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もうここにはいられない
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「この者を重婚未遂の罪で国外追放とする!」
わたしは領主から言い渡されました。
周囲を囲む男たちは、わたしを口々に罵ります。
「当然の報いだ」
「死刑でもいいのに」
「さっさと出ていけ」
まるで人でも殺したかのような言い草です。
でも、彼らは被害者なので仕方がないのかもしれません。
みんな、婚約していました。
ひとりの女性と。
相手は、わたし――
ということになっています。
違いますけど。
「わかりました。それでは、ごきげんよう」
この中の誰ひとりともわたしは婚約していませんでしたが、わたしは国を出ることにしました。
いつものことなので慣れたものです。
***
国を出たわたしが振り向きもせず歩いていると、どこからともなく光が集まり、わたしの隣に人間のかたちを作りました。
「また追放されちゃったね~」
笑って、わたしに話しかけます。
「笑いごとではないでしょう? またって、またあなたのせいじゃないの」
「仕方ないよ、これが仕事だもん」
「集めるのが仕事なだけで、べつに婚約する必要はないでしょう?」
仕事。
わたしたちは、ペアで仕事をしています。
精霊使いと精霊のペアです。
「結婚しようって言ったほうが、より濃いものが集まるんだもん。効率考えたら仕方ないない」
「いちいち追いだされても効率よくないでしょ……」
「気にしない気にしない。確認してごらんよ、すごく集まってるんじゃない?」
わたしは肩にかけていたバッグから、水晶玉を取りだしました。
覗くと、中には白いもやが詰まっています。
わたしたちの目的は、これです。
男たちのエネルギーを集め、天界に奉納すること。
「ほんとだ、すごく集まってる」
「でしょ~? でも、こんなの欲しがるなんて天界の神様たちもおかしなこと言うよね」
「なんか、下界の信仰の問題なんでしょう? 女神はとにかく女らしさを求められるのに、男神は男らしさじゃくて中性的な魅力を求められるから、男性エネルギーが天界から失われつつあるとか」
「ふうん」
わたしの横を歩く精霊が、興味なさそうに相づちを打ちます。
彼女はもともとは樹木の精霊ですが、今は地面の栄養ではなく人間の男からエネルギーを吸い上げる、サキュバスとなっています。
姿かたちは、わたしとそっくり。
わたしは植物を愛し、森の乙女と呼ばれる聖女でしたが、今はさっき言った事情から、天界のために男エネルギーを集める仕事に従事しています。
精霊の見た目がわたしをモデルにしているのは、彼女が樹木の精霊だったときに長年そばにいたのがわたしだったからでしょう。
彼女にとっての人間は、わたしの印象が強いのです。
わたしの顔で精霊が言います。
「それにしても男ってバカだよね。婚約ってだけで、なんでエネルギーが増すんだか」
「うーん、わたしにもわからない。執着とかそういうことなのかもしれないわね。でもそっか、婚約しないで集めるのって効率悪いのか……」
わたしは立ち止まってすこし考え、
「次の国からはわたしも婚約使ってみようかしら」
「それがいいよ!」
口約束だけで男の気持ちが変わるなら、わたしがこの身で集めるときにも使うべきだと思いました。
ふたりで手分けして夜な夜なエネルギーを集めるのだから、わたしも負けてはいられません。
どうせ婚約破棄するのです。
10人も20人も同じことです。
わたしは領主から言い渡されました。
周囲を囲む男たちは、わたしを口々に罵ります。
「当然の報いだ」
「死刑でもいいのに」
「さっさと出ていけ」
まるで人でも殺したかのような言い草です。
でも、彼らは被害者なので仕方がないのかもしれません。
みんな、婚約していました。
ひとりの女性と。
相手は、わたし――
ということになっています。
違いますけど。
「わかりました。それでは、ごきげんよう」
この中の誰ひとりともわたしは婚約していませんでしたが、わたしは国を出ることにしました。
いつものことなので慣れたものです。
***
国を出たわたしが振り向きもせず歩いていると、どこからともなく光が集まり、わたしの隣に人間のかたちを作りました。
「また追放されちゃったね~」
笑って、わたしに話しかけます。
「笑いごとではないでしょう? またって、またあなたのせいじゃないの」
「仕方ないよ、これが仕事だもん」
「集めるのが仕事なだけで、べつに婚約する必要はないでしょう?」
仕事。
わたしたちは、ペアで仕事をしています。
精霊使いと精霊のペアです。
「結婚しようって言ったほうが、より濃いものが集まるんだもん。効率考えたら仕方ないない」
「いちいち追いだされても効率よくないでしょ……」
「気にしない気にしない。確認してごらんよ、すごく集まってるんじゃない?」
わたしは肩にかけていたバッグから、水晶玉を取りだしました。
覗くと、中には白いもやが詰まっています。
わたしたちの目的は、これです。
男たちのエネルギーを集め、天界に奉納すること。
「ほんとだ、すごく集まってる」
「でしょ~? でも、こんなの欲しがるなんて天界の神様たちもおかしなこと言うよね」
「なんか、下界の信仰の問題なんでしょう? 女神はとにかく女らしさを求められるのに、男神は男らしさじゃくて中性的な魅力を求められるから、男性エネルギーが天界から失われつつあるとか」
「ふうん」
わたしの横を歩く精霊が、興味なさそうに相づちを打ちます。
彼女はもともとは樹木の精霊ですが、今は地面の栄養ではなく人間の男からエネルギーを吸い上げる、サキュバスとなっています。
姿かたちは、わたしとそっくり。
わたしは植物を愛し、森の乙女と呼ばれる聖女でしたが、今はさっき言った事情から、天界のために男エネルギーを集める仕事に従事しています。
精霊の見た目がわたしをモデルにしているのは、彼女が樹木の精霊だったときに長年そばにいたのがわたしだったからでしょう。
彼女にとっての人間は、わたしの印象が強いのです。
わたしの顔で精霊が言います。
「それにしても男ってバカだよね。婚約ってだけで、なんでエネルギーが増すんだか」
「うーん、わたしにもわからない。執着とかそういうことなのかもしれないわね。でもそっか、婚約しないで集めるのって効率悪いのか……」
わたしは立ち止まってすこし考え、
「次の国からはわたしも婚約使ってみようかしら」
「それがいいよ!」
口約束だけで男の気持ちが変わるなら、わたしがこの身で集めるときにも使うべきだと思いました。
ふたりで手分けして夜な夜なエネルギーを集めるのだから、わたしも負けてはいられません。
どうせ婚約破棄するのです。
10人も20人も同じことです。
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