4 / 5
てのひら
しおりを挟む
「ほら、こっちおいで。あったかい手、してるでしょう?」
おばあちゃんがそう言うと、少年はためらいながらも、おそるおそる手を差し出した。
「ん……あったかい」
「うん。ぬくもりはね、手のひらにちゃんと残るのよ。どこにもいかない」
少年の手の中には、小さな子犬の体温も重なっていた。ふわふわの毛と、ちいさな鼓動が、指先にうつってくる。
—— ちいさい手。やさしいにおい。おちつく。
子犬は、鼻先をそっと手のひらに埋めた。動かないその手は、あたたかくて、静かで、まるで巣穴みたいだった。
「ぼく、くもになっても……これ、わすれない?」
「わすれない。てのひらって、覚えてるの。不思議だけど、ちゃんとね」
少年はふと、自分の手を見つめた。何も書いていないのに、そこに何かが“いる”ような気がした。
—— このては、すき。ここにいたい。ずっと。
「じゃあ……おばあちゃんの手も、ぼく、覚えてる?」
「もちろんよ。ずっとね」
ふたりの手のあいだで、犬が小さくくしゃみをした。
時間が、そっとあたたかく丸まって、静かな午後に包まれていく。
おばあちゃんがそう言うと、少年はためらいながらも、おそるおそる手を差し出した。
「ん……あったかい」
「うん。ぬくもりはね、手のひらにちゃんと残るのよ。どこにもいかない」
少年の手の中には、小さな子犬の体温も重なっていた。ふわふわの毛と、ちいさな鼓動が、指先にうつってくる。
—— ちいさい手。やさしいにおい。おちつく。
子犬は、鼻先をそっと手のひらに埋めた。動かないその手は、あたたかくて、静かで、まるで巣穴みたいだった。
「ぼく、くもになっても……これ、わすれない?」
「わすれない。てのひらって、覚えてるの。不思議だけど、ちゃんとね」
少年はふと、自分の手を見つめた。何も書いていないのに、そこに何かが“いる”ような気がした。
—— このては、すき。ここにいたい。ずっと。
「じゃあ……おばあちゃんの手も、ぼく、覚えてる?」
「もちろんよ。ずっとね」
ふたりの手のあいだで、犬が小さくくしゃみをした。
時間が、そっとあたたかく丸まって、静かな午後に包まれていく。
0
あなたにおすすめの小説
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。
しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。
そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。
そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。
児童絵本館のオオカミ
火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。
まぼろしのミッドナイトスクール
木野もくば
児童書・童話
深夜0時ちょうどに突然あらわれる不思議な学校。そこには、不思議な先生と生徒たちがいました。飼い猫との最後に後悔がある青年……。深い森の中で道に迷う少女……。人間に恋をした水の神さま……。それぞれの道に迷い、そして誰かと誰かの想いがつながったとき、暗闇の空に光る星くずの方から学校のチャイムが鳴り響いてくるのでした。
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる