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動乱の故郷
第六章第51話 森の調査
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2020/10/29 誤字を修正しました
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「聖女様、お待ちしておりました」
私たちが駐屯地前の広場に到着すると、アロイスさんと騎士が 30 人くらい、それに魔術師っぽい格好の人と、そしてアイロールの盾の二人が既に私たちを待っていた。
「おはようございます。アロイスさん、もしかしてお待たせしてしまいましたか?」
「いえ。我々は準備のために先に来ていただけです」
「そうでしたか。そちらの二人は、ええと、確かディオンさんとグレッグさんでしたっけ?」
「はい! この前はグレッグを治療していただきありがとうございました!」
ディオンさんとグレッグさんがブーンからのジャンピング土下座で礼を言う。
うん、キレはあったし力強さはあったけど、揃っていないし手先までしっかり気を配れていなかったから 6 点かな。
「いえ。それが仕事ですから。お元気そうで何よりです」
私は営業スマイルでそう言うと何故か顔を赤くしている。
そんな彼らにアロイスさんが小さく咳払いをすると説明を始めた。
「さて、本日の我々の任務ですが聖女様が発見されたという謎の祭壇の調査です」
「はい」
「特に初回ですので、今回の第一の目的は祭壇への道を確認することです。詳しい調査は王都の学者や王宮の魔術師たちに任せることになりますが、できれば危険性の有無だけは確認しておきたいところです」
「そうですね」
真面目な表情で話すアロイスさんに私は小さく頷く。
「そこでその祭壇への道なのですが、そこのアイロールの盾の二人が森に詳しいという事ですので、特徴などをお教えいただければ近い場所には行けるかと存じます」
「はい! 任せてください! この森は俺たちの庭みたいなものですから!」
「ああ。俺たちに任せてくれ!」
何やらディオンさんとグレッグさんがすごい勢いで自己アピールしてきている。きっと鼻息を荒くするってこんな状態の事を言うんだろうな、などと思いつつも場所の特徴を告げようとしてふと思いついた。
「ええと、ルーちゃん。あのエビルトレントと戦ったあの祭壇のある場所まで行けたりしませんか?」
「え? 行けますよ?」
私がルーちゃんにそう尋ねると、ルーちゃんは事もなげそう答えた。
「だそうですので、出発しましょう」
「「「へ?」」」
アロイスさんと立場を無くしたディオンさんとグレッグさんが妙に間の抜けた声を出すが、私たちは構わず歩き始める。
あれ? ついてこない?
「行きますよ?」
私が振り返って声をかけると、アロイスさん達は弾かれたように後を追って来たのだった。
****
「到着ですっ!」
ルーちゃんの案内で一切迷うことなくエビルトレントと最初に遭遇した祭壇のある空き地へとやってきた。
「あれがその祭壇ですね。それであっちの木が枯れている辺りはエビルトレントとトレントがいた場所です」
私の説明にアロイスさんや魔術師風の人たちがそれぞれ検分して回っている。
「この場所には夏のはじめくらいに採集で来たことがありますが、こんなものはなかったですね」
ディオンさんが祭壇を見ながら不思議そうな表情で私にそう言う。
「やはり儀式の跡のようには見えるでござるがな」
「下草がちゃんと刈ってありますからねぇ。でもオタエヶ淵の身投げ岩のような魔力は感じないんですよね」
「オタエヶ淵ってなんすか?」
グレッグさんが私たちの会話に横から乱入してきた。
「遥か東方の国にそう言う場所があって、呪われた岩があったんです」
「はぁー、そんなんがあるんすか。すげえですね」
そう言って感心しているが、グレッグさんが調査で役に立つことはなさそうだ。
そしてしばらく調査を続けたのだが、結局分かったことは何者かがこの祭壇を夏以降に設置したということだけだった。残念ながら、誰が何のために設置したのか、そしてそれが今回の魔物暴走に何か関係があるのかといった肝心な事は分からずじまいだ。
「うーん、エビルトレントも出ましたし、一応浄化しておきます?」
私は念のためにアロイスさんに提案してみると、是非に、とのことなので久しぶりにリーチェを呼んで浄化を行うことにした。
花びらを舞い散らせ、種を植えてからの浄化の光景は本当にきれいだし、うちのリーチェは本当にかわいかった。
と、こんな事を考えている余裕があるのは、今回は大して浄化するべきものがなかったようでほとんど魔力を使わずに済んだからだ。そのおかげでうちのかわいいリーチェのかわいい晴れ姿をばっちり見ることができた。
大事なことだからね。二回言ったよ?
「聖女様、大変お疲れ様でした。これ以上は我々ではどうにもならないと思いますので、王都からの調査団の専門家たちに任せようと思います。それまでこの現場は我々騎士団で保全いたします」
「そうですか」
保全すると言っているのに浄化してしまって良かったんだろうか?
いや、でもそこは私が気にすることでもないだろう。
こうして私たちは森の中での調査を終え、アイロールの町へと戻ったのだった。その帰り道でも魔物に襲われることはほとんどなく、襲ってきた魔物も騎士団とアイロールの盾のお二人が全て倒してくれたのだった。
そしてその翌日になるとすっかり魔物は町周辺から追い払われ、こうしてアイロールに平和が戻ったのだった。
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「聖女様、お待ちしておりました」
私たちが駐屯地前の広場に到着すると、アロイスさんと騎士が 30 人くらい、それに魔術師っぽい格好の人と、そしてアイロールの盾の二人が既に私たちを待っていた。
「おはようございます。アロイスさん、もしかしてお待たせしてしまいましたか?」
「いえ。我々は準備のために先に来ていただけです」
「そうでしたか。そちらの二人は、ええと、確かディオンさんとグレッグさんでしたっけ?」
「はい! この前はグレッグを治療していただきありがとうございました!」
ディオンさんとグレッグさんがブーンからのジャンピング土下座で礼を言う。
うん、キレはあったし力強さはあったけど、揃っていないし手先までしっかり気を配れていなかったから 6 点かな。
「いえ。それが仕事ですから。お元気そうで何よりです」
私は営業スマイルでそう言うと何故か顔を赤くしている。
そんな彼らにアロイスさんが小さく咳払いをすると説明を始めた。
「さて、本日の我々の任務ですが聖女様が発見されたという謎の祭壇の調査です」
「はい」
「特に初回ですので、今回の第一の目的は祭壇への道を確認することです。詳しい調査は王都の学者や王宮の魔術師たちに任せることになりますが、できれば危険性の有無だけは確認しておきたいところです」
「そうですね」
真面目な表情で話すアロイスさんに私は小さく頷く。
「そこでその祭壇への道なのですが、そこのアイロールの盾の二人が森に詳しいという事ですので、特徴などをお教えいただければ近い場所には行けるかと存じます」
「はい! 任せてください! この森は俺たちの庭みたいなものですから!」
「ああ。俺たちに任せてくれ!」
何やらディオンさんとグレッグさんがすごい勢いで自己アピールしてきている。きっと鼻息を荒くするってこんな状態の事を言うんだろうな、などと思いつつも場所の特徴を告げようとしてふと思いついた。
「ええと、ルーちゃん。あのエビルトレントと戦ったあの祭壇のある場所まで行けたりしませんか?」
「え? 行けますよ?」
私がルーちゃんにそう尋ねると、ルーちゃんは事もなげそう答えた。
「だそうですので、出発しましょう」
「「「へ?」」」
アロイスさんと立場を無くしたディオンさんとグレッグさんが妙に間の抜けた声を出すが、私たちは構わず歩き始める。
あれ? ついてこない?
「行きますよ?」
私が振り返って声をかけると、アロイスさん達は弾かれたように後を追って来たのだった。
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「到着ですっ!」
ルーちゃんの案内で一切迷うことなくエビルトレントと最初に遭遇した祭壇のある空き地へとやってきた。
「あれがその祭壇ですね。それであっちの木が枯れている辺りはエビルトレントとトレントがいた場所です」
私の説明にアロイスさんや魔術師風の人たちがそれぞれ検分して回っている。
「この場所には夏のはじめくらいに採集で来たことがありますが、こんなものはなかったですね」
ディオンさんが祭壇を見ながら不思議そうな表情で私にそう言う。
「やはり儀式の跡のようには見えるでござるがな」
「下草がちゃんと刈ってありますからねぇ。でもオタエヶ淵の身投げ岩のような魔力は感じないんですよね」
「オタエヶ淵ってなんすか?」
グレッグさんが私たちの会話に横から乱入してきた。
「遥か東方の国にそう言う場所があって、呪われた岩があったんです」
「はぁー、そんなんがあるんすか。すげえですね」
そう言って感心しているが、グレッグさんが調査で役に立つことはなさそうだ。
そしてしばらく調査を続けたのだが、結局分かったことは何者かがこの祭壇を夏以降に設置したということだけだった。残念ながら、誰が何のために設置したのか、そしてそれが今回の魔物暴走に何か関係があるのかといった肝心な事は分からずじまいだ。
「うーん、エビルトレントも出ましたし、一応浄化しておきます?」
私は念のためにアロイスさんに提案してみると、是非に、とのことなので久しぶりにリーチェを呼んで浄化を行うことにした。
花びらを舞い散らせ、種を植えてからの浄化の光景は本当にきれいだし、うちのリーチェは本当にかわいかった。
と、こんな事を考えている余裕があるのは、今回は大して浄化するべきものがなかったようでほとんど魔力を使わずに済んだからだ。そのおかげでうちのかわいいリーチェのかわいい晴れ姿をばっちり見ることができた。
大事なことだからね。二回言ったよ?
「聖女様、大変お疲れ様でした。これ以上は我々ではどうにもならないと思いますので、王都からの調査団の専門家たちに任せようと思います。それまでこの現場は我々騎士団で保全いたします」
「そうですか」
保全すると言っているのに浄化してしまって良かったんだろうか?
いや、でもそこは私が気にすることでもないだろう。
こうして私たちは森の中での調査を終え、アイロールの町へと戻ったのだった。その帰り道でも魔物に襲われることはほとんどなく、襲ってきた魔物も騎士団とアイロールの盾のお二人が全て倒してくれたのだった。
そしてその翌日になるとすっかり魔物は町周辺から追い払われ、こうしてアイロールに平和が戻ったのだった。
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