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白銀のハイエルフ
第二章第31話 極北の地
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2020/05/20 ご指摘頂いた誤字を修正しました。ありがとうございました
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シルバーフィールドから歩いて 3 日のところにある村で最後の補給を済ませた私たちは、白銀の里があるという島の中央を目指して草がまばらに生える草原を歩いている。緯度が相当高いのだろうか。木はほとんど生えていない。
小雪がちらつく中、私たちは前を見据えて歩く。このままモンスターを野に解き放ったままにしてはいけない、じゃなかった、奴隷にされてしまった被害者を同族たちの元へと返すという崇高な使命があるのだ。
あ、もちろん私の契約精霊ゲット作戦も忘れてはいけない。戦う力を手に入れて、バシバシレベルアップするのだ。
「しかし、白銀の里、というのはどこにあるのでしょうか? それらしき森は見当たりませんが」
「え?」
クリスさんの呟きに私は驚いて聞き返した。
「フィーネ様?」
「だって、向こうにものすごく大きな木があるじゃないですか。どう考えてもあれですよね?」
「え?」
今度はクリスさんが驚いている。
これ、もしかしてクリスさんにはあの大木が見えていない?
「リエラさん、これってもしかして……」
「はい。聖女様ぁ。その通りですぅ。あれが、白銀の里の精霊樹ですぅ」
「やっぱり姉さまはハイエルフの子孫だから見えるんですね!」
どういうことだ? 100% 純粋な吸血鬼のはずなんだけど?
「精霊樹の近くには、精霊と契約する資格のある者以外は近づけないんですぅ。なので、純粋のエルフ族かその血を色濃く受け継ぐ者と一緒じゃないとエルフの里には辿りつくことすらできないんですぅ」
「つまり、あの精霊樹が見えている時点で姉さまはエルフの血を引いているのは間違いないんですよ!」
いや、そんなはずはないんだけどな。やっぱりあれか。(笑)のせいか。あのハゲめ。
「姉さま、良かったですね!」
ルーちゃんが満面の笑みを浮かべている。
「まあ、でも私は吸血鬼ですから。何か別の原因で見えているのかもしれないですよ?」
「フィーネ様。ルミアもフィーネ様を元気づけようとしてくれているんですよ?」
うっ、クリスさんに窘められてしまった。
「う、はい。そうですね……ルーちゃん、ありがとうございます」
「はいっ」
うう、ルーちゃんの笑顔が眩しい。
そりゃ、心配してくれているの解るし有り難いんだけどさ。
でもそれ、全部勘違いだからね?
****
「本当に、ここに森があるのですか?」
そうこうしているうちに、森の前に辿りついた。周りはほとんど草しか生えいないにもかかわらず、ここの一帯だけが森になっている。
明らかに不自然なのだが、クリスさんにはこの森が見えていないらしい。
「リエラさん、これはどうしたらいいんですか?」
「手を繋いでいけば大丈夫よぉ。つないであげましょうかぁ? 聖騎士さ・ま?」
「い、いえ。私はフィーネ様のお側を離れるわけにはいきませんので」
「あらぁ、ザンネン♪」
そう言ってぺろりと唇をなめるリエラさんとそれを見て少し青ざめるクリスさん。
うん、見なかったことにしよう。くわばらくわばら。
私はクリスさんの手を握るとリエラさんを先頭に森へと足を踏み入れる。
「なっ。本当に森があるとは! これがエルフの隠れ里……」
クリスさんが驚いている。そりゃあびっくりするよね。いきなり目の前に森が現れれば。個人的にはその驚きをちょっと味わってみたい気もしたが、まあ仕方ない。里を目指して歩こう。
森の中の道なき道を歩いているにもかかわらず、やたらと歩きやすい。まるで木や草が私たちを避けてくれているかのようだ。
「あ、姉さま。これはあたしたち森の民特有の能力で、森に住む精霊たちが力を貸してくれて、こうやってあたしたちのために道を開けてくれるんです!」
不思議そうな顔をしていた私にルーちゃんが先回りして説明してくれる。
なるほど。流石エルフ、すごい能力だ。
そんな風に感心していたちょうどその時だった。
パシン!
何か音がしたかと思うとリエラさんの少し手前の地面に矢が刺さった。その瞬間にクリスさんは剣を抜き、ルーちゃんも弓を構えた。
「あらぁ? 同胞に弓を引くとはどういうことかしらぁ?」
リエラさんもいつもより声のトーンが低い。
うーん、二人を連れていけば入れてもらえると思っていたのだけれど、このままだと戦闘になりそうだ。よし、ここはひとつ私が。
私はフードを脱いで素顔を晒すとリエラさんの前に歩み出る。
「勝手に入って申し訳ありませんが、私たちに敵意はありません。人間の町で奴隷として捕らえられていたエルフを二名を救助しました。こちらの里で保護をお願いしたいのです」
返事がないが、何か話し合っていそうな気配はある。しばらくして、男性のエルフが一人、木の上から降りてきた。白銀色の髪に赤い瞳の優男風のクソイケメンだ。
爆発すればいいのに!
「よかろう。そちらの二人とハーフエルフの貴女はお連れしよう。だがそちらの人間は連れていくわけにはいかない」
ええと、なんでいきなりハーフエルフ扱いになっているのかな?
って、違う。そうじゃなくて!
「何でクリスさんがダメなんですか! クリスさんもあたしの大事な仲間です!」
「そうよぉ? この聖騎士様は私のこぶ……娘の恩人ですからぁ」
こぶ? リエラさん、今一体なんて言おうとしたの?
「せ、聖騎士、だと? するとまさか……失礼した。同胞二人を救ってくれた恩人を追い返したとあっては我ら白銀の里の名折れ。里まで案内しよう」
こうして私たちはついに目的地である白銀の里へと到着したのだった。
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シルバーフィールドから歩いて 3 日のところにある村で最後の補給を済ませた私たちは、白銀の里があるという島の中央を目指して草がまばらに生える草原を歩いている。緯度が相当高いのだろうか。木はほとんど生えていない。
小雪がちらつく中、私たちは前を見据えて歩く。このままモンスターを野に解き放ったままにしてはいけない、じゃなかった、奴隷にされてしまった被害者を同族たちの元へと返すという崇高な使命があるのだ。
あ、もちろん私の契約精霊ゲット作戦も忘れてはいけない。戦う力を手に入れて、バシバシレベルアップするのだ。
「しかし、白銀の里、というのはどこにあるのでしょうか? それらしき森は見当たりませんが」
「え?」
クリスさんの呟きに私は驚いて聞き返した。
「フィーネ様?」
「だって、向こうにものすごく大きな木があるじゃないですか。どう考えてもあれですよね?」
「え?」
今度はクリスさんが驚いている。
これ、もしかしてクリスさんにはあの大木が見えていない?
「リエラさん、これってもしかして……」
「はい。聖女様ぁ。その通りですぅ。あれが、白銀の里の精霊樹ですぅ」
「やっぱり姉さまはハイエルフの子孫だから見えるんですね!」
どういうことだ? 100% 純粋な吸血鬼のはずなんだけど?
「精霊樹の近くには、精霊と契約する資格のある者以外は近づけないんですぅ。なので、純粋のエルフ族かその血を色濃く受け継ぐ者と一緒じゃないとエルフの里には辿りつくことすらできないんですぅ」
「つまり、あの精霊樹が見えている時点で姉さまはエルフの血を引いているのは間違いないんですよ!」
いや、そんなはずはないんだけどな。やっぱりあれか。(笑)のせいか。あのハゲめ。
「姉さま、良かったですね!」
ルーちゃんが満面の笑みを浮かべている。
「まあ、でも私は吸血鬼ですから。何か別の原因で見えているのかもしれないですよ?」
「フィーネ様。ルミアもフィーネ様を元気づけようとしてくれているんですよ?」
うっ、クリスさんに窘められてしまった。
「う、はい。そうですね……ルーちゃん、ありがとうございます」
「はいっ」
うう、ルーちゃんの笑顔が眩しい。
そりゃ、心配してくれているの解るし有り難いんだけどさ。
でもそれ、全部勘違いだからね?
****
「本当に、ここに森があるのですか?」
そうこうしているうちに、森の前に辿りついた。周りはほとんど草しか生えいないにもかかわらず、ここの一帯だけが森になっている。
明らかに不自然なのだが、クリスさんにはこの森が見えていないらしい。
「リエラさん、これはどうしたらいいんですか?」
「手を繋いでいけば大丈夫よぉ。つないであげましょうかぁ? 聖騎士さ・ま?」
「い、いえ。私はフィーネ様のお側を離れるわけにはいきませんので」
「あらぁ、ザンネン♪」
そう言ってぺろりと唇をなめるリエラさんとそれを見て少し青ざめるクリスさん。
うん、見なかったことにしよう。くわばらくわばら。
私はクリスさんの手を握るとリエラさんを先頭に森へと足を踏み入れる。
「なっ。本当に森があるとは! これがエルフの隠れ里……」
クリスさんが驚いている。そりゃあびっくりするよね。いきなり目の前に森が現れれば。個人的にはその驚きをちょっと味わってみたい気もしたが、まあ仕方ない。里を目指して歩こう。
森の中の道なき道を歩いているにもかかわらず、やたらと歩きやすい。まるで木や草が私たちを避けてくれているかのようだ。
「あ、姉さま。これはあたしたち森の民特有の能力で、森に住む精霊たちが力を貸してくれて、こうやってあたしたちのために道を開けてくれるんです!」
不思議そうな顔をしていた私にルーちゃんが先回りして説明してくれる。
なるほど。流石エルフ、すごい能力だ。
そんな風に感心していたちょうどその時だった。
パシン!
何か音がしたかと思うとリエラさんの少し手前の地面に矢が刺さった。その瞬間にクリスさんは剣を抜き、ルーちゃんも弓を構えた。
「あらぁ? 同胞に弓を引くとはどういうことかしらぁ?」
リエラさんもいつもより声のトーンが低い。
うーん、二人を連れていけば入れてもらえると思っていたのだけれど、このままだと戦闘になりそうだ。よし、ここはひとつ私が。
私はフードを脱いで素顔を晒すとリエラさんの前に歩み出る。
「勝手に入って申し訳ありませんが、私たちに敵意はありません。人間の町で奴隷として捕らえられていたエルフを二名を救助しました。こちらの里で保護をお願いしたいのです」
返事がないが、何か話し合っていそうな気配はある。しばらくして、男性のエルフが一人、木の上から降りてきた。白銀色の髪に赤い瞳の優男風のクソイケメンだ。
爆発すればいいのに!
「よかろう。そちらの二人とハーフエルフの貴女はお連れしよう。だがそちらの人間は連れていくわけにはいかない」
ええと、なんでいきなりハーフエルフ扱いになっているのかな?
って、違う。そうじゃなくて!
「何でクリスさんがダメなんですか! クリスさんもあたしの大事な仲間です!」
「そうよぉ? この聖騎士様は私のこぶ……娘の恩人ですからぁ」
こぶ? リエラさん、今一体なんて言おうとしたの?
「せ、聖騎士、だと? するとまさか……失礼した。同胞二人を救ってくれた恩人を追い返したとあっては我ら白銀の里の名折れ。里まで案内しよう」
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