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第四章
第四章第15話 冬の遊びって楽しいです
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釣り糸を垂らしてみると、なんとすぐに釣竿が引っ張られました。
「え? え? え?」
「ローザ、やりますわね」
「え? えっと……」
「どうしたんですの? 早く上げないとダメですわよ?」
「あの、どうすれば……」
「ローザお嬢様、そちらのリールを回してください」
「え? これですか?」
「左様でございます。こんな風に」
「あ、はい」
釣竿を渡してくれた騎士さんの身振りを真似しながらリールを回してみます。すると糸が巻き取られ、すぐに一匹の小さな魚が氷の下から姿を現しました。
「おめでとうございます。さあ、針を外しますのでそのままでお待ちください」
「はい」
すると騎士さんは慣れた手つきで魚を針から外し、近くに置いてあった小さな壺に放り込みました。
「さあ、餌をお付けいたします」
騎士さんはまたまた慣れた手つきで針に餌をつけ、あたしに返してくれました。
「またこの穴に垂らせばいいんですか?」
「そのとおりです」
あたしはもう一度釣り糸を氷の下に垂らします。
するとまたすぐに魚が針に掛かったみたいで、すぐに糸が引っ張られます。
「おお! ローザお嬢様、お上手ですな」
引き揚げてみると、なんと今度は三匹も掛かっています。
あれれ? なんだかすごく簡単に釣れるんですね。
なんだか楽しいです。ここでやった中で一番楽しい遊びかもしれません。
そういえば森で小川に住んでいる魚を捕まえて食べていましたけど、もしかして魚って捕まえるのが簡単なんでしょうか?
「あっ! きたっ!」
リリアちゃんも釣れたみたいです。リリアちゃんも楽しそうにリールをくるくると回しています。
「さあ、ローザお嬢様、餌をお付けしましたよ」
「ありがとうございます」
よーし、頑張ってたくさん釣って、今日の晩御飯にしましょう。
◆◇◆
あれからしばらくすると、ぱったりと魚が釣れなくなってしまいました。
ただ不思議なのは、並んで釣っているのにあたしだけものすごくたくさん釣れたことです。
リリアちゃんは三回釣れましたけど、レジーナさんはなんとたったの一回です。あまりたくさん釣れなかったのでレジーナさんはちょっと楽しくなかったのかもしれません。いつもよりちょっと表情が沈んでいる気がします。
「お嬢様、そろそろ……」
「ええ、そうですわね。戻りますわよ」
「はい……あれ? ピーちゃん?」
あたしはそこで初めてピーちゃんがいないことに気が付きました。
「ユキ! ピーちゃんが!」
「ミャ?」
あたしの膝の上で丸まっていたユキが尻尾をぺしぺしと動かしながら返事をします。
「ピーちゃんがいなくなっちゃいました」
「ミャ」
まるで気にするな、とでも言いたげに尻尾でぺしぺしとしてきます。
「えっと……」
すると先ほどまであたしが釣り糸を垂らしていた穴から突然水が溢れてきました。
「ひえっ!?」
驚いたあたしは立ち上がろうとして膝にユキがいることを思い出し、そのまま椅子ごと後ろに倒れてしまいました。
「ミャッ?」
「ピッ?」
ユキとピーちゃんが心配そうに声を掛けてくれます。
え? ピーちゃん!?
「ピーちゃん!」
「ピッ!」
慌てて起き上がると、ピーちゃんがいつもどおりの様子で体をふるふると震わせています。
「ピーちゃん、今までどこにいたんですか?」
「ピ? ピピッ!」
え? あたしが釣竿を垂らしていた穴の中?
「どうしてそんなところにいたんですか? 寒くて風邪ひいちゃいますよ!」
「ピピッ」
大丈夫、とでも言いたげですけど……。
「ピーちゃん、いくら冷たい水が好きでも、勝手にいなくなっちゃダメですよ」
「ピ? ピピッ」
あれれ? なんだかちょっと不満げな感じです。
「ピーちゃん、いなくなって心配したんですからね」
「ピピ」
あ、分かってくれたみたいです。
「今度からは勝手に氷の下に入らないでくださいね」
「ピ」
えへへ、ちゃんと分かってくれました。ピーちゃんはやっぱり賢いですよね。
「見つかって良かったね、ローザちゃん」
「はい、リリアちゃん」
こうしてあたしたちは犬ぞりに乗り、湖畔のコテージへと戻るのでした。
◆◇◆
コテージに戻ったあたしたちはコックさんたちが釣った魚を料理してくれている間、コテージの前で雪遊びをすることにしました。
「ほらほら、ローザちゃん。見て。できたよ」
リリアちゃんが雪の玉を三つ重ねて、スノーマンを作っています。
「あ、本当だ。なんだか可愛いですね」
「あら、上手ですわね」
レジーナさんは自分ではやらず、あたしたちのスノーマン作りを紅茶を飲みながら見ています。
あたしのは……なんだか形がいびつであまり可愛くないです。どうしたらあんなに綺麗につくれるんでしょうか?
「ローザちゃんのは……うん。個性的で可愛いよ」
「あ、はい……」
なんだか、すごく慰められている気がします。すると後ろからユキの声がしたので振り返りました。
「ミャッ!」
「ユキ? どうしま……え?」
するとなんと、ユキの前で地面に積もった雪が突然盛り上がり始めました。
それは徐々に形を変えていき……え? あたし?
なんとあたしそっくりの雪像が出来上がったではありませんか!
「えええっ!? ユキ!? どうやったんですか?」
「ミャッ!」
なんだか自信満々で、どうだと言わんばかりの表情をしています。
「す、すごいです! もしかしてユキ、雪像づくりの天才なんじゃないですか!?」
「ミャ?」
「ローザちゃん……」
「それは……」
あ、あれれ? なんだかみんなから呆れられているような?
「え? え? え?」
「ローザ、やりますわね」
「え? えっと……」
「どうしたんですの? 早く上げないとダメですわよ?」
「あの、どうすれば……」
「ローザお嬢様、そちらのリールを回してください」
「え? これですか?」
「左様でございます。こんな風に」
「あ、はい」
釣竿を渡してくれた騎士さんの身振りを真似しながらリールを回してみます。すると糸が巻き取られ、すぐに一匹の小さな魚が氷の下から姿を現しました。
「おめでとうございます。さあ、針を外しますのでそのままでお待ちください」
「はい」
すると騎士さんは慣れた手つきで魚を針から外し、近くに置いてあった小さな壺に放り込みました。
「さあ、餌をお付けいたします」
騎士さんはまたまた慣れた手つきで針に餌をつけ、あたしに返してくれました。
「またこの穴に垂らせばいいんですか?」
「そのとおりです」
あたしはもう一度釣り糸を氷の下に垂らします。
するとまたすぐに魚が針に掛かったみたいで、すぐに糸が引っ張られます。
「おお! ローザお嬢様、お上手ですな」
引き揚げてみると、なんと今度は三匹も掛かっています。
あれれ? なんだかすごく簡単に釣れるんですね。
なんだか楽しいです。ここでやった中で一番楽しい遊びかもしれません。
そういえば森で小川に住んでいる魚を捕まえて食べていましたけど、もしかして魚って捕まえるのが簡単なんでしょうか?
「あっ! きたっ!」
リリアちゃんも釣れたみたいです。リリアちゃんも楽しそうにリールをくるくると回しています。
「さあ、ローザお嬢様、餌をお付けしましたよ」
「ありがとうございます」
よーし、頑張ってたくさん釣って、今日の晩御飯にしましょう。
◆◇◆
あれからしばらくすると、ぱったりと魚が釣れなくなってしまいました。
ただ不思議なのは、並んで釣っているのにあたしだけものすごくたくさん釣れたことです。
リリアちゃんは三回釣れましたけど、レジーナさんはなんとたったの一回です。あまりたくさん釣れなかったのでレジーナさんはちょっと楽しくなかったのかもしれません。いつもよりちょっと表情が沈んでいる気がします。
「お嬢様、そろそろ……」
「ええ、そうですわね。戻りますわよ」
「はい……あれ? ピーちゃん?」
あたしはそこで初めてピーちゃんがいないことに気が付きました。
「ユキ! ピーちゃんが!」
「ミャ?」
あたしの膝の上で丸まっていたユキが尻尾をぺしぺしと動かしながら返事をします。
「ピーちゃんがいなくなっちゃいました」
「ミャ」
まるで気にするな、とでも言いたげに尻尾でぺしぺしとしてきます。
「えっと……」
すると先ほどまであたしが釣り糸を垂らしていた穴から突然水が溢れてきました。
「ひえっ!?」
驚いたあたしは立ち上がろうとして膝にユキがいることを思い出し、そのまま椅子ごと後ろに倒れてしまいました。
「ミャッ?」
「ピッ?」
ユキとピーちゃんが心配そうに声を掛けてくれます。
え? ピーちゃん!?
「ピーちゃん!」
「ピッ!」
慌てて起き上がると、ピーちゃんがいつもどおりの様子で体をふるふると震わせています。
「ピーちゃん、今までどこにいたんですか?」
「ピ? ピピッ!」
え? あたしが釣竿を垂らしていた穴の中?
「どうしてそんなところにいたんですか? 寒くて風邪ひいちゃいますよ!」
「ピピッ」
大丈夫、とでも言いたげですけど……。
「ピーちゃん、いくら冷たい水が好きでも、勝手にいなくなっちゃダメですよ」
「ピ? ピピッ」
あれれ? なんだかちょっと不満げな感じです。
「ピーちゃん、いなくなって心配したんですからね」
「ピピ」
あ、分かってくれたみたいです。
「今度からは勝手に氷の下に入らないでくださいね」
「ピ」
えへへ、ちゃんと分かってくれました。ピーちゃんはやっぱり賢いですよね。
「見つかって良かったね、ローザちゃん」
「はい、リリアちゃん」
こうしてあたしたちは犬ぞりに乗り、湖畔のコテージへと戻るのでした。
◆◇◆
コテージに戻ったあたしたちはコックさんたちが釣った魚を料理してくれている間、コテージの前で雪遊びをすることにしました。
「ほらほら、ローザちゃん。見て。できたよ」
リリアちゃんが雪の玉を三つ重ねて、スノーマンを作っています。
「あ、本当だ。なんだか可愛いですね」
「あら、上手ですわね」
レジーナさんは自分ではやらず、あたしたちのスノーマン作りを紅茶を飲みながら見ています。
あたしのは……なんだか形がいびつであまり可愛くないです。どうしたらあんなに綺麗につくれるんでしょうか?
「ローザちゃんのは……うん。個性的で可愛いよ」
「あ、はい……」
なんだか、すごく慰められている気がします。すると後ろからユキの声がしたので振り返りました。
「ミャッ!」
「ユキ? どうしま……え?」
するとなんと、ユキの前で地面に積もった雪が突然盛り上がり始めました。
それは徐々に形を変えていき……え? あたし?
なんとあたしそっくりの雪像が出来上がったではありませんか!
「えええっ!? ユキ!? どうやったんですか?」
「ミャッ!」
なんだか自信満々で、どうだと言わんばかりの表情をしています。
「す、すごいです! もしかしてユキ、雪像づくりの天才なんじゃないですか!?」
「ミャ?」
「ローザちゃん……」
「それは……」
あ、あれれ? なんだかみんなから呆れられているような?
応援ありがとうございます!
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