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ここは?
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気がつくと、わたくしは真っ白いベッドに寝かされていました。
自分で横になったのではないというのは、すぐにわかりました。
手足を固定されていますから。
(これ……何ですの?)
口に何かを入れられ、声を出すことができません。
苦しくはないので、猿ぐつわではなさそうです。
「ああ、気がついた」
淡い緑色の服を着た男が、わたくしを覗きこんで言いました。
知らない男です。
(あなた、誰?)
「ぐう、うう……」
口がふさがれていて言葉になりません。
そんなわたくしに彼はほほえみ、
「もう大丈夫。きみは一命を取り留めたんだよ。胃にあった薬はすべて除去したから心配しなくていい」
その言葉は、まるでわたしが、薬によってみずからの命を絶とうとしたかのような響きでした。
たしかにわたくしには、命を絶つ決心をした記憶があります。
でも、その方法は薬ではなくて縄だったし――
確実に死んだはずでした。
「しばらくはここで療養していきなさい。もうすぐ旦那さんも来られるから」
彼は忙しいのか、そう言い残すとすぐに部屋を出て行きます。
わたくしは、再びひとりになりました。
頭がぼうっとしていますが、記憶に間違いはありません。
伯爵令嬢だったわたくしは、ひどい目に遭って深く傷つき、みずから命を絶ちました。
つまりここは、来世というものなのでしょう。
(わたくし、生まれ変わったのね。今は動けないけど、新しい人生がもらえたなら、今度こそ幸せになってみせる)
前世ではタチの悪い男に引っかかってしまいました。
顔もよく優しかったのだけれど、婚約して夜になると豹変したのです。
縛られ、叩かれ、肉が裂け、血が流れ――
思いだすのもおぞましい、獣の調教のような行為でした。
わたくしはどうにか婚約破棄しました。
お父様の力添えにより、その男は処刑されたと聞きます。
わたくしは心から感謝しましたが、心の傷は癒えることがなく……。
(そういえば、さっきの人、もうすぐ誰か来るって言ってましたわね)
旦那……さん?
わたくしは結婚しているのでしょうか。
一から恋愛をできないのは残念ですが、結婚までしているということなら、前のように『合わない』ということはないと思います。
相手からすれば奥さんかもしれませんが、わたくしからすれば初対面。
これから好きになればよいのです。
わたくしは新しい世界の何もかもに、心をときめかせました。
そのとき、部屋の扉が開き、
「無事だったそうだね」
先ほどとは違う男の声が、わたくしに近づいてきました。
ベッドから動けないわたくしを覗きこんだ、その顔は――
「おや? 昨日までと反応が違う。もしかして、きみも転生したのか? 顔がそっくりだからまさかと思ってはいたが、どうやらぼくらは本当に縁があるらしい。ほら、あのときのようにベッドから動けないね。こっちにはあの憎たらしい伯爵もいない。ふたりで心から楽しむとしよう」
わたくしは、男の笑顔を見ながら、再び意識を失いました。
自分で横になったのではないというのは、すぐにわかりました。
手足を固定されていますから。
(これ……何ですの?)
口に何かを入れられ、声を出すことができません。
苦しくはないので、猿ぐつわではなさそうです。
「ああ、気がついた」
淡い緑色の服を着た男が、わたくしを覗きこんで言いました。
知らない男です。
(あなた、誰?)
「ぐう、うう……」
口がふさがれていて言葉になりません。
そんなわたくしに彼はほほえみ、
「もう大丈夫。きみは一命を取り留めたんだよ。胃にあった薬はすべて除去したから心配しなくていい」
その言葉は、まるでわたしが、薬によってみずからの命を絶とうとしたかのような響きでした。
たしかにわたくしには、命を絶つ決心をした記憶があります。
でも、その方法は薬ではなくて縄だったし――
確実に死んだはずでした。
「しばらくはここで療養していきなさい。もうすぐ旦那さんも来られるから」
彼は忙しいのか、そう言い残すとすぐに部屋を出て行きます。
わたくしは、再びひとりになりました。
頭がぼうっとしていますが、記憶に間違いはありません。
伯爵令嬢だったわたくしは、ひどい目に遭って深く傷つき、みずから命を絶ちました。
つまりここは、来世というものなのでしょう。
(わたくし、生まれ変わったのね。今は動けないけど、新しい人生がもらえたなら、今度こそ幸せになってみせる)
前世ではタチの悪い男に引っかかってしまいました。
顔もよく優しかったのだけれど、婚約して夜になると豹変したのです。
縛られ、叩かれ、肉が裂け、血が流れ――
思いだすのもおぞましい、獣の調教のような行為でした。
わたくしはどうにか婚約破棄しました。
お父様の力添えにより、その男は処刑されたと聞きます。
わたくしは心から感謝しましたが、心の傷は癒えることがなく……。
(そういえば、さっきの人、もうすぐ誰か来るって言ってましたわね)
旦那……さん?
わたくしは結婚しているのでしょうか。
一から恋愛をできないのは残念ですが、結婚までしているということなら、前のように『合わない』ということはないと思います。
相手からすれば奥さんかもしれませんが、わたくしからすれば初対面。
これから好きになればよいのです。
わたくしは新しい世界の何もかもに、心をときめかせました。
そのとき、部屋の扉が開き、
「無事だったそうだね」
先ほどとは違う男の声が、わたくしに近づいてきました。
ベッドから動けないわたくしを覗きこんだ、その顔は――
「おや? 昨日までと反応が違う。もしかして、きみも転生したのか? 顔がそっくりだからまさかと思ってはいたが、どうやらぼくらは本当に縁があるらしい。ほら、あのときのようにベッドから動けないね。こっちにはあの憎たらしい伯爵もいない。ふたりで心から楽しむとしよう」
わたくしは、男の笑顔を見ながら、再び意識を失いました。
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