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第88話 張り込み捜査
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その後、女性は救護施設に送られた。そして麻薬の密売人のほうはというと、ウスターシュさんたちの尾行のおかげで身元が判明した。
密売人の名前はポール・カラドゥ。カラドゥ準男爵家という存在しない家系の三男を自称している。
そいつの見た目は茶髪に茶色の目というこの町でもっともありふれた組み合わせでありながらも、その整った顔立ちと麻薬の密売で儲けた金で整えた身なりのおかげで、遊び人の貴族と言われても納得できるような風貌をしている。
そんな彼が麻薬の密売で稼いだ金で何をしているかというと、ほぼ毎晩のように違う女を連れては夜の町に繰り出し、派手に酒を飲んではギャンブルで散財している。
……まあ、なんというか、信じられないほどのクズだ。だからこそすぐに素性が割れたのだろうが。
さて、そうして密売人の身元が割れたので、今度はポールのことを徹底的に尾行することになった。
もちろん今日も尾行しているわけだが、今日ポールがやってきた場所はいつもの夜の町ではなく、貧民街の奥深くだ。しかも普段は持っていない大きな鞄まで持っている。
ポールはかなり周囲を気にしており、何度となく後ろを振り返っているが、今のところまだ尾行に気付かれた様子はない。
するとポールは突然走りだし、近くにある建物の中に入っていった。
俺は建物を映している映像を拡大してみると、真っ暗な建物の中で何かを探すポールの姿が映し出された。
と、突然ポールはしゃがみ、その姿が見えなくなってしまった。
「あ……」
「近づいてみるっすか?」
「でも、これ以上近づくとバレるかもしれません」
「たしかにそうだな。このまま監視を続けよう。手掛かりを逃すわけにはいかない」
「はい」
こうしてウスターシュさんの判断で監視を続けていると、一時間ほどでポールは建物から出てきた。しかも持っていた鞄とは別の鞄を二つ持っている。
「よし。また二手に別れるぞ。ダルコはポールを追え。残りはあの建物から出てくる奴を確認する」
「はいっす」
ダルコさんはポールの後を追いかけていく。それからしばらく待っていると、建物から数人の男たちが出てきた。しかもそのうちの一人の手にはポールが持っていた鞄がある。
「あれは……」
「こいつ、たしかあのときの……」
ヴィヴィアーヌさんがウィンドウに映る一人の男の顔を見て顔をしかめる。
「あ、本当だね。前にマークしてた……」
パトリスさんも同じように顔をしかめた。
二人は何か心当たりがあるようだが、ウスターシュさんは把握できていない様子だ。
「どういうことだ?」
「この男、少し前に一度だけ姿を見たことがあるんです。そのときは私とパトリスの二人で別の密売人を尾行していたんですけど、すれ違ったときに二人の視線が合っただけなので麻薬との関係までは……」
「そういうことか。だが、今回は関係がありそうだな。あいつらの行く先を追おう」
「はい」
こうして俺たちは建物から出てきた男たちの尾行を開始するのだった。
◆◇◆
「これ以上は難しそうですね」
建物から出てきた男たちはまっすぐに貧民街を出て、夜の町へと向かった。そしてそのまま娼館の建ち並ぶ地区へと入っていった。そこは一夜限りの快楽を求める者たちでごった返しており、今の俺たちが彼らを追いかけていくとあまりにも目立ちすぎてしまう。
「それじゃあここからは俺の出番だね。任せておいてよ。あ、ヴィヴィちゃん。マントお願い」
パトリスさんは自信満々にそう言うと、被っていたマントを脱いでヴィヴィアーヌさんに手渡した。マントの下にはなぜかチャラい服を着ており、今のパトリスさんであればああいったところに行っても違和感はない。
ウスターシュさんは強面なのでああいった場所に行くと浮くだろうし、女性であるヴィヴィアーヌさんとレオニーさんは論外だ。娼婦だと思われて声を掛けられ、尾行どころではなくなるに違いない。もちろんそれは俺も同じはずだ。
「そうね。こういうところはあなた、得意分野だものね。分かったわ」
ヴィヴィアーヌさんはそう言うと、マントを受け取る。
「じゃあ、リーダー。経費、よろしくお願いしますね!」
ウスターシュさんの顔がピクリと引きつったが、すぐに小さく頷きながら了承する。
「あ、ああ。分かった。頼んだぞ」
「はい!」
パトリスさんは生き生きした目でそう答えると、そのままふらりと雑踏の中に消えていったのだった。
密売人の名前はポール・カラドゥ。カラドゥ準男爵家という存在しない家系の三男を自称している。
そいつの見た目は茶髪に茶色の目というこの町でもっともありふれた組み合わせでありながらも、その整った顔立ちと麻薬の密売で儲けた金で整えた身なりのおかげで、遊び人の貴族と言われても納得できるような風貌をしている。
そんな彼が麻薬の密売で稼いだ金で何をしているかというと、ほぼ毎晩のように違う女を連れては夜の町に繰り出し、派手に酒を飲んではギャンブルで散財している。
……まあ、なんというか、信じられないほどのクズだ。だからこそすぐに素性が割れたのだろうが。
さて、そうして密売人の身元が割れたので、今度はポールのことを徹底的に尾行することになった。
もちろん今日も尾行しているわけだが、今日ポールがやってきた場所はいつもの夜の町ではなく、貧民街の奥深くだ。しかも普段は持っていない大きな鞄まで持っている。
ポールはかなり周囲を気にしており、何度となく後ろを振り返っているが、今のところまだ尾行に気付かれた様子はない。
するとポールは突然走りだし、近くにある建物の中に入っていった。
俺は建物を映している映像を拡大してみると、真っ暗な建物の中で何かを探すポールの姿が映し出された。
と、突然ポールはしゃがみ、その姿が見えなくなってしまった。
「あ……」
「近づいてみるっすか?」
「でも、これ以上近づくとバレるかもしれません」
「たしかにそうだな。このまま監視を続けよう。手掛かりを逃すわけにはいかない」
「はい」
こうしてウスターシュさんの判断で監視を続けていると、一時間ほどでポールは建物から出てきた。しかも持っていた鞄とは別の鞄を二つ持っている。
「よし。また二手に別れるぞ。ダルコはポールを追え。残りはあの建物から出てくる奴を確認する」
「はいっす」
ダルコさんはポールの後を追いかけていく。それからしばらく待っていると、建物から数人の男たちが出てきた。しかもそのうちの一人の手にはポールが持っていた鞄がある。
「あれは……」
「こいつ、たしかあのときの……」
ヴィヴィアーヌさんがウィンドウに映る一人の男の顔を見て顔をしかめる。
「あ、本当だね。前にマークしてた……」
パトリスさんも同じように顔をしかめた。
二人は何か心当たりがあるようだが、ウスターシュさんは把握できていない様子だ。
「どういうことだ?」
「この男、少し前に一度だけ姿を見たことがあるんです。そのときは私とパトリスの二人で別の密売人を尾行していたんですけど、すれ違ったときに二人の視線が合っただけなので麻薬との関係までは……」
「そういうことか。だが、今回は関係がありそうだな。あいつらの行く先を追おう」
「はい」
こうして俺たちは建物から出てきた男たちの尾行を開始するのだった。
◆◇◆
「これ以上は難しそうですね」
建物から出てきた男たちはまっすぐに貧民街を出て、夜の町へと向かった。そしてそのまま娼館の建ち並ぶ地区へと入っていった。そこは一夜限りの快楽を求める者たちでごった返しており、今の俺たちが彼らを追いかけていくとあまりにも目立ちすぎてしまう。
「それじゃあここからは俺の出番だね。任せておいてよ。あ、ヴィヴィちゃん。マントお願い」
パトリスさんは自信満々にそう言うと、被っていたマントを脱いでヴィヴィアーヌさんに手渡した。マントの下にはなぜかチャラい服を着ており、今のパトリスさんであればああいったところに行っても違和感はない。
ウスターシュさんは強面なのでああいった場所に行くと浮くだろうし、女性であるヴィヴィアーヌさんとレオニーさんは論外だ。娼婦だと思われて声を掛けられ、尾行どころではなくなるに違いない。もちろんそれは俺も同じはずだ。
「そうね。こういうところはあなた、得意分野だものね。分かったわ」
ヴィヴィアーヌさんはそう言うと、マントを受け取る。
「じゃあ、リーダー。経費、よろしくお願いしますね!」
ウスターシュさんの顔がピクリと引きつったが、すぐに小さく頷きながら了承する。
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