10 / 625
吸血鬼と聖女と聖騎士と
第一章第8話 グータラ・ライフ
しおりを挟む
クリスさんの血をもらって元気になった私は、キノコ子爵邸からあの豪華ホテルに戻った。ちなみに、シュヴァルツ討伐報酬は金貨 3,000 枚。一気に大金持ちになった。
この世界の通貨は金貨、銀貨、小銀貨、銅貨、小銅貨が流通している。価値はこんな感じだ。
小銅貨5枚で銅貨1枚で大体 100 円くらい。
銅貨10枚で小銀貨1枚。小銀貨5枚で銀貨1枚。
最後に銀貨10枚で金貨1枚。これで大体5万円くらいの価値だ。
つまり、私はシュヴァルツ討伐の報酬だけで 1 億 5 千万円相当の資産を手に入れたことになる。
これ、もう働かなくていいんじゃないかな?
と、いうわけで、ザラビアの町での私のグータラ・ライフ、じゃなかったスローライフが始まった。朝はゆっくり起きて、朝食バイキング。昼間は町をお散歩して適当にレストランでランチ。午後は港や公園で日向ぼっこをしながらお昼寝タイム。その後おやつを食べてまたお散歩して。そして夜はホテルで豪華ディナーを食べたらお風呂に入ってマッサージをしてもらって就寝。
いやあ、スローライフを満喫させてもらっています。
ん?それはスローライフとは言わない?
いやいや、異論は認めません。私がスローライフと言ったらスローライフなのです。
クリスさんが常に監視している以外は。
「クリスさん、町の中ですしずっと私にくっついていなくても大丈夫なんじゃないですか?」
「そうは参りません。フィーネ様はご自身の美貌をご自覚ください。フィーネ様は目立ちすぎるのです。それほどの美貌をお持ちの女性は町の中であったとしても、いついかなるトラブルに巻き込まれるか分かりません。不埒な輩というのはどこにでもいるのです」
「はあ、そうですか」
確かに攫われて奴隷にされたりとか、路地裏に連れ込まれて危ない目に合うとか、そういった展開は遠慮しておきたい。
そして、だ。
「それに、フィーネ様を王都にお連れし、陛下と猊下にお会い頂くまでは私はお側を離れません」
「いや、ですから私は吸血鬼なんでそういうのはダメですって」
「はいはい。その設定はわかりましたから。血を飲みたいときはいつでも仰ってください。差し上げますから。で、ですね。フィーネ様――」
と、毎度毎度こんな感じである。クリスさんは何が何でも王様と教皇様とやらに会わせ、私を聖女にしたいらしい。吸血鬼の聖女って何の冗談だろうか、とは思うものの、この脳筋くっころお姉さんを説得するには至っていない。
ちなみに、一度吸血鬼であることを信じてもらうために【蝙蝠化】のスキルを使ってみたのだが 10 秒すらもたずに力尽きて元の姿に戻ってしまった。そして、それを見たクリスさんに、
「蝙蝠に変身する魔法が使えるのはすごいと思いますが、どんなに力のない吸血鬼でも一晩中蝙蝠になっていられるものです。それに、吸血鬼の蝙蝠は闇に紛れるために体の色は黒に近い紺色をしています。ですが、フィーネ様の蝙蝠は白銀色なのでばっちり目立っています。それに、形も丸みを帯びていてとっても可愛らしいですし、その優し気な目も特徴が残っています。これではまるで正体を隠せていませんのでやり直しです」
と一蹴されてしまった。ぐぬぬ。
ちなみに霧になるのは 3 秒、影に潜るのは 5 秒でギブアップだったとさ。ぐふっ。
さらに言うと身体能力は鍛えているクリスさんのほうが圧倒的に上で、しかも私はこの辺りの地理がまったく分からない。なので逃げ出してもあっという間に捕まるし、うまく町から出られても振出しに戻って野垂れ死ぬだけだ。
と、まあこんなわけなので、私が今取れる選択肢としては二つある。ひとつは、このままザラビアでまったり過ごしながらログアウトできるようになるのを待つ、そしてもうひとつは王都に行ってイベントを進めて職業を得る、だ。
で、私はとりあえず前者を選んでいる、というわけだ。
だって、ログアウトしてから Wiki で調べてからのほうが何かと効率良さそうじゃない?
と、いうわけで今日も今日とてスローライフを満喫している。
さて、今日のランチは何にしようかな?
この世界の通貨は金貨、銀貨、小銀貨、銅貨、小銅貨が流通している。価値はこんな感じだ。
小銅貨5枚で銅貨1枚で大体 100 円くらい。
銅貨10枚で小銀貨1枚。小銀貨5枚で銀貨1枚。
最後に銀貨10枚で金貨1枚。これで大体5万円くらいの価値だ。
つまり、私はシュヴァルツ討伐の報酬だけで 1 億 5 千万円相当の資産を手に入れたことになる。
これ、もう働かなくていいんじゃないかな?
と、いうわけで、ザラビアの町での私のグータラ・ライフ、じゃなかったスローライフが始まった。朝はゆっくり起きて、朝食バイキング。昼間は町をお散歩して適当にレストランでランチ。午後は港や公園で日向ぼっこをしながらお昼寝タイム。その後おやつを食べてまたお散歩して。そして夜はホテルで豪華ディナーを食べたらお風呂に入ってマッサージをしてもらって就寝。
いやあ、スローライフを満喫させてもらっています。
ん?それはスローライフとは言わない?
いやいや、異論は認めません。私がスローライフと言ったらスローライフなのです。
クリスさんが常に監視している以外は。
「クリスさん、町の中ですしずっと私にくっついていなくても大丈夫なんじゃないですか?」
「そうは参りません。フィーネ様はご自身の美貌をご自覚ください。フィーネ様は目立ちすぎるのです。それほどの美貌をお持ちの女性は町の中であったとしても、いついかなるトラブルに巻き込まれるか分かりません。不埒な輩というのはどこにでもいるのです」
「はあ、そうですか」
確かに攫われて奴隷にされたりとか、路地裏に連れ込まれて危ない目に合うとか、そういった展開は遠慮しておきたい。
そして、だ。
「それに、フィーネ様を王都にお連れし、陛下と猊下にお会い頂くまでは私はお側を離れません」
「いや、ですから私は吸血鬼なんでそういうのはダメですって」
「はいはい。その設定はわかりましたから。血を飲みたいときはいつでも仰ってください。差し上げますから。で、ですね。フィーネ様――」
と、毎度毎度こんな感じである。クリスさんは何が何でも王様と教皇様とやらに会わせ、私を聖女にしたいらしい。吸血鬼の聖女って何の冗談だろうか、とは思うものの、この脳筋くっころお姉さんを説得するには至っていない。
ちなみに、一度吸血鬼であることを信じてもらうために【蝙蝠化】のスキルを使ってみたのだが 10 秒すらもたずに力尽きて元の姿に戻ってしまった。そして、それを見たクリスさんに、
「蝙蝠に変身する魔法が使えるのはすごいと思いますが、どんなに力のない吸血鬼でも一晩中蝙蝠になっていられるものです。それに、吸血鬼の蝙蝠は闇に紛れるために体の色は黒に近い紺色をしています。ですが、フィーネ様の蝙蝠は白銀色なのでばっちり目立っています。それに、形も丸みを帯びていてとっても可愛らしいですし、その優し気な目も特徴が残っています。これではまるで正体を隠せていませんのでやり直しです」
と一蹴されてしまった。ぐぬぬ。
ちなみに霧になるのは 3 秒、影に潜るのは 5 秒でギブアップだったとさ。ぐふっ。
さらに言うと身体能力は鍛えているクリスさんのほうが圧倒的に上で、しかも私はこの辺りの地理がまったく分からない。なので逃げ出してもあっという間に捕まるし、うまく町から出られても振出しに戻って野垂れ死ぬだけだ。
と、まあこんなわけなので、私が今取れる選択肢としては二つある。ひとつは、このままザラビアでまったり過ごしながらログアウトできるようになるのを待つ、そしてもうひとつは王都に行ってイベントを進めて職業を得る、だ。
で、私はとりあえず前者を選んでいる、というわけだ。
だって、ログアウトしてから Wiki で調べてからのほうが何かと効率良さそうじゃない?
と、いうわけで今日も今日とてスローライフを満喫している。
さて、今日のランチは何にしようかな?
21
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる