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人と魔物と魔王と聖女
第九章第27話 洞窟探検
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しばらく洞窟の中を進んでいくと、やがて雑ではあるが明らかに人の手で造られた登り階段に辿りついた。
間違いない。この洞窟には確実に人の手が入っている。
そう確信した私は階段を登り、さらに奥を目指す。
相変わらずの細い通路が続くが、ここまでくるともう海水が侵入してきた形跡はない。
うん。何だか探検をしているみたいでちょっとわくわくしてきた。この先には何があるのだろうか?
今までがあまりに暇すぎたせいもあってか、こうした刺激に飢えていたのかもしれない。
それに妖精吸血鬼に存在進化した今でも吸血鬼としての暗視能力はきっちりと残っているようで、一切光の入らないこの真っ暗闇でもきちんと見えており、この暗くて狭い洞窟にもまるで恐怖を感じない。
さあ、今度は何が出てくるのかな?
わくわくしながら歩いていくと、今度は通路が緩やかに左へとカーブし始めた。しかも登り坂になっており、少しずつ高いところへと向かっているのだ。
これは、やっぱり島のどこかに出入口があったりするのではないだろうか?
そう期待していたのだが、すぐに登り坂は終わって今度は下り坂になってしまった。
あらら。残念。
だが通路はまだまだ続いている。この先にはきっと何かがあるはずだ。
気を取り直し、再び通路を進んでいく。
今度は一転してものすごく長い下り坂だ。だが、きっと何か面白いものがあるに違いない。
そうわくわくしながら下っていくと、今度は徐々に洞窟内の温度が上がってきた。
ええと? 温度が上がるってことはもしかして?
やや不安を覚えつつも下っていくと、今度は下り階段が現れた。
おおお。ちゃんとした階段だ! すごい!
しかもこの下り階段はきちんと加工して作られているようで、段差の幅と高さがきれいに揃っていてとても歩きやすい。
まさかこの島の地下にこれほどのものがあるなんて!
しかし、一体なんのためにこんな階段を作ったのだろうか?
断崖絶壁の上へと登るための通路であれば下る必要はないはずだし、こんなにしっかりした階段も必要ないはずだ。
うーん? 謎は深まるばかりだ。
よし。もっと進んでみよう。
私は意気揚々と階段を降りていく。
気温はさらに上昇を続けている。優れもののローブがあるおかげでまるで気にならないが、もしかすると普通の人では熱すぎて立っていられないレベルかもしれない。
よし。念のために。
私は自分自身を包み込むように結界を張って危険に備える。【魔力操作】のレベルが最大になったおかげなのか、自分の周りに常に張り続けるなんて芸当もできるようになったのだ。
効果は私に害を及ぼすものを通さない、でいいかな?
万全の備えをした私はさらに階段を下っていく。しばらく歩くと階段の先にわずかな光が見えてきた。
うーん。地下で明るいということはもしかして?
やや不安を抱きつつも階段を降りきったその先には、なんと想像どおりどろどろに溶けた溶岩の海が広がっていた。
真っ赤な溶岩が一面に広がっており、しかも溶岩の海の数メートル上空に手すりすらない一本の橋が掛けられて道が通っているのだ。
うわぁ。なんというか、うん。すごい光景だ。
こんな道、一体誰がなんのために作ったのだろうか?
どう考えてもまともな用途ではない気がするし、安全のためには引き返すのが正解なのだろうが……。
ただ、なんというか。これまでずっと暇だったせいで感覚が麻痺していたのかもしれない。
私は好奇心に任せてその道を一歩一歩ゆっくりと歩き始める。
道幅は一メートルもないくらいで、下は溶岩の海。
もし落ちてしまえばひとたまりもないだろう。
よし。
私は道の上に広めの防壁を張って道幅を拡張し、その上を歩ていく。
うん。やっぱりすごく便利だ。これならばそう簡単には落ちないだろう。
それとたまに「ボコッ」という音と共に溶岩がはねるのだが、その飛沫はすべて防壁が防いでくれる。
あれれ? 意外と大したことないかな? 結界とローブのおかげで大して熱くないし。
そう思えてくると、俄然楽しくなってきた。
私は意気揚々と防壁の上を歩き、やがて溶岩の海を渡り切って反対側の岩壁に辿りついた。
その壁伝いに桟道のような形で道が岩壁に張り付いており、左右のどちらにも進むことができる。どちらの道もその先には入口があるようで、その先にもまだまだ道が続いていることがここからでも確認できる。
初めての分かれ道だ。
「リーチェ。どっちに行ったほうが良いと思います?」
ええと? どっちでも良いから早く洞窟から出よう?
「えっと、そうですね。でも、もうちょっとだけ。せっかくの探検なんですから」
あ、リーチェがジト目で私のことを見ている。
あはは。呆れられてしまった。
まあ、でも特に危険はなさそうだしもう少しくらいは良いだろう。
そう自分に言い訳し、まずは右側の道へと進んだのだった。
=========
次回更新は通常どおり、2021/07/13 (火) 19:00 を予定しております。
間違いない。この洞窟には確実に人の手が入っている。
そう確信した私は階段を登り、さらに奥を目指す。
相変わらずの細い通路が続くが、ここまでくるともう海水が侵入してきた形跡はない。
うん。何だか探検をしているみたいでちょっとわくわくしてきた。この先には何があるのだろうか?
今までがあまりに暇すぎたせいもあってか、こうした刺激に飢えていたのかもしれない。
それに妖精吸血鬼に存在進化した今でも吸血鬼としての暗視能力はきっちりと残っているようで、一切光の入らないこの真っ暗闇でもきちんと見えており、この暗くて狭い洞窟にもまるで恐怖を感じない。
さあ、今度は何が出てくるのかな?
わくわくしながら歩いていくと、今度は通路が緩やかに左へとカーブし始めた。しかも登り坂になっており、少しずつ高いところへと向かっているのだ。
これは、やっぱり島のどこかに出入口があったりするのではないだろうか?
そう期待していたのだが、すぐに登り坂は終わって今度は下り坂になってしまった。
あらら。残念。
だが通路はまだまだ続いている。この先にはきっと何かがあるはずだ。
気を取り直し、再び通路を進んでいく。
今度は一転してものすごく長い下り坂だ。だが、きっと何か面白いものがあるに違いない。
そうわくわくしながら下っていくと、今度は徐々に洞窟内の温度が上がってきた。
ええと? 温度が上がるってことはもしかして?
やや不安を覚えつつも下っていくと、今度は下り階段が現れた。
おおお。ちゃんとした階段だ! すごい!
しかもこの下り階段はきちんと加工して作られているようで、段差の幅と高さがきれいに揃っていてとても歩きやすい。
まさかこの島の地下にこれほどのものがあるなんて!
しかし、一体なんのためにこんな階段を作ったのだろうか?
断崖絶壁の上へと登るための通路であれば下る必要はないはずだし、こんなにしっかりした階段も必要ないはずだ。
うーん? 謎は深まるばかりだ。
よし。もっと進んでみよう。
私は意気揚々と階段を降りていく。
気温はさらに上昇を続けている。優れもののローブがあるおかげでまるで気にならないが、もしかすると普通の人では熱すぎて立っていられないレベルかもしれない。
よし。念のために。
私は自分自身を包み込むように結界を張って危険に備える。【魔力操作】のレベルが最大になったおかげなのか、自分の周りに常に張り続けるなんて芸当もできるようになったのだ。
効果は私に害を及ぼすものを通さない、でいいかな?
万全の備えをした私はさらに階段を下っていく。しばらく歩くと階段の先にわずかな光が見えてきた。
うーん。地下で明るいということはもしかして?
やや不安を抱きつつも階段を降りきったその先には、なんと想像どおりどろどろに溶けた溶岩の海が広がっていた。
真っ赤な溶岩が一面に広がっており、しかも溶岩の海の数メートル上空に手すりすらない一本の橋が掛けられて道が通っているのだ。
うわぁ。なんというか、うん。すごい光景だ。
こんな道、一体誰がなんのために作ったのだろうか?
どう考えてもまともな用途ではない気がするし、安全のためには引き返すのが正解なのだろうが……。
ただ、なんというか。これまでずっと暇だったせいで感覚が麻痺していたのかもしれない。
私は好奇心に任せてその道を一歩一歩ゆっくりと歩き始める。
道幅は一メートルもないくらいで、下は溶岩の海。
もし落ちてしまえばひとたまりもないだろう。
よし。
私は道の上に広めの防壁を張って道幅を拡張し、その上を歩ていく。
うん。やっぱりすごく便利だ。これならばそう簡単には落ちないだろう。
それとたまに「ボコッ」という音と共に溶岩がはねるのだが、その飛沫はすべて防壁が防いでくれる。
あれれ? 意外と大したことないかな? 結界とローブのおかげで大して熱くないし。
そう思えてくると、俄然楽しくなってきた。
私は意気揚々と防壁の上を歩き、やがて溶岩の海を渡り切って反対側の岩壁に辿りついた。
その壁伝いに桟道のような形で道が岩壁に張り付いており、左右のどちらにも進むことができる。どちらの道もその先には入口があるようで、その先にもまだまだ道が続いていることがここからでも確認できる。
初めての分かれ道だ。
「リーチェ。どっちに行ったほうが良いと思います?」
ええと? どっちでも良いから早く洞窟から出よう?
「えっと、そうですね。でも、もうちょっとだけ。せっかくの探検なんですから」
あ、リーチェがジト目で私のことを見ている。
あはは。呆れられてしまった。
まあ、でも特に危険はなさそうだしもう少しくらいは良いだろう。
そう自分に言い訳し、まずは右側の道へと進んだのだった。
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次回更新は通常どおり、2021/07/13 (火) 19:00 を予定しております。
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