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第四章
第四章第29話 王様に会いました
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「マレスティカ卿、よくぞ参った。一同、楽にして良いぞ」
王様に言われ、ようやくカーテシーをやめることができました。きつい姿勢をしなくてよくなったので、やっと王様の顔をちゃんと見ることができます。
……えっと、なんだか王太子様に似てますね。王太子様がおじさんになるとあんな感じになりそうです。
「そちらが新しい娘か?」
「はい。この者は新たに我が家の養女に迎えようと考えておりますローザと申す者でございます。さあローザ、国王陛下にご挨拶なさい」
「はい。マレスティカ公爵家の養女ローザが偉大なる国王陛下にご挨拶申し上げます」
あたしは一歩前に出て、習ったとおりの台詞を言うと再びカーテシーをします。
「ふむ」
そんなあたしを王様は無表情のままジロジロ見てきました。
う……なんだか背筋に悪寒が走ります。
しかも王太子様みたいに胸を凝視しているわけじゃなくて、無遠慮にあたしの全身を舐めまわすように見てくるんです。なんだかまるで値踏みでもされているみたいで、本当に居心地が悪いです。
でも王様ですからおかしなことはできません。
それからしばらく無言であたしを見ていた王様ですが、はやがて口を開きます。
「お前は魔法で病気を治したそうだそうだな?」
「は、はい……」
「しかも瀉血の問題も指摘し、マレスティカ小公爵夫人の産褥死を防いだそうだな」
「はい」
「ふむ」
ど、どうしてこんなところでそんな話を? それよりこの姿勢、ずっとしているのはものすごく辛いんですけど……。
それから王様はしばらく無言であたしの顔をじっと見てきました。
えっと、こういうときは微笑まないといけないんでしたよね。
あたしは頑張って笑顔を作ってみました。すると王様はまるで呆れたような目であたしを見てきます。
え? えっと……。
「ローザよ、楽にするがよい。マレスティカ卿、この者がマレスティカ公爵家の養女となることを認める」
「はっ」
「ありがとう存じます」
あたしたちがお礼を言うと、王様は鷹揚に頷いたのでした。
◆◇◆
お披露目パーティーが始まるのですが、あたしはレジーナさんと一緒にホールの二階の見えない場所で待機しています。
「皆さん、本日は私たちの新しい娘のお披露目パーティーにようこそお越しくださいました」
ホールのほうからお義父さまの声が聞こえてきます。
「娘の名はローザ・マレスティカ。まだ十三歳ではありますが、今回お披露目パーティーをすることなったのは、彼女が光属性に適性を持ち、特待生として魔法学園に通っている優秀な学生であるからです」
するとホールのほうが少しどよめいたみたいです。
えっと、なんで皆さんが驚いているんでしょう? 光属性の話って貴族の人たちはみんな知ってるんですよね?
あ! もしかして、あたしの算数の成績がひどくて、優秀じゃないってバレてるんでしょうか?
「さらに我が領地では、医療に対する改革を起こしてくれました。我が娘ローザは魔術ではなく、魔法で治療を行うことができ、皆さんが一般的に受けている瀉血が実はなんの意味もない危険な行為であることを証明してくれたのです」
「えっ!?」
「なんだと!?」
するとホールがものすごいざわめきに包まれました。それからしばらくざわめきが収まるのを待ち、お義父さまが再び話し始めます。
「その件についての論文は明日、マルダキア医学会誌にて公表されます。その中で言及されている魔法による治療というのが我が娘、ローザによるものです」
「ほほう」
「それは……」
「その際の魔法による治療を行った者が誰かということで混乱が生じる懸念がありました。そこで陛下の後押しをいただき、ローザのお披露目を早めることとなったのです」
「なるほど」
「そういうことか」
えっと、そんな風にハードルを上げなくても……。
あたしが困惑していると、レジーナさんが安心させるように優しく声を掛けてくれます。
「ローザ、お父さまは貴女が軽く見られないようにしているのですわ。ああ言っておけば貴族たちは勝手に牽制し合って、結果としてローザは手を出されにくくなりますわ」
「は、はい」
それでもやっぱりちょっと怖いです。
「ほら、堂々となさい。ローザはもうわたくしたちマレスティカ公爵家の一員ですのよ?」
「はい」
ホールのほうからお義父さまの声が聞こえてきます。
「それで皆さん、我が娘ローザの入場です」
「さあ、行きますわよ」
あたしはレジーナさんに連れられて、階段の前まで歩み出ます。すると招待客の人たちの視線が一斉にあたしに集まりました。
う……招待客の人たちも値踏みをするような目で見てきます。
「ほら、胸を張りなさい」
「は、はい」
注目の中、あたしは階段を降りてお義父さまの隣までやってきました。
「皆さん、彼女がローザです。ぜひ、仲良くしてやって下さい」
「ご紹介に与りましたローザ・マレスティカでございます。どうぞお見知りおきくださいませ」
あたしはなんとか用意していた台詞を言うと、頑張って笑顔を作ります。
「ほほぅ」
「これはこれは」
招待客の人たちは何かをひそひそと囁き合っていますが、どこからか拍手が聞こえてきました。
するとそれにつられたかのように他の人たちも拍手をし、やがてホールに割れんばかりの拍手が鳴り響いたのでした。
================
次回更新は通常どおり、2023/06/17 (土) 20:00 を予定しております。
王様に言われ、ようやくカーテシーをやめることができました。きつい姿勢をしなくてよくなったので、やっと王様の顔をちゃんと見ることができます。
……えっと、なんだか王太子様に似てますね。王太子様がおじさんになるとあんな感じになりそうです。
「そちらが新しい娘か?」
「はい。この者は新たに我が家の養女に迎えようと考えておりますローザと申す者でございます。さあローザ、国王陛下にご挨拶なさい」
「はい。マレスティカ公爵家の養女ローザが偉大なる国王陛下にご挨拶申し上げます」
あたしは一歩前に出て、習ったとおりの台詞を言うと再びカーテシーをします。
「ふむ」
そんなあたしを王様は無表情のままジロジロ見てきました。
う……なんだか背筋に悪寒が走ります。
しかも王太子様みたいに胸を凝視しているわけじゃなくて、無遠慮にあたしの全身を舐めまわすように見てくるんです。なんだかまるで値踏みでもされているみたいで、本当に居心地が悪いです。
でも王様ですからおかしなことはできません。
それからしばらく無言であたしを見ていた王様ですが、はやがて口を開きます。
「お前は魔法で病気を治したそうだそうだな?」
「は、はい……」
「しかも瀉血の問題も指摘し、マレスティカ小公爵夫人の産褥死を防いだそうだな」
「はい」
「ふむ」
ど、どうしてこんなところでそんな話を? それよりこの姿勢、ずっとしているのはものすごく辛いんですけど……。
それから王様はしばらく無言であたしの顔をじっと見てきました。
えっと、こういうときは微笑まないといけないんでしたよね。
あたしは頑張って笑顔を作ってみました。すると王様はまるで呆れたような目であたしを見てきます。
え? えっと……。
「ローザよ、楽にするがよい。マレスティカ卿、この者がマレスティカ公爵家の養女となることを認める」
「はっ」
「ありがとう存じます」
あたしたちがお礼を言うと、王様は鷹揚に頷いたのでした。
◆◇◆
お披露目パーティーが始まるのですが、あたしはレジーナさんと一緒にホールの二階の見えない場所で待機しています。
「皆さん、本日は私たちの新しい娘のお披露目パーティーにようこそお越しくださいました」
ホールのほうからお義父さまの声が聞こえてきます。
「娘の名はローザ・マレスティカ。まだ十三歳ではありますが、今回お披露目パーティーをすることなったのは、彼女が光属性に適性を持ち、特待生として魔法学園に通っている優秀な学生であるからです」
するとホールのほうが少しどよめいたみたいです。
えっと、なんで皆さんが驚いているんでしょう? 光属性の話って貴族の人たちはみんな知ってるんですよね?
あ! もしかして、あたしの算数の成績がひどくて、優秀じゃないってバレてるんでしょうか?
「さらに我が領地では、医療に対する改革を起こしてくれました。我が娘ローザは魔術ではなく、魔法で治療を行うことができ、皆さんが一般的に受けている瀉血が実はなんの意味もない危険な行為であることを証明してくれたのです」
「えっ!?」
「なんだと!?」
するとホールがものすごいざわめきに包まれました。それからしばらくざわめきが収まるのを待ち、お義父さまが再び話し始めます。
「その件についての論文は明日、マルダキア医学会誌にて公表されます。その中で言及されている魔法による治療というのが我が娘、ローザによるものです」
「ほほう」
「それは……」
「その際の魔法による治療を行った者が誰かということで混乱が生じる懸念がありました。そこで陛下の後押しをいただき、ローザのお披露目を早めることとなったのです」
「なるほど」
「そういうことか」
えっと、そんな風にハードルを上げなくても……。
あたしが困惑していると、レジーナさんが安心させるように優しく声を掛けてくれます。
「ローザ、お父さまは貴女が軽く見られないようにしているのですわ。ああ言っておけば貴族たちは勝手に牽制し合って、結果としてローザは手を出されにくくなりますわ」
「は、はい」
それでもやっぱりちょっと怖いです。
「ほら、堂々となさい。ローザはもうわたくしたちマレスティカ公爵家の一員ですのよ?」
「はい」
ホールのほうからお義父さまの声が聞こえてきます。
「それで皆さん、我が娘ローザの入場です」
「さあ、行きますわよ」
あたしはレジーナさんに連れられて、階段の前まで歩み出ます。すると招待客の人たちの視線が一斉にあたしに集まりました。
う……招待客の人たちも値踏みをするような目で見てきます。
「ほら、胸を張りなさい」
「は、はい」
注目の中、あたしは階段を降りてお義父さまの隣までやってきました。
「皆さん、彼女がローザです。ぜひ、仲良くしてやって下さい」
「ご紹介に与りましたローザ・マレスティカでございます。どうぞお見知りおきくださいませ」
あたしはなんとか用意していた台詞を言うと、頑張って笑顔を作ります。
「ほほぅ」
「これはこれは」
招待客の人たちは何かをひそひそと囁き合っていますが、どこからか拍手が聞こえてきました。
するとそれにつられたかのように他の人たちも拍手をし、やがてホールに割れんばかりの拍手が鳴り響いたのでした。
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次回更新は通常どおり、2023/06/17 (土) 20:00 を予定しております。
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