ママが婚約破棄されちゃった

monaca

文字の大きさ
1 / 1

サンタさんにお願い

しおりを挟む
 ママがキッチンで泣いています。

 ぼくに隠れているつもりだけど、広くないアパートだからすぐにわかってしまいました。

「ママ、どこか痛いの?」
「ううん、大丈夫。なんともない」

 笑ってくれました。
 でも、涙は止まりません。
 ぼくはママのそばに行って、よしよし、しました。

「いやなことがあったのかな?」
「ちょっと……だけね」

 ちょっとだけなのにこんなに泣くなんておかしな話です。
 ぼくはすぐに嘘だとわかりました。

「新しいパパのこと?」
「……」

 ママは答えてくれません。
 つまり、当たっているということです。

 新しいパパ。
 本当はまだパパじゃないのだけど、すこしまえにママから教えてもらいました。
 新しいパパはそのとき、ぼくの顔をじっと見て、「賢そうな子だ」と言いました。

「よろしく」でも「はじめまして」でもなく、ぼくのことを見て、思ったことを言っただけでした。
 ぼくは黙って、おじぎをしました。

 ママはまだ、しくしく泣いています。
 慰めるのはぼくの役目です。

「ママにはぼくがいるよ」
「……ありがとう」

 ママはぼくをじっと見ました。
 そして、ぎゅっと抱きしめます。

「ママね、新しいパパと家族になれないことになったの。わからないと思うけど、婚約破棄……されたの」
「わかるよ」

 こんやくはき。
 言葉はわからないけど、どういうことなのかはわかります。
 パパになる予約が、なくなったのです。

 だってぼくがお願いしたことだから。

「サンタさんってすごいね」
「え? サンタさん?」
「うん」

 あれから毎晩お願いしていたら、本当に新しいパパをさよならしてくれました。

 お願いしたことは内緒にしなきゃいけないって話もあるけど、あれは嘘でした。
 ぼくは言っていたから。
 幼稚園の先生や、お友だちのお母さんたちには、お願いしていることを毎日言っていました。

 でも、お母さんにだけは内緒です。

「サンタさん、ありがとう」

 ぼくはお空に向かって言いました。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

悪役令嬢(濡れ衣)は怒ったお兄ちゃんが一番怖い

下菊みこと
恋愛
お兄ちゃん大暴走。 小説家になろう様でも投稿しています。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

処理中です...