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第三章
第三章第21話 相談してみました
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どうもこんにちは。ローザです。早いもので、新学期が始まってからもう一週間がたちました。
最初は苦戦していた光属性魔法なんですが、なんとツェツィーリエ先生の張っていた結界ができるようになったんです! ツェツィーリエ先生が何回も何回も結界を触らせてくれて、そうしているうちにだんだんイメージがつかめるようになってきてですね。あるときふとしたことに気付いたらすぐにできるようになりました。
やっぱり、魔法を発動するにはどれだけ正確にイメージできるのかっていうことが大切みたいです。
ただ、治癒はまだまだ上手くできないんですよね。といっても全く発動しなかったときよりは少し進歩していて、小さな傷であれば表面上は塞がるようになってきたんです。
あ、表面上っていうのはですね。なんだか皮だけが治ったみたいな状態になって、なんだか血豆になっちゃうんです。
もちろん血豆が割れれば元通りなので、これじゃあ全然ダメですよね。
これはきっと、傷が治った状態というのをあたしが上手くイメージできていないのが問題なんだと思います。
それにしても、傷が治るってどういうことなんでしょう?
ツェツィーリエ先生もリリアちゃんも詠唱をしているので、あたしみたいにイメージしているわけではありません。
だから質問してもあまりピンとこないんですよね。
よーし、それじゃあここはひとつ、色んな人に話を聞いてみましょう。そうしましょう。
◆◇◆
そんなわけで、まずはヴィーシャさんに聞いてみようと思います。
「あの、ヴィーシャさん」
「ん? なんだい?」
「えっとですね。治癒の魔法が上手くできなくて悩んでいるんですけど……」
「治癒?」
「はい。そうなんです。傷が治るって、どういうことなんでしょうか? イメージが上手くできなくて、魔法が発動してくれないんです」
「傷が……治る?」
あたしの質問にヴィーシャさんは難しい顔をして悩み始めてしまいました。そうしてしばらく考え込んだ末、口を開きます。
「そうだねぇ。血が出なくなって、痛みがなくなれば治ったんじゃないかな?」
ああ、やっぱりそうですよね。あたしもそう思うんですけど、それだけじゃダメなんですよね。
「……そう、ですよね。ありがとうございました」
「ああ、ごめんね。そんなこと、考えたこともなかったから」
「いえ。ありがとうございます」
あたしはお礼を言うと他の人に話を聞きに行きます。次はレジーナさんです。
「あの、レジーナさん」
「あら、ローザ。どうしたんですの? あの件の答えが出まして?」
「いえ。そうでなはくて、ちょっと相談が……」
「相談? わたくしに?」
「はい。実は治癒魔法が上手くできなくて悩んでいるんです」
「治癒ならツェツィーリエ先生やリリアのほうが適任でなくて? わたくし、治癒魔術は使えませんわよ?」
「そういうことじゃなくて、傷が治るってことがどういうことだと思いますか? イメージが上手くできなくて、魔法が発動しないんです」
「傷が……治る? そう、ですわね。傷口が塞がって、痛みがなくなる。あとは腫れが引いたり折れた骨が元通りになること、かしら?」
「それって、どうイメージすればいいんでしょうか?」
「イメージ? ……それは難しい質問ですわね」
レジーナさんはそう言って悩み始めてしまいました。しかしすぐに予想外のことを提案してきました。
「それでしたら、エルネスト様に話してみてはいかがかしら?」
「え?」
一瞬ドレスク先輩の目だけ笑っていない笑顔が思い浮かびましたが、湖畔でお話したおかげか前のような嫌悪感はありません。ちょっと怖いですけど……。
「エルネスト様は魔術に関することならとにかく研究熱心ですわ。自分が使えなくても術式は熟知しているでしょうし、魔物退治の経験も豊富ですわ。その現場で様々な怪我人を見てきた経験は役に立つかもしれませんわよ?」
そうでしょうか? うーん、そうかもしれません。
「じゃあ、今度ドレスク先輩に相談してみます」
「ええ。そうなさい。今日の放課後、わたくしと一緒に生徒会室へ行きましょう」
「はい。よろしくお願いします」
こうしてあたしはドレスク先輩に相談することとなったのでした。
◆◇◆
「ごきげんよう」
「ああ、レジーナか。ん? ローザ?」
「ひっ!?」
生徒会室に入るなり王太子様の視線があたしの胸に固定され、背筋を悪寒が駆け抜けます。
「で、ん、か?」
レジーナさんがあたしと王太子様の間に立ってその視線をブロックしてくれます。
「あ、いや、その、これは……」
レジーナさんがずいずいと王太子様に近づいていきます。そして……。
「いてっ! レジーナ! おい!」
「踏んでいるんですわ! 一体いつになったら嫌がる女の子にその不躾な視線を送るのを止めるんですの!?」
「わ、悪かった! 悪かったから!」
「殿下はいつもそうですわ! 大体――」
あたしのことはそっちのけで、レジーナさんと王太子様の痴話げんかが始まってしまいました。
「ローザ嬢。お久しぶりですね。お元気そうで何よりです」
レジーナさんたちをよそに公子様がやってくると跪き、あたしの手を取るとそこにキスをしてくれました。
「あ、こ、公子様。えっと、お久しぶりです」
「はい」
そう言って公子様はキラキラの笑顔を向けてきました。
うっ。眩しいです。
「さあ、どうぞこちらへ」
「は、はい」
あたしは公子様に手を引かれてソファーに腰かけました。
「ローザ嬢が生徒会に来るなんて、珍しいですね」
そう言って公子様は王太子様にちらりと視線を送りました。王太子様はまだレジーナさんに足を踏まれています。
「えっと、そうなんですけど……」
「今日はどうされたんですか?」
「はい。その、ドレスク先輩に相談があって……」
「相談? それは魔術に関することですか?」
「あ、はい。そうなんです」
すごいです。どうして分かったんでしょうか?
「なるほど。彼ほど研究熱心な男も珍しいですからね。この生徒会でも魔術に関する知識はエルネストが一番でしょう」
「そうなんですね」
「はい。ところで、どんな相談なのですか? 私もそれなりには知識がありますからね。お役に立てるかは分かりませんが、お話くらいならお聞きしますよ?」
「え? いいんですか?」
あたしが話を相談しようとしたちょうどそのとき、生徒会室の扉がノックされ、扉が開かれたのでした。
===============
皆様、あけましておめでとうございます。
本作の更新スケジュールは今年も変わらず毎週土曜日 20:00 を予定しており、次回更新は 2022/1/8 (土) 20:00 となります。
それでは本年も何卒よろしくお願いいたします。
最初は苦戦していた光属性魔法なんですが、なんとツェツィーリエ先生の張っていた結界ができるようになったんです! ツェツィーリエ先生が何回も何回も結界を触らせてくれて、そうしているうちにだんだんイメージがつかめるようになってきてですね。あるときふとしたことに気付いたらすぐにできるようになりました。
やっぱり、魔法を発動するにはどれだけ正確にイメージできるのかっていうことが大切みたいです。
ただ、治癒はまだまだ上手くできないんですよね。といっても全く発動しなかったときよりは少し進歩していて、小さな傷であれば表面上は塞がるようになってきたんです。
あ、表面上っていうのはですね。なんだか皮だけが治ったみたいな状態になって、なんだか血豆になっちゃうんです。
もちろん血豆が割れれば元通りなので、これじゃあ全然ダメですよね。
これはきっと、傷が治った状態というのをあたしが上手くイメージできていないのが問題なんだと思います。
それにしても、傷が治るってどういうことなんでしょう?
ツェツィーリエ先生もリリアちゃんも詠唱をしているので、あたしみたいにイメージしているわけではありません。
だから質問してもあまりピンとこないんですよね。
よーし、それじゃあここはひとつ、色んな人に話を聞いてみましょう。そうしましょう。
◆◇◆
そんなわけで、まずはヴィーシャさんに聞いてみようと思います。
「あの、ヴィーシャさん」
「ん? なんだい?」
「えっとですね。治癒の魔法が上手くできなくて悩んでいるんですけど……」
「治癒?」
「はい。そうなんです。傷が治るって、どういうことなんでしょうか? イメージが上手くできなくて、魔法が発動してくれないんです」
「傷が……治る?」
あたしの質問にヴィーシャさんは難しい顔をして悩み始めてしまいました。そうしてしばらく考え込んだ末、口を開きます。
「そうだねぇ。血が出なくなって、痛みがなくなれば治ったんじゃないかな?」
ああ、やっぱりそうですよね。あたしもそう思うんですけど、それだけじゃダメなんですよね。
「……そう、ですよね。ありがとうございました」
「ああ、ごめんね。そんなこと、考えたこともなかったから」
「いえ。ありがとうございます」
あたしはお礼を言うと他の人に話を聞きに行きます。次はレジーナさんです。
「あの、レジーナさん」
「あら、ローザ。どうしたんですの? あの件の答えが出まして?」
「いえ。そうでなはくて、ちょっと相談が……」
「相談? わたくしに?」
「はい。実は治癒魔法が上手くできなくて悩んでいるんです」
「治癒ならツェツィーリエ先生やリリアのほうが適任でなくて? わたくし、治癒魔術は使えませんわよ?」
「そういうことじゃなくて、傷が治るってことがどういうことだと思いますか? イメージが上手くできなくて、魔法が発動しないんです」
「傷が……治る? そう、ですわね。傷口が塞がって、痛みがなくなる。あとは腫れが引いたり折れた骨が元通りになること、かしら?」
「それって、どうイメージすればいいんでしょうか?」
「イメージ? ……それは難しい質問ですわね」
レジーナさんはそう言って悩み始めてしまいました。しかしすぐに予想外のことを提案してきました。
「それでしたら、エルネスト様に話してみてはいかがかしら?」
「え?」
一瞬ドレスク先輩の目だけ笑っていない笑顔が思い浮かびましたが、湖畔でお話したおかげか前のような嫌悪感はありません。ちょっと怖いですけど……。
「エルネスト様は魔術に関することならとにかく研究熱心ですわ。自分が使えなくても術式は熟知しているでしょうし、魔物退治の経験も豊富ですわ。その現場で様々な怪我人を見てきた経験は役に立つかもしれませんわよ?」
そうでしょうか? うーん、そうかもしれません。
「じゃあ、今度ドレスク先輩に相談してみます」
「ええ。そうなさい。今日の放課後、わたくしと一緒に生徒会室へ行きましょう」
「はい。よろしくお願いします」
こうしてあたしはドレスク先輩に相談することとなったのでした。
◆◇◆
「ごきげんよう」
「ああ、レジーナか。ん? ローザ?」
「ひっ!?」
生徒会室に入るなり王太子様の視線があたしの胸に固定され、背筋を悪寒が駆け抜けます。
「で、ん、か?」
レジーナさんがあたしと王太子様の間に立ってその視線をブロックしてくれます。
「あ、いや、その、これは……」
レジーナさんがずいずいと王太子様に近づいていきます。そして……。
「いてっ! レジーナ! おい!」
「踏んでいるんですわ! 一体いつになったら嫌がる女の子にその不躾な視線を送るのを止めるんですの!?」
「わ、悪かった! 悪かったから!」
「殿下はいつもそうですわ! 大体――」
あたしのことはそっちのけで、レジーナさんと王太子様の痴話げんかが始まってしまいました。
「ローザ嬢。お久しぶりですね。お元気そうで何よりです」
レジーナさんたちをよそに公子様がやってくると跪き、あたしの手を取るとそこにキスをしてくれました。
「あ、こ、公子様。えっと、お久しぶりです」
「はい」
そう言って公子様はキラキラの笑顔を向けてきました。
うっ。眩しいです。
「さあ、どうぞこちらへ」
「は、はい」
あたしは公子様に手を引かれてソファーに腰かけました。
「ローザ嬢が生徒会に来るなんて、珍しいですね」
そう言って公子様は王太子様にちらりと視線を送りました。王太子様はまだレジーナさんに足を踏まれています。
「えっと、そうなんですけど……」
「今日はどうされたんですか?」
「はい。その、ドレスク先輩に相談があって……」
「相談? それは魔術に関することですか?」
「あ、はい。そうなんです」
すごいです。どうして分かったんでしょうか?
「なるほど。彼ほど研究熱心な男も珍しいですからね。この生徒会でも魔術に関する知識はエルネストが一番でしょう」
「そうなんですね」
「はい。ところで、どんな相談なのですか? 私もそれなりには知識がありますからね。お役に立てるかは分かりませんが、お話くらいならお聞きしますよ?」
「え? いいんですか?」
あたしが話を相談しようとしたちょうどそのとき、生徒会室の扉がノックされ、扉が開かれたのでした。
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皆様、あけましておめでとうございます。
本作の更新スケジュールは今年も変わらず毎週土曜日 20:00 を予定しており、次回更新は 2022/1/8 (土) 20:00 となります。
それでは本年も何卒よろしくお願いいたします。
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