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砂漠の国
第七章第36話 認められぬもの
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私たちは一週間ほどかけてシャリクラに到着し、そこからさらにもう一週間かけてエイブラへと戻ってきた。そのシャリクラでも不遇な目に遭っていたルマ人をおよそ 500 人ほどを加えたため、一気に大所帯となってのエイブラ到着となった。
シャリクラでもそうだったが、ここエイブラでも船で先回りして報告が届いていたらしく、ルマ人たちは町の外で待機させられることとなった。
あれほど私を意味不明に拝み倒していたクセにその私が保護しているルマ人たちに対してこの仕打ちとはね。どうやらこの国は本当にルマ人たちが嫌いらしい。
さすがに彼らを町の外でそのまま待機させるのは不安なので、ルマ人以外は入れない結界を張っておいてあげた。こうしておけば危害を加えられることはないだろう。
そして私たちはハーリドさんに連れられて再び大統領に会うため宮殿を訪れた。
「聖女様。よくぞお戻りになられました。ダルハでは魔物退治へご協力いただいたそうで、感謝いたします」
「いえ。それよりも協力をお願いしたいことがあります」
「はい。何でございましょう?」
「ルマ人達の事です。もうご存じかも知れませんが、ダルハとシャリクラではルマ人たちの待遇を改善する事は拒絶されましたので私が保護して連れていくこととしました。サラ皇女殿下が国を取り戻した際に移民として受け入れてもらう予定です」
「左様でございますか」
「ここ、エイブラでもルマ人たちはダルハやシャリクラと同様の扱いを受けていると聞きます。それを改善して頂くか、そうでないなら私の保護下に置くことを認めて下さい」
「……ルマ人とは何ですかな? 我が国にはそのような者はおりません。もし、そのような者がいたとしてもそれは犯罪者であって我が国の民ではございません。どうぞご自由になさって下さい」
「……わかりました。その様にさせていただきます」
いや、ホントに酷い言い草だ。この国は奴隷も認めているし、こんな差別もあるし。ちょっと、いやかなり嫌いかもしれない。
まあ、ホワイトムーン王国だって褒められたものではないしブルースター共和国にだっておかしな人達はいたけどさ。
ん? もしかしてまともな国の方が少ないのか?
いや、今はそんな事を考えている場合じゃないか。
「ところで聖女様。我が国にも聖剣ルフィカールが伝わっておりましてな。よろしければ見ていかれませんか?」
「……私はこれ以上聖騎士も従者も増やす気はありませんよ?」
「それはそれは。ですが、ご覧頂くくらいであれば構わないのではないですかな?」
一体どういう意図なのだろうか? てっきり私たちのパーティーに人員を送り込みたいという事なのかと思ったけれど。
「……わかりました」
私は迷ったがその申し出を受けることにした。
****
大統領に案内された私たちは、神殿の大広間のような場所にやってきた。
「こちらが我が国に伝わる聖剣ルフィカールでございます」
やたらと細かい金細工に宝石のあしらわれた鞘に収められた曲刀がガラスの中に入れられて保管されている。
「これが……ですか?」
「はい。お持ちになられますか?」
「はい」
「おお! ではこの聖剣を誰かに授け、新たにお連れになるという事ですな?」
「は?」
どうしてそういう思考になる?
「え? 聖女様が聖剣をお持ちになるという事は、その聖剣をお与えになりたい者がいるということではないのですか?」
「ええと?」
「違うのですか?」
「違いますね。単に、持って確かめたかっただけです」
「左様でございますか。では開けさせましょう」
小さく舌打ちをした大統領はその後指示を出してガラスのケースが開けられた。
私は安置されていた聖剣の柄を握って持ってみる。
「う、意外と重いですね」
え? どうして聖剣なのに私が重く感じるんだろうか? それに聖なる力を全く感じない。
私は首を横に振ると元の場所に戻す。
「クリスさんやユーグさんの聖剣、それにキリナギやレッドスカイ帝国の聖剣のような感じは全くありませんね。これは本当に聖剣なんでしょうか?」
「確かに、聖剣ではなく聖女が聖剣を与えるという逸話もおかしいです」
「左様でございますか。ですが重く感じたということは聖女様、いえフィーネ殿は聖女とは認められなかったという事でございますな」
うん? どういうこと?
「これ以降、我が国はフィーネ殿を聖女と認めることはできませんので、即刻この国から立ち去って頂きましょう。ああ、サラ殿下はこちらで丁重にお預かりしましょう。聖女でない外国人などには要人を保護することなどできませんからな」
ニタリと笑った大統領はしたり顔でそう宣言してきた。
「何だと!? イエロープラネット首長国連邦は世界聖女保護協定に違反するおつもりか!?」
クリスさんが怒気を孕んだ声で叫ぶと大統領を睨み付ける。
「抜く気ですかな? 抜けば外交問題となりますぞ?」
「我が国の誇る聖女フィーネ様を先に侮辱したのはそちらだ」
「では仕方ありませんな。ひっ捕らえろ!」
大統領の号令で物陰から大勢の兵士が現れると私たちを取り囲む。
「こいつらを捕らえ、牢屋に放り込んでおけ。それからホワイトムーン王国に身代金を要求するぞ。ああ、そうだ。外にいる正体不明の難民も処分しなければな」
そう命令すると、大統領はそのままゆっくりと立ち去ったのだった。
はい? ええと? どういうこと?
シャリクラでもそうだったが、ここエイブラでも船で先回りして報告が届いていたらしく、ルマ人たちは町の外で待機させられることとなった。
あれほど私を意味不明に拝み倒していたクセにその私が保護しているルマ人たちに対してこの仕打ちとはね。どうやらこの国は本当にルマ人たちが嫌いらしい。
さすがに彼らを町の外でそのまま待機させるのは不安なので、ルマ人以外は入れない結界を張っておいてあげた。こうしておけば危害を加えられることはないだろう。
そして私たちはハーリドさんに連れられて再び大統領に会うため宮殿を訪れた。
「聖女様。よくぞお戻りになられました。ダルハでは魔物退治へご協力いただいたそうで、感謝いたします」
「いえ。それよりも協力をお願いしたいことがあります」
「はい。何でございましょう?」
「ルマ人達の事です。もうご存じかも知れませんが、ダルハとシャリクラではルマ人たちの待遇を改善する事は拒絶されましたので私が保護して連れていくこととしました。サラ皇女殿下が国を取り戻した際に移民として受け入れてもらう予定です」
「左様でございますか」
「ここ、エイブラでもルマ人たちはダルハやシャリクラと同様の扱いを受けていると聞きます。それを改善して頂くか、そうでないなら私の保護下に置くことを認めて下さい」
「……ルマ人とは何ですかな? 我が国にはそのような者はおりません。もし、そのような者がいたとしてもそれは犯罪者であって我が国の民ではございません。どうぞご自由になさって下さい」
「……わかりました。その様にさせていただきます」
いや、ホントに酷い言い草だ。この国は奴隷も認めているし、こんな差別もあるし。ちょっと、いやかなり嫌いかもしれない。
まあ、ホワイトムーン王国だって褒められたものではないしブルースター共和国にだっておかしな人達はいたけどさ。
ん? もしかしてまともな国の方が少ないのか?
いや、今はそんな事を考えている場合じゃないか。
「ところで聖女様。我が国にも聖剣ルフィカールが伝わっておりましてな。よろしければ見ていかれませんか?」
「……私はこれ以上聖騎士も従者も増やす気はありませんよ?」
「それはそれは。ですが、ご覧頂くくらいであれば構わないのではないですかな?」
一体どういう意図なのだろうか? てっきり私たちのパーティーに人員を送り込みたいという事なのかと思ったけれど。
「……わかりました」
私は迷ったがその申し出を受けることにした。
****
大統領に案内された私たちは、神殿の大広間のような場所にやってきた。
「こちらが我が国に伝わる聖剣ルフィカールでございます」
やたらと細かい金細工に宝石のあしらわれた鞘に収められた曲刀がガラスの中に入れられて保管されている。
「これが……ですか?」
「はい。お持ちになられますか?」
「はい」
「おお! ではこの聖剣を誰かに授け、新たにお連れになるという事ですな?」
「は?」
どうしてそういう思考になる?
「え? 聖女様が聖剣をお持ちになるという事は、その聖剣をお与えになりたい者がいるということではないのですか?」
「ええと?」
「違うのですか?」
「違いますね。単に、持って確かめたかっただけです」
「左様でございますか。では開けさせましょう」
小さく舌打ちをした大統領はその後指示を出してガラスのケースが開けられた。
私は安置されていた聖剣の柄を握って持ってみる。
「う、意外と重いですね」
え? どうして聖剣なのに私が重く感じるんだろうか? それに聖なる力を全く感じない。
私は首を横に振ると元の場所に戻す。
「クリスさんやユーグさんの聖剣、それにキリナギやレッドスカイ帝国の聖剣のような感じは全くありませんね。これは本当に聖剣なんでしょうか?」
「確かに、聖剣ではなく聖女が聖剣を与えるという逸話もおかしいです」
「左様でございますか。ですが重く感じたということは聖女様、いえフィーネ殿は聖女とは認められなかったという事でございますな」
うん? どういうこと?
「これ以降、我が国はフィーネ殿を聖女と認めることはできませんので、即刻この国から立ち去って頂きましょう。ああ、サラ殿下はこちらで丁重にお預かりしましょう。聖女でない外国人などには要人を保護することなどできませんからな」
ニタリと笑った大統領はしたり顔でそう宣言してきた。
「何だと!? イエロープラネット首長国連邦は世界聖女保護協定に違反するおつもりか!?」
クリスさんが怒気を孕んだ声で叫ぶと大統領を睨み付ける。
「抜く気ですかな? 抜けば外交問題となりますぞ?」
「我が国の誇る聖女フィーネ様を先に侮辱したのはそちらだ」
「では仕方ありませんな。ひっ捕らえろ!」
大統領の号令で物陰から大勢の兵士が現れると私たちを取り囲む。
「こいつらを捕らえ、牢屋に放り込んでおけ。それからホワイトムーン王国に身代金を要求するぞ。ああ、そうだ。外にいる正体不明の難民も処分しなければな」
そう命令すると、大統領はそのままゆっくりと立ち去ったのだった。
はい? ええと? どういうこと?
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