あなたのいない未来で

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最後に交わしたまなざし

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彼は振り返らない。
それが、ふたりの最後の距離だった。

もう、彼女の声は聞こえない。
彼女が何を言おうとしたのかも、
言わなかったのかさえも、
彼には届いていない。

交わらなかったまなざしの感触だけが、
彼の記憶に残っている。

あのとき、
彼女は確かに彼を見ていた。
けれど、その視線はどこか遠くをすべっていた。

焦点があっていたのは、
彼ではなく、彼の“あと”にある何かだった。

彼は、あのときもう知っていた。
彼女の視線が、彼を通過していることを。
それが意味するものを。

でも、彼は止まらなかった。
止まってしまえば、
あの静けさが崩れてしまう気がした。

まなざしが交わるには、
ほんのわずかな余白が必要だった。
その余白を、
彼は最後までつくれなかった。

それが終わりだったと、
彼は未来で気づく。

過去に戻ってみても、
まなざしは、すでに交わっていない。

彼女が彼を見つめていたのではなく、
彼が、彼女に見つめられないことを受け入れていた。

それだけだった。
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