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正義と武と吸血鬼
第十二章第12話 ナンハイへ
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「どうしてこんなことになっているんですか! 将軍!」
「う……それは……」
将軍が負けたという噂を聞いて飛んできたイーフゥアさんが事情を知るや否や、将軍のことを叱り始めた。
まさかな光景ではあるが、完全に主導権はイーフゥアさんにあるらしい。
「しかも聖女様からこんな請求をされるなんて! クリスティーナさんのこともかなり痛めつけたそうじゃないですか!」
「ぐっ……次は勝つ……」
将軍は悔しそうにしているものの、負けたということについては素直に認めており、言い訳はしていない。ただ、次やったらクリスさんたちは殺されてしまうような気もする。
あ、ちなみにあのあとシズクさんとも試合をしたのだが、なんとあっさりとシズクさんが勝ってしまった。
シズクさんもあれからかなりレベルアップしており、スピードの面で勝負にならなかったのだ。
かく言う私も今回は将軍の動きをしっかりと目で追うことができた。前回はほとんど何をしているのか分からなかったのだから、これもきっとレベルアップしたおかげなのだろう。
「そういう問題じゃありません! 大体、大事な吸血鬼退治の前に怪我をするなんて!」
「ぐっ」
イーフゥアさんはかなり怒っているようで、くどくどと説教をしている。
ええと、他人の説教を観察する趣味もないし、私たちはとりあえず撤収しようかな。
こうして私たちは修練場を後にしたのだった。
◆◇◆
それからもう一日宮殿でお世話になった私たちはイェンアンを出発し、ナンハイへと向かう乗合馬車に乗り込んだ。ナンハイまでは馬車と舟を乗り継いでおよそ二週間の旅となる。
元々はイェンアンも観光しながらゆっくり精霊の島を目指そうと思っていたのだが、戦争の準備がされていると知ってしまった以上は呑気に観光などしていられない。
アーデがゴールデンサン巫国の人たちを残らず眷属にしてしまったというのならば話は別だが、きっとそんなことはないはずだ。
それに戦争となれば犠牲になるのは弱い人たちなのだ。普通に暮らしていた人々が住むところを焼かれ、殺される。
そんなことがあっていいはずがない。
私たちが戦争を止めることができないにしても、どうにか一般人の避難くらいはさせてあげたいと思うのだ。
だからこうしてゴールデンサン巫国への玄関口であるナンハイを目指しているわけだが、ナンハイからの定期船が止められているというのが一番のネックだ。
だがイェンアンにいるよりは情報が手に入るだろうし、最悪自分たちで小型の船を調達するということも視野に入れている。
結界さえきちんと張っておけば嵐も魔物も問題ないし、マシロちゃんがいるので風もある程度はなんとかなる。
そんなことを考えながら、私たちは馬車に揺られるのだった。
◆◇◆
そんなこんなで私たちはナンハイの町に到着した。久しぶりのナンハイだが、以前よりも活気がない気がする。
やはり船が止まっているからだろうか?
この町の観光もしたかったのだが、今はそれどころではないのが残念だ。
私たちはとりあえず前回イーフゥアさんに案内してもらった宿に向かう。
「っ! 聖女様? また当宿にお選びいただけるとは! ありがとうございます! さあ、どうぞこちらへ」
どうやら女将さんは私たちのことを覚えていたようで、すぐに前回宿泊した部屋に案内してくれた。
「同じ部屋ですよね? こんなにいいお部屋がよく空いていましたね」
「そうなんですよ! 普段でしたら商人の方のご予約で埋まってしまうのですが、このところは……」
「何かあったんですか?」
「それがですね。ゴールデンサン巫国への渡航が陛下の勅命で禁止されてしまったんですよ。ナンハイは交易の町ですから、それだけで大打撃です。グリーンクラウドからの交易も魔物のせいで滞り気味ですし、本当に……」
女将さんはそう言って暗い顔をした。
「どうしてゴールデンサン巫国への渡航が禁止になったか、ご存じですか?」
「それがさっぱりなんですよ。ゴールデンサン巫国が吸血鬼に乗っ取られたせいで陛下が吸血鬼退治に乗り出すとか、色々と噂はありますけど……」
「そうですか。どうにかゴールデンサン巫国に渡る方法はありませんか? 仲間の故郷なんです」
「そうでしたか。ですが私のような一市民ではとても……」
女将さんはそう言って申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「分かりました。ありがとうございます」
やはりそう簡単にはいかなさそうだ。
「お役に立てず申し訳ございません」
「いえ、無茶なことを言ってこちらこそすみませんでした」
「それではどうぞごゆっくり」
女将さんはそう言って部屋から出ていった。
「ふぅ。やっぱり難しそうですね」
「聞き込み調査をしてみる必要がありそうですね」
「はい」
「じゃ、じゃああたしもっ」
「……そうですね。二手に別れて聞き込み調査をしてみましょう」
こうして私たちはゴールデンサン巫国へと渡る方法を探すこととなったのだった。
「う……それは……」
将軍が負けたという噂を聞いて飛んできたイーフゥアさんが事情を知るや否や、将軍のことを叱り始めた。
まさかな光景ではあるが、完全に主導権はイーフゥアさんにあるらしい。
「しかも聖女様からこんな請求をされるなんて! クリスティーナさんのこともかなり痛めつけたそうじゃないですか!」
「ぐっ……次は勝つ……」
将軍は悔しそうにしているものの、負けたということについては素直に認めており、言い訳はしていない。ただ、次やったらクリスさんたちは殺されてしまうような気もする。
あ、ちなみにあのあとシズクさんとも試合をしたのだが、なんとあっさりとシズクさんが勝ってしまった。
シズクさんもあれからかなりレベルアップしており、スピードの面で勝負にならなかったのだ。
かく言う私も今回は将軍の動きをしっかりと目で追うことができた。前回はほとんど何をしているのか分からなかったのだから、これもきっとレベルアップしたおかげなのだろう。
「そういう問題じゃありません! 大体、大事な吸血鬼退治の前に怪我をするなんて!」
「ぐっ」
イーフゥアさんはかなり怒っているようで、くどくどと説教をしている。
ええと、他人の説教を観察する趣味もないし、私たちはとりあえず撤収しようかな。
こうして私たちは修練場を後にしたのだった。
◆◇◆
それからもう一日宮殿でお世話になった私たちはイェンアンを出発し、ナンハイへと向かう乗合馬車に乗り込んだ。ナンハイまでは馬車と舟を乗り継いでおよそ二週間の旅となる。
元々はイェンアンも観光しながらゆっくり精霊の島を目指そうと思っていたのだが、戦争の準備がされていると知ってしまった以上は呑気に観光などしていられない。
アーデがゴールデンサン巫国の人たちを残らず眷属にしてしまったというのならば話は別だが、きっとそんなことはないはずだ。
それに戦争となれば犠牲になるのは弱い人たちなのだ。普通に暮らしていた人々が住むところを焼かれ、殺される。
そんなことがあっていいはずがない。
私たちが戦争を止めることができないにしても、どうにか一般人の避難くらいはさせてあげたいと思うのだ。
だからこうしてゴールデンサン巫国への玄関口であるナンハイを目指しているわけだが、ナンハイからの定期船が止められているというのが一番のネックだ。
だがイェンアンにいるよりは情報が手に入るだろうし、最悪自分たちで小型の船を調達するということも視野に入れている。
結界さえきちんと張っておけば嵐も魔物も問題ないし、マシロちゃんがいるので風もある程度はなんとかなる。
そんなことを考えながら、私たちは馬車に揺られるのだった。
◆◇◆
そんなこんなで私たちはナンハイの町に到着した。久しぶりのナンハイだが、以前よりも活気がない気がする。
やはり船が止まっているからだろうか?
この町の観光もしたかったのだが、今はそれどころではないのが残念だ。
私たちはとりあえず前回イーフゥアさんに案内してもらった宿に向かう。
「っ! 聖女様? また当宿にお選びいただけるとは! ありがとうございます! さあ、どうぞこちらへ」
どうやら女将さんは私たちのことを覚えていたようで、すぐに前回宿泊した部屋に案内してくれた。
「同じ部屋ですよね? こんなにいいお部屋がよく空いていましたね」
「そうなんですよ! 普段でしたら商人の方のご予約で埋まってしまうのですが、このところは……」
「何かあったんですか?」
「それがですね。ゴールデンサン巫国への渡航が陛下の勅命で禁止されてしまったんですよ。ナンハイは交易の町ですから、それだけで大打撃です。グリーンクラウドからの交易も魔物のせいで滞り気味ですし、本当に……」
女将さんはそう言って暗い顔をした。
「どうしてゴールデンサン巫国への渡航が禁止になったか、ご存じですか?」
「それがさっぱりなんですよ。ゴールデンサン巫国が吸血鬼に乗っ取られたせいで陛下が吸血鬼退治に乗り出すとか、色々と噂はありますけど……」
「そうですか。どうにかゴールデンサン巫国に渡る方法はありませんか? 仲間の故郷なんです」
「そうでしたか。ですが私のような一市民ではとても……」
女将さんはそう言って申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「分かりました。ありがとうございます」
やはりそう簡単にはいかなさそうだ。
「お役に立てず申し訳ございません」
「いえ、無茶なことを言ってこちらこそすみませんでした」
「それではどうぞごゆっくり」
女将さんはそう言って部屋から出ていった。
「ふぅ。やっぱり難しそうですね」
「聞き込み調査をしてみる必要がありそうですね」
「はい」
「じゃ、じゃああたしもっ」
「……そうですね。二手に別れて聞き込み調査をしてみましょう」
こうして私たちはゴールデンサン巫国へと渡る方法を探すこととなったのだった。
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