勘違いから始まる吸血姫と聖騎士の珍道中

一色孝太郎

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砂漠の国

第七章第26話 ゾンビ襲来

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あれからしばらくしてシーサーペントは力尽きた。何とも締まらない結末だが、いくら魔物でも呼吸ができなければ死ぬらしい。

その後海に浮かんだシーサーペントを回収した私たちは、何に使うのかはよく知らないがシーサーペントの素材が欲しいという事だったので魔石以外の素材を全て適正価格で首長のヒラールさんに売却した。随分と硬い鱗だったし、鎧や盾でも作るのではないだろうか?

これで少しでもイエロースコルピに捨て身の特攻をして死ぬ人が減ってくれればと願うばかりだ。

え? 魔物にやられて大変な状況なのに金を取るのかって?

いやいや。私たちだってちゃんと働いたから。

それにシーサーペントにやられた人たちの救助もしたし、治療だってした。それに砂漠の戦いでも大半はクリスさんとシズクさん、それにルーちゃんが倒していたのだ。

私はなんちゃって聖女様なので誰にでも無償で施すなどということはせずお金持ちや権力者からはきちんとお金を取るのだ。

ああ、そうそう。何故かは分からないがシーサーペントの経験値は私に入ってきた。

最後に攻撃したのはクリスさんだからクリスさんに入ると思ったんだけどね。

こうして慌ただしい一日を過ごした私たちはくたくたになってホテルへと戻ったのだった。

****

そして私たちが夕食を終えてそろそろ寝ようかという時だった。

「聖女様! 聖女様!」

慌てたような男の声と共に私たちの扉が乱暴にノックされた。

「フィーネ様。私が」

そう言うと帯剣したクリスさんが扉へと向かうと、扉を開けずに

「何者だ! 聖女フィーネ・アルジェンタータ様はお休み中であられるぞ」
「も、申し訳ございません! 私はヒラール様の命令でやって参りましたダルハ守備隊の伝令マジードと申します! 西の砂漠からアンデッドの大軍が! しかも昼間に倒したはずの魔物たちまでゾンビとなって我が町に押し寄せてきているのです。どうか! どうかお力をお貸しください!」

うん? 何だかつい最近どこかで聞いたようなパターンだね。

「……ジャイアントローチはいるか?」
「え? い、いえ。このあたりは砂漠ですのでジャイアントローチの存在は確認されておりません」
「分かった。フィーネ様には確かにお伝えする。下がれ」
「ははっ!」

そう言って伝令の人は下がっていったようだ。クリスさんはしばらく気配を確認していたようだが、やがて私たちのところに戻ってきた。

「フィーネ様。この状況はアイロールの時と同じですね」
「そうですね。あの時のようにここからまとめて浄化しちゃいましょう」
「いや、待つでござる」

私が浄化魔法を撃とうとしたところでシズクさんに止められた。いつの間にやらシズクさんはもう着替え終わっている。

「え?」
「これはあまりにもアイロールの状況と似すぎているでござる。そして、アンデッドがこれほど大量に発生するという事は何者かが発生させている以外にあり得ないでござる」
「フィーネ様。私もシズク殿の言う通りだと思います」
「というと?」
「昼の魔物の襲撃は人為的なものの可能性があるという事です」
「そして、アイロールの襲撃とこのダルハへの襲撃は同一犯の可能性があるという事でござるよ」
「えっ?」

それは考えもしなかったけれど、なるほど確かにそう言われるとあまりにも状況がそっくりだ。

「恐らく敵は死霊術師のはずです。であれば、フィーネ様が最も得意とされる相手であり、遅れを取ることは無いでしょう」
「そして今この機会に捕らえる事が出来ればアイロールとの関係も分かるでござるよ」

おお! なるほど! それはその通りだ。

「よし。じゃあ、行きましょう! あれ?でもどこに行けば?」
「西の砂漠にいるはずでござるよ。いくら凄腕の死霊術士でも死体の近くに行かなければアンデッドを作ることはできないでござる」
「わかりました! では行きましょう!」
「あっ! 待ってください! あたしも行きますっ!」
「はい。ルーちゃんも一緒に行きましょう」
「あ、あの。わたしは?」
「ええと、サラさんはお留守番をお願いします」
「……はい」

こうして私達はホテルの部屋を飛び出すと西門へと向かって夜のダルハを走るのだった。

もちろん私は自分で走っているのではなくクリスさんのお姫様抱っこだけどね。
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