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第一章
第10話 死霊術士、C級冒険者の分際でA級冒険者に策を披露する
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難攻不落に見える砦。
だが、俺はそこに一つの盲点があることに気がついていた。
「ど、どんな方法なのよ?」
「まず、普通に突破しようとしても無理なんだよ。当然だけど砦ってものは籠城戦を想定して作られている。防衛側が圧倒的に有利なんだ」
「それはまぁ、そうよね」
「砦を落とすうえで一番有効で無難なのは持久戦に持ち込んで物資の補給を断つことだろう。リザードキング側も食糧や物資がなくなればそのうち疲弊して出てくるはずだからな」
「でも、それは攻める側の兵力と物資が圧倒している場合ですよね?」
リリスが言った。
そう、持久戦が通るのはあくまでこちらに余裕がある場合。
「そうなんだ。リリスの言うとおり、俺たちは数で圧倒しているわけでもない、冒険者の寄せ集めだ。ざっと見た感じだと、集まったのはせいぜい五十人ほどだろう。もしかすると敵の数の方が多いかもしれない。これで持久戦なんてしようとしたらこっちが疲弊してしまうし武器も足りなくなってしまう。ここは町から離れた平原のど真ん中だし、そもそもギルドからの物資の補給なんてのも期待できないだろう」
その気になれば町や王都から騎士団を派遣することもできるはずなのだが、町やギルドがそれをせず冒険者だけで解決しようとしているあたり、これ以上の兵力や物資をつぎ込むつもりはないということだ。
「じゃあ、どうすれば……」
ゼフィが切実な視線を送ってくる。
人質になっているという親友が気がかりで仕方ないのだろう。
「短期決戦に持ち込むしかないだろうな。一気呵成に攻め込むしかない」
「そ、それじゃあただの自棄じゃない! 人質が居る地下までどれくらいの距離があると思ってんの? こちらに交渉する気がないと知った時点で向こうはきっと人質に手をつけるわよ」
「そうですね……。わたしなら、リザードマンを各個撃破して砦の最奥部に辿り着くくらいはできると思いますが、人質の無事までは保障できませんから……」
サラッととんでもないことを言うリリスに、ゼフィが一瞬ぽかんと口を開いてから言った。
「え、リリス、あんたそれ本気で言ってるの? リザードマンってB級モンスターよ? リザードマン一匹でさえB級冒険者が数人がかりでようやく倒せるっていうのに」
通常、B級モンスターはA級冒険者一人かB級冒険者数人で倒せるものとされている。
A級冒険者であればリザードマン一匹を単騎で倒せて当然ではあるが、A級冒険者とはいえ一人でリザードマンを複数相手するというのは現実的な話ではない。
ゼフィが不思議がるのも当然のことだ。
まぁ、リリスは本来A級どころの実力じゃないからな。オデットが便宜を図ってA級にしておいてくれただけだし。
「え、あ、えっと……」
答えに詰まったのか、リリスが助けを求めるように俺の方に目をやる。
一応今のところはリリスの実力は大っぴらにはしない方向性だからな。
うーん、まぁ、この子には言ってもいいか。
「あのなゼフィ。実はリリスはS級以上の実力があるんだよ。昨日冒険者登録したばかりでA級スタートの逸材だからな」
「え……そうなの? やたら綺麗な冒険者証だなとは思ったけど、まさか登録したばっかりだなんて」
「で、でもわたしもまだA級であることには変わりありませんからね? ゼフィさんと同じですよ」
本来誇るべきことなのだが、リリスはS級と呼ばれることに抵抗があるのか、まるで弁解するような口調で言った。
もしかすると、年の近いゼフィを妙な肩書きで威圧してしまうのが嫌なのかもしれない。
「にわかには信じがたいけど……こんなところで嘘ついても仕方ないもんね。信じるわ」
そう言って、ゼフィは珍しいものでも見るかのように俺たちを交互に見た。
まぁゼフィが変に思うのは仕方ないよな。
「もちろん本当だ。でだ、ここからがこの作戦の本題なんだが」
「う、うん」
「見ての通りこの砦の入口は一か所しかないし、外壁は高さがあって上から攻め込むこともできないだろう」
身振り手振りをくわえつつ、俺は言った。
「それで?」
「だが盲点が一つだけある。正面からでも上からでも駄目なら、下から攻めればいいんだ」
「下から? どこか別の場所に地下への入口があるの?」
「いや、そんなものはない。あったとしても俺が知るわけないだろ」
「な、何それ……。じゃあどうすんのよ?」
種を知らない者にとっては無理もないことだが、ゼフィは呆れたように言った。
「入口を強引に作るんだよ。そこから人質のいる部屋へ入って先に彼らの安全を確保してから突入すればいい」
「は、はぁ?」
「た、確かにそれなら行けそうですね! クラウスさん凄いです!」
リリスも俺の考えを察したのだろう。
「ちょ、ちょちょちょっと……話についていけないんだけど! 何よ、強引に入口を作るって?」
「わたしの力なら、地面を掘って行くことは可能ですよ。そういうことですよね、クラウスさん?」
「そういうことだ。リリスに地面に穴を開けてもらってそこから侵入する」
「何を言ってるのかあたしにはわからないんだけど……本気で言ってるの?」
俺もゼフィの立場だったら信じられないだろうな。
デスマウンテンの戦いで既にリリスの力を知っている俺だからこそ言えることだ。
「もちろん本気だ。嘘ついてどうする」
「そ、そうだけど」
「流れとしては、リリスが人質のいる部屋までの穴を開け、そこから侵入。人質の安全を確保できたら、内部からリザードマンたちを叩く。奴らが混乱したところで、同時にこっちの正面玄関からも攻め込めば敵は右往左往してまともに戦うどころじゃなくなるだろう」
「それなら向こうの数が多くてもうまく行きそうですね。多人数戦がしづらい砦の特徴を逆手に取った素晴らしい作戦だと思います!」
「問題は、砦の内部構造がよくわからないことだな。穴を開けるにしても、どのあたりに部屋があるのか目星を付けないと難しい。砦内部の見取り図は無いのかな?」
「無いみたいよ。ここが使われていたのはだいぶ昔のようだし。それにしたって書類の管理が杜撰だとは思うけどね」
「なるほどな。じゃあやっぱりこの手しかないか……」
まだ試したことはないが、今ならできるはず。
以前の俺ではできなかったが、今はリリスの魔力があるからな。
「何をする気よ?」
ゼフィは怪訝な顔で俺たちを見た。
「……リリス、俺に憑依してくれるか?」
憑依などという単語をゼフィに聞かれるのもあれなので、俺はリリスだけに聞こえるような声量で言った。
「はい、わかりました……えっと、クラウスさん」
それに応えるように、リリスが囁き声で言った。
どうやら耳を貸してくれということらしい。ゼフィに聞かれたくないことがあるのだろう。
俺は少し屈んでリリスの方へ耳を向けた。
「何だ?」
「わがままかもしれませんけど、わたし……ゼフィさんには……その、まだ死霊だって知られたくないんです」
なるほど、そういうことか。
せっかく知り合った同年代の女の子だもんな。
普通の人間として接して欲しいのだろう。
「わかった。ゼフィには何とか誤魔化しとくよ」
「あ、ありがとうございます、クラウスさん!」
そう言うリリスの声は、ひそひそ声でもわかるくらい嬉しそうだった。
俺はというと、耳に当たるリリスの息に少しドキドキしたのは内緒だ。
「あんたら、何コソコソ喋ってんのよ?」
「いや、ごめんごめん。あのさ、ゼフィ。ちょっとだけ向こう向いててくれないかな?」
「は? 何をする気よ」
「俺たち二人でちょっとした術を使うんだが、それがちと厄介でな。いわゆる門外不出の秘術なんだ」
考えてみれば、俺は婆ちゃんとリリス以外に死霊術を見せたことはない。
別に隠していたわけでもないが、死霊術というものは元来人前で大っぴらに見せるものではない。
死者の霊魂を、生きた人間の利己的な目的の為に弄ぶなど言語道断だという考えが歴史の上ではやはり根強いからだ。
五百年前もそういった理由で死霊術士は滅ぼされかけたらしいし。
だが今、俺がゼフィに死霊術を隠す理由はそうじゃない。
リリスが、友達になったばかりの子に嫌われたくないからという月並みで微笑ましい理由からだ。
五百年前の凄腕の死霊術士たちが血生臭い戦いの中で世間から隠し続けた死霊術を、現代のヘボい死霊術士の俺が別の理由で隠すというのは何だか妙な気がする。
うまく言えないけど、悪くない気分ではある。
無念に死んでいった先祖たちが浮かばれてくれるといいが。
「つまり、見せられないってこと?」
「ああ。ほんの数秒間でいいんだ。すまないんだが頼めるか?」
「まぁ、魔術の世界にもそういうのはあるし……構わないわよ」
「ありがとうございます、ゼフィさん!」
ゼフィが俺たちから目を逸らすと、俺はリリスと目を合わせ、頷いた。
よし、今は誰もこちらを見ていない。
「今だ、リリス」
瞬間、青い光が瞬き、リリスは俺に憑依した。
全身に物凄い力が湧いてくる心地がする。
やはりリリスは凄い。今なら何でもできそうな気さえする。
「ゼフィ、こっちを向いていいぞ」
「うん……って、えぇ!? り、リリスがいない……?」
さっきまでここに立っていたリリスが姿を消したのだ。
しかもここは周囲に隠れるところのない平原である。
ゼフィが目を丸くして驚くのも無理はない。
「驚かせてすまないな。こういう術なんだ。詳しいことは言えないが、リリスは一時的に俺の中にいる」
「そ、そうなんだ……?」
さて、と。
早速砦の内部構造を調べるか。
『クラウスさん、聞こえますか?』
「ああ。聞こえるぞ、リリス」
『今はまだ身体の操作はクラウスさんにお任せしてていいんですよね?』
「そうだな、まずは死霊術で砦の中がどうなってるか探ってみるから。リリスの魔力を借りるけど、いいか?」
『大丈夫ですよ! クラウスさんにお任せします!』
よし、やってみるか。
俺は全身にあふれるリリスの魔力を総動員して術を発動した。
だが、俺はそこに一つの盲点があることに気がついていた。
「ど、どんな方法なのよ?」
「まず、普通に突破しようとしても無理なんだよ。当然だけど砦ってものは籠城戦を想定して作られている。防衛側が圧倒的に有利なんだ」
「それはまぁ、そうよね」
「砦を落とすうえで一番有効で無難なのは持久戦に持ち込んで物資の補給を断つことだろう。リザードキング側も食糧や物資がなくなればそのうち疲弊して出てくるはずだからな」
「でも、それは攻める側の兵力と物資が圧倒している場合ですよね?」
リリスが言った。
そう、持久戦が通るのはあくまでこちらに余裕がある場合。
「そうなんだ。リリスの言うとおり、俺たちは数で圧倒しているわけでもない、冒険者の寄せ集めだ。ざっと見た感じだと、集まったのはせいぜい五十人ほどだろう。もしかすると敵の数の方が多いかもしれない。これで持久戦なんてしようとしたらこっちが疲弊してしまうし武器も足りなくなってしまう。ここは町から離れた平原のど真ん中だし、そもそもギルドからの物資の補給なんてのも期待できないだろう」
その気になれば町や王都から騎士団を派遣することもできるはずなのだが、町やギルドがそれをせず冒険者だけで解決しようとしているあたり、これ以上の兵力や物資をつぎ込むつもりはないということだ。
「じゃあ、どうすれば……」
ゼフィが切実な視線を送ってくる。
人質になっているという親友が気がかりで仕方ないのだろう。
「短期決戦に持ち込むしかないだろうな。一気呵成に攻め込むしかない」
「そ、それじゃあただの自棄じゃない! 人質が居る地下までどれくらいの距離があると思ってんの? こちらに交渉する気がないと知った時点で向こうはきっと人質に手をつけるわよ」
「そうですね……。わたしなら、リザードマンを各個撃破して砦の最奥部に辿り着くくらいはできると思いますが、人質の無事までは保障できませんから……」
サラッととんでもないことを言うリリスに、ゼフィが一瞬ぽかんと口を開いてから言った。
「え、リリス、あんたそれ本気で言ってるの? リザードマンってB級モンスターよ? リザードマン一匹でさえB級冒険者が数人がかりでようやく倒せるっていうのに」
通常、B級モンスターはA級冒険者一人かB級冒険者数人で倒せるものとされている。
A級冒険者であればリザードマン一匹を単騎で倒せて当然ではあるが、A級冒険者とはいえ一人でリザードマンを複数相手するというのは現実的な話ではない。
ゼフィが不思議がるのも当然のことだ。
まぁ、リリスは本来A級どころの実力じゃないからな。オデットが便宜を図ってA級にしておいてくれただけだし。
「え、あ、えっと……」
答えに詰まったのか、リリスが助けを求めるように俺の方に目をやる。
一応今のところはリリスの実力は大っぴらにはしない方向性だからな。
うーん、まぁ、この子には言ってもいいか。
「あのなゼフィ。実はリリスはS級以上の実力があるんだよ。昨日冒険者登録したばかりでA級スタートの逸材だからな」
「え……そうなの? やたら綺麗な冒険者証だなとは思ったけど、まさか登録したばっかりだなんて」
「で、でもわたしもまだA級であることには変わりありませんからね? ゼフィさんと同じですよ」
本来誇るべきことなのだが、リリスはS級と呼ばれることに抵抗があるのか、まるで弁解するような口調で言った。
もしかすると、年の近いゼフィを妙な肩書きで威圧してしまうのが嫌なのかもしれない。
「にわかには信じがたいけど……こんなところで嘘ついても仕方ないもんね。信じるわ」
そう言って、ゼフィは珍しいものでも見るかのように俺たちを交互に見た。
まぁゼフィが変に思うのは仕方ないよな。
「もちろん本当だ。でだ、ここからがこの作戦の本題なんだが」
「う、うん」
「見ての通りこの砦の入口は一か所しかないし、外壁は高さがあって上から攻め込むこともできないだろう」
身振り手振りをくわえつつ、俺は言った。
「それで?」
「だが盲点が一つだけある。正面からでも上からでも駄目なら、下から攻めればいいんだ」
「下から? どこか別の場所に地下への入口があるの?」
「いや、そんなものはない。あったとしても俺が知るわけないだろ」
「な、何それ……。じゃあどうすんのよ?」
種を知らない者にとっては無理もないことだが、ゼフィは呆れたように言った。
「入口を強引に作るんだよ。そこから人質のいる部屋へ入って先に彼らの安全を確保してから突入すればいい」
「は、はぁ?」
「た、確かにそれなら行けそうですね! クラウスさん凄いです!」
リリスも俺の考えを察したのだろう。
「ちょ、ちょちょちょっと……話についていけないんだけど! 何よ、強引に入口を作るって?」
「わたしの力なら、地面を掘って行くことは可能ですよ。そういうことですよね、クラウスさん?」
「そういうことだ。リリスに地面に穴を開けてもらってそこから侵入する」
「何を言ってるのかあたしにはわからないんだけど……本気で言ってるの?」
俺もゼフィの立場だったら信じられないだろうな。
デスマウンテンの戦いで既にリリスの力を知っている俺だからこそ言えることだ。
「もちろん本気だ。嘘ついてどうする」
「そ、そうだけど」
「流れとしては、リリスが人質のいる部屋までの穴を開け、そこから侵入。人質の安全を確保できたら、内部からリザードマンたちを叩く。奴らが混乱したところで、同時にこっちの正面玄関からも攻め込めば敵は右往左往してまともに戦うどころじゃなくなるだろう」
「それなら向こうの数が多くてもうまく行きそうですね。多人数戦がしづらい砦の特徴を逆手に取った素晴らしい作戦だと思います!」
「問題は、砦の内部構造がよくわからないことだな。穴を開けるにしても、どのあたりに部屋があるのか目星を付けないと難しい。砦内部の見取り図は無いのかな?」
「無いみたいよ。ここが使われていたのはだいぶ昔のようだし。それにしたって書類の管理が杜撰だとは思うけどね」
「なるほどな。じゃあやっぱりこの手しかないか……」
まだ試したことはないが、今ならできるはず。
以前の俺ではできなかったが、今はリリスの魔力があるからな。
「何をする気よ?」
ゼフィは怪訝な顔で俺たちを見た。
「……リリス、俺に憑依してくれるか?」
憑依などという単語をゼフィに聞かれるのもあれなので、俺はリリスだけに聞こえるような声量で言った。
「はい、わかりました……えっと、クラウスさん」
それに応えるように、リリスが囁き声で言った。
どうやら耳を貸してくれということらしい。ゼフィに聞かれたくないことがあるのだろう。
俺は少し屈んでリリスの方へ耳を向けた。
「何だ?」
「わがままかもしれませんけど、わたし……ゼフィさんには……その、まだ死霊だって知られたくないんです」
なるほど、そういうことか。
せっかく知り合った同年代の女の子だもんな。
普通の人間として接して欲しいのだろう。
「わかった。ゼフィには何とか誤魔化しとくよ」
「あ、ありがとうございます、クラウスさん!」
そう言うリリスの声は、ひそひそ声でもわかるくらい嬉しそうだった。
俺はというと、耳に当たるリリスの息に少しドキドキしたのは内緒だ。
「あんたら、何コソコソ喋ってんのよ?」
「いや、ごめんごめん。あのさ、ゼフィ。ちょっとだけ向こう向いててくれないかな?」
「は? 何をする気よ」
「俺たち二人でちょっとした術を使うんだが、それがちと厄介でな。いわゆる門外不出の秘術なんだ」
考えてみれば、俺は婆ちゃんとリリス以外に死霊術を見せたことはない。
別に隠していたわけでもないが、死霊術というものは元来人前で大っぴらに見せるものではない。
死者の霊魂を、生きた人間の利己的な目的の為に弄ぶなど言語道断だという考えが歴史の上ではやはり根強いからだ。
五百年前もそういった理由で死霊術士は滅ぼされかけたらしいし。
だが今、俺がゼフィに死霊術を隠す理由はそうじゃない。
リリスが、友達になったばかりの子に嫌われたくないからという月並みで微笑ましい理由からだ。
五百年前の凄腕の死霊術士たちが血生臭い戦いの中で世間から隠し続けた死霊術を、現代のヘボい死霊術士の俺が別の理由で隠すというのは何だか妙な気がする。
うまく言えないけど、悪くない気分ではある。
無念に死んでいった先祖たちが浮かばれてくれるといいが。
「つまり、見せられないってこと?」
「ああ。ほんの数秒間でいいんだ。すまないんだが頼めるか?」
「まぁ、魔術の世界にもそういうのはあるし……構わないわよ」
「ありがとうございます、ゼフィさん!」
ゼフィが俺たちから目を逸らすと、俺はリリスと目を合わせ、頷いた。
よし、今は誰もこちらを見ていない。
「今だ、リリス」
瞬間、青い光が瞬き、リリスは俺に憑依した。
全身に物凄い力が湧いてくる心地がする。
やはりリリスは凄い。今なら何でもできそうな気さえする。
「ゼフィ、こっちを向いていいぞ」
「うん……って、えぇ!? り、リリスがいない……?」
さっきまでここに立っていたリリスが姿を消したのだ。
しかもここは周囲に隠れるところのない平原である。
ゼフィが目を丸くして驚くのも無理はない。
「驚かせてすまないな。こういう術なんだ。詳しいことは言えないが、リリスは一時的に俺の中にいる」
「そ、そうなんだ……?」
さて、と。
早速砦の内部構造を調べるか。
『クラウスさん、聞こえますか?』
「ああ。聞こえるぞ、リリス」
『今はまだ身体の操作はクラウスさんにお任せしてていいんですよね?』
「そうだな、まずは死霊術で砦の中がどうなってるか探ってみるから。リリスの魔力を借りるけど、いいか?」
『大丈夫ですよ! クラウスさんにお任せします!』
よし、やってみるか。
俺は全身にあふれるリリスの魔力を総動員して術を発動した。
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