ぼく、覚えてる?」

 「もちろんよ。ずっとね」

 ふたりの手のあいだで、犬が小さくくしゃみをした。
 時間が、そっとあたたかく丸まって、静かな午後に包まれていく。
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