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砂漠の国
第七章第4話 海難救助
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「ううん、いい景色ですね」
私が隣にいる船員さんにそう言うと、船員さんはやや引きつった様な表情で答えた。
「は、はい。お気に召していただいたようで何よりです」
というのも、私は今この船のマストの上のほうについている見張り台に登らせてもらっているのだ。
そう、これも豪華な帆船に乗ったらやってみたいことの一つだ。眼下には甲板とそこで私たちを見上げるクリスさんたちと船員さんたちの姿が見える。
クリスさんたちはあまり気にしていないようでニコニコしながら見ているが、船員さんたちは私が落ちるのではないかと気が気ではない様子だ。
一応私だってそれなりに修羅場をくぐってきたんだし、ステータスで言えば既にユカワ温泉で見せてもらったレベル 30 の時のクリスさんを超えているのだ。このくらいの高さからなら死なないと思う。
それに、そもそも私が落ちたらクリスさんが絶対に受け止めてくれるので心配していない。
さて、辺りを見渡すと帆やマストで隠れている部分以外は 360 度見渡す限り一面の青い海だ。水平線までしっかり見えていて中々の絶景だ。
今日は風も穏やかで白波も立っておらず、太陽が海面に反射してキラキラと美しく輝いている。
そんな南側の海をぐるりと眺めていると、私はその海上に何かが浮かんで漂っているのを見つけた。
「ん? あれは?」
「聖女様、いかがなさいましたか?」
思わず声を出し、それに反応して隣にいる船員さんが怪訝そうな様子で私に質問してきた。
私はじっと目を凝らして漂っているものが何なのかを判別しようとする。
「うーん? あれは……人っぽいですね。木の板に人が乗って漂流しているように見えます」
「え? どちらでしょうか? 俺にはさっぱり……」
どうやら遠くのものを見慣れているはずの船員さんといえどもあれだけ遠くの波間を漂う漂流者は見分けがつかないらしい。やはりこういう時は吸血鬼で良かったと心から思う。
「放ってはおけないですね。助けましょう。クリスさん!」
私はそうしてクリスさんを呼ぶと見張り台から飛び降りる。
「せ、聖女様っ!」
見張り台にいた船員さんが慌てて手を伸ばすが既に私は空中にいる。そして私を見上げていた船員さんたちから悲鳴が上がる。
だが、やはりクリスさんは事もなげに私をちゃんと受け止めてくれた。
「フィーネ様、こういう事をなさるなら先に言っておいて下さい。驚いてしまいます」
「すみません。でも、クリスさんは絶対にキャッチしてくれると思っていましたから」
「それはそうですが……」
クリスさんは嬉しそうなような様子だがなんとも複雑な表情をしている。
「それで、どうなさったのですか?」
「はい、南の海上に漂流者がいるので早く助けないとと思いまして」
するとクリスさんは一つ小さくため息をついた。
「やはりフィーネ様はそうですよね。わかりました」
そう言ってクリスさんは船長のところに走っていったのだった。
うん? そうってどういうこと?
****
その後、船長さんには散々反対されたが何とか説得し、てんやわんやの大騒ぎの末に漂流者を救助して船へと引き揚げた。
その漂流者は褐色の肌に深紫の長い髪の非常に長身な女性だった。息はあるようだがやはり衰弱しているように見える。それにこの女性、何だかとってもマッチョなので冬の海はさぞ寒かったことだろう。
そしてこの船に女性の船員さんはいないので私たちで船室に運び、服を替えてベッドに寝かせてあげる。
そして思いつく限りの魔法をかけてあげたので後は自力で目を覚ますのを待つのみだ。
そうしてしばらく眺めているとあっさりと目を覚ました。
「ん……あら?」
開かれた瞳も髪と同じ深紫の神秘的な瞳をしている。
「こんにちは。私はフィーネ・アルジェンタータと言います。ここはホワイトムーン王国の騎士団の船の上で、今私たちはイエロープラネット首長国連邦に向かっています。あなたは漂流していたので、私の判断で救助しました」
それを聞いた瞬間、女性が目を見開いた。
「フィーネ……アルジェンタータ? もしや! あの聖女フィーネ・アルジェンタータ様でらっしゃいますか!」
「え? ええと、はい。そう呼ばれることもありますね」
「ああっ」
そう言って女性が起き上がろうとしたので私は慌てて止める。
「さっきまで漂流していたんですから、このまま安静にしていてください」
「は、はい。神に感謝いたします」
「神の御心のままに」
私はニッコリと営業スマイルで便利フレーズで答える。
するとこの女性は感激したように涙を流し始める。
随分と慣れてはきたけれど、やはりこうやっていちいち感動されるのも面倒ではある。
私はこの女性が落ち着くのを待ってから声をかける。
「それで、お名前を教えて貰えませんか? それと、どうしてこんなところで漂流していたんですか?」
すると、女性は表情を凍り付かせ、そして俯いてしまった。
「あ、言いづらいのでしたら――」
「いえ、聖女様」
私が慌てて声をかけるがその女性は強い意志を宿した目で私の目を見てきた。
「わたしの名はサラ。サラ・ブラックレインボーと申します。ブラックレインボー帝国の第一皇女です」
ブラックレインボー帝国の第一皇女さまですか。まさか皇族を海で拾うなんてすごい偶然もあったものだ。
なるほど。なるほどなるほど?
うん?
うん?
はい!?
私が隣にいる船員さんにそう言うと、船員さんはやや引きつった様な表情で答えた。
「は、はい。お気に召していただいたようで何よりです」
というのも、私は今この船のマストの上のほうについている見張り台に登らせてもらっているのだ。
そう、これも豪華な帆船に乗ったらやってみたいことの一つだ。眼下には甲板とそこで私たちを見上げるクリスさんたちと船員さんたちの姿が見える。
クリスさんたちはあまり気にしていないようでニコニコしながら見ているが、船員さんたちは私が落ちるのではないかと気が気ではない様子だ。
一応私だってそれなりに修羅場をくぐってきたんだし、ステータスで言えば既にユカワ温泉で見せてもらったレベル 30 の時のクリスさんを超えているのだ。このくらいの高さからなら死なないと思う。
それに、そもそも私が落ちたらクリスさんが絶対に受け止めてくれるので心配していない。
さて、辺りを見渡すと帆やマストで隠れている部分以外は 360 度見渡す限り一面の青い海だ。水平線までしっかり見えていて中々の絶景だ。
今日は風も穏やかで白波も立っておらず、太陽が海面に反射してキラキラと美しく輝いている。
そんな南側の海をぐるりと眺めていると、私はその海上に何かが浮かんで漂っているのを見つけた。
「ん? あれは?」
「聖女様、いかがなさいましたか?」
思わず声を出し、それに反応して隣にいる船員さんが怪訝そうな様子で私に質問してきた。
私はじっと目を凝らして漂っているものが何なのかを判別しようとする。
「うーん? あれは……人っぽいですね。木の板に人が乗って漂流しているように見えます」
「え? どちらでしょうか? 俺にはさっぱり……」
どうやら遠くのものを見慣れているはずの船員さんといえどもあれだけ遠くの波間を漂う漂流者は見分けがつかないらしい。やはりこういう時は吸血鬼で良かったと心から思う。
「放ってはおけないですね。助けましょう。クリスさん!」
私はそうしてクリスさんを呼ぶと見張り台から飛び降りる。
「せ、聖女様っ!」
見張り台にいた船員さんが慌てて手を伸ばすが既に私は空中にいる。そして私を見上げていた船員さんたちから悲鳴が上がる。
だが、やはりクリスさんは事もなげに私をちゃんと受け止めてくれた。
「フィーネ様、こういう事をなさるなら先に言っておいて下さい。驚いてしまいます」
「すみません。でも、クリスさんは絶対にキャッチしてくれると思っていましたから」
「それはそうですが……」
クリスさんは嬉しそうなような様子だがなんとも複雑な表情をしている。
「それで、どうなさったのですか?」
「はい、南の海上に漂流者がいるので早く助けないとと思いまして」
するとクリスさんは一つ小さくため息をついた。
「やはりフィーネ様はそうですよね。わかりました」
そう言ってクリスさんは船長のところに走っていったのだった。
うん? そうってどういうこと?
****
その後、船長さんには散々反対されたが何とか説得し、てんやわんやの大騒ぎの末に漂流者を救助して船へと引き揚げた。
その漂流者は褐色の肌に深紫の長い髪の非常に長身な女性だった。息はあるようだがやはり衰弱しているように見える。それにこの女性、何だかとってもマッチョなので冬の海はさぞ寒かったことだろう。
そしてこの船に女性の船員さんはいないので私たちで船室に運び、服を替えてベッドに寝かせてあげる。
そして思いつく限りの魔法をかけてあげたので後は自力で目を覚ますのを待つのみだ。
そうしてしばらく眺めているとあっさりと目を覚ました。
「ん……あら?」
開かれた瞳も髪と同じ深紫の神秘的な瞳をしている。
「こんにちは。私はフィーネ・アルジェンタータと言います。ここはホワイトムーン王国の騎士団の船の上で、今私たちはイエロープラネット首長国連邦に向かっています。あなたは漂流していたので、私の判断で救助しました」
それを聞いた瞬間、女性が目を見開いた。
「フィーネ……アルジェンタータ? もしや! あの聖女フィーネ・アルジェンタータ様でらっしゃいますか!」
「え? ええと、はい。そう呼ばれることもありますね」
「ああっ」
そう言って女性が起き上がろうとしたので私は慌てて止める。
「さっきまで漂流していたんですから、このまま安静にしていてください」
「は、はい。神に感謝いたします」
「神の御心のままに」
私はニッコリと営業スマイルで便利フレーズで答える。
するとこの女性は感激したように涙を流し始める。
随分と慣れてはきたけれど、やはりこうやっていちいち感動されるのも面倒ではある。
私はこの女性が落ち着くのを待ってから声をかける。
「それで、お名前を教えて貰えませんか? それと、どうしてこんなところで漂流していたんですか?」
すると、女性は表情を凍り付かせ、そして俯いてしまった。
「あ、言いづらいのでしたら――」
「いえ、聖女様」
私が慌てて声をかけるがその女性は強い意志を宿した目で私の目を見てきた。
「わたしの名はサラ。サラ・ブラックレインボーと申します。ブラックレインボー帝国の第一皇女です」
ブラックレインボー帝国の第一皇女さまですか。まさか皇族を海で拾うなんてすごい偶然もあったものだ。
なるほど。なるほどなるほど?
うん?
うん?
はい!?
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