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声をかけられなかった駅
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あの駅で、あなたを見かけた。
正確には、
あなたかもしれない人の後ろ姿を見つけた。
電車がすぐそこに来ていて、
ホームのアナウンスが流れていて、
それなのに、
わたしのまわりだけ、
音がすべて抜け落ちていた。
名前を呼べば、
振り向いてくれるかもしれない。
でも、その一音が怖かった。
あなたじゃなかったらどうしよう。
いや、
あなたで“あって”しまったら、
もっと困る。
わたしの中で、
「あなた」はもう過去になっていたはずだった。
だから、
わたしは声をかけなかった。
その背中は、
ゆっくりと歩いていって、
わたしと同じ車両には乗らなかった。
すれ違ったというより、
「すれ違わずに済ませた」のかもしれない。
降りた駅のホームで、
風が少しだけ遅れて、
わたしの顔をなぞった。
呼吸の途中で止まった言葉だけが、
喉の奥に熱のように残っていた。
もし、
あのとき声をかけていたら、
何が変わっただろう。
たぶん、何も変わらなかった。
でもその「何も」を確かめることさえ、
いまのわたしにはできなかった。
正確には、
あなたかもしれない人の後ろ姿を見つけた。
電車がすぐそこに来ていて、
ホームのアナウンスが流れていて、
それなのに、
わたしのまわりだけ、
音がすべて抜け落ちていた。
名前を呼べば、
振り向いてくれるかもしれない。
でも、その一音が怖かった。
あなたじゃなかったらどうしよう。
いや、
あなたで“あって”しまったら、
もっと困る。
わたしの中で、
「あなた」はもう過去になっていたはずだった。
だから、
わたしは声をかけなかった。
その背中は、
ゆっくりと歩いていって、
わたしと同じ車両には乗らなかった。
すれ違ったというより、
「すれ違わずに済ませた」のかもしれない。
降りた駅のホームで、
風が少しだけ遅れて、
わたしの顔をなぞった。
呼吸の途中で止まった言葉だけが、
喉の奥に熱のように残っていた。
もし、
あのとき声をかけていたら、
何が変わっただろう。
たぶん、何も変わらなかった。
でもその「何も」を確かめることさえ、
いまのわたしにはできなかった。
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