勘違いから始まる吸血姫と聖騎士の珍道中

一色孝太郎

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滅びの神託

第十章第53話 炎龍王との死闘(2)

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「どうして王都を襲うんですか!」
「GRRRRRRRR」

 もしかしてスイキョウのときのように理性があるのではないか?

 そう考えて尋ねてみたが、帰ってきたのは唸り声だけだった。その瞳は真っ赤に染まっており、とても理性があるようには見えない。どうやらスイキョウのときとは違うらしい。

 そうして唸っていた炎龍王は再び大きく息を吸い込む。どうやらまたあのブレスを吐くつもりのようだ。

「何度やろうとも!」

 私は結界を張って極太のレーザーブレスに備えるが、炎龍王の口から放たれたのは青い色をした腕くらいの太さのレーザーブレスだった。

「フィーネ殿! 避けるでござる!」
「っ!」

 考えるよりも先に私は横にジャンプした。次の瞬間、私の結界をいとも簡単に貫通したブレスは私のいた場所に拳大の穴を開けた。

 私の結界は音を立てて崩れ落ちる。

「な、なんて威力……」

 まさかカンストした【聖属性魔法】の結界がこうも簡単に貫かれるとは。いや、そもそも結界が破られたのはこれが初めてだ。

 こいつは今までの私の戦い方が通用しない初めての相手ということになる。

「フィーネ様! ご無事ですか!」
「はい。シズクさんのおかげでなんとか躱せましたが、これは本格的にまずいですね」
「そうでござるな。なんとか突破口を見つけるでござるよ」
「私も、前に出ましょうか?」
「いや、フィーネ殿は今までと同じ動きをして欲しいでござるよ」
「え? でも結界が破られちゃいましたし……」
「それでも、でござる。それに、あの青いブレスは撃つ前に予備動作があるでござる。それを見て、青いブレスであれば避ければいいでござる」
「でも……」
「今ぶっつけ本番で動きを変えるよりも、今まで培ってきた連携で戦うほうがよいでござろう?」
「それもそうですね。次はどうしましょうか?」
「そうでござるな……」
「弱点を探すというのはいかがでしょうか?」
「そうですね。そうしましょう。私はあいつの気を引いておきますので、その間にお願いします」
「はっ」
「任せるでござる」

 再びクリスさんとシズクさんは二手に別れて走り出した。

 すると炎龍王は自分の頭上を確認するよう上に軽くブレスを吐き、何もないことを確認して飛び立つ。

 私はその瞬間に再び炎龍王の頭上に防壁を設置した。三度目のゴチンという音と共に、炎龍王はまたしても飛び立つのに失敗した。

 三度みたび邪魔された炎龍王は犯人である私に向かってブレスを放ってきた。効かないと分かっているのに普通のブレスを選択するところをみるに、どうやら怒らせたることには成功したようだ。

 その隙をついてクリスさんが太い尻尾を斬り飛ばし、シズクさんが高く飛びあがってブレスを吐いている炎龍王の顎に一撃を加えた。

 顎はぱっくり割れ、傷口からは炎が漏れだした。だが炎龍王はそれを気にした様子もなく、空中にいるシズクさんにブレスを当てようと顔の向きを変える。

「シズクさん! 足場を作ります!」
「かたじけない!」

 私はシズクさんの足元に防壁を設置し、それを蹴ってシズクさんはブレスを躱すとすぐさま離脱した。

 すると炎龍王は大きく翼を広げて飛び立った。

 私が防壁をシズクさんのために設置したことで頭上の防壁が無くなったことを理解したのだろう。

 だが、私はすぐさま炎龍王の頭上に防壁を設置し直した。他の人と違って私は詠唱をせずに魔法を使えるのだ。だからほぼノータイムで防壁を自在に設置できる。

 そして四度目のゴチンという音と共に炎龍王は地上に戻ってきた。気付けばその尻尾も顎も元通りになっている。

 やはり、普通の攻撃では効果がない。

 地上に戻った炎龍王は大きく息を吸い込み、再びあの青いレーザーブレスを私に対して放ってきた。

 私は横っ飛びで地面に転がってそれを躱し、そして着弾した地面に拳大の穴が開く。

 体勢をを立て直そうと炎龍王のほうを確認した私が見たのは、間髪入れずに放たれたあの黒いブレスが迫ってくる光景だった。

 想定外の事態に結界も防壁も展開することができなかったため、私たちはそれをまともにくらってしまった。

 しかも炎龍王は首を大きく左右に振ってあたり一帯にその黒いブレスを撒き散らす。

「っ!?」
「な、なん……でござるか? これは?」

 クリスさんとシズクさんの様子がおかしい。どういうことだろうか?

 クリスさんもシズクさんも立ち上がって炎龍王と向かい合ってはいるが、心なしか震えているように見える。

 その間に炎龍王は黒い波動をその体から放出した。今回はかなり広範囲にわたってその波動が伝わっていき、かなり広い範囲に大量の魔物が出現した。

「は、はは。これは……」
「わ、私は……フィーネ様を、お守り、する……」

 クリスさんとシズクさんがそれを見て青ざめている。

 え? え? ちょっと待って? さっき二人はこの魔物たちを簡単に倒してたよね?

「クリスさん! シズクさん! しっかりしてください!」
「わ、分かっているでござるよ。拙者はフィーネ殿の剣でござるからな」
「か、必ず、お守り、します……」

 これはきっと、今の黒いブレスの影響に違いない。それに門番が、真っ黒なブレスが飛んできてから住民がパニックを起こしたと言っていた。

 ということは、これで!

「鎮静!」

 私が鎮静魔法を二人にかけると、二人の震えがぴたりと止まる。

「助かったでござる」
「ありがとうございます。フィーネ様」
「一体どうなっていたんですか?」
「得も知れない恐怖が襲ってきたのです」
「フィーネ殿は、平気だったでござるか?」
「はい。私、ああいうのは効かないんです」
「あっさり言うでござるな。とはいえ、まずはこの魔物どもをどうにかするでござるよ」
「はい」

 私は結界を張り直すと、再び炎龍王をしっかりと見据えるのだった。
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